厚生労働省では,毎年,『高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査を発表しています。
傾向は,毎年大きくは変化していません。
年度が違うものを覚えていても,十分に対応できます。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題135
「平成29年度『高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」(厚生労働省)で示されている「養介護施設従事者等」による高齢者虐待に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 市町村等が虐待と判断した件数は,2008年度(平成20年度)以降減少傾向にある。
2 虐待の発生要因として最も多いものは,「倫理観や理念の欠如」である。
3 虐待の事実が認められた施設・事業所のうち,およそ3割が過去に何らかの指導等(虐待以外の事案に関する指導等を含む)を受けている。
4 被虐待高齢者の状況を認知症高齢者の日常生活自立度でみると,「Ⅰ」が全体のおよそ4分の3を占めている。
5 虐待の内容として最も多いものは,「経済的虐待」となっている。
(注) 「養介護施設従事者等」とは,養介護施設又は養介護事業の業務に従事する者を指す。
この問題自体は,調査結果を知らずとも,十二分に正解できる可能性はあります。
これが国家試験の面白いところです。
それでは解説です。
1 市町村等が虐待と判断した件数は,2008年度(平成20年度)以降減少傾向にある。
もちろん,増加傾向にあります。
減少傾向にあるなら,出題する意義がないかもしれません。
2 虐待の発生要因として最も多いものは,「倫理観や理念の欠如」である。
虐待の発生要因として最も多いものは,「教育・知識・介護技術等に関する問題」です。
3 虐待の事実が認められた施設・事業所のうち,およそ3割が過去に何らかの指導等(虐待以外の事案に関する指導等を含む)を受けている。
これが正解です。
しかし,3割という数字がよくわからないので,この時点では冷静に△をつけて次に進みます。
4 被虐待高齢者の状況を認知症高齢者の日常生活自立度でみると,「Ⅰ」が全体のおよそ4分の3を占めている。
認知症高齢者の日常生活自立度の「Ⅰ」は最も軽度なもので,何らかの認知症を有していても,日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している状態です。
最も多いのは,日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さがときどき見られて介護を必要とする「Ⅲ」です。
何となくわかるような気がしませんか。
5 虐待の内容として最も多いものは,「経済的虐待」となっている。
最も多い虐待の種類は「身体的虐待」です。
〈今日の注意ポイント〉
認知症高齢者の日常生活自立度が出題されて,慌てた人も多かったのではないかと思います。
Ⅰが最も重い症状なのか,最も軽い症状なのか,わかりません。
しかし,それがわからずとも,虐待が起きそうなのは,いわゆる「BPSD」が多く出てくる段階なのではないかと思います。
軽い時には,BPSDは生じることなく,重い時には,寝たきりに近くなります。
それを考えると,「Ⅰ」の時に,虐待が多く発生することはないだろうと推測できそうです。