2023年4月30日日曜日

障害者総合支援法の実施主体

障害者総合支援法の実施主体は,市町村です。


都道府県は,専門職の確保・質の向上,事業者指定など基盤整備を行います。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題60 「障害者総合支援法」における都道府県の役割に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 自立支援医療の更生医療を実施する。

2 指定特定相談支援事業者の指定を行う。

3 サービス管理責任者研修事業を行う。

4 介護給付費等の支給決定を行う。

5 障害福祉計画を策定する。


とてもうまい出題です。


奇をてらった内容ではないですが,確実な知識がなければ正解するのはとても難しいです。


それでは解説です。


1 自立支援医療の更生医療を実施する。


自立支援医療の3種類は以下のように分かれます。


育成医療(障害児に対する医療) → 市町村

更生医療(身体障害者に対する医療) → 市町村

精神通院医療 → 都道府県


2 指定特定相談支援事業者の指定を行う。


障害者総合支援法の理解を難しくしている理由には,相談支援事業もあるように思います。


相談支援事業は2種類あります。


一般相談支援事業

  →  地域移行支援と地域定着支援を行う  →  指定は都道府県


特定相談支援事業

  →  障害者のケアマネジメントを行う  → 指定は市町村


3 サービス管理責任者研修事業を行う。


これが一つめの正解です。


サービス管理責任者に限らず,専門職ら対する研修は,都道府県の役割です。


4 介護給付費等の支給決定を行う。


障害者総合支援法の実施主体は市町村です。


介護給付,訓練等給付等の支給決定を行うのは,市町村の役割です。


都道府県が支給決定するのは,自立支援給付のうち,精神通院医療です。


5 障害福祉計画を策定する。


これが1つめの正解です。


障害福祉計画は,都道府県,市町村ともに策定義務があります。


「障害者計画」だったら誤りです。


障害者計画も都道府県・市町村ともに策定義務がありますが,根拠法は,「障害者基本法」です。


障害福祉計画と障害者計画は引っ掛けでよく用いられるので注意が必要です。


2023年4月29日土曜日

障害者総合支援法における国・都道府県・市町村の役割

今回のテーマは,「障害者総合支援法における国・都道府県・市町村の役割」です。

 

この前に気を付けておきたいのは,障害者分野の法制度には,障害者基本法が存在していることです。

 

近年では,こどもの分野でも「こども基本法」が作られていますが,「●●基本法」は,省庁の枠を超えて,総合的な施策を推進するためのものです。

 

すべての「●●基本法」がそうなっているかは分かりませんが,社会福祉士の国家試験で出題されているものは,内閣府が所管しています。

 

「●●基本法」を受けて,それぞれの省庁で具体的な法制度を形成していきます。

 

障害者分野では,以下のような構成です。

 

内閣府


障害者基本法


各省庁


障害者総合支援法(厚生労働省)

障害者雇用促進法(厚生労働省)

バリアフリー法(厚生労働省・国土厚生省)

など


 

もう一つ気を付けたいのは,計画です。

 

障害者分野の主な計画には,障害者基本法の障害者計画,障害者総合支援法の障害福祉計画があります。

 

中央省庁が定めるのは,障害者基本法の障害者基本計画は「政府」,障害者総合支援法の基本指針は「厚生労働大臣」です。

 

障害者総合支援法の実施主体は,市町村です。

 

と言っても都道府県の役割がないわけではありません。

 

余談ですが,福祉サービスの提供の責任を市町村が担うのは,スウェーデンとそっくりです。

 

福祉サービスは,基礎的地方公共団体であるコミューンが担います。

 

スウェーデンでは,医療サービスの提供は,広域的地方公共団体であるレギオン(ランスティングから組織変更したもの)が担います。

 

日本でも医療は,市町村ではなく,都道府県の範疇です。これもスウェーデンそっくりです。

 

日本に話を戻します。

 

障害者総合支援法の実施主体は市町村ですが,都道府県が担うものもあります。

 

〈障害者総合支援法で都道府県が担う事務〉

 

・障害福祉サービス事業者の指定

・指定一般相談支援事業者の指定

・都道府県の障害福祉計画の策定

・地域生活支援事業のうち,都道府県が行うもの

・自立支援医療のうち,精神通院医療の支給決定

 

これら以外は,基本的に市町村の役割です。

 

それでは,今日の問題です。

 

26回・問題58 「障害者総合支援法」における行政の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 都道府県知事は,障害福祉サービス事業者の指定を行う。

2 地域生活支援事業の実施については,市町村は必ず行わなければならないが,都道府県はその判断に任されている。

3 厚生労働大臣は,障害福祉サービス等の提供体制を整備するために障害者基本計画を定める。

4 都道府県知事は,障害福祉サービス受給者証を交付する。

5 都道府県は,基幹相談支援センターを設置しなければならない。

 

この問題は,極めてスタンダードな問題です。

 

国・都道府県・市町村の役割の違いが明確にわかるからです。良い問題だと思います。

 

それでは,解説です。

 

1 都道府県知事は,障害福祉サービス事業者の指定を行う。

 

これが正解です。

 

障害福祉サービス事業者の指定を行うのは,都道府県知事です。

 

都道府県の役割の一つには,事業者を指定する基盤整備があります。

 

ところが介護保険には,市町村がかかわる地域密着型サービスが存在します。

 これは例外事項です。

 

障害者総合支援法にも例外事項が存在します。

 

事業者指定は基本的に都道府県の役割ですが,指定特定相談支援事業者の指定は市町村の役割となっています。

 

2 地域生活支援事業の実施については,市町村は必ず行わなければならないが,都道府県はその判断に任されている。

 

介護保険法の地域支援事業には,都道府県が行うものは存在しませんが,障害者総合支援法の地域生活支援事業には,市町村,都道府県,それぞれに必須事業が存在します。

 

障害者総合支援法の地域生活支援事業に都道府県の役割が存在している理由は,市町村が実施するには向かない専門的なサービスを実施する必要があるからです。

 

3 厚生労働大臣は,障害福祉サービス等の提供体制を整備するために障害者基本計画を定める。

 

厚生労働大臣は,障害福祉サービス等の提供体制を整備するために定めるのは,「基本指針」です。

 

障害者基本計画は,障害者基本法に定められ,政府が多岐にわたる障害者施策の基本方針を定めます。

 

4 都道府県知事は,障害福祉サービス受給者証を交付する。

 

障害福祉サービス受給者証を交付するのは,市町村長です。

 

都道府県知事が交付するものには,身体障害者福祉法の身体障害者手帳,根拠法が存在しない療育手帳,精神保健福祉法の精神障害者保健福祉手帳です。

 

5 都道府県は,基幹相談支援センターを設置しなければならない。

 

基幹相談支援センターは,市町村が任意で設置します。

 

この仕組みは,介護保険法の地域包括支援センターと同じです。

2023年4月28日金曜日

意外と忘れがちな根拠法

 社会福祉士の国家試験は,五者択一,または五者択二で出題されます。


正解以外は,確実に誤りにしなければなりません。


確実に誤りの文章にするための方法の一つには,根拠法を変えて出題する,というものがあります。


ところが,受験生は,意外とそれが抜け落ちがちです。サービスの内容は覚えても,どの法律に規定されているのかを意識することが少ないからでしょう。


障害者就業・生活支援センターが規定されているのは,障害者総合支援法,障害者雇用促進法のどっちでしょうか。


この問いに,自信をもって答えられない人は要注意です。


それでは今日の問題です。


第30回・問題58 「障害者総合支援法」で位置づけられている施設として,正しいものを1つ選びなさい。

1 地域活動支援センター

2 身体障害者福祉センター

3 児童発達支援センター

4 地域障害者職業センター

5 市町村保健センター


障害者の就労支援系サービスは,障害者総合支援法に基づくものと障害者雇用促進法に基づくものがあります。


前説の問いの障害者就業・生活支援センターは,障害者雇用促進法に基づくものです。


今日の問題を整理すると以下のようになります。


1 地域活動支援センター

障害者総合支援法

2 身体障害者福祉センター

身体障害者福祉法

3 児童発達支援センター

児童福祉法

4 地域障害者職業センター

障害者雇用促進法

5 市町村保健センター

地域保健法


ということで,障害者総合支援法に基づくものは,地域活動支援センターでした。


この中で注意したいのは,児童発達支援センターです。


児童発達支援センターには「発達」という名称が含まれるために発達障害者支援法だと勘違いしてしまいます。


しかし,根拠法は児童福祉法です。


今日の問題のように,文章になっていない問題は,問題を読む時間は節約できます。そして読み間違いをすることもありません。


しかし,知識なしでは正解するのは困難なので,実は受験者泣かせの問題となります。

2023年4月27日木曜日

就労移行支援と就労継続支援の違い

障害者総合支援法には,就労支援系サービスがあるのが特徴です。

 

 

就労していない →就労移行支援 → 就労継続支援(A型・B型)

                → 就労定着支援 

 

 

この図式を頭に入れて覚えるとよいです。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題59 「障害者総合支援法」に基づく就労継続支援A型のサービスの利用に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 障害支援区分の認定が必要である。

2 暫定支給決定の仕組みがある。

3 サービスの利用者負担は不要である。

4 利用者は,通常の事業所に雇用されることが可能な障害者でなければならない。

5 利用期間について法令上の定めがある。

 

知識不足では正解できる問題ではありません。

 

国家試験に合格するためには,こういった問題を確実に正解する知識が必要です。

 

それでは,解説です。

 

1 障害支援区分の認定が必要である。

 

障害支援区分認定が必要なのは,介護給付を利用する場合です。

 

就労支援系サービスは訓練等給付なので,障害支援区分認定は必要ではありません。

 

2 暫定支給決定の仕組みがある。

 

これが正解です。

 

就労支援系サービスは,障害支援区分認定を必要としない代わりに,暫定支給決定があり,実際に利用してみて,それでよければ本支給となる仕組みを取っています。

 

訓練等給付を利用する場合に障害支援区分認定を必要としない理由は暫定支給決定の仕組みがあるからです。

 

うまく考えるものです。

 

3 サービスの利用者負担は不要である。

 

障害者の就労支援系サービスを規定する法制度には,障害者総合支援法と障害者雇用促進法があります。

 

サービスの利用者負担が不要なのは,障害者雇用促進法に基づくサービスです。

 

障害者総合支援法に基づくサービスは,利用者負担が必要です。

 

4 利用者は,通常の事業所に雇用されることが可能な障害者でなければならない。

 

通常の事業所に雇用されることが可能な障害者を対象とするのは,就労移行支援です。

 

就労継続支援は,通常の事業所に雇用されることが難しい障害者を対象とします。

 

5 利用期間について法令上の定めがある。

 

利用期間について法令上の定めがあるのは,就労移行支援です。

 

就労移行支援に利用期間の定めが設けられているのは,その期間に一般就労ができなかった場合は,就労継続支援を利用することになるからです。

 

就労継続支援は,A型,B型ともに利用期間について法令上の定めがないので,ずっと利用することができます。

2023年4月26日水曜日

障害者総合支援法の訓練等給付

障害者総合支援法の障害福祉サービスは,介護給付と訓練等給付に分類されます。

 

介護給付を希望する際には,障害支援区分認定を受けます。

 

訓練等給付を希望する際には,共同生活援助(グループホーム)で介護が必要である場合を除いて障害支援区分認定を受ける必要がありません。

 

訓練等給付があるのが,介護保険サービスとの違いです。

 

訓練等給付の特徴には,暫定支給という仕組みがあることです。

 

暫定支給の仕組みを活用して,実際に利用してみて,本人の意見などを聴いて,それでよければ本支給となります。

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題59 「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 共生型サービスは,障害児が健常児と共に学校教育を受けるための支援を行うものである。

2 行動援護は,介護保険の給付を受けることができる者でも必要に応じて利用できる。

3 就労移行支援の利用には,障害支援区分の認定が必要である。

4 生活介護を利用する場合は,暫定支給決定が行われる。

5 障害児に関するサービスの利用者負担は不要である。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

 

障害福祉サービスとして,「行動援護」,「就労移行支援」「生活介護」が出題されています。

 

この3つのうち,訓練等給付は「就労移行支援」,介護給付は「行動援護」と「生活介護」です。

 

障害支援区分認定が必要なもの

・行動援護

・生活介護

 

障害支援区分認定が必要ではないもの

・就労移行支援

 

暫定支給の仕組みがあるもの

・就労移行支援

 

暫定支給の仕組みがないもの

・行動援護

・生活介護

 

これで障害福祉サービスの利用について,見えてくるものがありませんか。

 

介護給付は,暫定支給の仕組みがない代わりに,障害支援区分認定を受けて必要なサービスを決定する。

 

訓練等給付は,障害支援区分認定を受けない代わりに,暫定支給の仕組みがある。

 

特に,訓練等給付を利用する際に,障害支援区分認定を受けない理由が見えてくるように思います。

 

それでは解説です。

 

1 共生型サービスは,障害児が健常児と共に学校教育を受けるための支援を行うものである。

 

介護保険サービス事業者が障害福祉サービスの指定を取りやすくする。

 

あるいは,障害福祉サービス事業者が介護保険サービスの指定を取りやすくする。

 

そのことによって,介護保険サービスと障害福祉サービスを一体的に提供することが可能です。介護保険サービスと障害福祉サービスを一体的に提供するのが共生型サービスです。

 

2 行動援護は,介護保険の給付を受けることができる者でも必要に応じて利用できる。

 

これが正解です。

 

共生型サービスは,介護保険サービス事を受けている人が65歳になると障害福祉サービスに切り替えることが発端となりました。

 

今までに利用してきた障害福祉サービスと同等なサービスが介護保険サービスになかった場合,引き続き,障害福祉サービスを利用します。

 

介護保険サービスには行動援護と同等なサービスがないので,引き続き障害福祉サービスを利用します。

 

3 就労移行支援の利用には,障害支援区分の認定が必要である。

 

就労移行支援は,訓練等給付なので,障害支援区分認定は必要ありません。

 

4 生活介護を利用する場合は,暫定支給決定が行われる。

 

生活介護は,介護給付なので,算定支給はありません。

 

5 障害児に関するサービスの利用者負担は不要である。

 

障害者総合支援法は,障害者を18歳以上と規定していますが,障害児でも利用することができるサービスがあります。

 

そういったサービスを利用した場合,利用者負担があります。

2023年4月25日火曜日

障害福祉サービスの覚え方

日本の障害者福祉は,障害種別ごとに発展してきたことが特徴です。


2005年(平成17年)の障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)は,障害種別をなくした障害福祉サービスに一元化したのが特徴です。


障害者福祉になじみがないとそれでも複雑に思うかもしれません。


高齢者福祉と異なり,就労支援系のサービスがあるのが,少しばかり複雑に感じさせる理由なのかもしれません。


しかし,旧体系に比べるとずっとシンプルで覚えやすくなっています。


障害福祉サービスは,名称で覚えることが可能です。


例えば,就労支援系サービスは,


就労していない → 就労移行支援 → 就労継続支援(A型・B型)

                 → 就労定着支援 


のイメージで覚えると押さえると良いです。


就労していない者が一般就労を目指して「就労支援移行」,一般就労できれば,「就労定着支援」,一般就労できなければ「就労継続支援」を利用する


というイメージです。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題58 「障害者総合支援法」の障害福祉サービスに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 生活介護とは,医療を必要とし,常時介護を要する障害者に,機能訓練,看護,医学的管理の下における介護等を行うサービスである。

2 行動援護とは,外出時の移動中の介護を除き,重度障害者の居宅において,入浴,排せつ,食事等の介護等を行うサービスである。

3 自立生活援助とは,一人暮らし等の障害者が居宅で自立した生活を送れるよう,定期的な巡回訪問や随時通報による相談に応じ,助言等を行うサービスである。

4 就労移行支援とは,通常の事業所の雇用が困難な障害者に,就労の機会を提供し,必要な訓練などを行うサービスである。

5 就労継続支援とは,就労を希望し,通常の事業所の雇用が可能な障害者に,就労のために必要な訓練などを行うサービスである。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。


早速解説です。


1 生活介護とは,医療を必要とし,常時介護を要する障害者に,機能訓練,看護,医学的管理の下における介護等を行うサービスである。


法制度では「医療」は「療養」という名称が使われることが多いようです。


障害福祉サービスでは,「介護」の名称がつくのが複数ありますが,そのうち医療に関するものは「療養介護」です。


生活介護は,高齢者分野ではデイサービスに近いです。

つまり,医療は含まない通所系サービスです。


国家試験では,居宅介護(介護保険では訪問介護)と混同させるように出題されるので,注意が必要です。



2 行動援護とは,外出時の移動中の介護を除き,重度障害者の居宅において,入浴,排せつ,食事等の介護等を行うサービスである。


重度障害者というヒントがあります。


重度訪問介護だとわかります。


行動援護は,知的障害者や精神障害者に対する外出支援です。


似たものには,同行援護があります。これは,視覚障害者に対する外出支援です。


3 自立生活援助とは,一人暮らし等の障害者が居宅で自立した生活を送れるよう,定期的な巡回訪問や随時通報による相談に応じ,助言等を行うサービスである。


これが正解です。


もしも自立生活援助がわからずとも,「自立した生活」というヒントから「自立生活援助」だと考えることが可能です。


4 就労移行支援とは,通常の事業所の雇用が困難な障害者に,就労の機会を提供し,必要な訓練などを行うサービスである。


通常の事業所の雇用が困難な障害者に対する就労支援サービスは,就労継続支援です。


A型は,雇用契約を締結して利用します。


B型は,雇用契約を締結しないで利用します。


5 就労継続支援とは,就労を希望し,通常の事業所の雇用が可能な障害者に,就労のために必要な訓練などを行うサービスである。


就労を希望して通常の事業所の雇用が可能な障害者が利用するのは,就労移行支援です。

就労継続支援と異なり,期間を定めて利用するのが特徴です。

2023年4月24日月曜日

自治事務と法定受託事務

平成19年度改正カリキュラムの「福祉行財政と福祉計画」は,令和元年度改正カリキュラムでは消滅し,その内容は「地域福祉と包括支援体制」に統合されます。

 

「地域福祉と包括支援体制」は覚えるべき内容が多いので,かなり手こずりそうです。

 

さて,今日のテーマは,自治事務と法定受託事務です。一応,ここで確認しておきたいと思います。

 

自治事務と法定受託事務とは,地方公共団体が処理する事務のことをいいます。

 

地方自治法には,「自治事務とは,地方公共団体が処理する事務のうち,法定受託事務以外のものをいう」と規定されています。

 

法定受託事務は,地方自治法の別表に掲げられているものです。

 

つまり,地方公共団体が処理する事務のほとんどは,自治事務ということになります。

 

法定受託事務は,基本的に全国一律の基準によって行うものだと覚えると良いです。

 

自治事務はそれ以外のものです。

 

それでは,今日の問題です。

 

34回・問題44 次のうち,地方自治法上の法定受託事務に当たるものとして,正しいものを1つ選びなさい。

1 生活保護法に規定される生活保護の決定及び実施

2 介護保険法に規定される居宅介護サービス費の支給

3 身体障害者福祉法に規定される身体障害者手帳の交付

4 児童福祉法に規定される保育所における保育

5 国民健康保険法に規定される国民健康保険料の徴収

 

正解は,選択肢1です。

1 生活保護法に規定される生活保護の決定及び実施

 

これ以外は,すべて自治事務です。

 

福祉の実施に関するものは基本的に自治事務ですが,生活保護法に規定される生活保護の決定及び実施は法定受託事務です。

2023年4月23日日曜日

各国の社会保障制度~スウェーデン

スウェーデンなど北欧諸国は,高福祉高負担というイメージがありますが,それ以上の知識をもつ人はそれほど多くはないように思います。

 

スウェーデンに関して,1990年代に行われたエーデル改革によって,医療サービスは日本の都道府県にあたるランスティング,福祉サービスは日本の市町村にあたるコミューンによって提供されている,と教科書などでは記述されています。

 

ランスティングは,現在「レギオン」と改称されています

 

国家試験では,これがちょっと面倒になりそうです。

 

エーデル改革に関する出題では,ランスティングで良いですが,現時点の体制の出題では,レギオンとなります。

 

スウェーデンの社会保障制度を整理すると以下のようになります。

 

制度

方式

提供義務

年金,児童手当などの現金給付

社会保険方式

医療サービス

社会扶助方式

レギオン

福祉サービス

社会扶助方式

コミューン

社会扶助(生活保護に相当)

社会扶助方式

コミューン

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題27 各国の社会福祉や社会保障の現状に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 アメリカの公的医療保障制度には,低所得者向けのメディケアがある。

2 スウェーデンの社会サービス法では,住民が必要な援助を受けられるよう,コミューンが最終責任を負うこととなっている。

3 ドイツの社会福祉制度は,公的サービスが民間サービスに優先する補完性の原則に基づいている。

4 中国の計画出産政策は,一組の夫婦につき子は一人までとする原則が維持されている。

5 韓国の高齢者の介護保障(長期療養保障)制度は,原則として税方式で運用されている。

 

中国や韓国が出題されているのが新鮮です。

 

それでは,解説です。

 

1 アメリカの公的医療保障制度には,低所得者向けのメディケアがある。

 

アメリカの公的医療保障制度は,高齢者・障害者等を対象としたメディケア,低所得者を対象としたメディケイドがあります。

 

メディケイド(Medicaid)のaidは,助けるという意味です。

 

つまり,日本語では医療扶助になります。

 

2 スウェーデンの社会サービス法では,住民が必要な援助を受けられるよう,コミューンが最終責任を負うこととなっている。

 

これが正解です。

しかし,これを正解にするのはなかなか勇気のいることです。

 

コミューンが提供義務を負うのは,福祉サービスと社会扶助(日本の生活保護に相当)ですが,年金等の現金給付,医療サービスに関して,住民に身近なコミューンが最終責任を負っています。

 

 

3 ドイツの社会福祉制度は,公的サービスが民間サービスに優先する補完性の原則に基づいている。

 

ドイツの社会福祉制度は,民間サービスが公的サービスに優先する補完性の原則に基づいています。

 

もし,この出題のように,公的サービスが民間サービスに優先するなら,スウェーデンのように,高福祉高負担の国となってしまいます。

 

4 中国の計画出産政策は,一組の夫婦につき子は一人までとする原則が維持されている。

 

一組の夫婦につき子は一人までとする原則(いわゆる一人っ子政策)は,今は廃止されています。

 

急激な人口抑制政策は,急激な高齢化を招きます。

 

5 韓国の高齢者の介護保障(長期療養保障)制度は,原則として税方式で運用されている。

 

韓国の高齢者の介護保障は,日本を参考にして,社会保険方式を採用しています。

2023年4月22日土曜日

各国の社会保障制度~ドイツ

今回は,ドイツについて学んでいきたいと思います。


ドイツは,世界に先駆けて,社会保険制度を取り入れたことで知られます。


社会保険制度を作ったビスマルクにちなんで,社会保障制度の中心を社会保険方式とするスタイルを「ビスマルク型」ということもあります。


日本の社会保障制度はドイツを参考にして作られた側面があるので,日本もあえて分類するなら「ビスマルク型」と言えるのかもしれません。


介護保険制度もドイツを参考にしたものの一つです。


〈ドイツの介護保険制度の特徴〉

・介護手当がある。

・0歳から被保険者となる。

・障害者も対象とする。

・財源は保険料のみで,税は使われていない。 など


それでは,今日の問題です。


第29回・問題55 諸外国における社会保障制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 アメリカには,国民保健サービス(NHS)と呼ばれる,原則無料の医療保障制度がある。

2 イギリスには,高齢者向けのメディケアという公的な医療保障制度がある。

3 ドイツの介護保険制度では,公的医療保険の加入者が年齢にかかわらず被保険者となる。

4 スウェーデンの老齢年金は,完全積立の財政方式に移行している。

5 フランスの医療保険では,外来診療に要した費用は保険者から直接医療機関に支払われるのが原則である。


少し高度な問題かもしれません。

スウェーデンの年金制度があまりよく知られていないためです。


それでは解説です。


1 アメリカには,国民保健サービス(NHS)と呼ばれる,原則無料の医療保障制度がある。


国民保健サービス(NHS)は,イギリスの医療保障制度です。


2 イギリスには,高齢者向けのメディケアという公的な医療保障制度がある。


メディケアは,アメリカの医療保障制度です。


アメリカの公的な医療保障制度は,高齢者・障害者等を対象とするメディケア,低所得者を対象とするメディケイド,の2つしかありません。


それ以外の人は,民間の医療保険に加入します。



3 ドイツの介護保険制度では,公的医療保険の加入者が年齢にかかわらず被保険者となる。


これが正解です。


ドイツの介護保険は,日本と異なり,●歳以上といった年齢区切りがありません。


4 スウェーデンの老齢年金は,完全積立の財政方式に移行している。


これがこの問題の難易度を上げているものです。


日本は,賦課方式を採用しています。


賦課方式とは,高齢者世代の給付は,現役世代の保険料によって賄われるものです。

そのため,現役世代が少なくなると困ります。


積立方式は,自分が納付した保険料を将来受け取るものです。


スウェーデンの老齢年金制度は,賦課方式と積立方式を組み合わせたものとなっています。

そのほかに,低所得者のための無拠出による最低保証年金があります。


社会福祉制度が発達しているスウェーデンであっても,年金制度は社会保険制度を採用しているところがポイントです。


医療保障制度は国によってさまざまですが,年金制度は,社会保険制度を採用する国が多いようです。


5 フランスの医療保険では,外来診療に要した費用は保険者から直接医療機関に支払われるのが原則である。


フランスの医療保障制度は,社会保険制度を採用しています。


特徴は,費用の支払いが償還払い方式を採用していることです。


日本の医療保険は,法定代理受領という方式を採用しています。これは,窓口では,自己負担分を支払い,医療機関は,保険分を診療報酬の審査支払機関に請求し,審査支払機関は,審査後,医療機関に支払う仕組みです。


これに対して,償還払い方式は,利用者は窓口で全額を支払い,後から保険適用分を受け取る方式です。


後から戻ってきますが,最初に全額を支払うのはかなり大変です。

そのため,医療費を抑制するように働きます。

2023年4月21日金曜日

各国の社会保障制度~イギリス

世界で初めて社会保険制度を成立させたのは,19世紀末のドイツです。


イギリスは,20世紀初頭に世界初の失業保険を成立させています。


医療保障は,国によって特徴が出やすく,その違いは覚えておくことが大切です。


イギリスの医療保障制度の特徴は,税を財源とする国民保健サービス(NHS)があることです。


基本的に無料で医療を受けることができます。


とても良い制度のように思うかもしれませんが,決まったGP(総合診療医)で受診しなければならないため,いつも混雑し,緊急性のないものは,何か月も待たされることがあります。


それを嫌う人は,民間医療保険に加入する人もいます。

これだと自分で医療機関を選んで診療を受けることができます。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題55 諸外国における医療や介護の制度に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 アメリカには,全国民を対象とする公的な医療保障制度が存在する。

2 イギリスには,医療サービスを税財源により提供する国民保健サービスの仕組みがある。

3 フランスの医療保険制度では,被用者,自営業者及び農業者が同一の制度に加入している。

4 ドイツの介護保険制度では,介護手当(現金給付)を選ぶことができる。

5 スウェーデンには,介護保険制度が存在する。


正解を2つ選ぶ問題です。1つはすぐわかると思いますが,もう1つが手ごわいです。


それでは,解説です。


1 アメリカには,全国民を対象とする公的な医療保障制度が存在する。


アメリカは,全国民を対象とする公的医療保険制度はありません。


低所得者を対象とする「メディケイド」

高齢者・障害者等を対象とする「メディケア」


それ以外の人は,民間の医療保険に加入します。


2 イギリスには,医療サービスを税財源により提供する国民保健サービスの仕組みがある。


これが1つめの正解です。


3 フランスの医療保険制度では,被用者,自営業者及び農業者が同一の制度に加入している。


フランスの医療保険制度は,職域ごとに異なる制度があるのが特徴です。

ドイツも同様です。


4 ドイツの介護保険制度では,介護手当(現金給付)を選ぶことができる。


これがもう1つの正解です。


日本はドイツの介護保険を参考にして作りましたが,異なる部分がいくつかあります。


ドイツの介護保険の特徴

・介護手当がある。

・0歳から被保険者となる。

・障害者も対象とする。

・財源は保険料のみで,税は使われていない。 など


もし日本もドイツを見習っていたら,介護離職があっても生活ができて,財源ももっと安定していたのではないかと思います。


5 スウェーデンには,介護保険制度が存在する。


スウェーデンは,高福祉高負担の国として知られます。


介護も医療も社会保険方式ではなく,社会扶助方式で提供されています。

ただし,年金は,低所得者を除き,社会保険制度が採用されています。

2023年4月20日木曜日

社会保険の保険者

 社会保険の保険者は,社会保険制度を押さえるときの基本中の基本です。


誰が取り扱うの?(保険者)


年金保険&労災保険&雇用保険

 政府


医療保険

 健康保険 ➡ 各保険者(全国健康保険協会&健康保険組合)

 国民健康保険 ➡ 市町村&都道府県(都道府県は平成30年4月~)

          国民健康保険組合

 後期高齢者医療制度 ➡ 都道府県区域の全市町村が加入する広域連合


介護保険

 市町村(広域連合)


※都道府県が保険者なのは,都道府県等が行う国民健康保険のみ!!


医療保険制度は,もともとあった制度を利用して国民皆保険をつくったので複雑です。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題51 社会保険の保険者に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 国民年金の保険者は,日本年金機構である。

2 介護保険の保険者は,国である。

3 国民健康保険組合の保険者は,市町村である。

4 健康保険の保険者は,全国健康保険協会及び健康保険組合である。

5 労働者災害補償保険の保険者は,都道府県である。


社会保険の保険者は,社会保険制度を押さえるときの基本中の基本ですが,改めて問われると「何だったっけ?」と思いませんか?


それでは解説です。


1 国民年金の保険者は,日本年金機構である。


これが正解だと思う人もいるでしょう。


日本年金機構は政府から委託を受けて業務を行っているだけで,保険者ではありません。


国民年金の保険者は政府です。


2 介護保険の保険者は,国である。


介護保険の保険者は,市町村です。


複数の市町村で組織する広域連合も認められています。


3 国民健康保険組合の保険者は,市町村である。


国民健康保険組合の保険者は,国民健康保険組合です。


市町村は,都道府県等が行う国民健康保険(旧:市町村国保)です。


4 健康保険の保険者は,全国健康保険協会及び健康保険組合である。


これが正解です。


健康保険,国民健康保険ともに,組合があることを忘れがちなので注意が必要です。


5 労働者災害補償保険の保険者は,都道府県である。


労働者災害補償保険の保険者は,政府です。


都道府県が保険者なのは,都道府県等が行う国民健康保険のみ(旧:市町村国保)です。

2023年4月19日水曜日

社会保険の適用

  

社会保険を押さえる時の基本

●誰が取り扱うの?(保険者)

●誰が加入するの?(被保険者)

●誰が保険料を負担するの?(社会保険料負担)

●誰が保険料を納付するの?(納付義務者)

●どんな時に給付されるの?(保険事故)

●どのくらい払うの?(保険料率)

 

日本の社会保険制度は5つありますが,上記の内容をそれぞれ説明できるまでになりたいものです。

 

今日のテーマは,社会保険の適用なので,上記の表では,「誰が加入するの?(被保険者)」にあたります。

 

それでは,今日の問題です。

 

35回・問題54 社会保険制度の適用に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 週所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者は,雇用保険に加入することはできない。

2 労働者災害補償保険制度には,大工,個人タクシーなどの個人事業主は加入できない。

3 日本国内に住所を有する外国人には,年齢にかかわらず国民年金に加入する義務はない。

4 厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者で,一定以下の収入しかない者は,国民年金に加入する義務はない。

5 生活保護法による保護を受けている世帯(保護を停止されている世帯を除く。)に属する者は,「都道府県等が行う国民健康保険」の被保険者としない。

 

すべて否定形で統一されている問題です。

 

統一されると,問題そのものは高度なものでなくても,知識なしでは消去できそうな選択肢がなくなるために,難易度は高くなります。

 

今後は,こういった問題が増加していくと考えられるので,受験者泣かせとなるでしょう。

 

知識の差が明確に現れます。

 

それでは,解説です。

 

1 週所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者は,雇用保険に加入することはできない。

 

雇用保険は,週20時間以上の労働時間,継続して31日以上の雇用見込みがある者に適用されます。

 

2 労働者災害補償保険制度には,大工,個人タクシーなどの個人事業主は加入できない。

 

労災保険は,労働者のための保険ですが,特別加入制度によって,個人事業主も加入することができます。

 

3 日本国内に住所を有する外国人には,年齢にかかわらず国民年金に加入する義務はない。

 

日本は難民条約を批准しているためにほとんどの社会保障制度には国籍要件がありません。国民年金法も日本国内に住所を有する外国人に適用されます。

 

日本国内に住所を有する外国人に適用されないものとして過去に何度か出題されているものには,生活保護法があります。

 

生活保護法は,「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる」と規定されています。

 

だからといって外国人は生活保護を受けられないというわけではありません。生活保護法の適用は受けませんが,永住外国人は予算措置として生活保護法に準じた保護が受けられるようになっています。

 

4 厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者で,一定以下の収入しかない者は,国民年金に加入する義務はない。

 

厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者で,一定以下の収入しかない者は,国民年金の第三号被保険者です。

 

5 生活保護法による保護を受けている世帯(保護を停止されている世帯を除く。)に属する者は,「都道府県等が行う国民健康保険」の被保険者としない。

 

これが正解です。

 

生活保護受給者は「都道府県等が行う国民健康保険」の被保険者となりません。

生活保護には医療扶助があるからです。

2023年4月18日火曜日

社会保険料の納付義務者

社会保険を理解する基本はいくつかありますが,そのうち,社会保険料の納付義務者は,知識として抜けがちなので注意が必要です。


整理すると,以下のようになります。


社会保険料の納付義務者


世帯主 

・国民健康保険

・国民年金

・介護保険の第1号被保険者

・後期高齢者医療制度



事業主

・健康保険

・厚生年金

・介護保険の第2号被保険者

・雇用保険

・労災保険


被用者の場合,基本的に保険料の納付義務は事業主です。

被用者以外の場合は,基本的に保険料の納付義務は世帯主です。


基本的に,というのは,被用者であっても,健康保険,厚生年金の対象とならない場合は,国民健康保険,国民年金に加入することになり,その場合は,世帯主が納付義務者になるからです。


言われてみると何のことはないとは思いますが,実際に国家試験で出題されるとかなりドキドキするでしょう。



それでは,今日の問題です。


第24回・問題50 社会保険料の徴収,納付に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 世帯員に国民健康保険の被保険者がいる場合,世帯主は国民健康保険以外の医療保険制度の被保険者であっても国民健康保険料の納付義務者となる。

2 介護保険の第1号被保険者と第2号被保険者,後期高齢者医療制度の被保険者が負担する保険料は,特別徴収の方法によって徴収される。

3 国民年金の学生納付特例制度により,保険料納付の猶予を受けた者が保険料を追納しなかった場合,当該期間の国庫負担分のみが老齢基礎年金の支給額に反映される。

4 雇用保険の保険料は,賃金総額に保険料率を乗じて算出された額を事業主が負担する。

5 厚生年金保険料と健康保険料の納付義務者は,被保険者である。


さまざまな制度を含めて出題されているので,知識不足の人にとっては相当難しく感じるのではないかと思います。


それでは,解説です。


1 世帯員に国民健康保険の被保険者がいる場合,世帯主は国民健康保険以外の医療保険制度の被保険者であっても国民健康保険料の納付義務者となる。


これが正解です。


世帯主がどんな制度に加入していたとしても,世帯員に国民健康保険の被保険者がいる場合は,世帯主が納付義務を負います。


2 介護保険の第1号被保険者と第2号被保険者,後期高齢者医療制度の被保険者が負担する保険料は,特別徴収の方法によって徴収される。


特別徴収とは,年金額が年18万円以上の場合,年金から保険料を天引きするものです。


介護保険の第1号被保険者と後期高齢者医療制度の被保険者には,特別徴収の制度がありますが,介護保険の第2号被保険者の場合は,医療保険の保険者が徴収します。


第2号被保険者の多くは,年金が支給されていないので,特別徴収の制度を採り入れる意味がありません。


3 国民年金の学生納付特例制度により,保険料納付の猶予を受けた者が保険料を追納しなかった場合,当該期間の国庫負担分のみが老齢基礎年金の支給額に反映される。


老齢基礎年金の支給額に反映されるのは,保険料の納付の免除を受けた場合です。


学生納付特例制度は,猶予されているだけなので,追納しないと老齢基礎年金の支給額に反映されません。


4 雇用保険の保険料は,賃金総額に保険料率を乗じて算出された額を事業主が負担する。


雇用保険の保険料は,労使折半です。


雇用保険二事業の場合は,事業主のみが負担します。


5 厚生年金保険料と健康保険料の納付義務者は,被保険者である。


厚生年金保険料と健康保険料の納付義務者は,事業主です。


被用者の場合は,基本的に事業主が納付義務者となります。

2023年4月17日月曜日

児童扶養手当について

児童扶養手当は,児童扶養手当法に基づく制度です。

 

同法では,児童扶養手当の趣旨として以下のように規定されています。

 

(児童扶養手当の趣旨)

第二条 児童扶養手当は、児童の心身の健やかな成長に寄与することを趣旨として支給されるものであつて、その支給を受けた者は、これをその趣旨に従つて用いなければならない。

2 児童扶養手当の支給を受けた父又は母は、自ら進んでその自立を図り、家庭の生活の安定と向上に努めなければならない。

3 児童扶養手当の支給は、婚姻を解消した父母等が児童に対して履行すべき扶養義務の程度又は内容を変更するものではない。

 

近年の国家試験ではなぜか,法の目的が出題されるようになってきています。

 

しかし,そのようなものが出題されたとしても対応は十二分に可能です。

 

かつて,児童扶養手当の趣旨について,出題されたことがあります。

 

児童扶養手当の支給は、婚姻を解消した父母等が児童に対して履行すべき扶養義務の程度又は内容を変更するものではない。

 

これは,児童扶養手当が受給できるから養育費を支払わなくて良いという意味ではない,という意味です。

 

さて,本日の問いです。

 

児童手当の支給認定を行うのは,市町村長です。

 

それでは,児童扶養手当の支給認定を行うのは,市町村長でしょうか? 都道府県知事でしょうか?

 

児童手当,児童扶養手当,特別児童扶養手当のうち,最も普遍的なのは児童手当です。

 

児童扶養手当と特別児童扶養手当は,一人親あるいは障害という特別ニーズに対応するための制度です。

 

現在は,離婚数が多いので,一人親は決して特別なことではありませんが,児童手当に比べると受給者が少ないでしょう。

 

特別児童扶養手当も,児童手当に比べる受給者が少ないでしょう。

 

今日の問いの答えですが,児童扶養手当の支給認定を行うのは,都道府県知事と指定都市の長です。特別児童扶養手当の支給認定も同様です。

 

規模や性質を考えてみると,何となく理由がわかるのではないでしょうか。

 

お待たせしました。それでは,今日の問題です。

 

22回・問題51 我が国の社会保障制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 民間被用者に関する児童手当には,事業主の拠出金がある。

2 健康保険及び国民健康保険には,事業主の負担がある。

3 児童扶養手当の支給は,婚姻を解消した父等が児童に対して履行すべき扶養義務の程度を軽減する。

4 児童手当制度は,所得制限が設けられていない普遍的給付である。

5 児童手当制度は,第2子から支給される。

 

児童扶養手当の趣旨は,選択肢3で出題されています。

 

それでは,解説です。

 

1 民間被用者に関する児童手当には,事業主の拠出金がある。

 

これが正解です。

 

民間被用者に関する児童手当には,事業主の拠出金があります。

 

2 健康保険及び国民健康保険には,事業主の負担がある。

 

これはなかなかユニークな問題です。

 

健康保険には,事業主の負担があります。

 

しかし,国民健康保険は,事業主の負担はありません。

 

被用者でも収入が少ないと国民健康保険の対象にはなりますが,自営業者,無職の人は事業主がいないので,負担することができません。

 

3 児童扶養手当の支給は,婚姻を解消した父等が児童に対して履行すべき扶養義務の程度を軽減する。

 

前説に書いたように,児童扶養手当の支給は,婚姻を解消した父等が児童に対して履行すべき扶養義務の程度を軽減しません。

 

4 児童手当制度は,所得制限が設けられていない普遍的給付である。

 

現時点の児童手当制度には,所得制限があります。

 

しかし,今後はわかりません。

 

5 児童手当制度は,第2子から支給される。

 

現在の児童手当は,第1子から支給されます。

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