2021年11月30日火曜日

アドボカシー

社会福祉士の国家試験には,カタカナ語が多く出題されます。


苦手などと言ってはいられません。


苦手な人が多いからこそ,頑張って覚えなければなりません。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題88 アドボカシーに関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。

1 利用者が自分の要求を表明できない場合に,援助者がそれを代弁する機能のことである。

2 援助者のロイヤリティが所属機関にあることから,その第一の目的は,所属機関を擁護することである。

3 援助者個人の関心に基づき,特定の人たちの権利を維持・向上するために,政策や法律の変革を求める働きかけのことである。

4 利用者と利害関係のある相手の主張に対し,援助者は利用者が妥協できるように交渉することである。

5 援助者の治療的アプローチによって,利用者が無気力であった自己を積極的な自己へと変容させる援助者の活動のことである。


アドボカシーについての出題なので,アドボカシーがわかっていないと正解できません。


それでは,解説です。


1 利用者が自分の要求を表明できない場合に,援助者がそれを代弁する機能のことである。


これが正解です。


アドボカシーは,代弁や権利擁護などの意味です。


事例で展開されても答えられるようにしておきたいです。


2 援助者のロイヤリティが所属機関にあることから,その第一の目的は,所属機関を擁護することである。


ロイヤリティというわけのわからないもので受験生を混乱させるための出題です。


しかし,それがわからなくても消去することはできそうです。


気をつけたいのは,わけのわからないもので混乱しないようにすることです。


この問題は決して難易度が高いものではありませんが,確実に正解するのはそれほど簡単ではありません。


そこが国試の怖いところです。



3 援助者個人の関心に基づき,特定の人たちの権利を維持・向上するために,政策や法律の変革を求める働きかけのことである。


特定の人たちの権利を維持・向上するために,政策や法律の変革を求める働きかけのことは,クラスアドボカシーを意味していると思います。


また,もう一つの誤りポイントは,「援助者個人の関心に基づき」です。


援助者が中心にあるような出題はすべて誤りです。


中心にあるのは,どの場面でもクライエントです。


4 利用者と利害関係のある相手の主張に対し,援助者は利用者が妥協できるように交渉することである。


交渉することは,ネゴシエーションですが,内容がでたらめです。


中心にあるは,クライエントです。交渉は,クライエントの権利擁護のために行うものです。


クライエントに妥協させることを目的に交渉するなら,担当を外したほうがよいです。


5 援助者の治療的アプローチによって,利用者が無気力であった自己を積極的な自己へと変容させる援助者の活動のことである。


治療的アプローチは,医学モデルに基づくようなものを意味しているのでしょう。


心理社会的アプローチのようなものかもしれません。


具体的に何を指すのかはわからなくても,アドボカシーではないことは明らかです。

2021年11月29日月曜日

ケアチームの中でのコンサルテーション

社会福祉士の業務


身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービス関係者等との連絡及び調整その他の援助を行うこと。


その他の援助には,どのようなものがあるのでしょうか。


その一つには,他職種へのコンサルテーションもあるのではないでしょうか。


専門職として,重要なことの一つだと思いますが,なぜか国家試験ではほとんど出題されていないのです。


今日の問題は,貴重な出題です。


第22回・問題87 事例を読んで,施設職員がAさんの尊厳に配慮して対応できるよう,B生活相談員(社会福祉士)が行うべきことに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 特別養護老人ホームに入所しているAさん(75歳,女性)は,関節リウマチが進行し,自分で体を動かせる範囲が狭まり,時折痛みを訴えるようになった。最近になって,Aさんから介護職員に対して,「新米のくせに,私の体に触れないで」,「何度言ったら分かるの。いい加減にしてちょうだい」といった感情的な発言が頻繁に見られるようになった。さらに,ナースコールへの対応が少し遅れると,「私より他の人を優先するつもりなのね。もういいわよ」と布団をかぶってしまうこともあった。B生活相談員はケアチームに対してAさんへの対応方針を提案することとした。

1 新人の介護職員であっても一定のトレーニングを積んでいることを,Aさんに伝えるようにする。

2 職員は,Aさんの関節リウマチの痛みのことには触れないようにする。

3 Aさんからの要求に対しては,できないことをはっきりと伝える。

4 個室に移ってもらい,他の入所者への介護職員の対応が見えないようにする。 

5 関節リウマチが進行する現実をAさんが直視できるように,つらさをくみとりながら支えるようにする。



人間関係がよほどできていないと他職種へのコンサルテーションは,余計なお節介だと思われるかもしれないですね。


本当は介護の責任者が考えなければならないことです。


それをあえて生活相談員が助言するのは,レジデンシャルソーシャルワークには,教育機能や施設改革機能があるからです。


この問題は「施設職員がAさんの尊厳に配慮して対応できる」という条件つきです。


それに着目すると,正解は選択肢5しかないことに気が付きます。


5 関節リウマチが進行する現実をAさんが直視できるように,つらさをくみとりながら支えるようにする。


この問題を間違ったら,ボーダーラインをたとえ超えていたとしても,不合格にしてもよいくらいでしょう。


それほど明確です。


しかし,社会福祉士の国家試験には,医師の国家試験のように,この問題を間違ったら不合格という仕組みは採用されていないので,このような問題を間違ったとしても不合格にはならないので,心配は必要ありません。


しかし,こういった問題をミスすることは,正解しやすいほかの問題も間違う可能性があるので,慎重に問題を読むこと,考えることが必要です。

2021年11月28日日曜日

ソーシャルワークの発展過程~COSを中心に

古典的な福祉ニーズは,貧困です。

 

特に,産業化(工業化)が進展することにより,生産するための資産をもつ資本家と資産を持たない労働者が生まれていきます。

 

現在は,多くの法制度で労働者が保護されていますが,国はできるだけ国民生活にかかわらない古典的な自由主義が支配していた時代があります。

 

自由は,市民が勝ち取った権利だからです。

 

現代では,福祉国家が形成されているので,国民生活を守るのが国の役割という意識が普通でしょう。

 

福祉国家も過去の学びから出来上がったものです。

 

COS(慈善組織協会)は,慈善活動による救済の偏りを防止するために設立されたものです。

 

イギリスでは地区訪問員,アメリカでは友愛訪問員と呼ばれた訪問活動が,ケースワークに発展し,またアウトリーチの原型でもあります。

 

しかしこの時代は,貧困に陥る原因は,個人の問題だと捉えていました。

 

貧困の原因が社会構造にあることが明らかにされていくのは,ブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査がきっかけです。

 

まだまだ先の出来事です。

 

それでは,今日の問題です。

 

 

22回・問題86 ソーシャルワークの形成過程に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 慈善組織協会は,慈善活動による救済の偏りを防止するために設立され,貧困の原因を社会の構造に求めて,貧困者に対する救済を社会の義務ととらえていた。

2 セツルメント運動は,大学生たちが貧困地区に住み込むことによって展開され,貧困からの脱出に向けて,勤勉と節制を重視する道徳主義を理念とした。

3 YMCAは,キリスト教の信仰を深める青年運動として始められ,個別面接を繰り返すことによって,心理的な側面を重視した面接技法の体系化を進めた。

4 リッチモンド(Richmond,M.)の提案に基づいて,ニューヨークで6週間に及ぶ博愛事業に関する講習会が初めて開催され,専門教育へと発展していった。

5 フレックスナー(Flexner,A.)によって「ソーシャルワークはすでに専門職である」と結論づけられ,専門性が社会的に認知されるきっかけとなった。

 

模擬試験などでもよく見る内容です。

 

歴史が苦手でもこのくらいは覚えておいてほしいと思います。

 

この問題の正解は,選択肢4です。


4 リッチモンド(Richmond,M.)の提案に基づいて,ニューヨークで6週間に及ぶ博愛事業に関する講習会が初めて開催され,専門教育へと発展していった。

 

慈善組織協会の指導者だったリッチモンドは,友愛訪問の経験をもとに,ケースワークに科学性を導入したことで「ケースワークの母」と呼ばれた人物です。

 

そのリッチモンドの提案により,夏期講習会が実施されました。これがソーシャルワークの専門教育の発端になりました。

 

それでは,ほかの選択肢も確認します。

 

1 慈善組織協会は,慈善活動による救済の偏りを防止するために設立され,貧困の原因を社会の構造に求めて,貧困者に対する救済を社会の義務ととらえていた。

 

慈善組織協会(COS)は,慈善活動による救済の偏りを防止するために設立されたのは正しいです。

 

しかし,前説のように,貧困の原因は,個人によるものだと考えていたのが,特徴です。

 

そのため,COSが救済したのは,救済の価値のある貧民でした。

 

救済の価値のない貧民は,救済しませんでした。

 

救済の価値のない貧民はどうしたのだと思いますか?

 

お気づきの方もいると思いますが,救済の価値のない貧民を救済したのが,公的救済である救貧法です。

 

2 セツルメント運動は,大学生たちが貧困地区に住み込むことによって展開され,貧困からの脱出に向けて,勤勉と節制を重視する道徳主義を理念とした。

 

近代の貧困は,資本主義という制度の歪みが生み出したものです。

 

セツルメントが目指したのは,教育と環境の改善です。

 

勤勉と節制を重視する道徳主義は,古い貧困観に基づくものだと考えることができれば,消去できます。

 

3 YMCAは,キリスト教の信仰を深める青年運動として始められ,個別面接を繰り返すことによって,心理的な側面を重視した面接技法の体系化を進めた。

 

YMCAは,キリスト教の信仰を深める青年運動として始められたのは正しいです。

 

しかし,個別面接を繰り返すことによって,心理的な側面を重視した面接技法の体系化を進めたのは,COSの友愛訪問です。これがケースワーク(個別援助技術)につながっていきます。

 

YMCAの活動は,グループワーク(集団援助技術)として発展していきました。

 

5 フレックスナー(Flexner,A.)によって「ソーシャルワークはすでに専門職である」と結論づけられ,専門性が社会的に認知されるきっかけとなった。

 

フレックスナーが述べたのは,「ソーシャルワーカーはいまだ専門職ではない1915年)」です。

 

ソーシャルワークは既に専門職である1957年)」と述べたのは,グリーンウッドです。

2021年11月27日土曜日

グラウンテッド・セオリー・アプローチとKJ法

質的調査で,最も難しいのは,グラウンテッド・セオリー・アプローチ(GTA)ではないかと思います。

 

グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)

グレイザーとストラウスによって開発されたものです。



〈GTAの手順〉

インタビューや観察などで得られたものを文字化します。

そのポイントだと思われるものを書き出します。

似たようなものをまとめて,そのかたまりをコード化します。

それが「オープン・コーディング」です。

いくつかのかたまりをまたまとめていきます。そして,全体にタイトルをつけます。

それが一回目です。

もう一回,元のデータに戻って同じ作業を繰り返します。

そうすると,最初には気づかなかったものが見えてきます。

また繰り返します。

そうして,繰り返すうちに,これ以上新しいものが出てこなくなった状態を「理論的飽和」といいます。

グレイザーとストラウスは,共同してGTAを提唱しましたが,手法がちょっと違います。

ストラウス派は,まとまったものを再コード化する過程があり,それを軸足コーディングと呼びます。

作業の過程でもう少し深めてみたいところがあった場合は,新たにインタビューなどを行います。

GTAが,データの収集と分析を繰り返して,新しい理論を発見するものである,と言われるゆえんは,このようなプロセスを踏むからです。


GTAを使った例

あるスポーツの指導者にインタビューを行います。

その時の面接法は,構造化面接ではなく,多くの場合は,半構造化面接で行われます。

つまりいくつかの質問をした後に,自由に語ってもらいます。

それを録音して,後で書き起こします。

それを区切って書き出します。

それを似たようなものをまとめてコード化します。

例えば,「選手の調子が悪い時」といったようにタイトルをつける作業です。これがオープン・コーディングです。

KJ法は,書き出したものはすべて使うルールがありますが,GTAでは仲間に入れることができなかったものは,無理に使う必要はありません。
そしてまとめていきます。

一人の指導者ではデータが足りないので,他のスポーツの指導者にもインタビューを行います。

そして同じように作業を進めていきます。これ以上新しい概念が生まれてこないところまで何度も繰り返します。それが理論的飽和です。

さらに,別なスポーツの指導者にもインタビューを行います。

最終的なコンセプトとして,「指導者のあり方」というタイトルをつけます。

この作業を通して,指導者の指導方法という理論が生まれています。

やった~という感じですね。

GTAの手順が何となくでもわかっていただけましたか?

専門家から見ると,ちょっと違うよ,と思われるかもしれません。社会福祉士の国試のためには,この程度を理解しておけば十分です。

 

KJ法

川喜多二郎(かわきた・じろう)先生が考案したもので,川喜多先生のイニシャルを取ってKJ法と名付けられました。

質的データの整理のほかにアイディアをまとめる時にも用いられます。

良く行われるのは,付箋に書き出して,それをまとめていく方法です。

その過程を通して,新しい発見がなされます。

 

この2つとも同じ時代に考案されたものです。

たまたまなのかもしれませんが,洋の東西で同じようなものが作られたのはすごいと思います。


それでは,今日の問題です。



22回・問題83 質的データの分析に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,データの収集と分析が一体となり,繰り返し実施されるのが,その特徴の一つである。

2 KJ法を利用して質的データを分類するには,理論的枠組みに基づいてあらかじめ設定された分類軸が必要である。

3 ドキュメント分析を行う際,公的機関の統計や文書あるいは新聞・雑誌などのメディア文書は分析の対象となるが,日記や手記などの個人的記録は分析の対象とはならない。

4 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおける軸足コーディングは,単一の事象に対して,複数のコードをはり付けていくことである。

5 KJ法は,質的データの分析において,主として仮説の検証を試みる際に活用される。

 


難しいですが,KJ法とGTAの出題頻度は高いので,覚えないのはもったいないです。

それでは,解説です。

 

1 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,データの収集と分析が一体となり,繰り返し実施されるのが,その特徴の一つである。

 

これが正解です。データの収集と分析を繰り返して,それ以上何も出てこなくなった状態を理論的飽和といいます。

 

GTAでは,この状態を目指して,データの収集と分析を繰り返します。

 

2 KJ法を利用して質的データを分類するには,理論的枠組みに基づいてあらかじめ設定された分類軸が必要である。

 

KJ法もGTAも最初は何もありません。そのため,これから何が出てくるのだろうかとワクワクするのです。

 

3 ドキュメント分析を行う際,公的機関の統計や文書あるいは新聞・雑誌などのメディア文書は分析の対象となるが,日記や手記などの個人的記録は分析の対象とはならない。

 

これは今まで何度出題されたのかわからないくらいに同じ内容が繰り返し出題されています。

日記や手記も分析の対象となります。

 

4 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおける軸足コーディングは,単一の事象に対して,複数のコードをはり付けていくことである。

 

軸足コーディングは,前説のように,まとまったものを再コード化する過程です。

 

5 KJ法は,質的データの分析において,主として仮説の検証を試みる際に活用される。

 

KJ法もGTAも仮説の検証には用いません。

分析する過程で,新しい発見をしていきます。

仮説の検証を主に行うのは,量的調査です。

2021年11月26日金曜日

社会福祉調査における面接法

社会福祉調査(社会調査)における面接法で出題されるのは,面接法の種類です。


構造化面接

半構造化面接

非構造化面接


それぞれどんなものか説明できますか。


構造化面接は,質問内容があらかじめ決まっているものです。


半構造化面接は,最初は決まった質問をいくつかしてから,そのあとはテーマに合ったことを質問していきます。


非構造化面接は,あらかじめ質問内容は決めないものです。


構造化の意味は何となくでもわかると思いませんか。


構造化とは,決まった形といった意味だととらえることができるでしょう。


それでは今日の問題です。


第22回・問題82 調査手法としての面接法に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 構造化面接では,面接の進行は,調査対象者に任せるのが望ましい。 

2 非構造化面接では,通常,詳細な質問項目や質問紙をあらかじめ用意しない。 

3 社会調査で行われる面接は,収集するデータの信頼性からも,1対1で行われるのが望ましい。

4 半構造化面接では,通常,回答の選択肢を印刷した回答票を,回答者に提示して調査を進める。

5 面接法を用いる際には,調査者と調査対象者との間にラポールが形成されるのは,データの客観性を確保する上から望ましくない。


正解はすぐわかりますね。


それでも一応解説します。


1 構造化面接では,面接の進行は,調査対象者に任せるのが望ましい。


構造化面接は,質問内容が決まっている面接です。


面接の進行は,調査者が行います。


2 非構造化面接では,通常,詳細な質問項目や質問紙をあらかじめ用意しない。


これが正解です。


しかし,内容は事前に決まっていなくても,インタビューガイドという面接の大枠は作ります。


そうすることで,面接がとんでもない方向に進んでいくことを防止することができます。


3 社会調査で行われる面接は,収集するデータの信頼性からも,1対1で行われるのが望ましい。


そんなことはありません。グループインタビューもあります。


4 半構造化面接では,通常,回答の選択肢を印刷した回答票を,回答者に提示して調査を進める。


回答票を回答者に提示するのは,構造化面接です。


5 面接法を用いる際には,調査者と調査対象者との間にラポールが形成されるのは,データの客観性を確保する上から望ましくない。


調査者と調査対象者との間にラポールが形成されるのは,不適切ではありません。


不適切なのは,オーバーラポールと呼ばれる深すぎる関係です。


2021年11月25日木曜日

質的調査としての観察法

「社会福祉調査(社会調査)の基礎」が難しいというイメージは,量的調査です。


社会福祉調査は,量的調査だけではなく,質的調査もあります。


質的調査は,インタビューや観察などによってデータを収集して分析する手法です。


これなら,日常的に行っているアセスメントと何ら変わらないと思いませんか。


今日のテーマは,「観察法」です。


観察も対人援助職なら,日常的に行っているものです。


社会福祉調査における観察法というと難しく感じるかもしれませんが,そんなにかけ離れたものではないので,イメージはしやすいのではないかと思います。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題81 調査手法としての観察法に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 観察法においては,文字により記録したデータが主たる分析対象となるので,写真や音声などは,分析対象とはならない。

2 観察法においては,マジックミラー(ワンウェイミラー)を使った観察を行ってはならない。

3 参与観察と非参与観察の違いは,観察に当たって,調査者が観察対象者に具体的な指示を出すか出さないかである。

4 観察中にメモをするなどして蓄積されるフィールドノーツは,非参与観察では大いに活用してよいが,参与観察では使用しない方が望ましい。

5 参与観察における調査者の立場は,観察に徹する「完全な観察者」と参加を重視する「完全な参加者」との間で行き来することがある。


問題のつくり方がかなり下手なので難易度がかなり低い問題になっていますが,こういった問題こそ,しっかり押さえておきたいのです。


なぜなら,この問題では問題のつくり方が下手だから簡単に消去できるものでも,本当は意味がよくわからないものもあるからです。


過去問を解く意味は,正解できることではありません。出題されている内容をしっかり理解することです。


この問題の中で,しっかり覚えておきたいのは,参与観察と非参与観察の違いです。


参与観察とは,観察対象者とかかわりながら観察することです。


福祉現場では,クライエントを援助しながら観察を行うことが参与観察にあたります。


非参与観察とは,観察対象者とかかわらないで観察することです。


福祉現場ではイメージしにくいかもしれませんが,クライエントを直接援助せず,見守りをしているような状態です。しかし,実際には何か援助が必要な場合は,かかわらないというスタンスはとれないので,若干ニュアンスが異なります。


それでは,解説です。


1 観察法においては,文字により記録したデータが主たる分析対象となるので,写真や音声などは,分析対象とはならない。


観察法の起源は,文化人類学にあります。


19世紀の西洋人は,新しい文化を理解するために文化人類学を発展させました。

その当時は,まだ写真が発明されたばかりです。


アニメ映画「アナと雪の女王2」を見ると,どの時代に写真が発明されたのかがわかると思います。


それはさておき,当初はフィールドノートと呼ばれる記録が中心でしたが,そこに写真が加わり,20世紀では映像も使って記録します。


それらは,すべて貴重な資料です。分析しないなら,写真も映像(録音データも含めて)も記録する意味がないと思いませんか。


2 観察法においては,マジックミラー(ワンウェイミラー)を使った観察を行ってはならない。


マジックミラーは,外から中は見えますが,中から外は見えません。そのために,ワンウェイミラーといいます。


倫理的には,了解を得なければ不適切だと言えますが,了解を得ていれば不適切な使用ではありません。


3 参与観察と非参与観察の違いは,観察に当たって,調査者が観察対象者に具体的な指示を出すか出さないかである。


参与観察と非参与観察の違いは,観察対象者にかかわりながら観察するのか,かかわらないで観察するのか,です。


4 観察中にメモをするなどして蓄積されるフィールドノーツは,非参与観察では大いに活用してよいが,参与観察では使用しない方が望ましい。


フィールドノーツは,先述のように極めて重要です。もちもん非参与観察でも用います。


5 参与観察における調査者の立場は,観察に徹する「完全な観察者」と参加を重視する「完全な参加者」との間で行き来することがある。


これが正解です。


参与観察は,実際にかかわりながら観察します。なぜこの選択肢のように,立場が異なるのでしょうか。


遊戯療法を例にすると,観察対象者である子どもがおもちゃで遊んでいる場合は,「完全な観察者」に徹することができます。


その子どもに「一緒に遊んで」とせがまれて,遊んでいるときは「完全な参加者」となります。


理解できそうですか。

2021年11月24日水曜日

カイ2乗検定とは

カイ2乗検定という言葉を聞くだけで,じんましんが出そうだという人もいることでしょう。

 

カイ2乗検定は,クロス集計の結果に意味があるのかどうかを調べるために行います。

 

社会福祉士の国家試験を例に考えてみます。

 

ある講座を受講して,国家試験を受験した人をA群

そういったものを受講せず,国家試験を受験した人をB群

 

として,その国家試験の結果を以下のようなクロス集計表にまとめました。

 

合格者数

不合格者数

合計

35

70%)

15

30%)

50

100%)

15

30%)

35

70%)

50

100%)

合計

50

50%)

50

50%)

100

100%)

 

これは,実際に得られたデータです。これを「観測値」といいます。

 

もし,ある講座の効果がないとすれば,以下のようなA群とB群は,同じ数字になるはずです。

 

合計を半分にして,A群とB群に差のない以下のようなクロス集計表を作ります。

 

 

合格者数

不合格者数

合計

25

50%)

25

50%)

50

100%)

25

50%)

25

50%)

50

100%)

合計

50

50%)

50

50%)

100

100%)

 

A群とB群に差がないこのデータは「期待値」といいます。

 

カイ2乗検定は,この「規定値」と「観測値」のずれは,意味があるものなのか,誤差範囲なのかを確かめるために行うものです。


もう一度整理します。

 

<観測値>

合格者数

不合格者数

合計

35

70%)

15

30%)

50

100%)

15

30%)

35

70%)

50

100%)

合計

50

50%)

50

50%)

100

100%)

 

<期待値>

合格者数

不合格者数

合計

25

50%)

25

50%)

50

100%)

25

50%)

25

50%)

50

100%)

合計

50

50%)

50

50%)

100

100%)

 

観測値のクロス集計表を見ても差がありそうに見えますが,本当に差があるかどうかは,期待値との差(ずれ)から確かめる必要があるのです。

 

これがカイ2乗検定です。

 

何となくわかってきそうでしょうか。

 

なお,カイ二乗検定で得られた数値をカイ2乗統計量といいます。

 

ということで,今日の問題です。

 

22回・問題80 クロス表による分析に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 行パーセント,列パーセントの数値は,ある行又は列の中だけで比率を計算したものであり,それらの数値を参照する意義は小さい。

2 カイ2乗統計量の大きさは,分析対象者数に影響されず,2つの変数の関連の強さだけに依存する。

3 カイ2乗統計量は,2つの変数が独立であるとした場合の期待度数からなる表と,実際の観測度数からなる表の間の全体的なズレを表すものである。

4 クロス集計表については,2つの変数の関連を示す係数を計算することはできない。

5 満年齢や年収実額のような間隔尺度や比率尺度のデータに対しては,クロス集計表を利用することはできない。

 

とても難しい問題です。

 

この科目の歴代問題の中で,最も難易度が高い問題に位置づけられるかもしれないくらいの難易度です。

 

この科目が難しいというイメージを植え付けた元凶とも言える問題でしょう。

 

こんな問題はもう出題されないのでは,と思います。

 

それでは解説です。

 

1 行パーセント,列パーセントの数値は,ある行又は列の中だけで比率を計算したものであり,それらの数値を参照する意義は小さい。

 

行パーセントとは,上記の表で,行(横列)のパーセントで示した数字です。

 

列パーセントとは,上記の表で,列(縦列)のパーセントで示した数字です。

 

それらを参照するだけではなく,本当に差があるかかどうかはカイ2乗検定を行わなければなりませんが,参照しても何かの差がありそうだということはわかります。

 

2 カイ2乗統計量の大きさは,分析対象者数に影響されず,2つの変数の関連の強さだけに依存する。

 

カイ2乗統計量とは,カイ2乗検定で得られた数値です。

 

実はカイ2乗検定は,分析対象者数に影響されます。そのため標本数が多い場合の検定には向きません。

 

3 カイ2乗統計量は,2つの変数が独立であるとした場合の期待度数からなる表と,実際の観測度数からなる表の間の全体的なズレを表すものである。

 

これが正解です。

 

カイ2乗検定は,期待値と観測値のずれから検定するものです。その結果として得られる数値がカイ2乗統計量です。

 

4 クロス集計表については,2つの変数の関連を示す係数を計算することはできない。

 

クロス集計表のデータは,定性的データなので,定量的データの相関を調べるピアソンの積率相関係数は使えません。

 

クロス集計表のデータは,分割係数などを用いて相関を調べます。

分割係数の名前は覚える必要はありません。定性的データであっても相関を調べる方法はあるということがわかっていれば十分です。

 

5 満年齢や年収実額のような間隔尺度や比率尺度のデータに対しては,クロス集計表を利用することはできない。

 

クロス集計表は,名義尺度や順序尺度で得られたデータを集計するときに利用します。

 

上記の例は,名義尺度で得られたデータ(合格,不合格)を集計しました。

 

間隔尺度や比率尺度のように連続した数値のものは,そのままではクロス集計表に記載することができません。

 

間隔尺度の例には,温度があります。

 

温度の場合は,データを区切って,04℃,59℃というようにすれば,クロス集計表に書き入れることができます。

 

 

<今日の一言>

 

今日の問題の内容は難しいですが,正解するのはそれほど難しくはありません。

 

そのことに気がつくことができる人は,おそらくそれほど苦労することなく,得点できるはずです。

 

それに気がつかない人は,ハードルがものすごく高く感じることでしょう。

 

問題をよくよく読んでみると正解となった選択肢以外は,正解には見えないはずです。

 

これが国家試験の実態だと言えます。

 

一見すると難しいけれど,実はそれほど難しくはない。しかし,確実に正解するのはかなり難しい。

 

これが国家試験の現実です。知識+知恵=得点 いろいろ考えをめぐらながら解くことが必要です。

2021年11月23日火曜日

ピアソンの積率相関係数

社会福祉調査の量的調査で得られるデータには,量的データと質的データあります。


これらについては,またの機会に詳しく紹介するとして,今日のテーマは「ピアソンの積率相関係数」です。


相関とは,変数Xと変数Yの間に関連があるという意味です。


Xの結果として,Yとなる。


こういったことが言えそうだ,ということを「相関がある」といいます。


相関係数は,相関の強さを表わし,範囲は「-1から1まで」です。


-1あるいは1の時が最も相関が強く,0は相関がないことを示します。


相関係数にはたくさんの種類がありますが,それぞれ計算方法が違うだけで基本は一緒です。


相関係数のうち,最も有名なものがピアソンの積率相関係数です。



国家試験でいつも出題されるのは,測定単位が異なると係数はどうなるのか,ということです。


結論を言えば,変わりません。


<例>


国試勉強を300時間行うと国試では120点とれる。


という仮説があるとします。


実際には,120点ではなくても100点程度得点できれば合格できます。


この場合の測定単位は,「時間」です。これが「秒」であっても結果に影響を与えるものではないと推測することはできそうです。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題79 ピアソンの積率相関係数に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 相関係数がゼロになった場合は,2つの変数の間にはいかなる関係も存在しない。 

2 それぞれの変数の測定単位(mとcm,円とドルなど)が変われば,相関係数の絶対値の大きさも変化する。

3 変数Xと変数Yに正の相関が,変数Yと変数Zにも正の相関がある場合でも,変数Xと変数Zに相関が存在しないことがありうる。

4 2つの変数の間に相関があれば,どちらが原因となる変数でどちらが結果となる変数であるのかを特定できる。

5 相関係数が大きな値を示せば,2つの変数の間に必ず直接の関連がある。


ピアソンの積率相関係数は面倒なので,相関係数と略して考えましょう。


そうすると少しは気が楽になりませんか?


それでは解説です。


1 相関係数がゼロになった場合は,2つの変数の間にはいかなる関係も存在しない。


ゼロは確かに相関がないことを示すものです。


しかし,何らかの影響によって,そうなっているかもしれません。


2 それぞれの変数の測定単位(mとcm,円とドルなど)が変われば,相関係数の絶対値の大きさも変化する。


前説で述べたように,相関係数は,測定単位が変わっても変化することはありません。


先の例のように「時間」が「秒」,「得点」が「偏差値」でも良いわけです。


ただし,国家試験では,自分の得点はわかりますが,偏差値はわかりません。


3 変数Xと変数Yに正の相関が,変数Yと変数Zにも正の相関がある場合でも,変数Xと変数Zに相関が存在しないことがありうる。


久々に登場しました。


あいまい表現に正解多し


ということでこれが正解です。


どんなものでも可能性がゼロということはそんなにあることではないので,このような文章は成り立ちやすいのです。


4 2つの変数の間に相関があれば,どちらが原因となる変数でどちらが結果となる変数であるのかを特定できる。


相関係数は,相関の強さを表わすものであり,要因(独立変数)と結果(従属変数)の関係を特定するものではありません。


5 相関係数が大きな値を示せば,2つの変数の間に必ず直接の関連がある。


相関係数が大きな値を示すと相関が強いことを示します。

しかし,その間には,別の要因がかかわっているかもしれません。


この講座を受講した人のうち,〇%が合格した


といった広告を見ることがあります。


しかし,社会福祉士で言えば,模擬試験を受験したり,この学習部屋で勉強したり,といったことの努力の結果として合格しているのではないでしょうか。


これが,相関係数が大きな値を示しても,直接的な関連があるとは限らないという意味です。

2021年11月22日月曜日

調査の信頼性と妥当性

社会福祉調査(社会調査)の基礎は難しいというイメージをもつ人は多いことでしょう。


しかし,難しいのは,量的調査のほんの一部です。


第22回国試は,平成19年改正のカリキュラムの最初の国試でした。


カリキュラムが変わり,時間がない中での国試だったこともあり,今後このカリキュラムでどのように出題するのかを実質的に示したのが第22回国試です。


なぜ,第22回の国試問題をいまさら取り上げているのかと不思議に思う人もいると思いますが,そういった意味から第22回国試は,とても重要な意味を持っているのです。


さて,今日のテーマは「調査の信頼性と妥当性」です。


知らなくても,それほど困ることはありませんが,一応用語だけは覚えておきたいと思います。


信頼性とは,同じ調査を行ったとき,おおよそ同じようなデータが得られることをいいます。


同じようなデータが得られない場合は,信頼性が低いと表現されます。


妥当性とは,調査したいものを的確に調査していることをいいます。


適切に調査しないと,期待したデータが得られないことになります。


そういったことを妥当性が低いと表現されます。


たとえば,提供したサービス利用者の満足度を調査したいのに,サービスを提供した人に対して,アンケートを行ったらどうでしょうか。


適切なデータは得られないことは,火を見るより明らかでしょう。


サービス利用者の満足度を調査するなら,その本人にアンケートを行わなければなりません。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題78 尺度を用いた測定の信頼性に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 信頼性が高ければ,測定したい事柄を適切に測定できているといってよい。 

2 信頼性を検討する手法の一つである折半法とは,調査対象者を半分ずつに分けて,それぞれに同一の測定を行う方法のことである。

3 再検査法で信頼性を検討する場合,1回目の検査と2回目の検査の間隔が広ければ広いほど,時間的安定性が高くて望ましい。

4 クロンバックのα係数は,複数の測定項目間に内的整合性があるかどうかを調べるためのものである。

5 同一の対象者集団に対して正反対の結果が出ると想定される2つの測定を行い,負の相関の強さを確認する方法のことを,平行検査法という。


前回,この科目を難しく感じさせる元凶となったのは,第22回国試だと書きました。


この問題は,この時の国試から10年以上経った今も難しく感じられるものだと思います。


その理由は,出題されているもののほとんどは,その後一度も出題されているものではないからです。


極端なことを言えば,こういったものは,正解できなくてもよいと考えると良いと思います。


さっさと気持ちを切り替えて,次の問題に進んだほうがよいです。


ただし,第22回国試では,この次の問題はさらに難しいものが出題されています。


2問も続けて難しい問題が出題されるとメンタル的にかなり辛いです。


そこを乗り越えると,先が開けます。


それでは,解説です。


1 信頼性が高ければ,測定したい事柄を適切に測定できているといってよい。


測定したい事柄を適切に測定できているといってよいのは,妥当性が高い場合です。


信頼性が高いと言えるのは,調査結果にばらつきがなく,だいたい同じようなデータが得られる場合です。

 

2 信頼性を検討する手法の一つである折半法とは,調査対象者を半分ずつに分けて,それぞれに同一の測定を行う方法のことである。


折半法は,この時1回しか出題されたことがありません。


折半法とは,次の選択肢に出てくる再検査法と異なり,再度検査を行わなくてもよいように開発されたものです。


具体的には,調査で得られたデータを2つに分けて,あたかも調査を2回行ったようにみなして,データを分析するものです。


これだと被検査者の負担を軽くすることができます。


3 再検査法で信頼性を検討する場合,1回目の検査と2回目の検査の間隔が広ければ広いほど,時間的安定性が高くて望ましい。


再検査法は,折半法とは異なり,本当に検査をもう一回行う方法です。


1回目と2回目の間隔が広いと被検査者の状況は変化してしまいます。


それよりもこの選択肢で着目したいのは,「広ければ広いほど」です。


「広ければ広いほど」は,極めて正確性を欠いた表現だと思いませんか。


何十年も間隔を開けたらどうなるのかを想像するとミスしないで判断できることでしょう。


4 クロンバックのα係数は,複数の測定項目間に内的整合性があるかどうかを調べるためのものである。


これが正解です。クロンバックのα係数信頼性を確認するためのものです。


5 同一の対象者集団に対して正反対の結果が出ると想定される2つの測定を行い,負の相関の強さを確認する方法のことを,平行検査法という。


並行検査法は,同じようなタイプの検査を同時に行うことをいいます。


<今日の一言>


この問題のようなタイプの問題は,その後に出題されたことがありません。


おそらく出題することの意義に疑問が生じたからでしょう。


令和元年改正のカリキュラムによる国試でもそれほど難しいものは出題されないのではないかと思います。


しかし,この科目が難しいというイメージを植え付けたことは,しっかり勉強した人にとって,かなり有利です。


勉強不足の人は,苦手意識を払しょくできないために自滅していくからです。


こういった問題を除けば,決して難しい科目ではないことを肝に銘じておきたいです。

2021年11月21日日曜日

社会福祉調査における個人情報保護

社会福祉調査をとても難しい科目だと思う人は多いようです。


法制度と異なり,何かが変わるものではありません。


簡単ではないかもしれませんが,多くの人が思うほど,難しくはありません。


今回から,社会福祉調査の基礎を取り上げていきますが,この科目が最初に登場した第22回が受験生に難しいイメージをを据え付けた元凶とも言えます。


それは適宜お話しします。


国家試験では,各群で1点以上の得点がなければ,ボーダーラインを超えていても不合格になります。


それを恐れている受験生も多いようです。


しかし,実際にはこの科目で0点をとる人は,それほど多くはありません。


その一つの理由が,個人情報の取り扱いがあるからです。これなら,おそらくよほどのことがなければ,ある程度勉強した人なら得点できるはずです。


それでは今日の問題です。


第22回・問題77 社会調査を実施する過程での個人情報の取扱いに関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 社会調査で得られたデータは公表が原則であり標本調査で得られた氏名,性別,年齢など対象者の属性も,広く公表すべきである。

2 社会調査で得られた個人情報は,鍵つきのロッカーに保管したり,電子ファイルの場合には暗号化機能を用いるなどして,第三者の目に触れないようにすべきである。

3 社会調査で得られたデータを共同研究者と検討する際には,調査対象者の意向がどうであれ,個人情報を秘匿しなくてもよい。

4 事例研究など調査対象者の個人情報を取り扱う場合には,調査対象者の意向がどうであれ,できる限り匿名化すべきである。

5 社会調査は公益性が高いので,標本抽出の目的で,選挙人名簿や住民基本台帳から自由に個人情報を得ることができる。


正解は,選択肢2です。


2 社会調査で得られた個人情報は,鍵つきのロッカーに保管したり,電子ファイルの場合には暗号化機能を用いるなどして,第三者の目に触れないようにすべきである。


余計なことを考えなければ,この選択肢を選べると思います。


しかし,そうならないのが国試の怖いところです。


一応ほかの選択肢も確認しておきます。


1 社会調査で得られたデータは公表が原則であり標本調査で得られた氏名,性別,年齢など対象者の属性も,広く公表すべきである。


これはあり得ないでしょう。


3 社会調査で得られたデータを共同研究者と検討する際には,調査対象者の意向がどうであれ,個人情報を秘匿しなくてもよい。

4 事例研究など調査対象者の個人情報を取り扱う場合には,調査対象者の意向がどうであれ,できる限り匿名化すべきである。


セットのような文章になっています。


対象者の意向が重要であることを暗示しています。


別の言い方をすれば,対象者の意向が,原則と異なっている場合は,対象者の意向が採用されるということです。


5 社会調査は公益性が高いので,標本抽出の目的で,選挙人名簿や住民基本台帳から自由に個人情報を得ることができる。


さすがに自由ということはないでしょう。

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