2025年8月1日金曜日

消費者契約法

 契約を取り消すことができる制度として,クーリング・オフ制度があります。


しかし,利用できるのは,訪問販売や電話に勧誘などによって契約したものに限られます。


消費者契約法は,以下のような場合に取り消すことができます。


























出典:消費者庁「知っていますか? 消費者契約法―早わかり!消費者契約法―」

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/public_relations/assets/consumer_system_cms101_231107_01.pdf


それでは今日の問題です。


第35回・問題83

事例を読んで,消費者被害に関する次の記述のうち,X地域包括支援センターのC社会福祉士の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Dさん(70歳)は,認知症の影響で判断能力が低下しているが,その低下の程度ははっきりしていない。宝石の販売業者Yは,Dさんが以前の購入を忘れていることに乗じ,2年にわたって繰り返し店舗で40回,同じ商品を現金で購入させ,その合計額は1,000万円に及んでいた。E訪問介護員がこの事態を把握し,X地域包括支援センターに所属するC社会福祉士に相談した。 

1 Dさんのこれまでの判断を尊重し,Dさんに対し,今後の購入に当たっての注意喚起を行う。

2 Dさんの意向にかかわりなく,宝石の販売業者Yと連絡を取り,Dさんへの宝飾品の販売に当たり,今後は十分な説明を尽くすように求める。

3 Dさんの判断能力が著しく不十分であった場合,C社会福祉士自ら保佐開始の審判の申立てを行う。

4 クーリング・オフにより,Dさん本人にその購入の契約を解除させる。

5 これらの購入につき,消費者契約法に基づく契約の取消しが可能かを検討するため,Dさんのプライバシーに配慮して,消費生活センターに問い合わせる。



それほど難しくない問題ですが,気を付けなければならないのは,選択肢4です。


クーリング・オフ制度が使えるのは,契約書が交付されてから8日以内です。

この事例でも同制度が使える契約もあるとは思いますが,40回のうちのほんの一部でしょう。


正解は,選択肢5です。


この場合は,過量契約によって契約を解除することができそうです。

2025年7月23日水曜日

家庭裁判所の役割

 

家庭裁判所は,戦前からあった家事審判所と少年審判所が合併して,1949年(昭和24年)にできたものです。


何を行うのかは,前身の組織を見ると何となくわかるのではないかと思います。


具体的には,家事審判,家事調停,少年審判を取り扱います。


近年では,離婚訴訟も取り扱うようになりました。


これらに必要な調査や環境調整は,家庭裁判所調査官が行います。


それでは,今日の問題です。


第35回・問題82 

家庭裁判所に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 

1 家庭裁判所は,近隣トラブルに関する訴訟を取り扱う。

2 家庭裁判所は,「DV防止法」に基づく保護命令事件を取り扱う。

3 家庭裁判所は,嫡出でない子の認知請求訴訟を取り扱う。

4 家庭裁判所は,労働審判を取り扱う。

5 家庭裁判所は,債務整理事件を取り扱う。

(注) 「DV防止法」とは,「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」のことである。


迷うのは,選択肢2の保護命令事件ではないかと思います。


しかし,家事審判でも家事調停でも,また,少年調停でもありません。


正解は,選択肢3です。

3 家庭裁判所は,嫡出でない子の認知請求訴訟を取り扱う。


これが家事審判にかかわるものです。


これ以外は,すべて地方裁判所の役割です。


なお,家事審判と家事調停の違いは,家事審判は裁判所が判断して決定するものであるのに対し,家事調停は当事者間の合意で問題の解決を図るものです。


正解となった「認知」に関しては,当事者間で解決するのが調停,それでは解決できない場合,訴訟で解決を図ることになるので,審判ということになります。

2025年7月11日金曜日

後見・保佐・補助

 

法定後見制度の類型には,後見,保佐,補助の3つがあります。

 

成年被後見人

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者

被保佐人

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者

被補助人

精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者

 

最も重いのは,成年被後見人

最も軽いのは,被補助人です。

 

補助開始の審判をする際,本人以外の者の請求がする時は,本人の同意が必要です。

 

後見開始等の審判を行う際,本人の同意を必要とするのは,補助しかありません。

その理由は,本人には判断力があるからです。

 

それでは,今日の問題です。

 

35回・問題80

成年後見制度の補助に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 補助は,保佐よりも判断能力の不十分さが著しい者を対象としている。

2 補助開始の審判をするには,本人の申立て又は本人の同意がなければならない。

3 補助人の事務を監督する補助監督人という制度は設けられていない。

4 補助開始の審判は,市町村長が申し立てることはできない。

5 補助人に対し,被補助人の財産に関する不特定の法律行為についての代理権を付与することができる。

 

前説に書いたので,答えはすぐわかると思いますが,簡単に解説します。

 

1 補助は,保佐よりも判断能力の不十分さが著しい者を対象としている。

 

〈重い順〉

 

後見 > 保佐 > 補助

 

2 補助開始の審判をするには,本人の申立て又は本人の同意がなければならない。

 

これが正解です。

 

後見開始等の審判を行う際,本人の同意が必要なのは,補助のみです。

 

3 補助人の事務を監督する補助監督人という制度は設けられていない。

 

補助監督人という言葉を聞いたことがないという人もいるかもしれません。

 

任意後見制度と同様に法定後見制度にも,成年後見監督人,保佐監督人,補助監督人の制度があります。

 

職務は,それぞれ成年後見人,保佐人,補助人の事務の監督,成年被後見人等と成年後見人等の利益相反する場合は,成年後見人を代表します。

 

成年後見監督人が選任されていない場合に利益相反することがあったら,成年後見人等は,特別代理人等の選任の請求を行います。

 

4 補助開始の審判は,市町村長が申し立てることはできない。

 

請求権者がいない場合,請求権者がいても後見開始等の請求できないなどの場合,市町村長が請求できます。それを市町村長申立てといいます。

 

どの類型であっても市町村長申立てはできます。

 

5 補助人に対し,被補助人の財産に関する不特定の法律行為についての代理権を付与することができる。

 

被補助人の判断能力は,通常の人に比べると低いかもしれませんが,判断することはできます。

 

どんな法律行為の際に代理権を付与するかは,補助開始の審判の際に決定されます。

2025年7月4日金曜日

成年後見人と成年被後見人の利益が相反する場合

成年後見人と成年被後見人の利益が相反する場合とは,成年被後見人が所有するものを成年後見人が購入する場合などです。


この場合,一方が有利だと,もう一方は不利になります。


任意後見制度の場合は,任意後見監督人が選任されているので,利益相反する場合には,任意後見監督人が本人を代表します。


法定後見制度の場合も成年後見監督人が選任されていることもありますが,任意後見制度のように,必ず選任されているものではありません。


成年後見監督人が選任されていない場合に利益相反状態になると,成年後見人は,家庭裁判所に対して,特別代理人の選任を請求しなければなりません。


それでは,今日の問題です。


第35回・問題79 

事例を読んで,成年後見人の利益相反状況に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 共同生活援助(グループホーム)で暮らすAさん(知的障害,52歳)には弟のBさんがおり,BさんがAさんの成年後見人として選任されている。先頃,Aさん兄弟の父親(80歳代)が死去し,兄弟で遺産分割協議が行われることとなった。

1 Aさんは,特別代理人の選任を請求できる。

2 Bさんは,成年後見監督人が選任されていない場合,特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。

3 Bさんは,遺産分割協議に当たり,成年後見人を辞任しなければならない。

4 特別代理人が選任された場合,Bさんは,成年後見人としての地位を失う。

5 特別代理人が選任された場合,特別代理人は,遺産分割協議に関する事項以外についても代理することができる。


〈状況の整理〉

Aさん:成年被後見人

Bさん Aさんの成年後見人


特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならないのは,成年後見人です。


つまり,この事例で請求しなければならないのは,Bさんです。


正解は,選択肢2ということになります。


これ以外はすべて誤りです。

2025年7月1日火曜日

成年後見人の職務

 

成年後見人の職務は,身上監護と財産管理です。

 

法務省の資料によると,それぞれ以下のように説明しています。

 

身上監護とは,ご本人の生活や健康の維持,療養等に関する仕事です。例えば,ご本人の住まいの確保,生活環境の整備,施設に入所する契約,ご本人の治療や入院の手続を行うことですが,食事の世話や実際の介護などは含まれていません。

 

財産管理とは,ご本人の財産内容を正確に把握して財産目録を作り,ご本人の財産が保たれるように管理することです。具体的には,ご本人の預金通帳や保険証書などを保管し,年金や保険金などの収入を受け取り,ご本人に必要な経費の支払を行い,それらを帳簿につけて管理を行うことです。

 

それでは,早速,今日の問題です。

 

35回・問題78

事例を読んで,成年後見人のLさんが,成年被後見人のMさんと相談の上で行う職務行為として,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 Mさん(70歳代)は,自身の希望で一人暮らしをしているが,居住地域は,介護サービス資源が少なく,交通の便の悪い山間部である。Mさんは,要介護2の認定を受け,持病もある。最近,Mさんは心身の衰えから,バスでの通院に不便を感じ,薬の飲み忘れも増え,利用中の介護サービス量では対応が難しくなってきているようである。Mさん自身も一人暮らしへの不安を口にしている。

1 自宅以外の住まいに関する情報収集

2 Mさんの要介護状態区分の変更申請

3 Lさんによる家事援助

4 Lさんによる通院介助

5 Lさんによる服薬介助

 

これを整理すると以下のようになります。

 

1 自宅以外の住まいに関する情報収集

身上監護

2 Mさんの要介護状態区分の変更申請

身上監護

3 Lさんによる家事援助

×

4 Lさんによる通院介助

×

5 Lさんによる服薬介助

×

 

この問題は事例スタイルですが,成年後見人の職務を知らないと正解することは困難です。

 

身上監護にあたるのは,以下の2つです。

 

1 自宅以外の住まいに関する情報収集

2 Mさんの要介護状態区分の変更申請

 

つまり,この2つが正解です。

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