2022年4月30日土曜日

社会福祉士第35回国家試験のタクソノミーⅢ型の問題を助産師国試から予測する

社会福祉士の国家試験は,第37回から令和元年度改正のカリキュラムによるものに移行します。

 

現時点(2022年4月)では,第35回・第36回が平成19年度改正のカリキュラムで実施されます。

 

しかし,厚生労働省の通知が出たことから,第35回から少し変化することになります。

 

厚生労働省社会・援護局長通知(令和4年4月25日)

 

「社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会」報告書を踏まえた今後の社会福祉士国家試験の実施について

 

https://www.mhlw.go.jp/content/000932518.pdf

 

これを受けてこの学習部屋では,タクソノミー分類による問題を紹介しているところです。

 

 

・タクソノミーⅠ型(単純な知識の想起によって解答できる問題)

・タクソノミーⅡ型(設問で与えられた情報を理解・解釈してその結果に基づいて解答する問題) → 1回考える

・タクソノミーⅢ型(理解している知識を応用して具体的な問題解決を求める問題) → 2回考える

 

 タクソノミーⅠ型は,一般的な問題なので省きます。

 

タクソノミーⅡ型・Ⅲ型が助産師国家試験でどのように出題されているのかを見ていきたいと思います。  ※問題はいずれも2022年2月に実施された第104回のもの。


 

タクソノミーⅡ型だと思われる問題

 

午前・問題12 Aさん(33歳、経産婦)。夫と長男(3歳)との3人暮らし。妊娠24週2日の妊婦健康診査で来院した。妊娠経過は順調である。診察時、助産師に「前回の出産は人で長い時間陣痛に耐えて痛くてつらかったです。夫は仕事で出産後に病院に到着しました。今回の付き添いも夫と話したけど、難しそうです。また同じ思いをするのかと思うと、不安です」と話す。

Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。

1.経産婦の平均分娩所要時間を説明する。

2.硬膜外麻酔分娩について情報提供する。

3.子どもの立会い出産を検討するよう促す。

4Aさんが希望するケアについて話し合う。

 

この問題の正解は,選択肢4です。

 

助産師にも相談援助的な要素があるようです。

 

午前・問題33 Aさん(32歳、初妊婦)。妊娠39週5日、陣痛発来後、3時間の経過で3,850gの児を分娩した。胎盤娩出直後から子宮収縮が不良で、子宮双手双合圧迫法が行われた。分娩後30分時点で出血量の総量が1,500mLを超えたが、子宮からの出血が持続している。体温37.3℃、脈拍120/分、血圧95/50 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO299 %room air)。

この時点での新鮮凍結血漿の輸血の判断に必要な血液検査値で最も重要なのはどれか。

1.血小板数

2.白血球数

3.ヘモグロビン値

4.血清アルブミン値

5.フィブリノゲン値

 

正解は,選択肢5だそうです。

 

タクソノミーⅠ型になりがちなものを事例で出題することでタクソノミーⅡ型にしています。

 

実は,社会福祉士でもこういったタイプの問題は既にあります。

 

34回・問題8 次の記述のうち,レスポンデント(古典的)条件づけの事例として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 デイサービスの体験利用をしたら思ったよりも楽しかったので,継続的に利用するようになった。

2 自動車を運転しているときに事故に遭ってから,自動車に乗ろうとすると不安な気持ちを強く感じるようになった。

3 試験前に時間をかけて勉強することで高得点が取れたので,次の試験前にも勉強に時間をかけるようになった。

4 おもちゃを乱暴に扱っていた子どもに注意をしたら,優しく扱うようになった。

5 工事が始まって大きな音に驚いたが,しばらく経つうちに慣れて気にならなくなった。

 

最初に事例をもってきていませんが,レスポンデント条件づけを提示して,各選択肢で思考させる問題となっているので,タクソノミーⅡ型です。

 

そういった面では,心理学理論はタクソノミーⅡ型の問題を出題しやすい科目なのかもしれません。

 

 

タクソノミーⅢ型だと思われる問題

 

午後問題

 

次の文を読み5153の問いに答えよ。

Aさん­22歳、初産婦、外国籍)。妊娠10週。夫­30歳、外国籍、会社員)と2人暮らし。1年前に夫の仕事のため来日した。母子健康手帳の受け取りのため、夫婦でB市の保健センターに来所した。

 

51 Aさんへの支援にあたっての情報収集で最も優先されるのはどれか。

1Aさんの母国の母子保健サービス

2Aさん夫婦の日本語能力

3.在留資格の有無

4.夫の仕事の状況

 

52 保健センターの助産師は、子育て世代包括支援センター業務ガイドラインの考え方を参考に、Aさんの支援プランを検討することとなった。Aさんは、母国ではなく日本で出産する予定である。

支援プランの検討で適切なのはどれか。

1.出産予定の病院の助産師と連携して作成する。

2.日本の産育習俗に基づき計画する。

3Aさんの意見は最後に確認する。

4.初回の評価は出産後に行う。

 

53 Aさんは妊娠34週に、産後の生活や育児の相談のため、夫と共に保健センターに来所した。助産師に、異国での初めての育児に不安があると話した。育児は夫婦2人で行うこと、産後のサポートが不足していることがわかった。

Aさんに説明する母子保健サービスで適切なのはどれか。2つ選べ。

1.新生児・褥婦訪問指導

2.乳幼児健康診査

3.一時預かり事業

4.産後ケア事業

5.入院助産

 

この問題の答え

 

問題51 2

問題52 1

問題53 1,4

 

この問題が社会福祉士の国家試験の最も参考になる問題なのかもしれません。

 

問題53の社会資源の内容はなじみがないものですが,そこを変えれば,社会福祉士の問題かと思うくらいです。


次回は,理学療法士の問題で考えたいと思います。


〈今日の一言〉


第35国試では必ずタクソノミーⅢ型が出題されます。

内容そのものが難しくなくても,出題の仕方が変われば,びっくりする人もいるでしょう。

そうすると焦ってミスすることもあります。


また,状況設定問題のような問題は,解釈する力とそれに伴う高い判断力が求められます。

知識偏重の社会福祉士は福祉現場では役立ちませんし,現場からも求められるものではありません。

そういった意味では,受験者には厳しいものになるかもしれませんが,合格率を高めても質を落とさないためには必要なことです。頑張りましょう。

2022年4月29日金曜日

社会福祉士第35回国家試験に出題されるタクソノミーⅢ型の問題~保健師国試から考える

ソーシャルワークに親和性をもつ医療系資格として保健師があります。

 

保健師も社会福祉士と同じく,名称独占の資格です。

 

保健指導は,保健師の資格を持たなくても行えますが,保健師の名称は資格がないと使えません。

 

今回は,保健師の国家試験問題を見てみます。※第108回国家試験

 

知識レベルで解けるタクソノミーⅠ型は省きます。

 

タクソノミーⅡ型だと思われる問題

 

午前・25 Aさん(48歳、男性)。妻と2人暮らし。精神科に通院中であり、保健所のアルコール依存症者の自助グループに定期的に参加している。ある日、Aさんが担当保健師を訪ねてきたが、呼気にアルコール臭がした。Aさんに確認すると、「自助グループに参加してから断酒できていたが、今朝ビールを3缶飲んでしまった」と話した。

担当保健師の対応で適切なのはどれか。

1.意志が弱いと注意する。

2.アルコールの害を説明する。

3.1日の適正飲酒量を説明する。

4.自助グループの参加を中断するよう勧める。

5.飲酒をしていない日に面接したいことを伝える。

 

事例が提示されて,そこで考える問題です。

 

社会福祉士の一般的な事例問題は,タクソノミーⅡ型だと考えられます。

 

ちなみにこの問題の正解は,選択肢4だそうです。

 

午前・28 A化学工場で、トルエンを取り扱っている複数の社員が急に頭痛やめまいを訴えたため、臨時職場巡視を実施した。その結果、トルエンによる中毒症状が出現していたことが判明し、原因は防護具の着用が不適切なことだった。

健康障害の再発防止策で最も効果的なのはどれか。

1.救急用具の変更

2.職場環境測定回数の増加

3.社内広報を活用した情報発信

4.特殊健康診断実施回数の増加

5.有機溶剤を取り扱う社員に対する研修

 

最初に示した問題は,問題づくりが下手なので,消去できてしまう選択肢があります。しかし,これは消去できるものはありません。

 

タクソノミーⅡ型・Ⅲ型で適切ではない問題は,事例を読まなくても消去できる選択肢が混じることです。

 

この問題は,タクソノミーⅡ型では,完ぺきでしょう。

 

正解は選択肢2です。

 

そのほかもすべて適切なのかもしれませんが,確実に再発防止できるのは,職場環境測定の回数を増やすことでしょう。

 

さて,いよいよタクソノミーⅢ型です。

 

タクソノミーⅢ型だと思われる問題

 

次の文を読み4143の問いに答えよ。

Aさん(32歳、女性、会社員)。夫と長男のBちゃん(3歳、男児)との3人暮らし。Bちゃんは保育所に通っている。Aさんから「Bは保育所でたびたび他の子どもたちが遊んでいるおもちゃを取り上げ泣かせてしまい、保育士が止めに入ると、Bはキーと奇声をあげ走り回っていたり、遊びの時間が終わっても人でミニカーを並べることにこだわっているようです。保育士から保健師に相談してみてはどうかと言われました」と市保健センターの地区担当保健師へ電話相談があった。

41 Aさんへの保健師の対応で適切なのはどれか。

1.公園で遊ばせることを勧める。

2.保育所を休ませるよう勧める。

3.家での様子をみるために家庭訪問をする。

4.ファミリーサポートセンター事業を紹介する。

 

42 1か月後。Bちゃんは、3歳児健康診査のために市保健センターに来所した。健康診査の医師は、Bちゃんは発達に問題がある可能性があると話した。Aさんは「Bは発達障害なのでしょうか。どうしたらいいのでしょうか」と保健師に話した。

Aさんへの保健師の対応で優先度が高いのはどれか。

1.児童館の利用を促す。

2.保健師による継続訪問をする。

3.心理相談を受けることを勧める。

4.地域の育児サークルを紹介する。

 

43 Bちゃんは、その後自閉症スペクトラム障害であると診断を受けた。保健師は、Aさんの承諾を得てBちゃんが通っている保育所にBちゃんの3歳児健康診査の結果を情報提供した。その際に、保育所の所長からBちゃんへの関わり方について相談があった。

保健師から所長への助言で適切なのはどれか。

1.保育室の出入口を施錠する。

2.毎日新しい遊びを取り入れる。

3Bちゃんに一人で食事をさせる。

4Bちゃんへの説明は絵も活用する。

 

看護師の国家試験問題にもある「状況設定問題」と呼ばれるものです。

 

基礎情報を提示して,1回考えさせます。

 

そのうえで,もう一回事例を提供して2度目の思考をします。

 

このプロセスを踏むことで,タクソノミーⅢ型となります。

 

しかし,問題づくりが下手なので,事例を読まなくても消去できる選択肢があります。

 

正解は

問題41 2

問題42 4

問題43 4

 

 

現時点で直近の国家試験である第108回の問題をざっとみたところでは,「状況設定問題」以外に,タクソノミーⅢだと考えられる問題は見つけられませんでした。

 

社会福祉士の国家試験は科目で分かれているので,このような複数問題をセットにする問題をすることができるのは「相談援助の理論と方法」しかありません。

平成19年度カリキュラム改正以前の国家試験は,社会福祉士にも精神保健福祉士と同じように,長文事例問題がありました。その変形版だと言えるでしょう。

 

この科目以外でタクソノミーⅢ型にあたる問題を出題するなら,1問で完結するタイプの問題を開発することが必要です。

国家試験の在り方検討会がタクソノミーⅢ型の出題を提言しているので,おそらくどの科目でも出題することが可能なのだと思います。


次回は,助産師の問題を見てみたいと思います。

2022年4月28日木曜日

第35回の国家試験について~タクソノミーⅡ型・Ⅲ型の問題

厚生労働省社会・援護局長通知(令和4年4月25日)

 

「社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会」報告書を踏まえた今後の社会福祉士国家試験の実施について

 

https://www.mhlw.go.jp/content/000932518.pdf

厚生労働省においては、令和3年6月に、「社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会」を設置し、第 37回(令和6年度)社会福祉士国家試験から新たな社会福祉士養成課程の教育内容に対応した出題内容とし、社会福祉士として必要な知識及び技能を有するか適正に評価できるよう、社会福祉士国家試験の在り方について有識者による検討、関係団体及び自治体関係者からの意見聴取を踏まえ、提言の内容を整理し、令和4年1月に報告書をとりまとめたところ。

本報告書では、

・「この提言を踏まえ、厚生労働省並びに指定試験機関である公益財団法人社会福祉振興・試験センターにおいて、社会福祉士国家試験の質を一層高めていくため、出題内容や実施方法等の見直しを行うことが必要である。」

・「社会福祉士が、地域共生社会の実現を推進するソーシャルワーク専門職として、質的量的な側面において拡充を図り、社会の期待に応え信頼される資格であるためには、社会福祉士国家試験が適正に運用される必要があることから、本検討会の提言を真摯に受けとめ、必要な見直しが行われることを期待したい。」

とされている。

ついては、本報告書を踏まえ、令和6年度より行われる国家試験に向けて適切に対応することとともに、地域共生社会の実現を推進するため、社会福祉士の質的量的拡充に向けて早期に対応を図る観点から、令和4、5年度の国家試験においても、本報告書の内容を考慮し、段階的な移行に努めていただくようお願いする

 

量的拡充の面では,もしかすると合格率を上げるということもあるのかもしれません。

 

受験生として着目したいのは,質的拡充の面です。

 

ここに先日から取り上げている「タクソノミー分類」が当たります。

 

・タクソノミーⅠ型(単純な知識の想起によって解答できる問題)

 

・タクソノミーⅡ型(設問で与えられた情報を理解・解釈してその結果に基づいて解答する問題)

 

・タクソノミーⅢ型(理解している知識を応用して具体的な問題解決を求める問題)

 

タクソノミーⅠ型は,知識をつけていくことで得点できます。

 

知識の想起によって解答,あるいは推定し解答する問題です。

 

問題は,タクソノミーⅡ型とⅢ型です。

 

タクソノミーⅡ型は,

 

事例(情報の提示) → 状況の理解・解釈 → 解答

 

という思考をたどります。

 

タクソノミーⅢ型は,

 

①事例(情報の提示) → 状況の解釈

  ↓     ↑           →  解答

②選択肢 → 問題解決方針等の解釈

 

という解答まで2回思考する過程の問題です。

 

医師の国家試験の問題作成マニュアルでは,以下のような問題が示されています。

 

タクソノミーⅡ型

 

58歳の男性。仕事中に倒れたため搬入された。以前から高血圧を指摘されていた。血圧230/120mmHg。意識障害〈傾眠〉があり,右片麻痺を認める。髄液は血性で,上清にキサントクロミーを認める。

 最も考えられるのはどれか。

 a 脳出血

b 脳塞栓症

c 矢状静脈洞血栓症

d くも膜下出血

e 急性硬膜下血種

 

タクソノミーⅢ型

 

生後3週の男児。5日前から哺乳ごとに噴水状嘔吐をするため来院した。食欲は良好で,下痢はなく,排便は3日に1回である。皮膚は乾燥し,緊張度が低下している。右上腹部深部にオリーブ大の弾性硬の腫瘤に触れる。血液生化学所見:Na140mEq/lK3.0mEq/lCl89mEq/l。動脈血ガス分析:pH7.51

 適切な輸液組成はどれか。

 Na1(mEq/l) K(mEq/l) Cl(mEq/l) 乳酸(mEq/l) ブドウ糖(%)

 a 154      0     154    0      0

b  90       0     70    20     2.6

c  50      20     70    0     3.3

d  35      20     35    20    4.3

e  0       0      0    0    5.3

 

 

このマニュアルでは,タクソノミーⅡ型・Ⅲ型であっても誤答肢が魅惑的でないと,選択肢から逆に想起でき,Ⅰ型レベルの問題となることがある。前段階の思考が誤っていれば誤答肢に到達するよう,誤答肢の設定に十分留意する,と述べられています。

 

タクソノミーⅡ型の問題は,社会福祉士の国家試験では,事例問題です。

 

事例を読まなくても消去できる事例問題は,タクソノミーⅠ型レベルになります。

 

事例問題はかなり高度なものとなるでしょう。

タクソノミーⅢ型の問題を社会福祉士国試の問題でどのように出題するのでしょうか。

2022年4月27日水曜日

第35回の国家試験について~タクソノミー分類による問題例

令和元年度カリキュラム改正による国家試験は,第37回国家試験から実施されます。

 

現時点(2022年4月)では,第35回と第36回国家試験が平成19年度カリキュラム改正で実施されます。

 

この2回では,新しいカリキュラムに向けて,少しずつ移行していきます。

 

しかし,学校で教わらないものを出題していくことはまず考えられないので,変化があると考えられるのは,社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会報告書で示されたタクソノミー分類を意識した出題です。

 

・タクソノミーⅠ型(単純な知識の想起によって解答できる問題)

 ・タクソノミーⅡ型(設問で与えられた情報を理解・解釈してその結果に基づいて解答する問題)

 ・タクソノミーⅢ型(理解している知識を応用して具体的な問題解決を求める問題)

 

 

詳しくはこちら

35回の国家試験について~その1

https://fukufuku21.blogspot.com/2022/04/35.html

 

同報告書では,

 

タクソノミー分類を踏まえた問題作成は、医療資格の国家試験のタクソノミー分類の考え方等を参考にして、社会福祉士国家試験における考え方を検討し、具体的な作問過程に落とし込む必要がある。

 

と医療資格について言及しています。

 

今回は,看護師国家試験で例示します。以下は第110回問題です。

 

タクソノミーⅠ型だと思われる問題

 

午前・問題11 後頭葉にあるのはどれか。

1.嗅覚野

2.視覚野

3.聴覚野

4.体性感覚野

 

午前・問題12 胃から分泌される消化管ホルモンはどれか。

1.ガストリン

2.セクレチン

3.胃抑制ペプチド

4.コレシストキニン

 

タクソノミーⅡ型だと思われる問題


午前・問題73  A さん(52 歳、男性)は、49 歳から高血圧症で内服治療と食事や運動に関する生活指導を受けている。か月間の予定で開発途上国に出張することになり、予防接種を受ける目的で渡航外来を受診した。A さんから「渡航にあたって何か注意することはありますか」と質問があった。

A さんへの看護師の説明で適切なのはどれか。

1.「出張中は、減塩の必要はありません」

2.「出張先では有酸素運動は控えましょう」

3.「現地に到着してから健康診断を受診しましょう」

4.「持参する高血圧症の薬について、かかりつけ医に相談しましょう」


タクソノミーⅢ型だと思われる問題

  

午後問題

次の文を読み 103105 の問いに答えよ。

Aちゃん(5か月、女児)は、父親­(会社員)、母親(­主婦)、兄のB君(3歳)と4人家族である。近所に祖父母が住んでいる。Aちゃんは3日前から鼻汁と咳嗽があり、昨日夕方より39℃の発熱がみられ小児科外来を受診した。自宅で哺乳量の低下はなく、1日に1、2回咳嗽とともに嘔吐がみられていた。来院時、体温39.3℃、呼吸数45/分、脈拍142/分、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO298%­room air)であった。診察と検査の結果、RSウイルスによる急性細気管支炎と診断され、去痰薬が処方された。

 

103 診察後、家庭でのケアについてAちゃんの母親に指導することになった。

看護師の指導で適切なのはどれか。

1.「1回に飲むミルクの量を多くしてください」

2.「哺乳前に鼻水を器具で吸引してあげてください」

3.「去痰薬は、ミルクを飲んだ後に飲ませてください」

4.「授乳後は仰向けで寝かせてください」

 

104 Aちゃんは、発熱が続き、哺乳量が減ってきたため日後に再度来院した。来院時、体温39.4℃、呼吸数60/分、脈拍154/分、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO292 %­room air)、口唇色と顔色はやや不良であった。胸部エックス線撮影で肺炎は認められない。Aちゃんは、経口摂取不良と呼吸困難のため、母親が付き添って入院することとなった。酸素吸入と点滴静脈内注射が開始された。入院前のAちゃんについて母親から収集すべき情報で優先度が高いのはどれか。

1.去痰薬の内服状況

2.最終排尿の時間

3.皮膚搔痒の有無

4.排便の状況

 

 

タクソノミーⅢ型だと思われる問題とし示したものは,「状況設定問題」と呼ばれるものです。もともとの事例があって,さらに別の事例が示されています。

 

精神保健福祉士には,長文事例問題がありますが,これとはかなり異なります。

 

社会福祉士の国家試験で,タクソノミーⅢ型をどのように出題するのか,もう少し分析してみることが必要なようです。

2022年4月26日火曜日

第35回の国家試験について~その1

新しいカリキュラムによる国家試験は第37回から実施されますが,その前の第35回,第36回国家試験から段階的に移行すると予測されます。


新しいカリキュラムの内容は出題されないとしても,最も変化があると考えられるのは,出題の仕方です。


社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会報告書







































これでわかるように,タクソノミーⅡ型・Ⅲ型は,単なる知識だけでは正解することができないので,かなり高度な能力が求められます。

求められる能力は,報告書に書かれているように,タクソノミーⅡ型では「解釈力」・「判断力」,タクソノミーⅢ型では「思考力」・「判断力」です。


次回は,他の資格にみられるタクソノミー分類に沿った実際の問題を紹介したいと思います。

2022年4月25日月曜日

生活保護制度における扶助の種類

 生活保護の扶助の種類は,現在8つあります。


社会福祉士の国家試験は,8つの種類を覚えることだけではなく,それぞれがどんな内容になっているのかまで覚えないと得点になりません。


最も中心的なのは,生活扶助です。各種加算が含まれます。


そのうち,注意しなければならないのは,介護保険料加算です。

これは,65歳になると第一号被保険者になるので,その保険料に対応するための加算です。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題65 生活保護の扶助の種類とその内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 介護扶助には,介護保険の保険料は含まれない。

2 生業扶助には,就職のための就職支度費は含まれない。

3 葬祭扶助には,遺体の検案のための費用は含まれない。

4 生活扶助には,小学生の子どもの校外活動参加のための費用が含まれる。

5 教育扶助には,小中学校への入学準備金が含まれる。


この問題は,勉強不足の人はおそらく正解するのは難しいと思います。

実にうまい問題だと思います。


正解は,選択肢1です。


1 介護扶助には,介護保険の保険料は含まれない。


介護保険料に対応するのは,生活扶助の介護保険料加算です。


介護扶助は,被保護者が介護保険サービスを利用した場合の利用料を支給するものです。


それでは,ほかの選択肢も確認します。


2 生業扶助には,就職のための就職支度費は含まれない。


生業扶助は,以下の内容で構成されています。


・生業費

・就職支度費

・技能修得費

・高等学校等就学費


この中で,注意が必要なのは高等学校等就学費です。


教育扶助は,義務教育にかかる費用を支給するものです。


高校等の就学費は,教育扶助の対象にならないため,生業扶助で対応しています。


3 葬祭扶助には,遺体の検案のための費用は含まれない。


葬祭扶助には,遺体の検案のための費用も含みます。


4 生活扶助には,小学生の子どもの校外活動参加のための費用が含まれる。


小学生の校外活動参加のための費用は,教育扶助で対応します。


5 教育扶助には,小中学校への入学準備金が含まれる。


これも注意が必要なものです。


小中学校への入学準備金は,生活扶助の一時扶助で対応します。


2022年4月24日日曜日

生活保護基準

早く昔話になってくれればよいと思いますが,令和2年から新型コロナウイルス感染症の流行が始まりました。


この年のいわゆる「コロナ予算」は,約77兆円でした。


国家予算が約100兆円なので,それに匹敵するほどの規模です。


生活保護は,日本国憲法第25条に規定される生存権を保障する制度です。


生活保護に用いられるのは約4兆円です。


4兆円が多いか少ないかは個人の感覚にお任せします。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題64 現在の生活保護の基準に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 生活保護基準は,3年に1回改定される。

2 生活保護基準は,財務大臣と厚生労働大臣の連名で改定される。

3 生活保護に係る施策との整合性に配慮して,地域別最低賃金が決定される。

4 生活扶助基準は,マーケット・バスケット方式によって設定される。

5 生活保護基準に連動して,障害基礎年金の水準が改定される。


最低賃金よりも生活保護のほうが高いということが報道されることがありますが,生活保護受給者の大部分を占めている単身世帯,二人世帯では,そのようになりません。


生活保護基準が引き下げられることがあるのは,最低賃金との兼ね合いではなく,消費水準が下がったためです。


この問題の正解は,選択肢3です。

3 生活保護に係る施策との整合性に配慮して,地域別最低賃金が決定される。


この問題は,第31回国家試験のものですが,この年は,最低賃金に関連する問題がこの問題を含めて,3問出題されました。


その当時,最低賃金のことが話題になっていたかは覚えていませんが,少なくとも,最低賃金よりも生活保護基準が高いから,生活保護基準を引き下げるのではないことを知ってもらいたいという意図はあったように思います。


冷静に考えると,最低賃金よりも生活保護基準が高いから,生活保護基準を引き下げるのではないことはわかります。


なぜなら,生活保護は,最低生活保障ですから,最低賃金よりも低いという理由で,基準を引き下げると最低生活よりも下がってしまうことになります。


そのため,生活保護基準などを鑑みて,最低賃金を決めることが重要です。


世の中に生活保護受給者バッシングが起きることがあります。


生活保護基準が上がれば,最低賃金も上がる可能性があるのに,知らないというのは怖いことです。


それでは,ほかの選択肢も確認します。


1 生活保護基準は,3年に1回改定される。


生活保護基準の改定は必要な時に行うので不定期です。


2 生活保護基準は,財務大臣と厚生労働大臣の連名で改定される。


生活保護基準は,厚生労働大臣が定めます。


4 生活扶助基準は,マーケット・バスケット方式によって設定される。


生活扶助基準にマーケット・バスケット方式が用いられていたのは大昔の話です。


現在は,水準均衡方式が用いられています。



5 生活保護基準に連動して,障害基礎年金の水準が改定される。


国民年金は,マクロ経済スライドいう方式によって決定されています。


2022年4月23日土曜日

医療扶助について

 生活保護費には,約4兆円が使われています。

 

そのうちの約半分が医療扶助です。

 

今後,どのようになっていくかは分かりませんが,医療扶助を廃止して,生活保護受給者も医療保険制度の対象にするという議論がなされています。

 

医療に関する自治体の事務を一本化することができるので,効率も良いのでしょう。

 

それでは,今日の問題です。

 

31回・問題63 低所得者の状況などに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 「平成26年全国消費実態調査所得分布等に関する結果」(総務省)によると,1999(平成11)から2014(平成26)にかけて,貧困かどうかを判断する貧困線(等価可処分所得の中央値の半分の額)が上昇している。

2 「平成26年所得再分配調査報告書」(厚生労働省)によると,2002(平成14)から2014(平成26)にかけて,所得再分配後のジニ係数は上昇傾向にある。

3 「平成28年度被保護者調査」(厚生労働省)によると,2012年度(平成24年度)から2016年度(平成28年度)にかけて,世帯類型別被保護世帯数のうち母子世帯の割合は上昇している。

4 「生活困窮者自立支援制度における支援状況調査集計結果(平成29年度)(厚生労働省)によると,新規相談受付件数は年間30万件を超えている。

5 「平成29年度医療扶助実態調査」(厚生労働省)によると,医療扶助受給者の入院に係る傷病分類別構成割合のうち最も多いのは精神・行動の障害である。

 

古いデータのものですが,年度によって傾向が変わるものは国家試験に出題されることが少ないので,こういったものでも十二分に使えます。

 

これはものすごく難しい問題です。

 

1 「平成26年全国消費実態調査所得分布等に関する結果」(総務省)によると,1999(平成11)から2014(平成26)にかけて,貧困かどうかを判断する貧困線(等価可処分所得の中央値の半分の額)が上昇している。

 

相対的貧困率は,上昇しているように思いますが,それほど上昇していません。

 

むしろ低下傾向にあります。

 

2 「平成26年所得再分配調査報告書」(厚生労働省)によると,2002(平成14)から2014(平成26)にかけて,所得再分配後のジニ係数は上昇傾向にある。

 

所得再分配は格差を縮小させる効果があるので,所得再分配後のジニ係数は上昇していません。

 

3 「平成28年度被保護者調査」(厚生労働省)によると,2012年度(平成24年度)から2016年度(平成28年度)にかけて,世帯類型別被保護世帯数のうち母子世帯の割合は上昇している

 

割合が大きくなってきているのは,高齢者世帯です。

 

母子世帯の受給は増えているので,割合も大きくなっているように思いますが,高齢者世帯はそれを上回って増加しているので,割合は低下しています。

 

4 「生活困窮者自立支援制度における支援状況調査集計結果(平成29年度)(厚生労働省)によると,新規相談受付件数は年間30万件を超えている。

 

この年の新規相談受付件数は,年間23万件でした。

 

 

5 「平成29年度医療扶助実態調査」(厚生労働省)によると,医療扶助受給者の入院に係る傷病分類別構成割合のうち最も多いのは精神・行動の障害である。

 

これが正解です。

 

入院で最も多いのは,「精神・行動の障害」です。

 入院外で最も多いのは,「循環器系の疾患」です。


トータルで最も多いのは「循環器系の疾患」です。

2022年4月22日金曜日

療育手帳及び知的障害者福祉法は要注意!

現在の知的障害者福祉法は,1960年(昭和35年)の精神薄弱者福祉法の1998年(平成10年)の改正の時に名称を改めたものです。


精神薄弱者福祉法成立の経緯は,従来,知的障害児の施設は児童福祉法に規定され,18歳になると退所することが必要で,親なき後も安心して生活できる施設の創設が望まれたことによります。


身体障害者福祉法など多くの法には,「身体障害者とは」といった法の対象者の定義が規定されますが,知的障害者福祉法は,知的障害者を定義していないのが特徴です。


明確に定義することが困難なためです。


また,療育手帳は,1973年(昭和48年)の厚生省(当時)の通知によって実施されているもので,法的根拠がありません。


そのため,都道府県により名称や内容が異なります。


障害者手帳には,身体障害者手帳,療育手帳,精神障害者保健福祉手帳があります。このうち,手帳の交付がないと障害者と認められないのは,身体障害者のみです。


それでは今日の問題です。


第31回・問題62 身体障害者福祉法,知的障害者福祉法及び「精神保健福祉法」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 身体障害者福祉法では,身体障害者更生相談所の業務として,必要に応じて「障害者総合支援法」に規定する補装具の処方を行うことが規定されている。

2 身体障害者福祉法において,身体障害者手帳の有効期限は2年間と規定されている。

3 知的障害者福祉法において,療育手帳の交付が規定されている。

4 知的障害者福祉法において,知的障害者更生相談所には,社会福祉主事を置かなければならないと規定されている。

5 「精神保健福祉法」において,発達障害者支援センターの運営について規定されている。

(注) 「精神保健福祉法」とは,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。


なかなかの難問です。


知識なしでは消去できるものがないからです。


法制度に関する問題は,実は難しく,出題数が少ない歴史や人名に関する問題は捨てても合格できますが,法制度は確実に覚えないと合格することは絶対にできません。


学習戦略を間違わないことか大切です。


さて,この問題の正解は,選択肢1です。


1 身体障害者福祉法では,身体障害者更生相談所の業務として,必要に応じて「障害者総合支援法」に規定する補装具の処方を行うことが規定されている。


身体障害者更生相談所は,身体障害者福祉法で業務が規定されています。


その中には,補装具の処方を行うことも含まれます。


現在の障害福祉サービスは,障害者総合支援法で規定していますが,もともとは障害種別ごとに各法で規定されていたものの名残りです。


障害者福祉が苦手な人にとって,現在も覚えるのは大変だと思いますが,障害者自立支援法が成立する前は,障害種別のサービスになっていたため,今よりももっと複雑で覚えるのが大変でした。


それでは,ほかの選択肢も確認します。


2 身体障害者福祉法において,身体障害者手帳の有効期限は2年間と規定されている。


身体障害者手帳には有効期間はありません。

多くの場合,障害は固定しているので,更新の必要がないからでしょう。


障害の状態に変化があった時に,障害等級の再判定を行います。

精神障害者は,障害者でもありますが,患者でもあります。

そのため,症状が変化するので,有効期間は2年間と定められています。


3 知的障害者福祉法において,療育手帳の交付が規定されている。


前説のとおり,療育手帳には法的根拠はありません。

これまでに何度も何度も繰り返して出題されています。


4 知的障害者福祉法において,知的障害者更生相談所には,社会福祉主事を置かなければならないと規定されている。


社会福祉主事を置かなければならない機関は,福祉事務所です。

知的障害者更生相談所に置かれるのは,身体障害者福祉司です。


5 「精神保健福祉法」において,発達障害者支援センターの運営について規定されている。


発達障害者支援センターが規定されているのは,発達障害者福祉法です。

精神保健福祉法が規定しているのは,精神保健福祉センターです。


2022年4月21日木曜日

事例問題の注意点~「この場面」「この時点」

事例問題は知識がなくても解けるので簡単だ


と思っていると大変です。


確実に得点するのは,そんなに簡単なことではありません。


特に注意することは,設問にある条件設定です。


この条件設定を忘れると正解するのはかなり難しくなります。


それでは今日の問題です。


第31回・問題61 事例を読んで,Jさんに対する現段階での相談支援事業所の活動に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

 〔事 例〕

 自宅で一人暮らしのJさん(肢体不自由,男性,車椅子使用)は,これまで1日2時間の居宅介護と週に数回の移動支援を利用してきた。Jさんは3か月後に65歳となるが,介護保険への移行について不安な気持ちを持っている。最近,腕の筋力低下と首の痛みがでてきたことで,一人暮らしを続けることができるか心配になり,相談支援事業所に相談した。

1 地域移行支援を活用して,地域生活を安定させる。

2 県の介護保険担当部署の連絡先を紹介する。 

3 腕の筋力の増強訓練のため,自立訓練(生活訓練)の申請を行う。

4 住宅環境を整備するため,介護保険の住宅改修を含めたサービス等利用計画案を作成する。

5 介護保険制度の説明を行い,介護保険への移行などについて理解を得られるよう働き掛ける。


この問題の場合,「現段階」が条件設定です。


現段階とは,3か月後に65歳になる,という点です。


この事例は問題の作り方が下手なので,よほどうっかりしなければ正解できることでしょう。


しかし,こういった問題ばかりがいつも出題されるわけではありません。


正解は,選択肢5です。


5 介護保険制度の説明を行い,介護保険への移行などについて理解を得られるよう働き掛ける。


Jさんは,「介護保険への移行について不安な気持ちを持っている」という事例の情報が,この選択肢が正解となる根拠です。


この問題は,障害福祉サービスを利用している人が,65歳になると同等のサービスが介護保険サービスにある場合,介護保険サービスに移行する「65歳問題」と呼ばれるものの問題です。


障害者の場合,慣れた人でなければコミュニケーションをとることがうまくとれないこともあります。


そのために,誕生したのが障害福祉サービスと介護保険サービスを一体的に提供する「共生型サービス」です。


ほかの選択肢も一応解説します。


1 地域移行支援を活用して,地域生活を安定させる。


Jさんは自宅で生活しています。


地域移行支援は,施設などから地域に移行する時に利用するものです。

利用するなら「自立生活援助」です。



2 県の介護保険担当部署の連絡先を紹介する。


連絡先を紹介するなら,市町村の担当部署でしょう。


3 腕の筋力の増強訓練のため,自立訓練(生活訓練)の申請を行う。


自立訓練(生活訓練)は,日常生活能力を高めるために行うものです。


腕の筋力の増強訓練は行いません。


4 住宅環境を整備するため,介護保険の住宅改修を含めたサービス等利用計画案を作成する。


Jさんが介護保険を利用するのは,65歳になってからです。


サービス等利用計画案を作成するのは,特定相談支援事業者ですが,介護保険は,居宅支援事業者が作成する居宅サービス計画です。

2022年4月20日水曜日

根拠法を覚える重要性

社会福祉士の国家試験では,どの法律によって設立されているのかという根拠法の知識が求められる問題が出題されます。


ところが根拠法を意識して押さえている人はそれほど多くないようです。


障害者に対する就労支援に関する法制度には,障害者総合支援法と障害者雇用促進法があります。


〈障害者総合支援法〉

・就労移行支援事業

・就労継続支援事業(A型・B型)

・就労定着支援事業 


〈障害者雇用促進法〉

・地域障害者職業センター

・障害者就業・生活支援センター

・職場適応援助者(ジョブコーチ) など


法制度は適用範囲が明確です。


ほとんどの場合,根拠法に基づく範囲の業務を行います。

別の言い方をすると,ほかの根拠法にかかわる業務はほとんどの場合は行わない,となります。


こういったことがあるため,根拠法が問われるのではないかと思います。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題60 次のうち,「障害者総合支援法」に基づく協議会の運営の中心的な役割を担うこととされている機関として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 基幹相談支援センター

2 障害者就業・生活支援センター

3 地域生活定着支援センター

4 市町村障害者虐待防止センター

5 地域包括支援センター


かなり迷う人もいるように思います。



の3つのうち,障害者総合支援法によって設立されているのは,選択肢1しかありません。

1 基幹相談支援センター


このほかの選択肢の根拠法


2 障害者就業・生活支援センター  → 障害者雇用促進法

3 地域生活定着支援センター  →  根拠法なし

4 市町村障害者虐待防止センター  → 障害者虐待防止法

5 地域包括支援センター  → 介護保険法


ということで,正解は選択肢1です。



〈今日の一言〉


今日の問題は,設問の内容を知らなくても根拠法を押さえることで答えられる問題となっています。

こういったところに気がつくことができれば,ミスは減ります。

2022年4月19日火曜日

自立支援医療の支給決定

障害者総合支援法の実施主体は市町村です。


しかし,その中でも都道府県の役割があります。


その一つは,指定障害福祉サービス事業者の指定です。


障害福祉サービスには,介護保険法の地域密着型サービスにあたるものがないため,市町村が指定するものはありません。


ただし,一般相談支援と計画相談支援を行う指定特定相談支援事業者の指定だけは,市町村が行います。

指定事業者の指定の原則は,都道府県の役割です。


もう一つは,自立支援給付のうちの精神通院医療の支給決定です。


支給決定は,基本的に実施主体である市町村が行いますが,精神通院医療の支給決定だけは市町村に権限移譲されずに都道府県が実施します。


ただし,申請窓口は更生医療と育成医療と同じく市町村です。


更生医療と育成医療は,そのまま市町村が支給決定しますが,精神通院医療は,市町村を経由して都道府県に送られ,都道府県が支給決定します。


障害者総合支援法の中では,指定特定相談支援事業者の指定,そして自立支援医療のうちの精神通院医療の支給決定は,例外です。


原則は,指定事業者の指定は都道府県,支給決定は市町村です。


個別に覚えるととても複雑ですが,原則を覚えて,例外を押さえるとシンプルに覚えられるでしょう。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題59 事例を読んで,各関係機関の役割に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 特別支援学校高等部を卒業見込みのHさん(Q県R市在住,軽度知的障害,18歳,男性,両親は健在)は,卒業後,実家を離れ県内のS市にある共同生活援助(グループホーム)への入居と一般就労を目指し,各関係機関に相談している。

1 特別支援学校の特別支援教育コーディネーターが,サービス等利用計画案を作成する。

2 Q県が共同生活援助(グループホーム)の支給決定を行う。

3 S市が成年後見の申立てを行う。

4 相談支援事業所の相談支援専門員が,共同生活援助(グループホーム)への体験入居を提案する。

5 Hさんの卒業後,R市がHさんの就労先に職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣する。


自立支援給付には,介護給付と訓練等給付があります。


それぞれどのようなものがあるかイメージできますか?


共同生活援助は,訓練等給付に位置づけられます。


それでは,解説です。


1 特別支援学校の特別支援教育コーディネーターが,サービス等利用計画案を作成する。


サービス等利用計画案を作成するのは,指定特定相談支援事業者です。


指定特定相談支援事業者を指定するのは,都道府県と市町村のうち,どっち?


市町村です。


指定の原則は都道府県ですが,指定特定相談支援事業者の指定は例外的に市町村が行います。


2 Q県が共同生活援助(グループホーム)の支給決定を行う。


支給決定を行うのは,市町村が原則です。


共同生活援助(グループホーム)の支給決定は,市町村が行います。


例外は,精神通院医療の支給決定です。


3 S市が成年後見の申立てを行う。


市町村長も申立てを行うことができますが,市町村長申立てを行うのは,申立権者が不在の場合,あるいはいても行うことができない場合などです。


申立て権者であるHさんの両親は健在です。


4 相談支援事業所の相談支援専門員が,共同生活援助(グループホーム)への体験入居を提案する。


これが正解です。


訓練等給付には暫定支給の制度があるものがあります。


共同生活援助(グループホーム)はその一つです。暫定支給を利用して,体験してみます。


それでよければ本支給となります。


5 Hさんの卒業後,R市がHさんの就労先に職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣する。


職場適応援助者(ジョブコーチ)は,地域障害者職業センターが派遣します。


障害者総合支援法と異なり,障害者雇用促進法が規定するものを利用する場合,利用料は必要とされません。ジョブコーチの派遣を受ける場合も無料です。

2022年4月18日月曜日

障害福祉サービスの種類

わが国の障害者福祉は,障害種別ごとに整備されてきたところに特徴があります。


2005年(平成17年)の障害者自立支援法で,障害福祉サービスは障害別がなくなって現在に至ります。


障害福祉サービス等体系















出典:厚生労働省ホームページ「障害福祉サービスについて」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html


障害者総合支援法は,18歳以上を対象にした法制度ですが,障害福祉サービスの中には,障害児も利用できるものがあります。


それでは今日の問題です。


第31回・問題58 「障害者総合支援法」の障害福祉サービスに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 生活介護とは,医療を必要とし,常時介護を要する障害者に,機能訓練,看護,医学的管理の下における介護等を行うサービスである。

2 行動援護とは,外出時の移動中の介護を除き,重度障害者の居宅において,入浴,排せつ,食事等の介護等を行うサービスである。

3 自立生活援助とは,一人暮らし等の障害者が居宅で自立した生活を送れるよう,定期的な巡回訪問や随時通報による相談に応じ,助言等を行うサービスである。

4 就労移行支援とは,通常の事業所の雇用が困難な障害者に,就労の機会を提供し,必要な訓練などを行うサービスである。

5 就労継続支援とは,就労を希望し,通常の事業所の雇用が可能な障害者に,就労のために必要な訓練などを行うサービスである。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。


障害者総合支援法の平成30年改正で,新しいサービスが創設されましたが,早速登場しています。


正解は,選択肢3です。


3 自立生活援助とは,一人暮らし等の障害者が居宅で自立した生活を送れるよう,定期的な巡回訪問や随時通報による相談に応じ,助言等を行うサービスである。


この時に創設されたのは,自立生活援助と就労定着支援です。


この改正では,重度訪問介護の訪問先が医療機関にも広がっています。


重度障害者とコミュニケーションを取るのは,簡単なことではないので,慣れた訪問介護員によって介護ができるようにしたものです。


それでは,他の選択肢も確認します。


1 生活介護とは,医療を必要とし,常時介護を要する障害者に,機能訓練,看護,医学的管理の下における介護等を行うサービスである。


これは,療養介護です。医療機関で提供されます。

生活介護は,障害者支援施設などで提供されます。


2 行動援護とは,外出時の移動中の介護を除き,重度障害者の居宅において,入浴,排せつ,食事等の介護等を行うサービスである。


これは重度訪問介護です。


行動援護は,判断能力が低い障害者に対する外出支援です。


4 就労移行支援とは,通常の事業所の雇用が困難な障害者に,就労の機会を提供し,必要な訓練などを行うサービスである。


これは,就労継続支援です。


就労継続支援には,雇用契約を結んで利用するA型と雇用契約を結ばないで利用するB型があります。


5 就労継続支援とは,就労を希望し,通常の事業所の雇用が可能な障害者に,就労のために必要な訓練などを行うサービスである。


これは,就労移行支援です。期間を定めて利用します。

2022年4月17日日曜日

障害者の権利に関する条約

第37回国家試験から始まる新しいカリキュラムでも発展過程が含まれています。


歴史は,現行の制度と異なり変化しないので,本来は取り組みやすいものだと思います。

今日のテーマは,障害者の権利に関する条約です。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題57 障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 国連で定めた国際障害者年(1981年(昭和56年))のテーマは,「万人のための社会に向けて」であった。

2 「障害者虐待防止法」(2011年(平成23年))における障害者虐待には,障害者福祉施設従事者によるものは除外された。

3 「障害者雇用促進法」の改正(2013年(平成25年))では,雇用分野における障害を理由とした不当な差別的取扱いの禁止について,努力義務が課された。

4 「障害者差別解消法」(2013年(平成25年))では,障害を理由とした不当な差別的取扱いの禁止について,民間事業者に努力義務が課された。

5 障害者の権利に関する条約(2014年(平成26年)批准)では,「合理的配慮」という考え方が重要視された。

(注)1 「障害者虐待防止法」とは,「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。

2 「障害者雇用促進法」とは,「障害者の雇用の促進等に関する法律」のことである。

3 「障害者差別解消法」とは,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。


これを歴史問題だととらえるとあまりに無味乾燥です。


よくみると,国際障害者年以外は,すべて現在の制度です。


歴史の試験ではないので,「●●年」といった年号が問われることはまずありません。


歴史が覚えるのが苦手だという人の話をよくよく聞いてみると,「年号が覚えられない」というものが多いようです。


おおよその時代が押さえられていれば十分です。


「1981年 = 国際障害者年」


という覚え方では,選択肢1はわかりません。


必要なのは,


「国際障害者年 = 完全参加と平等」


です。


少しは,歴史に関しての心のバリアは取れそうですか?


それでは解説です。


1 国連で定めた国際障害者年(1981年(昭和56年))のテーマは,「万人のための社会に向けて」であった。


国際障害者年のテーマは,前説のとおり,完全参加と平等です。


「万人のための社会に向けて」を覚える必要はまったくありませんが,2001年の「障害者に関する世界行動計画」のテーマらしいです。


2 「障害者虐待防止法」(2011年(平成23年))における障害者虐待には,障害者福祉施設従事者によるものは除外された。


障害者虐待防止法の障害者虐待は


養護者による障害者虐待

障害者福祉施設従事者による虐待

使用者による虐待


の3つです。



3 「障害者雇用促進法」の改正(2013年(平成25年))では,雇用分野における障害を理由とした不当な差別的取扱いの禁止について,努力義務が課された。

4 「障害者差別解消法」(2013年(平成25年))では,障害を理由とした不当な差別的取扱いの禁止について,民間事業者に努力義務が課された。


どちらも努力義務ではなく,義務です。


5 障害者の権利に関する条約(2014年(平成26年)批准)では,「合理的配慮」という考え方が重要視された。


これが正解です。


障害者の権利に関する条約の重要ポイントは,合理的配慮です。

外務省ホームページ

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

2022年4月16日土曜日

平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)

平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/seikatsu_chousa_b_h28.pdf

 

この調査は,もう出題されないだろうと思っていましたが,第31回以降第34回まで4回連続して出題されました。

 

まるで同じ球種を投げ続けるピッチャーのようです。

 

これだけ続けられると意識せずにはいられません。

 

覚えておく必要がありそうです。

 


障害者手帳所持者等の推計値


総数 593.2万人 (平成23年)511.2万人

障害者手帳所持者 559.4万人 (平成23年)479.2万人

 〇身体障害者手帳所持者 428.7万人 (平成23年)386.3万人
 〇療育手帳所持者 96.2万人 (平成23年) 62.2万人
 〇精神障害者保健福祉手帳所持者 84.1万人 (平成23年) 56.8万人

障害者手帳非所持者で、自立支援給付等を受けている者 33.8万人 (平成23年) 32.0万人


 それでは今日の問題です。

31回・問題56 「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」における障害者の実態に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 障害者手帳の種類別でみると,精神障害者保健福祉手帳所持者数が最も多い。

2 身体障害者手帳所持者のうち,65歳以上の者は3分の2を超えている。

3 療育手帳所持者数は,前回の調査時(平成23)よりも減少している。

4 精神障害者保健福祉手帳所持者のうち,最も多い年齢階級は「20歳~29歳」である。

5 身体障害者手帳所持者のうち,障害の種類で最も多いのは内部障害である。

 

上記の表で,消去できるのは,選択肢1と2です。

 

1 障害者手帳の種類別でみると,精神障害者保健福祉手帳所持者数が最も多い。

 

最も多いのは,身体障害者手帳所持者です。

 

障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用する場合,精神障害者は,精神障害者保健福祉手帳を所持しなくても良いですが,身体障害者は,交付を受けないと身体障害者とならないからでしょう。

 

3 療育手帳所持者数は,前回の調査時(平成23)よりも減少している。

 

3障害とも増加しています。

 

それではこれ以外も確認します。

 

2 身体障害者手帳所持者のうち,65歳以上の者は3分の2を超えている。

 

これが正解です。

 

身体障害者手帳所持者のうち,65歳以上の者は3分の2を超えています。

 

4 精神障害者保健福祉手帳所持者のうち,最も多い年齢階級は「20歳~29歳」である。

 

精神障害者保健福祉手帳所持者のうち,最も多い年齢階級は「40歳~49歳」です。

 

5 身体障害者手帳所持者のうち,障害の種類で最も多いのは内部障害である。

 

身体障害者手帳所持者のうち,障害の種類で最も多いのは肢体不自由です。

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