2024年11月21日木曜日

面前DVは,心理的虐待です

 

今日のテーマは,「面前DVは,心理的虐待です」です。

 

面前DVとは,子どもの前で配偶者から暴力を受けることをいいます。

 

児童虐待防止法ができた当時は,この考え方はなく,途中で加わりました。

 

その時に,自分のきょうだいへの虐待も,心理的虐待に含まれるようになりました。

 

この変更により,法ができた当初は,身体的虐待が最も多かったものが,現在では心理的虐待が最も多くなっています。

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題138

事例を読んで,Z配偶者暴力相談支援センターのH相談員(社会福祉士)によるこの時点での対応として,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 Jさん(35歳)は夫(45歳)と娘(7歳)の3人暮らしである。日々の生活の中で,「誰のおかげで飯を食わせてもらっているのか。母親失格,人間としても駄目だ」等と毎日のように娘の前で罵倒され,娘もおびえでおり,Z配偶者暴力相談支援センターに相談に来た。H相談員に,夫の言葉の暴力に苦しんでいることを相談し,「もう限界です」と話した。Jさんは娘の成長にとってもよくないと思っている。

1 家庭裁判所に保護命令を申し立てるようJさんに勧める。

2 Jさんの希望があれば,Jさんと娘の一時保護を検討できるとJさんに伝える。

3 「身体的暴力はないのだから」と,もう少し様子を見るようJさんに伝える。

4 警察に通報する。

5 父親の行為は児童虐待の疑いがあるので,児童相談所に通告する。

 

この問題で得点するためには,児童虐待防止法には,通告義務があることと面前DVは心理的虐待であることを知っていることが必要です。

 

それでは解説です。

 

1 家庭裁判所に保護命令を申し立てるようJさんに勧める。

 

DV防止法にかかわる裁判所は,家庭裁判所ではなく,地方裁判所です。

 

保護命令の申立先が間違っています。

 

2 Jさんの希望があれば,Jさんと娘の一時保護を検討できるとJさんに伝える。

 

これが1つめの正解です。

 

困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(困難女性支援新法)が規定する女性相談支援センターがDV防止法に規定される配偶者暴力相談支援センターとしての役割を果たしています。

 

女性相談支援センターには,一時保護を行う施設が設置されます。これをDV被害者のシェルターとして活用します。

 

3 「身体的暴力はないのだから」と,もう少し様子を見るようJさんに伝える。

 

児童虐待防止法では,児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者には通告義務を規定しています。

 

身体的暴力はありませんが,面前DVはあります。

 

 

4 警察に通報する。

 

DV防止法では,「配偶者からの暴力を受けている者を発見した者は,その旨を配偶者暴力相談支援センター又は警察官に通報するよう努めなければならない」と通報の努力義務を規定しています。

 

DV防止法が規定する警察は通報先の一つですが,この事例の場合,Jさんは配偶者暴力相談支援センターに相談に来ています。

改めて警察に通報する必要があるのは,DVの制止,DV被害者の保護などを求める場合です。

 

現時点では,Jさんは安全な場所にいるので,警察に通報する優先度合いは低いと言えます。

 

5 父親の行為は児童虐待の疑いがあるので,児童相談所に通告する。

 

これが2つめの正解です。

 

夫による娘の前でのJさんへの罵倒は面前DVなので,児童虐待防止法の心理的虐待に当たります。

 

罵倒があったのかどうかにかわらず,「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者」には通告義務があります。

 

児童虐待防止法の通告先は,市町村,福祉事務所,児童相談所です。

 

〈今日の一言〉

 

児童虐待の事例問題で注意しなければならないのは,児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者」には通告義務があることです。

2024年11月20日水曜日

児童福祉法の改正

 

1947年(昭和22年)に作られた児童福祉法は,何度も何度も改正され,現在も児童福祉の中心的法制度として重要な位置づけにあります。

 

特に近年では,児童虐待が増加する中,それに対応するための改正が続いています。

 

今日の問題もそんな問題です。

 

33回・問題137

2019年(令和元年)に改正された児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 児童相談所における介入担当と保護者支援担当は,同一の児童福祉司が担うこととなった。

2 児童相談所の業務の質について,毎年,評価を実施することが義務づけられた。

3 親権者は,児童のしつけに際して体罰を加えてはならないとされた。

4 特別区(東京23区)に,児童相談所を設置することが義務づけられた。

5 一時保護の解除後の児童の安全の確保が,市町村に義務づけられた。

 

2019年の改正法は「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」という名称で,改正の趣旨は,児童虐待防止対策の強化を図るため,児童の権利擁護,児童相談所の体制強化及び関係機関間の連携強化等の所要の措置を講ずることでした。

 

それでは解説です。

 

1 児童相談所における介入担当と保護者支援担当は,同一の児童福祉司が担うこととなった。

 

この改正で行われたのは,一時保護等の介入的対応を行う職員と保護者支援を行う職員を分ける等の措置を講ずることでした。

 

2 児童相談所の業務の質について,毎年,評価を実施することが義務づけられた。

 

児童相談所の業務の質を評価することは,努力義務です。

 

3 親権者は,児童のしつけに際して体罰を加えてはならないとされた。

 

これが正解です。

 

「親権者は,児童のしつけに際して体罰を加えてはならない」と明文化されました。

 

この時の改正では,同時に児童福祉施設の長等についても体罰禁止が規定しています。

 

4 特別区(東京23区)に,児童相談所を設置することが義務づけられた。

 

特別区の児童相談所の設置は,任意です。

 

この改正によって,児童相談所の設置は以下のようになりました。

 

都道府県・指定都市

義務

中核市・特別区

任意

 

5 一時保護の解除後の児童の安全の確保が,市町村に義務づけられた。

 

一時保護の解除後の児童の安全の確保が義務づけられたのは,児童相談所です。

2024年11月19日火曜日

サービス付き高齢者向け住宅

 

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は,高齢者住まい法(高齢者の居住の安定確保に関する法律)に規定され,状況把握サービス及び生活相談サービスその他の高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスを提供します。


高齢者向けの賃貸住宅や老人福祉法に規定される有料老人ホームが,都道府県知事の登録を受け,サ高住となります。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題135

高齢者の住まいに関する法制度についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 住宅確保要配慮者に対して居住支援に取り組む法人(居住支援法人)は,その申請により,都道府県知事から指定されることとなっている。

2 サービス付き高齢者向け住宅は,入居者に対し,介護保険制度における居宅介護サービス若しくは地域密着型サービスの提供が義務づけられている。

3 シルバーハウジングにおいては生活支援コーディネーターが配置され,必要に応じて入居者の相談や一時的な身体介護を行うこととなっている。

4 終身建物賃貸借制度は,賃借人が死亡することによって賃貸借契約が終了する借家契約であり,75歳以上の高齢者が対象とされている。

5 市町村は,住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する計画(市町村賃貸住宅供給促進計画)の作成を義務づけられている。


今見てもなかなかの難問です。


この科目の前身となる「高齢者に対する支援と介護保険制度」は10問出題される科目だったために,このようなチャレンジングな出題が可能だったのでしょう。


今は,6問になったために,これだけの難問は出題されないのではないかと思います。


それでは解説です。


1 住宅確保要配慮者に対して居住支援に取り組む法人(居住支援法人)は,その申請により,都道府県知事から指定されることとなっている。


これが正解です。


居住支援法人は,住宅セーフティネット法が規定されるもので,高齢者など住宅確保要配慮者に対して,居住支援を行うもので,都道府県知事の指定を受けます。


2 サービス付き高齢者向け住宅は,入居者に対し,介護保険制度における居宅介護サービス若しくは地域密着型サービスの提供が義務づけられている。


今日のテーマのサ高住が登場してきました。


サ高住が提供するサービスは,状況把握サービス及び生活相談サービスその他の高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスです。


介護保険サービスは,外部のサービスを利用します。


3 シルバーハウジングにおいては生活支援コーディネーターが配置され,必要に応じて入居者の相談や一時的な身体介護を行うこととなっている。


シルバーハウジングは,高齢者世帯向けの公的賃貸住宅等で,生活援助員(ライフサポートアドバイザー)が日常生活支援サービスを提供するものです。

根拠法はありません。



4 終身建物賃貸借制度は,賃借人が死亡することによって賃貸借契約が終了する借家契約であり,75歳以上の高齢者が対象とされている。


終身建物賃貸借制度の対象年齢は,60歳以上です。


5 市町村は,住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する計画(市町村賃貸住宅供給促進計画)の作成を義務づけられている。


市町村賃貸住宅供給促進計画は,住宅セーフティネット法に規定されるもので,策定は任意です。

2024年11月18日月曜日

老人福祉法

 

今回は,老人福祉法を学びます。

 

こんにちの高齢者の介護ニーズには,介護保険法による介護サービスを提供しますが,老人福祉法は今も重要です。

 

市町村長の措置によって介護サービスを提供することもあるからです。

 

緊急性がある場合,介護保険による契約ができない場合,虐待によって世帯分離を行う場合などに措置が行われます。

 

それでは今日の問題です。


第33回・問題134

老人福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村は,市町村老人福祉計画において,当該市町村の区域において確保すべき老人福祉事業の量の目標を定めるものとしている。

2 養護老人ホームの入所要件は,60歳以上の者であって,経済的理由により居宅において介護を受けることが困難な者としている。

3 老人福祉法に基づく福祉の措置の対象となる施設の一つとして,救護施設が含まれている。

4 特別養護老人ホームについて,高齢者がやむを得ない事由により自ら申請できない場合に限って,市町村の意見を聴いた上で都道府県が入所措置を行う。

5 老人介護支援センターは,介護保険法の改正(2005年(平成17年))に伴って,老人福祉法から削除され,介護保険法上に規定された。


ちょっと難問かもしれませんが,良い問題だと思います。

それでは解説です。

 

1 市町村は,市町村老人福祉計画において,当該市町村の区域において確保すべき老人福祉事業の量の目標を定めるものとしている。

 

これが正解です。

 

老人福祉事業とは,老人居宅生活支援事業及び老人福祉施設のことです。

 

老人福祉計画で定める内容

市町村老人福祉計画

都道府県老人福祉計画

老人福祉事業(老人居宅生活支援事業及び老人福祉施設による事業)の量の目標など。

養護老人ホーム及び特別養護老人ホームの必要入所定員総数その他老人福祉事業の量の目標など。

 

都道府県は,入所系サービスが加わっているところに着目して覚えます。

 

 

2 養護老人ホームの入所要件は,60歳以上の者であって,経済的理由により居宅において介護を受けることが困難な者としている。

 

養護老人ホームの入所対象年齢は65歳以上です。

 

養護老人ホームは老人福祉法の中でもとても重要です。

 

入所要件に経済的理由が含まれている理由は,養護老人ホームのルーツは,救護法に規定されていた養老院だからです。

 

戦後,生活保護法によって,養老施設となり,老人福祉法で養護老人ホームとなり,現在に至ります。

 

なお,養護老人ホームの入所要件は,「65歳以上の者であって,環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けることが困難なもの」です。

 

3 老人福祉法に基づく福祉の措置の対象となる施設の一つとして,救護施設が含まれている。

 

救護施設は,生活保護法に基づく保護施設です。根拠法は老人福祉法ではありません。

 

4 特別養護老人ホームについて,高齢者がやむを得ない事由により自ら申請できない場合に限って,市町村の意見を聴いた上で都道府県が入所措置を行う。

 

特別養護老人ホームの入所措置は,市町村が行います。

 

1990年(平成2年)の福祉関係八法改正で,入所措置が都道府県から町村に権限移譲されています。

 

細かい理由ですが,「市町村」ではなく,「町村」である理由は,市には福祉事務所があるため,もともと入所措置を行っていたためです。

 

5 老人介護支援センターは,介護保険法の改正(2005年(平成17年))に伴って,老人福祉法から削除され,介護保険法上に規定された。

 

老人介護支援センターは,今も老人福祉法のままです。

 

老人福祉法が定める老人福祉施設

・老人デイサービスセンター

・老人短期入所施設

・養護老人ホーム

・特別養護老人ホーム

・軽費老人ホーム

・老人福祉センター

・老人介護支援センター


2024年11月17日日曜日

福祉用具専門相談員

 

所定の研修を受講することで,福祉用具専門相談員として従事することができますが,社会福祉士や介護福祉士などは,研修を受けなくてもその資格で従事することができます。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題133

事例を読んで,X事業者(福祉用具貸与事業者及び特定福祉用具販売事業者)に勤務するE福祉用具専門相談員(社会福祉士)が行う支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 E福祉用具専門相談員は,Y居宅介護支援事業所のF介護支援専門員からの依頼で,R市で一人暮らしをしているGさん(女性,84歳,要介護1)の自宅を訪問し,福祉用具の選定に関する相談を行うこととなった。Gさんは約10年前の大腿骨頸部骨折の後遺症により股関節が動きにくくなり,現在では浴糟への出入りと屋外での移動に支障がある。しかし,その他の日常生活動作や認知機能に支障はなく,状態も安定している。GさんはこれまでT字杖以外の福祉用具は使用したことがない。 

1 Gさんに,福祉用具貸与による入浴補助用具の給付が可能と説明した。

2 Gさんに,特定福祉用具販売による自宅廊下の手すりの設置が可能と説明した。 

3 Gさんに屋外での移動のため,福祉用具貸与による歩行器の利用が可能と説明した。 

4 Gさん及びF介護支援専門員と相談した上で福祉用具貸与計画と特定福祉用具販売計画を作成し,利用前にR市に提出して承認を得た。

5 Gさんが将来,身体状況が悪化したときのことを想定して,玄関の段差を解消するために移動用リフトを設置した方がよいと説明した。


現場に精通していないと難しい問題です。


今後は,こういったタイプの問題は出題されなくなることが予想されますが,一応押さえておきたいです。


それでは,解説です。


1 Gさんに,福祉用具貸与による入浴補助用具の給付が可能と説明した。


入浴補助用具は,福祉用具販売の対象です。


2 Gさんに,特定福祉用具販売による自宅廊下の手すりの設置が可能と説明した。


手すりの設置は,住宅改修費によって行います。


3 Gさんに屋外での移動のため,福祉用具貸与による歩行器の利用が可能と説明した。


これが正解です。歩行器は福祉用具貸与の対象です。


4 Gさん及びF介護支援専門員と相談した上で福祉用具貸与計画と特定福祉用具販売計画を作成し,利用前にR市に提出して承認を得た。


これが現場にいないとわからないものです。これは二度と出題されないでしょう。


利用前に市町村に提出が必要なのは,福祉用具貸与に係る協議書です。


5 Gさんが将来,身体状況が悪化したときのことを想定して,玄関の段差を解消するために移動用リフトを設置した方がよいと説明した。


移動用リフトはネットで調べるとわかりますが,自分で移乗などができない人をアシストしてくれるものです。

階段の段差は,小さな段を設置すると解消できます。移動用リフトは必要ではありません。

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