障害者雇用促進法では,事業主に,身体障害者,知的障害者,精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものに限る)の雇用の義務があります。
障害者雇用率(法定雇用率)を達成できなかった企業のうち,常時労働者を101人以上雇用している事業主は,不足数に応じて,障害者雇用納付金を納付します。
逆に達成した企業には,障害者雇用調整金が支給されます。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題144
障害者雇用率制度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 民間企業の法定雇用率は,2018年度(平成30年度)から3.0%になっている。
2 障害者雇用納付金制度は,対象障害者の雇用に伴う経済的負担の調整並びにその雇用の促進及び継続を図ることを目的としている。
3 週所定労働時間が20時間以上30時間未満の障害者は,雇用率算定の対象にはならない。
4 法定雇用率未達成の企業は,企業規模にかかわらず障害者雇用納付金が徴収される。
5 厚生労働大臣は,法定雇用率が未達成の場合,原則として企業名を公表しなければならない。
法定雇用率は,随時変更されています。
2024年(令和6年)4月から,引き上げられます。
それでは,解説です。
1 民間企業の法定雇用率は,2018年度(平成30年度)から3.0%になっている。
過去のことを覚えても仕方がないので,今後のものも含めてまとめてみます。
|
2024(令和6)年4月~ |
2026(令和8)年7月~ |
民間企業 |
2.5% |
2.7% |
国,地方公共団体等 |
2.8% |
3.0% |
教育委員会 |
2.7% |
2.9% |
法定雇用率は,このように改定されていくので,国家試験では具体的な数字は出題しにくいものです。
民間企業よりも,国・地方公共団体等のほうが高くなっていることがわかっていればとりあえず十分です。
2 障害者雇用納付金制度は,対象障害者の雇用に伴う経済的負担の調整並びにその雇用の促進及び継続を図ることを目的としている。
これが正解です。
民間企業にとって,障害者を雇用することは経済的負担があるために,頑張って雇用した企業に雇用調整金を給付します。
この雇用調整金の財源となるのが雇用納付金です。
この仕組みによって,負担の不均衡を是正しています。
3 週所定労働時間が20時間以上30時間未満の障害者は,雇用率算定の対象にはならない。
20時間以上30時間未満の短時間労働者も法定雇用率の算定の対象となります。
2024年(令和6年)4月からは,さらに短時間の「週10時間以上20時間未満」まで対象が広がります。
精神障害者,重度身体障害者,重度知的障害者の場合は,1人を0.5人とカウントする「ハーフカウント」が適用されます。
4 法定雇用率未達成の企業は,企業規模にかかわらず障害者雇用納付金が徴収される。
障害者雇用納付金が徴収される対象企業は,規模にかかわります。
これも改正されていくかもしれませんが,現時点(2024年1月)では,従業員101人以上の企業が対象となっています。
5 厚生労働大臣は,法定雇用率が未達成の場合,原則として企業名を公表しなければならない。
企業名を公表するのは,指導しても改善がみられない場合です。
〈今日の注意ポイント〉
近年,法定雇用率が上がったのは,2018年(平成30年)に精神障害者が雇用義務化されたことによります。
計算式
対象障害者である常用労働者の数+失業している対象障害者の数
法定雇用率=―――――――――――――――――――――――――――――――
常用労働者数+失業者数
2018年以降は,分子に精神障害者が含まれることになりましたが,そのまま適用すると,負担が大きいために,段階的に引き上げられているからです。
雇用率を算定する場合,1人を2人とカウントするダブルカウント,1人を0.5人とカウントするハーフカウントという仕組みがあります。
国家試験では,過去に1人を3人としてカウントする,というように出題されたことがありますが,現在のところ,トリプルカウントの仕組みはありません。