2024年1月31日水曜日

社会福祉士国家試験の追試験

社会福祉士の国家試験は,1月下旬~2月上旬に実施されています。近年は2月上旬に実施され,3月上旬に合格発表があります。

天候が良くない季節にもかかわらず,これまで,天候不順によって,追試験が実施されたことは一度もありません。


受験される方々の日ごろの行いがとても良いのかもしれません。


しかし,これまででたった一度だけ追試験が実施されたことがあります。


平成7年(1995年)1月に発生した阪神淡路大震災によって,第7回国家試験は追試験が実施されています。


国家試験の実施機関である社会福祉振興・試験センターでは,不測の事態に備えて,正と副の2種類の国試問題を準備しています。もしかすると副の副の問題も用意しているかもしれません。


これから何が起きるか分かりませんが,今のところ,無事に受験できることにお礼の気持ちを持って,国家試験会場に向かってほしいと思います。


私たちチームfukufuku21は,この問題も含めて,公開されている問題すべての情報を持っています。(第1・2回の問題は非公開)


その中には,もちろんたった1回のみ実施された追試験問題もあります。今となっては,幻と言ってもよいくらいのものでしょう。


社会学では,次のような問題がありました。


第7回・問題117(追試験)

産業社会の進行に伴って,社会的連帯に変化が生じ,「アノミー」(anomie)状況が出現する点に着目して,これの解明にあたったのはだれか。正しいものを一つ選びなさい。

1 テンニース(Tonnies,F.)

2 ヴェーバー(Weber,M.)

3 コント(Comte,A.)

4 デュルケム(Durkheim,E.)

5 スペンサー(Spencer,H.)


正解は,「4 デュルケム(Durkheim,E.)」です。


何とも単純な問題です。しかし,近年,社会学では,このタイプの問題が復活してきています。


第31回・問題20

社会的行為の主観的意味を理解することを通して,その過程及び結果を説明しようとする考え方を表す用語として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 合理的選択理論

2 主意主義的行為

3 理解社会学

4 コミュニケーション的行為

5 社会システム論


正解は,「3 理解社会学」です。


第32回・問題19

次のうち,パーソンズ(Parsons,T.)の社会的行為論として,正しいものを1つ選びなさい。

1 コミュニケーション的行為論

2 交換理論

3 集合行動論

4 象徴的相互作用論

5 主意主義的行為理論


正解は,「5 主意主義的行為理論」です。


〈今日の注意ポイント〉


社会学を苦手とする人は多いですが,このような単純な出題もあるので,苦手とは思わずに,しっかり学んでほしいと思います。


人名やカタカナ用語は覚えにくいですが,それはほかの人も一緒です。


今日の紹介した問題のように,この科目は意外と単純な問題が出題されるので,ポイントをちょっと押さえると,すぐに実力に変わります。

2024年1月30日火曜日

第36回の介護福祉士の問題をチラ見(ヒント満載)

 以前は,社会福祉士の国家試験は,介護福祉士と同じ日程で行われていましたが,現在は,介護福祉士のほうが一週間早く行われるようになっています。


ということで,一足早く実施された第36回の介護福祉士の国家試験問題を見てみたいと思います。


第36回・問題8 

特定非営利活動法人(NPO法人)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会福祉法に基づいて設置される。

2 市町村が認証する。

3 保健,医療又は福祉の増進を図る活動が最も多い。

4 収益事業は禁じられている。

5 宗教活動を主たる目的とする団体もある。


社会福祉士の国家試験で出題されても良いような問題です。


答えは,選択肢3です。

3 保健,医療又は福祉の増進を図る活動が最も多い。


約6割が,「保健,医療又は福祉の増進を図る活動」です。


ちょっと変わった問題としては,改正道路交通法がありました。


第36回・問題39 

高齢者の自動車運転免許に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 75歳から免許更新時の認知機能検査が義務づけられている。

2 80歳から免許更新時の運転技能検査が義務づけられている。

3 軽度認知障害(mild cognitive impairment)と診断された人は運転免許取消しになる。

4 認知症(dementia)の人はサポートカー限定免許であれば運転が可能である。

5 認知症(dementia)による運転免許取消しの後,運転経歴証明書が交付される。

(注)「サポートカー限定免許」とは,道路交通法第91条の2の規定に基づく条件が付された免許のことである。


これはちょっと解説します。


1 75歳から免許更新時の認知機能検査が義務づけられている。


これが正解です。75歳以上の高齢者が更新する時には,認知機能検査を受けなければなりません。


2 80歳から免許更新時の運転技能検査が義務づけられている。


運転技能検査を受けなければならないのは,75歳以上信号無視などの一定の違反歴のある人です。


3 軽度認知障害(mild cognitive impairment)と診断された人は運転免許取消しになる。


運転免許取消しになるのは,認知症のある場合です。軽度認知障害(MCI)では取消しとはなりません。


4 認知症(dementia)の人はサポートカー限定免許であれば運転が可能である。


認知症の人は,免許取消しとなります。サポートカー限定免許は,交付されません。


5 認知症(dementia)による運転免許取消しの後,運転経歴証明書が交付される。


免許を自主返納した場合は,運転経歴証明書は交付されますが,認知症で取消しとなった場合は,交付されません。


<今日の注意ポイント>


自動車運転免許の問題は,制度を知らないと難しく感じるかもしれません。


しかし,この問題自体を正解するのは,決して難しくありません。


なぜなら,関連する内容のものが一緒に出題されているためです。


1 75歳から免許更新時の認知機能検査が義務づけられている。

2 80歳から免許更新時の運転技能検査が義務づけられている。


年齢が75歳と80歳になっています。そのために75歳,つまり後期高齢者になると何かがあるのだと推測可能です。70歳では早いですし,80歳では遅すぎると考えることもできます。


選択肢5が引っ掛かるかもしれませんが,それが分からなくてもこの問題は正解できるところが国家試験の不思議なところです。

2024年1月29日月曜日

感覚・知覚に関する出題頻度(かなり高い)

 感覚・知覚に関する出題頻度(第22~35回)

出題

22

23

 

24

25

 

26

 

27

28

 

29

30

 

31

32

 

33

34

 

35

 


〇がついているところが,出題された回です。


心理学は,社会情勢などの変化に影響されないので,出題内容がとても安定しています。


そのために,感覚・知覚の出題もこのように安定して定期的に出題されています。


それでは,この中の最も古い問題を見てみたいと思います。


第22回・問題8 

感覚・知覚に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 口を閉じた状態で,眼球を軽く圧迫すると明るさの変化を感じるのは,眼球圧迫が視覚に対する適刺激だからである。

2 2つの刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小差異を,刺激閾という。

3 朝,暗い部屋で目覚めたときに,カーテンを開けると非常にまぶしいが,しばらく経つと普通に見えるようになるのは,暗順応の働きである。

4 滝をじっと見つめていて,その後に他の風景に目を向けると上方向に動いているように見えるのは,視覚の体制化とよばれる現象である。

5 映画のフィルムは1コマごとの静止画像なのに,連続して提示すると動いて見るのは,仮現運動によるものである。


よく見たことがある内容が並んでいると思うでしょう。

そう,出題される内容そのものも似ています。それを少しずつ変化させながら出題されています。


選択肢1の内容は,第27回では,以下のように出題されています。

目や耳などの感覚器には,光や音以外にも「眼球をおすと光が見える」などの感覚を生じさせる刺激があり,こうした刺激を適刺激という。


少しずつ変化をつけていることがわかります。


それでは簡単に解説します。


1 口を閉じた状態で,眼球を軽く圧迫すると明るさの変化を感じるのは,眼球圧迫が視覚に対する適刺激だからである。


心理学では,感覚器(目,耳,鼻,口など)が受け取る情報を感覚モダリティといいます。


目が受け取る情報は,光です。

鼻が受け取る情報は,においです。


この関係を適刺激といいます。


この出題に合わせて,説明すると,視覚の適刺激は光である,となります。


眼球圧迫でも光を感じるらしいですが,実際にやってみるのは,目に良くないのでやめましょう。


2 2つの刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小差異を,刺激閾という。


刺激閾とは,感覚が生じる刺激の最少の量をいいます。


例えば,音域です。聴覚検査では,音を感じない小さな音からだんだん大きくしていって,音が聞こえるようになるポイントが刺激閾です。


一方,2つの刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小差異は,丁度価値差異(ちょうどかちさい),または弁別閾といいます。


社会福祉士の国家試験にはまだ出題されたことはありませんが,丁度価値差異に関連するものにウェーバーの法則というものがあります。


丁度価値差異は,刺激の大きさに比例するという法則です。


60グラムの重さの違いを見分ける丁度価値差異が1グラムだったとします。


600グラムの重さの場合は,丁度価値差異は10倍の10グラムとなります。


重さが軽いときは,丁度価値差異は繊細に小さな違いを感じ取ることができても,重さが重くなれば,だんだん大雑把になっていきます。人の体は実に不思議なものです。



3 朝,暗い部屋で目覚めたときに,カーテンを開けると非常にまぶしいが,しばらく経つと普通に見えるようになるのは,暗順応の働きである。


明るさに目が慣れるのは,明順応といいます。


逆に暗さに目が慣れるのは,暗順応といいます。


4 滝をじっと見つめていて,その後に他の風景に目を向けると上方向に動いているように見えるのは,視覚の体制化とよばれる現象である。


滝をじっと見つめていて,その後に他の風景に目を向けると上方向に動いているように見えるのは,運動残効という働きによるものです。


視覚の体制化とは,刺激をまとまりのあるものとして知覚する働きのことをいいます。


5 映画のフィルムは1コマごとの静止画像なのに,連続して提示すると動いて見るのは,仮現運動によるものである。


これが正解です。


脳は,実際に見えていないものであっても,そのすき間を補完して情報処理します。


これを知覚的補完といいます。仮現運動は,その働きによって,連続した静止画像を見ると,その間にはないものをあるように情報処理するので,動画のように見えます。


〈今日の注意ポイント〉


心理学を苦手だと思う人は,覚えるときに具体例を考えると良いです。


国歌試験でもこの問題のように,その例が問われます。


2024年1月28日日曜日

正解になりにくい構文

 来週の今頃は試験を受けている最中でしょう。


今までたくさんの問題を見てきましたが,正解になりにくい構文が存在します。


そういったものが,今後の国家試験で出題されるかは分かりませんが,覚えておくとミスを減らせます。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題10 

発達理論に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 ヴィゴツキー(Vygotsky,L.)によれば,子どもの知的発達には,独力で問題解決できる水準と,他者からの援助などによって達成が可能な水準があると考えられる。

2 ピアジェ(Piaget,J.)によれば,感覚運動期→前操作期→具体的操作期→形式的操作期という段階を経て,運動能力は発達すると考えられる。

3 ゲゼル(Gesell,A.)によれば,個体の行動や能力などの発達は,個体内の神経生理学的成長よりも環境の影響を強く受けると考えられる。

4 ボウルビィ(Bowlby,J.)によれば,乳児の成人への接近や接触要求の行動は生得的なものではなく,学習による行動であると考えられる。

5 エリクソン(Erikson,E.)によれば,各発達段階で生じる欲求には階層性があり,各階層の欲求が順に満たされることで自己実現が可能になると考えられる。


この問題は,今なら,どれも参考書に書かれているものだと思いますが,その当時はおそらく書かれていなかったものが含まれるので,とても難しかったのではないかと思います。


消去法で答えが残るタイプなのです。


正解は,選択肢1です。

1 ヴィゴツキー(Vygotsky,L.)によれば,子どもの知的発達には,独力で問題解決できる水準と,他者からの援助などによって達成が可能な水準があると考えられる。


これが出題されたのは,後にも先にもこの時1回のみです。覚える優先度は限りなく低いものです。


さて,この問題の中に正解になりにくい構文が2つあります。


3 ゲゼル(Gesell,A.)によれば,個体の行動や能力などの発達は,個体内の神経生理学的成長よりも環境の影響を強く受けると考えられる。

4 ボウルビィ(Bowlby,J.)によれば,乳児の成人への接近や接触要求の行動は生得的なものではなく,学習による行動であると考えられる。


選択肢3よりは,選択肢4の方が明確です。


選択肢4が本当に正解だとすれば,


ボウルビィ(Bowlby,J.)によれば,乳児の成人への接近や接触要求の行動は,学習による行動であると考えられる。


でも正しい文章となります。


しかし,この文章では「生得的なものではなく」を加えています。

そこから,「生得的が関係するのかも」と考えることが可能です。


選択肢3は,「よりも」です。もちろん「よりも」も正解になることはありますが,正解になりにくいものであることは覚えておくとよいように思います。


選択肢5は,明らかにマズローの内容です。


この問題の中で,最も気をつけたいのは,選択肢2です。

2 ピアジェ(Piaget,J.)によれば,感覚運動期→前操作期→具体的操作期→形式的操作期という段階を経て,運動能力は発達すると考えられる。


一読すると正解だと思う人もいると思います。


しかし,正解ではないのは,発達するのは,運動能力ではなく,知的能力だからです。


この問題の詳しい解説はこちら

〈いろいろな発達理論〉

https://fukufuku21.blogspot.com/2021/09/blog-post_16.html

2024年1月27日土曜日

国家試験までの1週間はどう過ごす?

 国家試験合格に最も必要なことは,強い心ではないかと思います。


もちろん知識がなければ合格することはできませんが,知識だけでは合格できないように思います。


しっかり勉強して受験しているのに,何度も不合格になっている方に強く強く強く伝えたいのは,疑心暗鬼になって,自信をなくさないでほしいことです。


国家試験直前の一週間は,儲けものだと言えます。


というのは,学校を卒業しても介護福祉士の国家試験を受験することが必要になったことで,介護福祉士と社会福祉士は別日程になりましたが,それ以前は,介護福祉士と同じ日程,つまり,1月の最終週の日曜日に実施されていたからです。


以前と同じ日程なら,明日が受験日でした。


どんなに勉強してもやり残し感は消えません。


とても有難いことですが,社会福祉振興・試験センターは,ボーダーラインの決定にあたって,その物差しをどうやら変えたようです。


そのために,今後はおそらく105点のようなおかしなことは生じないと思います。


今回の国家試験では,それがはっきり分かることでしょう。


それは受験後の話です。


今,必要なのは強い心です。


そのベースになるのが,今までの努力の肯定です。


当日は,晴れ晴れした気持ちで,国家試験会場に向かいましょう。


さて,今回(第36回)は,今のカリキュラムによる最後の試験です。


それでは,最初はどんな問題が出題されていたのかを見てみましょう。


第22回・問題1

身体の正常な成長・発達に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 大泉門は,生後6か月までに自然に閉鎖する。

2 すべての原始反射は,生下から認められ幼児期には消失する。

3 受精後8週目を過ぎると,人としての基本的生理機能を担う器官の形成期に入る。

4 学童期から青年期における顕著な身長の伸びには,成長ホルモンが関与している。

5 脳や感覚器官は,生後から成人まで穏やかなS字カーブを描いて成長する。


最近はあまり出題されていない原始反射がみられますが,今年の問題だと言ってもわからないくらいに,今と似ています。


そして,いずれの内容も参考書などで学んだものでしょう。

国家試験で出題されたものを参考書に掲載していくからです。


さて,この問題の正解は,選択肢4です。

4 学童期から青年期における顕著な身長の伸びには,成長ホルモンが関与している。


びっくりするような内容のものが正解です。


学童期から青年期における顕著な身長の伸びに成長ホルモンがかかわっていることは,社会福祉士の勉強をしなくても知っているものです。


しかし,実際に国家試験で出題されると,「何か裏があるのでは?」と変な勘繰りをしてしまいます。そしてミスします。


この科目は,ときどきびっくりするようなものが正解になる傾向があります。

ぜひ覚えておいてください。


この問題の詳しい解説

https://fukufuku21.blogspot.com/2021/09/blog-post_7.html


この記事にも書きましたが,国家試験は,意外と意地悪ではありません。

それもかかわらず,変に疑うと底なし沼に陥るので注意が必要です。


もちろん,読み間違いや勘違いはしていないか,という確認は必要です。

2024年1月26日金曜日

生活環境の調整

今回は,生活環境の調整を取り上げます。


生活環境の調整は,刑事施設や少年院に収容されている者の社会復帰を円滑に行うために,釈放後の住居,就業先その他の調整を行うことをいいます。


それでは,今日の問題です。

 

第32回・問題150

 事例を読んで,Z保護観察所が行うDさんの生活環境の調整に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 U矯正施設に収容されたDさん(55歳男性)は,施設からの釈放後に家族のもとで生活することを希望している。Z保護観察所に対し,U矯正施設からその旨の通知があった。

1 Dさんの生活環境の調整は,Dさんの仮釈放決定後に開始する。

2 Dさんの希望に関係なく,まずU矯正施設の所在地域にある更生保護施設への帰住を調整する。

3 Dさんの生活環境の調整を,保護司と協力して行うことは認められていない。

4 Dさんの生活環境の調整の方法として,Dさんの家族その他の関係人を訪問して協力を求めることがある。

5 Dさんの釈放後の就業先を確保することは,Dさんの生活環境の調整を行う事項に含まれない。


知識なしでも正解できてしまうような問題かもしれません。

今後は,このような問題づくりが下手なものは出題されることは少なくなるでしょう。


以前に書いたように,試験委員への支援が行われるためです。


それでは,解説です。


1 Dさんの生活環境の調整は,Dさんの仮釈放決定後に開始する。


仮釈放決定後では遅すぎます。それ以前から実施します。


2 Dさんの希望に関係なく,まずU矯正施設の所在地域にある更生保護施設への帰住を調整する。


帰住先がない場合は,更生保護施設も帰住先になり得ますが,それは最後の最後の手段です。


3 Dさんの生活環境の調整を,保護司と協力して行うことは認められていない。


生活環境の調整に限らず,保護観察官は,保護司と協力して活動を行います。


これは,指導監督,補導援護も同様です。


4 Dさんの生活環境の調整の方法として,Dさんの家族その他の関係人を訪問して協力を求めることがある。


これが正解です。


生活環境の調整は,その者の家族その他の関係人を訪問して協力を求めることその他の方法で行われます。


5 Dさんの釈放後の就業先を確保することは,Dさんの生活環境の調整を行う事項に含まれない。


釈放後の就業先の確保は,帰住先の確保とともに生活環境の調整に含まれます。


〈今日の注意ポイント〉


事例問題は,知識がなくても正解できる可能性が高いと言えますが,確実に正解するのはそれほど簡単ではありません。


慎重に考える姿勢を忘れてはなりません。


第32回の国家試験問題に約5か月にわたって取り組んで来ました。

これでようやく終わりです。ずっと取り組んできた方はお疲れさまでした。


次回から国家試験まで,国家試験の注意点などを紹介していきたいと思います。

2024年1月25日木曜日

保護司の役割

保護司は,保護司法に規定され,身分は,非常勤で一般職の国家公務員とされています。


それでは,今日の問題です。

 

32回・問題149

保護司に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 保護司の職務に,犯罪予防を図るための啓発及び宣伝の活動は含まれない。

2 保護司には給与は支給されないが,職務に要した費用は実費弁償の形で支給される。

3 保護司は,検察官の指揮監督を受けて職務に当たる。

4 保護司は,保護観察対象者の居住先を訪問することは禁じられている。

5 保護司は,「平成30年版犯罪白書」(法務省)によると,4049歳までの年齢層が最も多く,過半数を超えている。

 

選択肢5のような勉強したことがない白書系の問題が出題されると焦りがちになりますが,慌てなければ,正誤を判断できるようなものが多いものです。

 

それでは,解説です。

 

1 保護司の職務に,犯罪予防を図るための啓発及び宣伝の活動は含まれない。

 

〈保護司の職務〉

・犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助け又は犯罪の予防を図るための啓発及び宣伝の活動

・犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助け又は犯罪の予防を図るための民間団体の活動への協力

・犯罪の予防に寄与する地方公共団体の施策への協力

・その他

 

2 保護司には給与は支給されないが,職務に要した費用は実費弁償の形で支給される。

 

これが正解です。

 

3 保護司は,検察官の指揮監督を受けて職務に当たる。

 

保護司が指揮監督を受けるのは,地方更生保護委員会又は保護観察所の長です。

 

4 保護司は,保護観察対象者の居住先を訪問することは禁じられている。

 

保護司は,保護観察官と協力して,一般遵守事項が守られているかを確認する指導監督を行います。

 

その際,呼び出しや訪問して実施されます。

 

5 保護司は,「平成30年版犯罪白書」(法務省)によると,4049歳までの年齢層が最も多く,過半数を超えている。

 

古いデータですが,企業戦士として活躍している人が多いと思われる4049歳が最も多いということはないだろうと推測することが可能です。

 

最も多いのは,60歳代です。

 

〈今日の注意ポイント〉

 

この問題には出題されていませんが,保護司の任期も高い頻度で出題されています。

 

〈任期〉

 保護司:2年

 民生委員:3年

 

いずれも再任は妨げられません。つまり,再任することができます。

2024年1月24日水曜日

更生緊急保護について

更生緊急保護は,刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた者が,親族からの援助などを受けることができず,帰住先も決まっていない場合に,金品の給与・貸与,宿泊場所の供与,宿泊場所への帰住,医療,療養,就職,教養訓練の援助,生活指導などを緊急的に行うものです。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題148

更生緊急保護に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 対象となる者からの申出がない場合は職権で行うことができる。

2 対象となる者に仮釈放中の者を含む。

3 対象となる者が刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた後2年を超えない範囲内において行われる。

4 刑事施設の長又は検察官がその必要があると認めたときに限って行われる。

5 更生保護事業を営む者に委託して行うことができる。


なかなかの難問です。知識不足の人が簡単に解ける問題ではありません。更生緊急保護はかなりの頻度で出題されてきているので,しっかり覚えて国試に臨みたいです。


それでは,解説です。


1 対象となる者からの申出がない場合は職権で行うことができる。


更生緊急保護は,対象者からの申出があって,保護観察所の長がその必要があると認めたときに行います。


2 対象となる者に仮釈放中の者を含む。


更生緊急保護は,刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた者が対象です。


仮釈放中の者は,保護観察に付されているので,更生緊急保護の対象にはなりません。


3 対象となる者が刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた後2年を超えない範囲内において行われる。


更生緊急保護の期間は,6か月を超えない範囲です。必要な場合は,さらに6か月を超えない範囲で延長することが可能です。


4 刑事施設の長又は検察官がその必要があると認めたときに限って行われる。


選択肢2の解説に書いたように,更生緊急保護の必要を判断するのは,保護観察所の長です。


5 更生保護事業を営む者に委託して行うことができる。


これが正解です。更生緊急保護は,保護観察所の長が自ら行うほかに,更生保護事業を営む者その他の適当な者に委託して行います。


〈今日の注意ポイント〉


この問題に出題されるものは,すべて重要なもので構成されていますが,特に覚えておきたいのは,更生緊急保護の対象とその期間です。


更生緊急保護の対象

刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束を解かれた者(保護観察に付されている者は対象外)


更生緊急保護の期間

6か月を超えない範囲。必要な場合は,さらに6か月を超えない範囲で延長可能。

2024年1月23日火曜日

保護観察制度

 保護観察制度は,更生保護法の中心をなします。


民法の成年年齢は20歳から18歳に引き下げられていますが,少年法の少年の年齢は,20歳のままで変更がありません。


そのために,18歳と19歳は新しく特定少年と規定され,18歳未満の少年とは異なる扱いがなされます。


保護観察の第1号と第2号は,少年を対象としていますが,特定少年に関しては少し異なります。


保護処分に関する特定少年についての詳細の出題は,まだ出題されないと思うので,今はとりあえず,18歳未満の少年についてしっかり覚えておきたいです。


今の時点(2024年1月)では覚えなくてもよいと思いますが,特定少年の保護処分は


・少年院送致

・2年間の保護観察

・6か月の保護観察


の3種類です。


児童自立支援施設・児童養護施設送致がありません。考えてみると,これまでも18・19歳の少年には,児童自立支援施設・児童養護施設送致は適用されていなかったのかもしれません。


児童自立支援施設・児童養護施設は,児童福祉施設だからです。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題147

保護観察に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 保護観察は,保護観察対象者の居住地を管轄する保護観察所が行う。

2 保護観察の対象者は,自らの改善更生に必要な特別遵守事項を自分で定める。

3 保護観察処分少年の保護観察期間は,保護処分決定の日から,原則として18歳に達するまでの期間である。

4 保護観察の良好措置として,仮釈放者には仮解除の措置がある。

5 保護観察の不良措置として,少年院仮退院者には退院の措置がある。


問題自体は難しいですが,正解すること自体はそれほど難しくはありません。


過去問を正解できることも大切ですが,正解以外のものを覚えないと過去問を解くことの意味はなさなくなります。


それでは解説です。


1 保護観察は,保護観察対象者の居住地を管轄する保護観察所が行う。


これが正解です。この問題を正解するのは,それほど難しくないという理由がわかると思います。


逆に,この選択肢を正解として選べなかったら,つまり消去法を使って正解するのはとても難しい問題です。


それではそのほかの解説です。


2 保護観察の対象者は,自らの改善更生に必要な特別遵守事項を自分で定める。


特別遵守事項を定めるのは,保護観察所の長あるいは地方更生保護委員会です。


3 保護観察処分少年の保護観察期間は,保護処分決定の日から,原則として18歳に達するまでの期間である。


保護観察処分少年の保護観察期間は,保護処分決定の日から,原則として20歳に達するまでの期間です。


4 保護観察の良好措置として,仮釈放者には仮解除の措置がある。


保護観察は,保護観察官と保護司によって,指導監督と補導援護という方法で行います。


そのうち,遵守事項を守っているか確認するのは,指導監督に当たります。


保護観察には,良好措置というものがあり,態度が良好であれば,本退院などがあります。


しかし,仮釈放者,つまり3号観察の者には,良好措置の制度はありません。


仮釈放者に良好措置として,仮解除してしまうと,裁判所が決めた刑期が変わってしまうためです。


5 保護観察の不良措置として,少年院仮退院者には退院の措置がある。


少年仮退院者,つまり2号観察の者が,本退院するのは,保護観察の良好措置です。


不良措置で退院するのはおかしなことになってしまうでしょう。


〈今日の注意ポイント〉


この問題には,保護観察官と保護司が出題されていませんが,これらの職種の役割が出題されます。


その際,「それぞれ役割分担がある」という内容のものが出題されることがよくあります。


しかし,更生保護法には役割分担の規定はありません。かなりの頻度で出題されているので,注意が必要です。

2024年1月22日月曜日

第36回国家試験に出題される可能性が高そうなもの

社会福祉士の国家試験の特徴は,出題範囲が広いことです。


しかし,その範囲は無限ではありません。


社会福祉振興・試験センターがその範囲を示しています。

国家試験の勉強は,その範囲に従って勉強することになります。


覚えたことのほとんどは,試験に出題されることはありません。

覚えたことのほんの数パーセントが国家試験に役立ちます。


ヤマを張る


という言葉がありますが,ヤマを張って勉強したところで,国家試験に合格できる点数にはなりません。


とはいうものの,出題される可能性が高いものは存在します。


共通科目

・心理療法

・社会保障給付費


専門科目

・様々なアプローチ

・スーパービジョン


たったこれだけです。


これらが出題された問題をすべて得点できたところでたった4~6点アップできることにすぎませんが,これらは確実に覚えて試験に臨みたいです。


その次に出題されそうなものとしては,


・民生費

・国民医療費

・成年後見制度の概況

・ソーシャルワーク専門職のグローバル定義


といったものがあります。


国家試験の合格に必要なことは,出題基準の範囲をひたすら覚えていくことです。


※今日の問題はお休みします。

2024年1月21日日曜日

第36回国家試験の大胆予測!!

この学習部屋では,トピック的な内容は極力避けています。

すぐに情報が古くなるからです。


そんな中, 第36回国家試験の大胆予測!!


第37回からは平成元年度カリキュラムでの国家試験になります。


今回のカリキュラム改正は,ゆっくり導入されてきたこともあり,混乱はそれほど大きくならないように思います。


それは別として,第36回国家試験は,第37回への移行を見据えたものとなります。


ヒントになるのは,報告書「社会福祉士国家試験の今後の在り方について」(社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会)です。


その中で着目したいのは,特に試験委員への支援です。


試験委員は,その分野のプロフェッショナルですが,問題づくりは専門家ではありません。


そのために,下手な問題ができてしまいます。


試験委員への支援によって,知識がなくても正解できてしまいそうな問題は減るものと思われます。


出題内容自体は,オーソドックスなもので構成されると思いますが,知識不足の人にとっては,ハードルが高い問題が続くでしょう。


基礎をしっかり蓄積してきた人にとっては,勉強してはきた知識がそのまま使えるものとなるので,得点できる人は高い点数がとれるものとなります。


さあ,あと2週間。しっかり知識を積み重ねていきたいです。


※今日の問題はお休みします。

2024年1月20日土曜日

障害者就業・生活支援センター

 

障害者就業・生活支援センターは,障害者雇用促進法が規定しています。

 

障害者就業・生活支援センターの業務

・支援対象障害者からの相談に応じ、必要な指導及び助言。

・公共職業安定所、地域障害者職業センター、社会福祉施設、医療施設、特別支援学校その他の関係機関との連絡調整その他。

・職業準備訓練のあっせん。

・支援対象者の職業生活における自立を図るために必要な業務。


それでは,今日の問題です。

 

32回・問題146

事例を読んで,障害者就業・生活支援センターのB支援担当職員(社会福祉士)が行うべき支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 障害者就業・生活支援センターのB支援担当職員は,知的障害のあるCさんから,勤務先で担当する仕事の内容が変わったため,それに対応するのが難しくて失敗が多くなり出勤する意欲が湧かなくなってしまったと相談を受けた。実際,既に1週間仕事は休んでいるが,現在の事業所での就労は継続したいという。Cさんは,10年前に特別支援学校高等部を卒業と同時に現在の事業所に就職した。

1 近隣の就労移行支援事業所が行う就労定着支援を利用するよう助言する。

2 卒業した特別支援学校に対して,Cさんの新たな個別の教育支援計画の策定を要請する。

3 障害者職業能力開発校において,現在求人の多い職種での職業訓練の受講をするように助言する。

4 職業適性上の課題が考えられるので,地域障害者職業センターに職業準備支援を依頼する。

5 事業所を訪問して状況を確認した上で,関係者によるカンファレンスを開催する。

 

社会資源の知識がなくても正解できるタイプの問題です。

こういった問題をミスすることは,命取りになりかねません。

心して,問題を解くことが必要です。

 

それでは解説です。

 

1 近隣の就労移行支援事業所が行う就労定着支援を利用するよう助言する。

 

就労定着支援は,就労移行支援,就労継続支援,生活介護,自立訓練の利用を経て,通常の事業所に新たに雇用されて,6か月を経過した者が対象です。

 

Cさんは,10年前に特別支援学校高等部を卒業と同時に現在の事業所に就職したという情報から,規定されているサービスを受けていません。

 

2 卒業した特別支援学校に対して,Cさんの新たな個別の教育支援計画の策定を要請する。

 

このタイプは,「〇〇に〇〇をゆだねる」と同じようなものです。ゆだねるで正解になったものを見たことがありません。

 

それは別として,特別支援学校が策定する教育支援計画は,在校生を対象にするものです。

 

卒業生は対象ではありません。

 

3 障害者職業能力開発校において,現在求人の多い職種での職業訓練の受講をするように助言する。

 

Cさんは,在職中です。そして現在の事業所での就労は継続したいと言っています。

 

それは別として,現在求人の多い職種での職業訓練の受講をするように助言するのはあまりに稚拙です。

 

職業訓練を受講するなら,支援対象者の適正に合うものでなければなりません。

 

4 職業適性上の課題が考えられるので,地域障害者職業センターに職業準備支援を依頼する。

 

職業準備支援は,就労可能性を高めるために実施するものです。就労に必要な知識習得や社会生活技能向上などの支援を行います。

 

Cさんは既に就労しています。

 

地域障害者職業センターが行う就労中の人の支援は,ジョブコーチやリワーク支援です。

 

ただし,リワーク支援は,うつなどによって求職している人が復職するための支援です。

 

5 事業所を訪問して状況を確認した上で,関係者によるカンファレンスを開催する。

 

これが圧倒的に適切です。

 

支援の最初は,状況の確認です。

 

そのほかの選択肢はすべて,情報を把握する前に具体的な解決策を提示しています。

 

ソーシャルワークの事例問題と同じで,そういったものが並んでいる中に,状況確認するものが含まれているとそれが圧倒的に正解です。

 

〈今日の注意ポイント〉

 

今日の問題はそれほど難しくはありません。

しかし,事例問題は,そんなに簡単なものではありません。

 

国家試験には,「正しいもの」「適切なもの」「最も適切なもの」を選ぶタイプの問題があります。

 

そのうち「最も適切なもの」を選ぶ問題は,すべては適切であり,そのうちから,最も適切なものを選ぶことが必要なものもあります。

 

一度答えを選んでも,もう一度「もっと適切なものはないか」という視点で問題を読み直してみることをおすすめします。

2024年1月19日金曜日

福祉事務所の就労支援員の業務

福祉事務所は,就労自立を目指して就労支援も行っています。

ハローワークも,就労支援を行っています。

 

福祉事務所には,就職支援コーディネーター就労支援員が配置されています。

 

ハローワークには,就職支援ナビゲーターが配置されています。

 

さて,今日のテーマは,そのうちの福祉事務所の就労支援員の業務です。

 

なぜ,わざわざ「福祉事務所の」とつけているかと言えば,就労支援員は,就労支援事業所にも配置されているからです。

 

福祉事務所の就労支援員の業務

・ハローワークへの同行訪問

・履歴書の書き方の指導

・面接の練習 など 

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題145 

福祉事務所の就労支援員の業務に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 公共職業安定所(ハローワーク)への同行支援

2 障害者雇入れ計画の策定指導

3 健康管理の指導

4 職業能力開発促進法に基づく公共職業訓練

5 職場適応のためのジョブコーチ支援計画の策定

 

これまでにはあまりないタイプの問題です。

 

これからはこういったピンポイントの問題も出題されるようになるのでしょう。

 

知識のありなしが明確に現われるので,受験者泣かせと言えるのかもしれません。

 

それでは,解説です。

 

1 公共職業安定所(ハローワーク)への同行支援

 

これが正解です。公共職業安定所(ハローワーク)への同行支援は,福祉事務所に配置される就労支援員の業務の一つです。

 

2 障害者雇入れ計画の策定指導

 

障害者雇入れ計画とは,障害者雇用促進法に基づくもので,障害者雇用率を満たせなかった企業が策定するものです。

 

あまり知られていないかもしれませんが,外国人雇用や障害者雇用の届出先は,ハローワークです。

 

ハローワークでは,その報告書を見て,企業に指導を行います。

 

3 健康管理の指導

 

健康管理の指導を行うのは,保健師等です。

 

4 職業能力開発促進法に基づく公共職業訓練

 

職業能力開発促進法に基づく公共職業訓練をあっせんするのは,ハローワークの業務です。

 

5 職場適応のためのジョブコーチ支援計画の策定

 

ジョブコーチ支援計画を策定するのは,ジョブコーチです。

 

〈今日の注意ポイント〉

 

今日の問題には,登場していませんが,ハローワークには,就職支援ナビゲーターが配置されています。

 

ハローワークの就職支援ナビゲーターの業務

・職業相談

・職業紹介

・履歴書・職務経歴書の個別添削 など

 

ハローワークでも福祉事務所の就労支援員と同じような業務を行っていることがわかりますね。

 

ハローワークの就職支援ナビゲーターと福祉事務所の就労支援員の業務を比較すると,福祉事務所の就労支援員の業務の「公共職業安定所(ハローワーク)への同行支援」が明確です。

 

そのためにこれを正解にした問題を作ったのではないかと思います。

 

福祉事務所に配置される就職支援コーディネーターは,コーディネーターという名称のとおり,ハローワーク等と連携する役割を担います。

 

それよりも重要なことは,

 

福祉事務所 コーディネーター

ハローワーク ナビゲーター

 

これをしっかり覚えたいです。

2024年1月18日木曜日

障害者雇用促進法と法定雇用率

障害者雇用促進法では,事業主に,身体障害者,知的障害者,精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る)の雇用の義務があります。

 

障害者雇用率(法定雇用率)を達成できなかった企業のうち,常時労働者を101人以上雇用している事業主は,不足数に応じて,障害者雇用納付金を納付します。

 

逆に達成した企業には,障害者雇用調整金が支給されます。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題144 

障害者雇用率制度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 民間企業の法定雇用率は,2018年度(平成30年度)から3.0%になっている。

2 障害者雇用納付金制度は,対象障害者の雇用に伴う経済的負担の調整並びにその雇用の促進及び継続を図ることを目的としている。

3 週所定労働時間が20時間以上30時間未満の障害者は,雇用率算定の対象にはならない。

4 法定雇用率未達成の企業は,企業規模にかかわらず障害者雇用納付金が徴収される。

5 厚生労働大臣は,法定雇用率が未達成の場合,原則として企業名を公表しなければならない。

 

法定雇用率は,随時変更されています。

2024年(令和6年)4月から,引き上げられます。

 

それでは,解説です。

 

1 民間企業の法定雇用率は,2018年度(平成30年度)から3.0%になっている。

 

過去のことを覚えても仕方がないので,今後のものも含めてまとめてみます。

 

 

2024(令和6)年4月~

2026(令和8)年7月~

民間企業

2.5

2.7

国,地方公共団体等

2.8

3.0

教育委員会

2.7

2.9

 

法定雇用率は,このように改定されていくので,国家試験では具体的な数字は出題しにくいものです。

 

民間企業よりも,国・地方公共団体等のほうが高くなっていることがわかっていればとりあえず十分です。

 

2 障害者雇用納付金制度は,対象障害者の雇用に伴う経済的負担の調整並びにその雇用の促進及び継続を図ることを目的としている。

 

これが正解です。

 

民間企業にとって,障害者を雇用することは経済的負担があるために,頑張って雇用した企業に雇用調整金を給付します。

 

この雇用調整金の財源となるのが雇用納付金です。

 

この仕組みによって,負担の不均衡を是正しています。

 

3 週所定労働時間が20時間以上30時間未満の障害者は,雇用率算定の対象にはならない。

 

20時間以上30時間未満の短時間労働者も法定雇用率の算定の対象となります。

 

2024年(令和6年)4月からは,さらに短時間の「週10時間以上20時間未満」まで対象が広がります。

 

精神障害者,重度身体障害者,重度知的障害者の場合は,1人を0.5人とカウントする「ハーフカウント」が適用されます。

 

4 法定雇用率未達成の企業は,企業規模にかかわらず障害者雇用納付金が徴収される。

 

障害者雇用納付金が徴収される対象企業は,規模にかかわります。

これも改正されていくかもしれませんが,現時点(2024年1月)では,従業員101人以上の企業が対象となっています。

 

5 厚生労働大臣は,法定雇用率が未達成の場合,原則として企業名を公表しなければならない。

 

企業名を公表するのは,指導しても改善がみられない場合です。

 

〈今日の注意ポイント〉

 

近年,法定雇用率が上がったのは,2018年(平成30年)に精神障害者が雇用義務化されたことによります。

 

計算式

  

       対象障害者である常用労働者の数+失業している対象障害者の数

法定雇用率=―――――――――――――――――――――――――――――――

              常用労働者数+失業者数

 

2018年以降は,分子に精神障害者が含まれることになりましたが,そのまま適用すると,負担が大きいために,段階的に引き上げられているからです。

 

雇用率を算定する場合,1人を2人とカウントするダブルカウント,1人を0.5人とカウントするハーフカウントという仕組みがあります。

 

国家試験では,過去に1人を3人としてカウントする,というように出題されたことがありますが,現在のところ,トリプルカウントの仕組みはありません。

2024年1月17日水曜日

日本の労働法制

 日本国憲法は,


第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

② 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

③ 児童は、これを酷使してはならない。


と規定しています。


この規定に基づき,日本の労働法制が形づくられています。


その中でも,労働基準法と労働安全衛生法は,中心的な位置にある法制度です。


それでは,早速,今日の問題です。


第32回・問題143 

日本の労働法制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 日本国憲法第28条が保障する労働三権は,団結権,団体交渉権,勤労権である。

2 労働者災害補償保険の保険料は,事業主と労働者が折半して負担する。

3 雇用保険法において失業とは,被保険者が離職し,労働の意思及び能力を有するにもかかわらず,職業に就くことができない状態にあることをいう。

4 最低賃金法に基づく地域別最低賃金は,都道府県知事が決定する。

5 労働契約法は,使用者は,労働者に1週間について40時間を超えて労働させてはならないと規定している。


それほど難しくない問題ですが,このように羅列されると混乱しそうです。


気持ちを落ち着けて問題に取り組むことが必要です。


それでは,解説です。


1 日本国憲法第28条が保障する労働三権は,団結権,団体交渉権,勤労権である。


日本国憲法が保障する労働三権は,


・団結権

・団体交渉権

・団体行動権


の3つです。


2 労働者災害補償保険の保険料は,事業主と労働者が折半して負担する。


労働者災害補償保険(労災保険)は,すべての労働者に適用される社会保険です。

被保険者という概念が存在しません。


そのために,保険料はすべて事業主負担です。


労災保険は,すべての労働者に適用されます。国籍,雇用形態,年齢,不法滞在,事業主の保険料滞納などに関係なく,労働災害,通勤災害の発生によって,適用されるのが特徴です。


3 雇用保険法において失業とは,被保険者が離職し,労働の意思及び能力を有するにもかかわらず,職業に就くことができない状態にあることをいう。


これが正解です。


労災保険と雇用保険は,日本国憲法が保障する勤労の権利を保障するための社会保険です。

いずれも戦後まもなく制度化されました。


雇用保険は,労災保険と異なり,加入要件があります。


①一週間の所定労働時間が20時間時間以上あること。

②同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれる者。


保険料は,基本的に労使折半ですが,雇用保険二事業は事業主のみ負担します。


4 最低賃金法に基づく地域別最低賃金は,都道府県知事が決定する。


地域別最低賃金は,厚生労働大臣又は都道府県労働局長が決定します。


5 労働契約法は,使用者は,労働者に1週間について40時間を超えて労働させてはならないと規定している。


使用者は,労働者に1週間について40時間を超えて労働させてはならないと規定しているのは,労働基準法です。


〈今日の注意ポイント〉


社会福祉士の国家試験では,根拠法がよく問われます。

根拠法を変えるだけで,簡単に問題がつくることが可能だからです。


今日の問題では,選択肢5がその例です。

根拠法が問われた場合は,落ち着いて考えてみるのが適切です。

2024年1月16日火曜日

児童相談所について

児童相談所の出題頻度は極めて高いです。


どのように出題されてもよいくらいの知識を持って国家試験に臨みたいものです。


今日は,設置と業務がセットとなった問題を取り上げます。重要ポイントがまとまっていて,良い問題だと思います。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題142

児童相談所の設置及び業務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 都道府県及び政令指定都市・中核市は,児童相談所を設置しなければならない。

2 児童相談所長が行う一時保護は,保護者の同意なく1か月を超えてはならない。

3 児童相談所長は,児童本人の意に反して一時保護を行うことはできない。

4 児童相談所長は,児童等の親権者に係る民法の規定による親権喪失の審判の請求を行うことができる。

5 管理栄養士の配置又はこれに準ずる措置を行うものとする。


勉強不足の人は,5分の1以上の確率で正解することはかなり難しい問題です。

こういった問題が社会福祉士の国家試験の理想です。


知識がなくても消去できてしまう選択肢が混じっている問題は,あまり良い問題ではないからです。


それでは,解説です。


1 都道府県及び政令指定都市・中核市は,児童相談所を設置しなければならない。


児童相談所の設置義務があるのは,都道府県と政令指定都市です。


中核市と特別区(今ある特別区は東京23区のみ)は,設置義務はありません。

任意で設置することができます。


2 児童相談所長が行う一時保護は,保護者の同意なく1か月を超えてはならない。


一時保護の期間は,2か月を超えてはなりません。


ただし,児童相談所長又は都道府県知事がその必要を認めるときは,引き続き一時保護を行うことができます。


その際,親権者又は未成年後見人の意に反する場合,家庭裁判所の承認を得ることが必要です。


3 児童相談所長は,児童本人の意に反して一時保護を行うことはできない。


一時保護は,その必要性に応じて実施されます。本人,親などの意にかかわらず,必要であれば実施します。


自己決定の原則などと言っている場合ではありません。


4 児童相談所長は,児童等の親権者に係る民法の規定による親権喪失の審判の請求を行うことができる。


これが正解です。児童相談所長は,親権喪失および親権停止の審判の請求を行うことができます。


児童相談所長のほかに親権喪失および親権停止の審判の請求を行うことができるのは,


・児童本人

・児童の親族

・検察官

・未成年後見人

・未成年後見監督人


です。


5 管理栄養士の配置又はこれに準ずる措置を行うものとする。


児童相談所は生活施設ではないので,管理栄養士等は配置されません。


〈今日の注意ポイント〉


親権喪失および親権停止の審判の請求者は,児童本人が含まれます。


これは,「児童の権利に関する条約」で児童の「能動的権利」を認めていることに従っているためです。


児童の権利に関する条約は,児童は愛され守られる権利である「受動的権利」に加えて,意見表明や結社の自由などの「能動的権利」を保障していることが特徴です。

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