ソーシャルワークに親和性をもつ医療系資格として保健師があります。
保健師も社会福祉士と同じく,名称独占の資格です。
保健指導は,保健師の資格を持たなくても行えますが,保健師の名称は資格がないと使えません。
今回は,保健師の国家試験問題を見てみます。※第108回国家試験
知識レベルで解けるタクソノミーⅠ型は省きます。
タクソノミーⅡ型だと思われる問題
午前・25 Aさん(48歳、男性)。妻と2人暮らし。精神科に通院中であり、保健所のアルコール依存症者の自助グループに定期的に参加している。ある日、Aさんが担当保健師を訪ねてきたが、呼気にアルコール臭がした。Aさんに確認すると、「自助グループに参加してから断酒できていたが、今朝ビールを3缶飲んでしまった」と話した。
担当保健師の対応で適切なのはどれか。
1.意志が弱いと注意する。
2.アルコールの害を説明する。
3.1日の適正飲酒量を説明する。
4.自助グループの参加を中断するよう勧める。
5.飲酒をしていない日に面接したいことを伝える。
事例が提示されて,そこで考える問題です。
社会福祉士の一般的な事例問題は,タクソノミーⅡ型だと考えられます。
ちなみにこの問題の正解は,選択肢4だそうです。
午前・28 A化学工場で、トルエンを取り扱っている複数の社員が急に頭痛やめまいを訴えたため、臨時職場巡視を実施した。その結果、トルエンによる中毒症状が出現していたことが判明し、原因は防護具の着用が不適切なことだった。
健康障害の再発防止策で最も効果的なのはどれか。
1.救急用具の変更
2.職場環境測定回数の増加
3.社内広報を活用した情報発信
4.特殊健康診断実施回数の増加
5.有機溶剤を取り扱う社員に対する研修
最初に示した問題は,問題づくりが下手なので,消去できてしまう選択肢があります。しかし,これは消去できるものはありません。
タクソノミーⅡ型・Ⅲ型で適切ではない問題は,事例を読まなくても消去できる選択肢が混じることです。
この問題は,タクソノミーⅡ型では,完ぺきでしょう。
正解は選択肢2です。
そのほかもすべて適切なのかもしれませんが,確実に再発防止できるのは,職場環境測定の回数を増やすことでしょう。
さて,いよいよタクソノミーⅢ型です。
タクソノミーⅢ型だと思われる問題
次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
Aさん(32歳、女性、会社員)。夫と長男のBちゃん(3歳、男児)との3人暮らし。Bちゃんは保育所に通っている。Aさんから「Bは保育所でたびたび他の子どもたちが遊んでいるおもちゃを取り上げ泣かせてしまい、保育士が止めに入ると、Bはキーと奇声をあげ走り回っていたり、遊びの時間が終わっても人でミニカーを並べることにこだわっているようです。保育士から保健師に相談してみてはどうかと言われました」と市保健センターの地区担当保健師へ電話相談があった。
41 Aさんへの保健師の対応で適切なのはどれか。
1.公園で遊ばせることを勧める。
2.保育所を休ませるよう勧める。
3.家での様子をみるために家庭訪問をする。
4.ファミリーサポートセンター事業を紹介する。
42 1か月後。Bちゃんは、3歳児健康診査のために市保健センターに来所した。健康診査の医師は、Bちゃんは発達に問題がある可能性があると話した。Aさんは「Bは発達障害なのでしょうか。どうしたらいいのでしょうか」と保健師に話した。
Aさんへの保健師の対応で優先度が高いのはどれか。
1.児童館の利用を促す。
2.保健師による継続訪問をする。
3.心理相談を受けることを勧める。
4.地域の育児サークルを紹介する。
43 Bちゃんは、その後自閉症スペクトラム障害であると診断を受けた。保健師は、Aさんの承諾を得てBちゃんが通っている保育所にBちゃんの3歳児健康診査の結果を情報提供した。その際に、保育所の所長からBちゃんへの関わり方について相談があった。
保健師から所長への助言で適切なのはどれか。
1.保育室の出入口を施錠する。
2.毎日新しい遊びを取り入れる。
3.Bちゃんに一人で食事をさせる。
4.Bちゃんへの説明は絵も活用する。
看護師の国家試験問題にもある「状況設定問題」と呼ばれるものです。
基礎情報を提示して,1回考えさせます。
そのうえで,もう一回事例を提供して2度目の思考をします。
このプロセスを踏むことで,タクソノミーⅢ型となります。
しかし,問題づくりが下手なので,事例を読まなくても消去できる選択肢があります。
正解は
問題41 2
問題42 4
問題43 4
現時点で直近の国家試験である第108回の問題をざっとみたところでは,「状況設定問題」以外に,タクソノミーⅢだと考えられる問題は見つけられませんでした。
社会福祉士の国家試験は科目で分かれているので,このような複数問題をセットにする問題をすることができるのは「相談援助の理論と方法」しかありません。
平成19年度カリキュラム改正以前の国家試験は,社会福祉士にも精神保健福祉士と同じように,長文事例問題がありました。その変形版だと言えるでしょう。
この科目以外でタクソノミーⅢ型にあたる問題を出題するなら,1問で完結するタイプの問題を開発することが必要です。
国家試験の在り方検討会がタクソノミーⅢ型の出題を提言しているので,おそらくどの科目でも出題することが可能なのだと思います。
次回は,助産師の問題を見てみたいと思います。