日常生活自立支援事業は,2000年の介護保険法,社会福祉法により,サービス利用が「措置」から「契約」になることから,サービス利用者の権利擁護のために,平成11年10月に導入されたものです。
利用対象者は,判断力が低下していても,契約の内容が判断できるほどの能力がある人です。
判断能力がそれよりも不十分な場合は,成年後見制度の利用を検討します。
日常生活自立支援事業と成年後見制度が補完的なのは,権利擁護という同じ目的でつくられた制度であるからにほかなりません。これは忘れないでいてください。
以下は,厚生労働省のホームページに書かれている日常生活自立支援事業の紹介です。
実施主体 |
都道府県社会福祉協議会・指定都市社会福祉協議会(窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等で実施) |
対象者 |
判断能力が不十分な方(認知症高齢者,知的障害者,精神障害者等であって,日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手,理解,判断,意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方) 本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる方 |
援助の内容 |
本事業に基づく援助の内容は,次に掲げるものを基準とします。 福祉サービスの利用援助 苦情解決制度の利用援助 住宅改造,居住家屋の貸借,日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等 上記に伴う援助の内容は,次に掲げるものを基準とします。 預金の払い戻し,預金の解約,預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理) 定期的な訪問による生活変化の察知 |
これを押さえたところで今日の問題です。
第22回・問題75 事例を読んで,専門員Kの対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事例〕
日常生活自立支援事業の利用者Lの事理弁識能力が著しく低下したため,専門員Kはその意思を確認できなくなり,新たな支援計画を策定することも困難となっている。現在,利用者Lの親族Mが適切な支援を行っているが,今後は施設入所を念頭に置かざるを得ない。
1 専門員Kは,日常生活自立支援事業の利用契約を利用者Lから解約することを促す。
2 専門員Kは,事務管理として新たな支援計画を策定し,新たな支援方法を継続し続ける。
3 専門員Kは,日常生活自立支援事業の利用契約を社会福祉協議会が直ちに解約するよう促す。
4 専門員Kは,親族Mに成年後見開始審判の申立てを促して,成年後見制度の利用につなげる支援を行う。
5 専門員Kは,親族Mの意思を確認することなく,法人成年後見人となるよう社会福祉協議会に働きかける。
利用者Lの事理弁識能力が著しく低下したという状況が書かれているので,成年後見制度の利用が考えられます。
そうなると正解は,
4 専門員Kは,親族Mに成年後見開始審判の申立てを促して,成年後見制度の利用につなげる支援を行う。
これしかありません。