今回は,逸脱行動論を学びます。
逸脱行動論とは,人はどのようにして逸脱していくのかを論じたものです。
逸脱行動論にはいくつも種類がありますが,最近の国家試験では,ラベリング理論を学んでほしいと思っているのではないかと感じることがあります。
ラベリング理論 |
周りが逸脱者だとレッテルを貼ることで逸脱すると考える。 |
分化的接触論 (文化学習理論) |
逸脱者と交流し,逸脱行為を学ぶことで逸脱すると考える。 |
機会構造論 |
合法的ではない機会に多く接触することで逸脱すると考える。 |
アノミー論 |
文化的発展によって人々の欲求が高まるが,その欲求を満たすことができないときに逸脱すると考える。 |
社会統制理論 |
人の絆があるとき,仕事や学業などに打ち込んでいるときは,逸脱が減ると考える。 |
漂流理論 |
非行少年が遵法的な世界と非行的な世界の間で揺れ動き漂っている中で逸脱が生じると考える。 |
ラベリング理論だけが,本人の理由によって,逸脱したり,逸脱が減少すると考えるのではなく,周りが逸脱者生み出す,という理論となっています。
つまり問題の根源は,本人ではなく,レッテルを貼る周りの人だということになります。
それでは今日の問題です。
第35回・問題21
次の記述のうち,ラベリング論の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会がある行為を逸脱とみなし統制しようとすることによって,逸脱が生じると考える立場である。
2 非行少年が遵法的な世界と非行的な世界の間で揺れ動き漂っている中で,逸脱が生じると考える立場である。
3 地域社会の規範や共同体意識が弛緩することから,非行や犯罪などの逸脱が生じると考える立場である。
4 下位集団における逸脱文化の学習によって,逸脱が生じると考える立場である。
5 個人の生得的な資質によって,非行や犯罪などの逸脱が生じると考える立場である。
この問題は,語尾がすべて「逸脱が生じると考える立場である」で統一されています。
こういったタイプは,日本的に判断することができません。そのため,知識の差が明確に生じます。
それでは,解説です。
1 社会がある行為を逸脱とみなし統制しようとすることによって,逸脱が生じると考える立場である。
これが正解です。
「社会がある行為を逸脱とみなし統制しようとする」という部分がレッテルを貼ることを意味しています。
2 非行少年が遵法的な世界と非行的な世界の間で揺れ動き漂っている中で,逸脱が生じると考える立場である。
これは,漂流理論です。
3 地域社会の規範や共同体意識が弛緩することから,非行や犯罪などの逸脱が生じると考える立場である。
これは,アノミー論です。
4 下位集団における逸脱文化の学習によって,逸脱が生じると考える立場である。
これは,分化的接触理論です。
5 個人の生得的な資質によって,非行や犯罪などの逸脱が生じると考える立場である。
これは,前説にありませんが,生来性犯罪者説です。これが正解になることはまずないでしょう。単なる数合わせのための出題です。
〈今日の一言〉
これからも逸脱行動論の出題の中心にはラベリング理論が据えられることでしょう。