2022年4月30日土曜日

社会福祉士第35回国家試験のタクソノミーⅢ型の問題を助産師国試から予測する

社会福祉士の国家試験は,第37回から令和元年度改正のカリキュラムによるものに移行します。

 

現時点(2022年4月)では,第35回・第36回が平成19年度改正のカリキュラムで実施されます。

 

しかし,厚生労働省の通知が出たことから,第35回から少し変化することになります。

 

厚生労働省社会・援護局長通知(令和4年4月25日)

 

「社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会」報告書を踏まえた今後の社会福祉士国家試験の実施について

 

https://www.mhlw.go.jp/content/000932518.pdf

 

これを受けてこの学習部屋では,タクソノミー分類による問題を紹介しているところです。

 

 

・タクソノミーⅠ型(単純な知識の想起によって解答できる問題)

・タクソノミーⅡ型(設問で与えられた情報を理解・解釈してその結果に基づいて解答する問題) → 1回考える

・タクソノミーⅢ型(理解している知識を応用して具体的な問題解決を求める問題) → 2回考える

 

 タクソノミーⅠ型は,一般的な問題なので省きます。

 

タクソノミーⅡ型・Ⅲ型が助産師国家試験でどのように出題されているのかを見ていきたいと思います。  ※問題はいずれも2022年2月に実施された第104回のもの。


 

タクソノミーⅡ型だと思われる問題

 

午前・問題12 Aさん(33歳、経産婦)。夫と長男(3歳)との3人暮らし。妊娠24週2日の妊婦健康診査で来院した。妊娠経過は順調である。診察時、助産師に「前回の出産は人で長い時間陣痛に耐えて痛くてつらかったです。夫は仕事で出産後に病院に到着しました。今回の付き添いも夫と話したけど、難しそうです。また同じ思いをするのかと思うと、不安です」と話す。

Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。

1.経産婦の平均分娩所要時間を説明する。

2.硬膜外麻酔分娩について情報提供する。

3.子どもの立会い出産を検討するよう促す。

4Aさんが希望するケアについて話し合う。

 

この問題の正解は,選択肢4です。

 

助産師にも相談援助的な要素があるようです。

 

午前・問題33 Aさん(32歳、初妊婦)。妊娠39週5日、陣痛発来後、3時間の経過で3,850gの児を分娩した。胎盤娩出直後から子宮収縮が不良で、子宮双手双合圧迫法が行われた。分娩後30分時点で出血量の総量が1,500mLを超えたが、子宮からの出血が持続している。体温37.3℃、脈拍120/分、血圧95/50 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO299 %room air)。

この時点での新鮮凍結血漿の輸血の判断に必要な血液検査値で最も重要なのはどれか。

1.血小板数

2.白血球数

3.ヘモグロビン値

4.血清アルブミン値

5.フィブリノゲン値

 

正解は,選択肢5だそうです。

 

タクソノミーⅠ型になりがちなものを事例で出題することでタクソノミーⅡ型にしています。

 

実は,社会福祉士でもこういったタイプの問題は既にあります。

 

34回・問題8 次の記述のうち,レスポンデント(古典的)条件づけの事例として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 デイサービスの体験利用をしたら思ったよりも楽しかったので,継続的に利用するようになった。

2 自動車を運転しているときに事故に遭ってから,自動車に乗ろうとすると不安な気持ちを強く感じるようになった。

3 試験前に時間をかけて勉強することで高得点が取れたので,次の試験前にも勉強に時間をかけるようになった。

4 おもちゃを乱暴に扱っていた子どもに注意をしたら,優しく扱うようになった。

5 工事が始まって大きな音に驚いたが,しばらく経つうちに慣れて気にならなくなった。

 

最初に事例をもってきていませんが,レスポンデント条件づけを提示して,各選択肢で思考させる問題となっているので,タクソノミーⅡ型です。

 

そういった面では,心理学理論はタクソノミーⅡ型の問題を出題しやすい科目なのかもしれません。

 

 

タクソノミーⅢ型だと思われる問題

 

午後問題

 

次の文を読み5153の問いに答えよ。

Aさん­22歳、初産婦、外国籍)。妊娠10週。夫­30歳、外国籍、会社員)と2人暮らし。1年前に夫の仕事のため来日した。母子健康手帳の受け取りのため、夫婦でB市の保健センターに来所した。

 

51 Aさんへの支援にあたっての情報収集で最も優先されるのはどれか。

1Aさんの母国の母子保健サービス

2Aさん夫婦の日本語能力

3.在留資格の有無

4.夫の仕事の状況

 

52 保健センターの助産師は、子育て世代包括支援センター業務ガイドラインの考え方を参考に、Aさんの支援プランを検討することとなった。Aさんは、母国ではなく日本で出産する予定である。

支援プランの検討で適切なのはどれか。

1.出産予定の病院の助産師と連携して作成する。

2.日本の産育習俗に基づき計画する。

3Aさんの意見は最後に確認する。

4.初回の評価は出産後に行う。

 

53 Aさんは妊娠34週に、産後の生活や育児の相談のため、夫と共に保健センターに来所した。助産師に、異国での初めての育児に不安があると話した。育児は夫婦2人で行うこと、産後のサポートが不足していることがわかった。

Aさんに説明する母子保健サービスで適切なのはどれか。2つ選べ。

1.新生児・褥婦訪問指導

2.乳幼児健康診査

3.一時預かり事業

4.産後ケア事業

5.入院助産

 

この問題の答え

 

問題51 2

問題52 1

問題53 1,4

 

この問題が社会福祉士の国家試験の最も参考になる問題なのかもしれません。

 

問題53の社会資源の内容はなじみがないものですが,そこを変えれば,社会福祉士の問題かと思うくらいです。


次回は,理学療法士の問題で考えたいと思います。


〈今日の一言〉


第35国試では必ずタクソノミーⅢ型が出題されます。

内容そのものが難しくなくても,出題の仕方が変われば,びっくりする人もいるでしょう。

そうすると焦ってミスすることもあります。


また,状況設定問題のような問題は,解釈する力とそれに伴う高い判断力が求められます。

知識偏重の社会福祉士は福祉現場では役立ちませんし,現場からも求められるものではありません。

そういった意味では,受験者には厳しいものになるかもしれませんが,合格率を高めても質を落とさないためには必要なことです。頑張りましょう。

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