2020年6月29日月曜日

地域福祉に関連するイギリスの報告書


イギリスの報告書は,模擬試験等で取り上げられることも多いので,国家試験での出題頻度は高いように思われるかもしれません。

しかし,調べてみると,出題が多かったのは,旧カリキュラムである第21回以前だったようです。

主だった報告書の出題数と出題回
報告書名
出題数
出題回
シーボーム報告
7回
第6・131417182329
エイブス報告
1回
29
ウォルフェンデン報告
2回
1729
バークレイ報告
8回
12151617182329
ワグナー報告
2回
1718
グリフィス報告
6回
121317182329

現在のカリキュラムは,第22回以降ですから,出題されているのは,第23回と第29回のわずか2回だということになります。

それに比べると,第21回以前はかなりの頻度で出題されていることがわかるでしょう。

旧カリ時代は,3年間の過去問を解けば,その中に報告書の出題が含まれている可能性がありましたが,今はそのような高頻度では出題されていないので,過去問ベースの勉強では対応できないということになります。

それでは,今日の問題です。

29回・問題33 イギリスの各種の報告書における地域福祉に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 シーボーム報告(1968年)は,社会サービスにおけるボランティアの役割は,専門家にできない新しい社会サービスを開発することにあることを強調した。

2 エイブス報告(1969年)は,地方自治体がソーシャルワークに関連した部門を統合すべきであることを勧告した。

3 ウォルフェンデン報告(1978年)は,地方自治体の役割について,サービス供給を重視した。

4 バークレイ報告(1982年)は,コミュニティを基盤としたカウンセリングと社会的ケア計画を統合した実践であるコミュニティソーシャルワークを提唱した。

5 グリフィス報告(1988年)は,コミュニティケアの基礎となるナショナル・ミニマムの概念を提唱した。


知識不足の人は,5分の1の確率でしか正解できない問題です。

それでは解説です。

1 シーボーム報告(1968年)は,社会サービスにおけるボランティアの役割は,専門家にできない新しい社会サービスを開発することにあることを強調した。

シーボーム報告ではなく,エイブス報告です。

2 エイブス報告(1969年)は,地方自治体がソーシャルワークに関連した部門を統合すべきであることを勧告した。

エイブス報告ではなく,シーボーム報告です。

エイブス報告はは,この時が唯一の出題でしたが,内容がなじみ深いシーボーム報告なので,消去可能です。

3 ウォルフェンデン報告(1978年)は,地方自治体の役割について,サービス供給を重視した。

ウェルフェンデン報告は,多様なサービス提供主体によるネットワークの重要性を提唱したものです。

特にボランタリーセクター(非営利的組織)の重要性を強調しています。

この報告書が出された1978年同時のイギリスは経済が疲弊して,それまでの社会民主主義的な分厚い福祉政策はとれない状況にあり,1979年にサッチャー首相が誕生していくことになります。

4 バークレイ報告(1982年)は,コミュニティを基盤としたカウンセリングと社会的ケア計画を統合した実践であるコミュニティソーシャルワークを提唱した。

これが正解です。

バークレイ報告では,コミュニティソーシャルワークを提唱しました。
ここでは,カウンセリングという用語を使っていますが,ソーシャルワークのことです。

5 グリフィス報告(1988年)は,コミュニティケアの基礎となるナショナル・ミニマムの概念を提唱した。

ナショナル・ミニマムを提唱したのは,グリフィス報告ではなく,ベヴァリッジ報告です。

ウェッブ夫妻が提唱したナショナル・ミニマム(国家による最低限度の生活保障)をベヴァリッジ流にアレンジして作ったのが,ベヴァリッジ報告だということになります。


<今日の一言>

地域福祉にかかわるイギリスの報告書は複数あり,混乱しそうですが,しっかり覚えておきたいのは,

①シーボーム報告
②バークレイ報告

そして

③グリフィス報告です。

①シーボーム報告とセットで覚えておきたいのは,「地方自治体社会サービス法」(1970年)

③グリフィス報告とセットで覚えておきたいのは「国民保健サービス法及びコミュニティケア法」(1990年)

とりあえずは,これでほとんどの問題は解けるはずです。

2020年6月28日日曜日

人名問題への対応法


今回から科目は「地域福祉の理論と方法」に移ります。

出題される問題数は,10問です。

社会福祉士の国家試験で,10問出題されるのは

・現代社会と福祉
・地域福祉の理論と方法
・高齢者に対する支援と介護保険制度

の3科目です。

10問出題される理由は

現代社会と福祉は,領域が広いため

高齢者に対する支援と介護保険制度は,旧カリキュラムの「老人福祉論」と「介護概論」を包含する科目であるため

という明確な理由があります。

「地域福祉の理論と方法」は,現代社会の福祉は,地域福祉が重要になっているため,という理由であると考えられますが,ほかの科目と違って,必ずしも10問の科目にする必要はなかったように感じます。

しかし,実はそこが受験生にとっては,ラッキーなことです。

現代社会と福祉は,前回まで見てきたように,現代の福祉ニーズを考えるために,実にさまざまな出題がなされます。

半数は,勉強しなかったものが出題されると考えておいたほうが良いでしょう。

それに比べると,地域福祉の理論と方法は,対応可能な問題が多いと言えます。

ただし,歴史や人名なども出題されるので,そういったものが苦手だという人は,辛い科目かもしれません。

さて,今日の問題です。


29回・問題32 地域福祉の学説に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 岡村重夫は,生活課題を貨幣的ニードと非貨幣的ニードに分類し,後者に対応する在宅福祉サービスを充実することを重視した。

2 永田幹夫は,地域社会で発生する生活課題の解決を図るために,地域住民の主体的で協働的な問題解決プロセスを重視した。

3 真田是は,在宅福祉サービスを整備することで,社会福祉サービスを必要とする個人や家族の自立を地域社会の場において図ることを重視した。

4 三浦文夫は,生活問題とその解決のための政策,そして地域社会の産業構造の変革も視野に入れた生活の共同的維持・再生産の地域的システムを重視した。

5 右田紀久恵は,地方自治体における福祉政策の充実や住民自治を基底に据えた自治型地域福祉を重視した。



地域福祉は,明確に客観的に「〇〇である」と定義されるタイプのものではないだけに,人によって,考え方が異なります。

そのため,この科目は,人名が多く出現することとなります。

5名の出題頻度は以下の通りです。

人名
出題数
岡村重夫
14
永田幹夫
2回
真田是
2回
三浦文夫
7回
右田紀久恵
2回

岡村重夫の14回は,突出しています。

必ず覚えておかなければならないのは,岡村重夫だということになります。
次は,三浦文夫です。

そのほかの人は,2回ずつの出題です。
2回というのは,32回実施されている中での2回です。

覚える優先度はかなり低いと言えるでしょう。


この問題の正解は,

5 右田紀久恵は,地方自治体における福祉政策の充実や住民自治を基底に据えた自治型地域福祉を重視した。

岡村や三浦が正解になったわけではないので,かなり難しかったと考えられます。

しかし,この問題は,全部入れ替え問題となっています。
バラバラに出題されるよりも,若干ですが,正解できる確率が高いと言えます。

この問題の入れ替え
選択肢
1
岡村重夫
三浦文夫
2
永田幹夫
岡村重夫
3
真田是
永田幹夫
4
三浦文夫
真田是

頻出である岡村と三浦を押さえておけば,選択肢1,2,4は消去できます。

真田是先生は出題頻度は高くはありませんが,実はわかりやすい人です。

社会変革を求めるいわゆる「運動論」を重視した人だからです。

一番ヶ瀬康子先生と同じ系譜に位置づけられます。

もし,真田先生がわからなくても,選択肢は3つ消去できる可能性があるので,正解できる確率は,2分の1です。

半々の確率で正解できることになります。


<今日の一言>

この問題には元ネタが存在しています。

22回・問題32 地域福祉の概念に関連する学説についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 岡村重夫によれば,地域福祉の構成要素は,コミュニティ・ケア,一般地域組織化活動と福祉組織化活動,予防的社会福祉からなる。
2 ロスマン(Rothman,J.)によれば,コミュニティ・オーガニゼーションのモデルは,伝統的な住民参加を重視するソーシャル・アクションモデルと専門技術過程を重視する社会計画モデルの2つのモデルからなる。
3 三浦文夫によれば,福祉ニーズは貨幣的ニーズと非貨幣的ニーズに大別され,在宅福祉サービスは前者に対応するものとされた。
4 右田紀久恵によれば,自治型地域福祉とは,地域福祉の推進主体をもっぱら自治体に限られるとした。
5 ティトマス(Titmuss,R.)によれば,イギリスではコミュニティケア概念があまりにも拡大したと批判し,対象を高齢者ケアの領域に限定すべきであるとした。

この問題は,現在のカリキュラムでの初めての国家試験となった第22回のものです。

つまり,多くの受験生が手にする過去3年間の過去問の範囲を大きく超えています。

3年間の過去問の知識では対応不能です。

3年間の過去問の知識では,国家試験に合格できる知識にはなりません。

地道な勉強となりますが,参考書などで基礎的な知識をつけることが欠かせません。

ちなみに,この問題の正解は,選択肢1です。

2020年6月27日土曜日

白書・報告書などの問題の解き方


試験対策等の担当の先生は,「〇〇白書に目を通しておきましょう」と言います。

確かに「厚生労働白書」は出題頻度が高いです。
ほぼ毎回使われています。

しかし,分厚い白書に目を通しても出題されるのは,たったの1問です。

同じ勉強時間を使うなら,別なものに使ったほうが良いと考えています。

目を通したくらいで覚えられるものではないからです。

大学で勉強したときに目を通したことがあるなら,それで十分でしょう。
国試勉強としてもう一度読むのは,非効率的だと思いませんか?

それよりも日常生活で福祉に関する情報に敏感になった方がより実力アップできると思います。

そのためには,国試でどのような問題が出題されるのかを知っておかなければなりません。

最初に過去問を解くのはナンセンス

という人がいます。
正解する,という意味ならナンセンスかもしれません。
しかし,まずは敵を知ること,というつもりで問題を読むと,日常の感性は必ず上がります。

新聞やニュースなどで,それまでスルーしていたものが耳に残るようになります。

さて,それでは今日の問題です。



第29回・問題31 「平成24年版働く女性の実情」(厚生労働省)に示された家族を介護する者の仕事と介護の両立の状況と課題に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 雇用者総数に占める介護をしている者の年齢階級別割合は,「45~49歳」が最も高い。

2 介護をしている雇用者のうち介護休業を取得した人の割合は,男性より女性の方が高い。

3 仕事と介護の両立のために勤務先に希望する支援として,「出社・退社時刻を自分の都合で変えられる仕組み」と「残業をなくす・減らす仕組み」の割合が高い。

4 介護をしている雇用者のうち介護休業を取得した人の割合は,5割を超えている。

5 家族の介護等を理由とする離職者数は,男性が女性より多い。


このような問題は,もともと勉強していないのですから,考えても無駄です。

解答テクニックを活用して,消去できるものは消去して,残りの中から,それっぽいものを選ぶのが適切です。

この問題で,消去できそうなものは,

2 介護をしている雇用者のうち介護休業を取得した人の割合は,男性より女性の方が高い。
5 家族の介護等を理由とする離職者数は,男性が女性より多い。

着目ポイントは「より」です。

「AよりB」が正しいものを「BよりA」に変えれば,それっぽく間違い選択肢を作ることができるからです。

しかし,試験委員は,これを逆手にとって,「より」を使っても正解にすることをしますので,単純に「よりは間違い」と考えるのはやめましょう。

次に消去できそうなのは,

4 介護をしている雇用者のうち介護休業を取得した人の割合は,5割を超えている。

着目ポイントは「5割」です。
具体的な数字は,数字を入れ替えることでそれっぽく問題をつくることができます。

残るは

1 雇用者総数に占める介護をしている者の年齢階級別割合は,「45~49歳」が最も高い。

3 仕事と介護の両立のために勤務先に希望する支援として,「出社・退社時刻を自分の都合で変えられる仕組み」と「残業をなくす・減らす仕組み」の割合が高い。

選択肢1は「45~49歳」と具体的な数字が入っているので,間違いっぽいと考えることができますが,ここで日常的な知識を活用したした方が確実です。

今は晩婚化しているので,40歳でも子どもを産むことはそれほど珍しいことではないかもしれません。

しかし,もっと前の時代なら,30歳前に第一子を生むことが多かったように思います。
これは事実でなくてもよいです。

自分の知っていることをフル活用して,考えるヒントにします。

さて,30歳前に子どもを産んだとしたら,その子どもが45~49歳になったときの親は,まだ70歳です。

要介護状態になるリスクが高いのは,一般的に考えると,70歳代よりも80歳代でしょう。

そう考えると,残るのは

3 仕事と介護の両立のために勤務先に希望する支援として,「出社・退社時刻を自分の都合で変えられる仕組み」と「残業をなくす・減らす仕組み」の割合が高い。

これが正解です。


<今日の一言>

今日の問題のタイプは,国試勉強で学んだ知識では,正解するのは難しいです。

それでも,合格する人は,こういった問題でも正解します。

不合格になる人はやっぱり間違います。

この違いは,決して焦ることなく,落ち着いて考えることができるか,焦って上滑りして,混乱の中で問題を解くのか,だと考えています。

ただし,こういったタイプの問題は,正解できなくても合否にはかかわらないので,大胆に推測して,次の問題に進んだ方が良いです。

2020年6月26日金曜日

得点力を上げる問題の解き方のコツ



「現代社会と福祉」は,はっきり言うと,かなり得点するのが難しい科目です。
覚える内容もさることながら,普通の人は勉強しない内容が出題されるからです。

現時点での直近の国家試験である第32回では以下のように出題されています。

問題22
社会福祉法の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
問題23
「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年(平成28年)6月閣議決定)の内容に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
問題24
1950年代から1970年代にかけての社会福祉の理論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
問題25
1973年(昭和48年)の「福祉元年」に実施した福祉政策に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。ベヴァリッジ報告」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
問題26
「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(2018年(平成30年)12月,外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
問題27
国際連合が掲げている「持続可能な開発目標」(SDGs)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
問題28
社会福祉法の改正(2016年(平成28年))において明記された,社会福祉法人の「地域における公益的な取組」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
問題29
文部科学省の「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」(2017年(平成29年))で示された不登校児童生徒への支援に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
問題30
社会保障審議会福祉部会に設置された福祉人材確保専門委員会の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」(2018年(平成30年))に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

赤字で示した問題は,報告書などのトピック的なものです。
32回では,実に半分がこのタイプの問題となっています。

受験生にとっては,あんなに勉強したのに,勉強しないものが出題されている,と勉強不足を実感する問題だと言えるでしょう。

しかし,それは多くの受験生も同じこと。条件は同じです。

辛い気持ちを抱きながらも冷静に問題を読むと,実は正解できそうな問題も含まれます。

こういった問題は,問題慣れしている人が圧倒的に有利です。

それでは,今日の問題です。


29回・問題30 「子供の貧困対策に関する大綱」(2014年(平成26年)8月関議決定)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 貧困の状況にある子供の体験活動を推進する自治体に,「子どもゆめ基金」から助成することとした。

2 ひとり親家庭に,生活支援と就業支援を組み合わせた支援メニューをワンストップで提供できるよう,就業支援専門員の配置など必要な支援を行うこととした。

3 低所得世帯の学校給食費を一律に無料化した。

4 生活困窮世帯の子供を対象に実施される学習支援事業を生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業に統合することとした。

5 両親が離婚した子供の養育費相当額を自治体が負担することとした。


こんな問題の内容を必死に覚えても,おそらく二度と出題されることはないでしょう。

重要なことは,問題慣れすることです。

国試は,単に知識を求めているわけではありません。
知識があっても知恵のない社会福祉士は,現場では使い物になりません。

社会福祉士は,多くの場面は,自分で考えて判断していることでしょう。
ソーシャルワークの途中で,人の判断を仰ぐことは通常しません。というかできません。

国家試験もそういった自分で考え国試は,単に知識を求めているわけではありません。
知識があっても知恵のない社会福祉士は,現場では使い物になりません。

社会福祉士は,多くの場面は,自分で考えて判断していることでしょう。
ソーシャルワークの途中で,人の判断を仰ぐことは通常しません。というかできません。

国家試験もそういった自分で考え行動できる社会福祉士を養成するための問題を出題します。

ただし,必ずしも解けなくても,今までの勉強で覚えてきた問題を確実に正解していくことで,ボーダーラインは超えることができます。


ただし,必ずしも解けなくても,今までの勉強で覚えてきた問題を確実に正解していくことで,ボーダーラインは超えることができます。

さて,今日の問題の正解は,

2 ひとり親家庭に,生活支援と就業支援を組み合わせた支援メニューをワンストップで提供できるよう,就業支援専門員の配置など必要な支援を行うこととした。

これが正解ですが,ほかの選択肢を消去することで,この選択肢が残るように作られた問題です。

それでは,ほかの選択肢を消去していきたいと思います。

1 貧困の状況にある子供の体験活動を推進する自治体に,「子どもゆめ基金」から助成することとした。

「子どもゆめ基金」を聞いたことがあった人はそれほど多くはなかったことでしょう。
しかし,貧困とゆめというのがつながらないように思えませんか?

こういった違和感の要因は,正しくないからです。


3 低所得世帯の学校給食費を一律に無料化した。

「一律に」は多くの場合は,正解になりません。

もし本当にこの選択肢が正解であったなら

低所得世帯の学校給食費を無料化した。

でよいはずです。
「一律に」をつけることで,本当は一律ではないだろうと推測することができます。


4 生活困窮世帯の子供を対象に実施される学習支援事業を生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業に統合することとした。

一見,正しそうに思います。
こういった場合は,冷静に△をつけて,次の選択肢を読みます。


5 両親が離婚した子供の養育費相当額を自治体が負担することとした。

死別なら何となくわかるように思いますが,離婚によって養育費が自治体が負担するほど,自治体はお人よしではありません。

さて,残った選択肢は以下の2つです。


2 ひとり親家庭に,生活支援と就業支援を組み合わせた支援メニューをワンストップで提供できるよう,就業支援専門員の配置など必要な支援を行うこととした。

4 生活困窮世帯の子供を対象に実施される学習支援事業を生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業に統合することとした。


どちらが,「子供の貧困対策に関する大綱」の内容にふさわしいかを考えます。

そう考えると,新しい施策について打ち出す方がふさわしいと思えてきます。

ということで,選択肢4を消去します。


<今日の一言>

今日の問題では,選択肢を3つまで消去することができました。

つまり2つまで絞り込めた状態です。

正解できる確率は,2分の1です。
勉強していない問題で2分の1の確率で正解できるなら御の字だと思います。

この問題で正解する確率を高めるためのポイントは,「大綱に含まれる内容としてふさわしいものは何か」を考えることでした。

こういったポイントは,問題それぞれによって異なります。

限られた時間の中で,そういったことを自分で考えて答えを出すためには,問題慣れすることが何よりも大切だと考えています。

ただし,こういった問題で正解できなくても,合格できます。
国家試験は,そのようにつくられます。

みんなが正解できる問題が多くなれば,第30回のように,いわゆるボーダーラインが上がっていまうからです。

2020年6月25日木曜日

合格・不合格は紙一重

社会福祉士の国家試験は,例年2月第一週の日曜日に実施されています。

合格発表は,3月15日前後にあります。

合格基準点にギリギリ気でも到達すれば合格できて,1点でも下回れば不合格になります。

国家試験を実施する「社会福祉振興・試験センター」では,受験者の得点分布は発表しませんが,数点差で不合格になる人は,かなりの数に上るのではないかと思います。

1点の重みを感じます。

近年の国家試験の結果を見て,試験センターが目指しているのは,受験者の上位30%が90点以上の点数を取れる試験だということがわかります。

もともと合格する気がなく,受験している人もいると思いますので,実質的な合格率はもう少し高くなるとは思いますが,それでも50%程度でしょう。

国家試験に合格するために必要なのは,正解しなければならない問題は,極力ミスしないことです。

どれだけ勉強しても,知らない問題は出題されます。

合格するのに必要なのは,そういった問題で正解することよりも,多くのことが正解することができる問題は確実に正解することです。

それでは,今日の問題です。

第29回・問題29 「平成27年版厚生労働白書」における日本の人口動向に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 「夫婦の完結出生児数」は,2010年(平成22年)に2.0人を割り込んだ。

2 人口増加率は,2011年(平成23年)からプラスで推移している。

3 生産年齢人口の割合は,1992年(平成4年)から横ばいで推移している。

4 30歳代後半の男性雇用労働者について,配偶者のいる割合をみると,2012年(平成24年)時点で,正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に差はない。

5 50歳時点での未婚率は,2010年(平成22年)時点で,男性より女性の方が高い。


こういった問題を目にすると,厚生労働白書をしっかり覚えなければならないか,と気が遠くなる人もいるでしょう。

しかし,冷静に読んでみると,消去できそうな選択肢もあります。

この中で,注意すべきものは,50歳児未婚率は,女性よりも男性の方が高いということです。

一般イメージでは,女性が結婚しなくなった,という思う人も多いですが,実際は違うところがこの問題のポイントとなります。

勉強した人とそうでない人の差がつくところでしょう。

50歳時未婚率は,参考書には必ず載っています。

この問題の正解は,

1 「夫婦の完結出生児数」は,2010年(平成22年)に2.0人を割り込んだ。

夫婦の完結出生児数とは,夫婦の子どもの数の平均です,

この数字を事前に勉強していた人はほとんどいなかったものと思います。

厚生労働白書に目を通したところで,細かいところを覚えていることは難しいと思います。

2 人口増加率は,2011年(平成23年)からプラスで推移している。
3 生産年齢人口の割合は,1992年(平成4年)から横ばいで推移している。
4 30歳代後半の男性雇用労働者について,配偶者のいる割合をみると,2012年(平成24年)時点で,正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に差はない。

これらは,何とか消去できるでしょう。

選択肢5を消去できれば,選択肢1が残ります。

地道に勉強することは,国試で選択肢を一つでも多く消去できることになります。

そうすれぱ,今日の問題のように,正解できる確率が上がります。

2020年6月24日水曜日

自殺対策基本法



世界的に見ると,日本の自殺者数は,韓国とともに多い国に属します。

19982011年には,年間の自殺者数は3万人を超え,2012年以降は減少しつつあります。

しかし,若年者の自殺は減少を見せていません。

若年者の死因の第1位が自殺であるというのは,世界的に見ても稀有な国となっています。

そんな中,2006(平成18)年に,自殺対策基本法が作られています。
同法は,2016(平成28)年に,改正されています。

今回は,その改正ポイントを中心に押さえてみたいと思います。

法の目的
この法律は,近年,我が国において自殺による死亡者数が高い水準で推移している状況にあり,誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して,これに対処していくことが重要な課題となっていることに鑑み,自殺対策に関し,基本理念を定め,及び国,地方公共団体等の責務を明らかにするとともに,自殺対策の基本となる事項を定めること等により,自殺対策を総合的に推進して,自殺の防止を図り,あわせて自殺者の親族等の支援の充実を図り,もって国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。
基本理念
自殺対策は,生きることの包括的な支援として,全ての人がかけがえのない個人として尊重されるとともに,生きる力を基礎として生きがいや希望を持って暮らすことができるよう,その妨げとなる諸要因の解消に資するための支援とそれを支えかつ促進するための環境の整備充実が幅広くかつ適切に図られることを旨として,実施されなければならない。
2 自殺対策は,自殺が個人的な問題としてのみ捉えられるべきものではなく,その背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ,社会的な取組として実施されなければならない。
3 自殺対策は,自殺が多様かつ複合的な原因及び背景を有するものであることを踏まえ,単に精神保健的観点からのみならず,自殺の実態に即して実施されるようにしなければならない。
4 自殺対策は,自殺の事前予防,自殺発生の危機への対応及び自殺が発生した後又は自殺が未遂に終わった後の事後対応の各段階に応じた効果的な施策として実施されなければならない。
5 自殺対策は,保健,医療,福祉,教育,労働その他の関連施策との有機的な連携が図られ,総合的に実施されなければならない。
自殺予防週間
9月10日~9月16
自殺対策強化月間
3月
自殺対策計画
都道府県・市町村は,それぞれ都道府県自殺対策計画・市町村自殺対策計画を定める
関係者の連携協力
国,地方公共団体,医療機関,事業主,学校,民間の団体その他の関係者による相互の連携・協力。
心の健康の保持に係る教育・啓発の推進等
①国民の心の健康の保持に係る施策として「心の健康の保持に係る教育及び啓発の推進並びに相談体制の整備,事業主,学校の教職員等に対する国民の心の健康の保持に関する研修の機会の確保」を規定。
② 学校は,保護者・地域住民等との連携を図りつつ,各人がかけがえのない個人として共に尊重し合いながら生きていくことについての意識の涵養等に資する教育・啓発,困難な事態,強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育・啓発その他児童・生徒等の心の健康の保持に係る教育・啓発を行うよう努める。
医療提供体制の整備
自殺のおそれがある者への医療提供に関する施策として,良質かつ適切な精神医療提供体制の整備,精神科医とその地域における心理,保健福祉等に関する専門家,民間団体等との円滑な連携の確保を規定。

わが国の自殺者の判明している自殺の理由で,最も多いのは健康問題です。
約半数は,健康問題が占めている状況です。

イメージ的には,借金を抱えて自殺に追い込まれるのが多いように思うかもしれません。
しかし経済問題が理由で自殺しているのは,2割程度です。

健康問題はいろいろあるかと思いますが,その一つはうつ病があります。
そういった意味合いから,医療提供体制の整備を組み込んだものと思います。


それでは,今日の問題です。

29回・問題28 自殺対策基本法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 精神保健的観点から自殺対策を強化することが,優先的課題とされている。

2 自殺対策を,生きることへの包括的な支援として捉えている。

3 国は地方公共団体の自殺対策に関与してはならないとされている。

4 自殺予防に関し,保健所が一元的に担うこととされている。

5 自殺未遂者への支援として,就労支援施策を実施することが義務づけられている。



まずは,解答テクニックからです。

一般的に,義務規定はそれほど多くはありません。

多いのは,努力義務です。
義務規定は,「〇〇しなければならない」,あるいは「〇〇するものとする」
努力義務規定は,「〇〇するよう努めなければならない」

となります。

これから勉強を進めていくうえで,法を見る機会が増えると思いますが,義務規定は思ったほど多くないことに気が付くことでしょう。

さて,解説です。


1 精神保健的観点から自殺対策を強化することが,優先的課題とされている。

うつ病患者の自殺対策は重要ですが,若年者の自殺対策も重要です。

法では,何を優先するかについて規定していません。

というか,法でわざわざ優先的課題を挙げる必要性がないと言えます。

特に,この法律は,自殺対策基本法なのですから,様々な対策を掲げることが必要でしょう。


2 自殺対策を,生きることへの包括的な支援として捉えている。

これが正解です。

自殺対策は,生きることの支援である,ということです。
なかなか良いことを述べていると感心しませんか?


3 国は地方公共団体の自殺対策に関与してはならないとされている。

国は,前条の基本理念(次項において「基本理念」という。)にのっとり,自殺対策を総合的に策定し,及び実施する責務を有する。
2 地方公共団体は,基本理念にのっとり,自殺対策について,国と協力しつつ,当該地域の状況に応じた施策を策定し,及び実施する責務を有する。
3 国は,地方公共団体に対し,前項の責務が十分に果たされるように必要な助言その他の援助を行うものとする。

と規定されています。

この規定を知らなくても,国は,地方公共団体の支援を行う存在です。

関与させないという規定を設けることは,めったにないことでしょう。


4 自殺予防に関し,保健所が一元的に担うこととされている。

保健所は,1965年以来,精神保健行政の第一線の機関に位置づけられています。
しかし,それでは不十分だったので,自殺者の増加を招いたとも言えるでしょう。

基本理念には

自殺対策は,保健,医療,福祉,教育,労働その他の関連施策との有機的な連携が図られ,総合的に実施されなければならない。

と規定されています。


5 自殺未遂者への支援として,就労支援施策を実施することが義務づけられている。

自殺理由には,経済問題もありますが,半数は,健康問題です。

うつ病患者のことを考えた場合,就労支援は逆効果になりかねません。

もしこんな義務規定があったなら,自殺者をもっと増やす気なのか,と疑ってしまいます。もちろんこのような規定はありません。

2020年6月23日火曜日

再受験をするということ~第33回国家試験を目指して

社会福祉士の第33回国家試験の日程は,令和3年2月7日(日)です。

現時点(6月下旬)で勉強を本格化している人は多くはないでしょう。

国家試験の近年の合格率は,25~30%程度です。
第1回からみても,合格率が30%を上回ったことはほとんどありません。

受験者の70%は不合格になります。

国家試験に不合格になると,人生の終わりのようにとらえる人がいます。
ショックのあまり,立ち直ることができず,そのまま受験をするのをあきらめた,という人もいます。

しかし,合格するのは30%で,大部分の人は不合格になります。
不合格になる人の方が圧倒的に多い試験です。

しかも社会福祉士の国家試験は,誰もが受験できるものではなく,限られた人しか受験できないものでありながら,不合格になる人の方が多い試験です。

大学や養成施設ごとに見ると,合格者の方が多いところもあるので,不合格はダメ人間というスティグマを与えられた気持ちになるのかもしれません。

その気持ちを振り払って,再受験を目指す時,その先には必ず合格が待っています。

2020年6月22日月曜日

福祉ニードを考える



今回は,福祉ニードを取り上げたいと思います。

ニーズは,ニードの複数形ですが,明確な使い分けはなされていないようです。

どちらも同じ意味だととらえて良いでしょう。

ブラッドショーは,ニーズを以下のように類型化しています。

感得されたニード
(フェルト・ニード)
ニードがあることを本人が自覚したニード
表明されたニード
(エクスプレスト・ニード)
ニードがあることを自覚した結果,行動に出たニード
比較ニード
(ノーマティブ・ニード)
サービス受給していないが,サービス受給している人と比べてみることでニードがあるとされるニード
規範的ニード
(コンパラティブ・ニード)
社会的に望ましい状態(社会規範)に照らしてみてニードがあるとみなされるニード

どの参考書にも必ずこの4類型は書かれていると思います。

出題頻度が高いので,しっかり押さえておきたいです。

「感得されたニード」と「表明されたニード」は,比較的理解しやすいと思いますが,「比較ニード」と「規範的ニード」の理解はちょっと大変です。

「比較ニード」と「規範的ニード」は,専門職がニードを判定するための物差しです。

対人援助をしている人は,要注意です。

日常では,クライエントのニードをアセスメントして,プランニングしていく活動を行っています。

そのため,専門職がニードのありなしを判定するという概念は理解しにくいものでしょう。

具体的に言えば,法を適用させる時は,ニードのありなしを専門職が判定します。

例えば,要介護認定です。
本人が申請しても,非該当となることもあるでしょう。

非該当とは,介護保険の介護給付・予防給付の対象ではない,つまり介護ニードはないと判定した結果です。

生活保護も同様です。
保護申請しても,却下されることもあるでしょう。

この場合は,収入が最低限度の生活を送るための基準よりも上回ったと判定したこととなります。

また,急迫している場合は,保護申請がなくても職権での保護が行われます。
この場合,急迫していると判断するのは,専門家です。

福祉政策では,ニードをどのように考えるかがとても重要です。
福祉政策におけるニード判定とは,給付にかかわる問題です。

そのために「現代社会と福祉」で,ニードについて出題しているのだと思います。

対人援助でのニードと同じようにとらえていると国家試験で間違える元となりますので,注意が必要です。

それでは,今日の問題です。


29回・問題27 個人の福祉ニードに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 利用者のフェルト・ニードとは,専門職が社会規範に照らして把握する福祉ニードのことである。

2 人々の心身機能の状態が同一であれば,福祉ニードも同一である。

3 経済的な福祉ニードは,相談援助の対象とはならない。


5 福祉サービスの利用を拒んでいる人の福祉ニードは,専門職の介入によって把握されることはない。


この問題は,ブラッドショーのニードの類型がわからなくても,正解できる確率が極めて高い問題です。


なぜなら正解は

4 サービス供給体制の整備に伴い,潜在的な福祉ニードが顕在化することがある。


ほかの選択肢の内容がわからなくても,この文章の意味はつかみやすいのです。

また,社会福祉士の国家試験では,「ことがある」が正解にならなかったことは一度もありません。つまり今まではすべて正解となっています。

ただし,「ことがある」=「正解」とは,単純に思わないようにしましょう。
高度な作問技術を持つ試験委員がいた場合,逆手にとって出題する可能性があるからです。

それでは,ほかの選択肢の解説です。


1 利用者のフェルト・ニードとは,専門職が社会規範に照らして把握する福祉ニードのことである。

フェルト・ニードのフェルトは,Feel(感じる)の派生形です。
つまり感得されたニードということになります。
専門職が社会規範に照らして把握する福祉ニードとは,規範的ニードを述べています。


2 人々の心身機能の状態が同一であれば,福祉ニードも同一である。

これは,現場の人なら,まず間違えないと思います。

福祉政策の点で考えると,例えば,生活保護は,心身機能で判定するのはなく,収入で判定します。心身機能では判定できないということです。


3 経済的な福祉ニードは,相談援助の対象とはならない。

医療ソーシャルワーカー業務指針では,経済的・心理的・社会的な問題を援助対象とすることを明記しているように,経済的な福祉ニードは相談援助の対象です。


5 福祉サービスの利用を拒んでいる人の福祉ニードは,専門職の介入によって把握されることはない。

「比較ニード」「規範的ニード」は,専門職の介入によって,ニードの把握されるものです。


<今日の一言>


解答テクニック


あいまい表現に正解多し

言い切り表現に正解少なし


今日の問題は,あまりにもわかりやすいので解答テクニックを持ち出すまでもありませんが,この2つを常に念頭に入れておいてほしいと思います。


あいまい表現に正解多し

4 サービス供給体制の整備に伴い,潜在的な福祉ニードが顕在化することがある


言い切り表現に正解少なし

5 福祉サービスの利用を拒んでいる人の福祉ニードは,専門職の介入によって把握されることはない


特に,言い切り表現に正解少なしは,消去法を使うときにとても有効です。
つまらないミスを減らすことができます。

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