世界で初めて社会保険制度を成立させたのは,19世紀末のドイツです。
イギリスは,20世紀初頭に世界初の失業保険を成立させています。
医療保障は,国によって特徴が出やすく,その違いは覚えておくことが大切です。
イギリスの医療保障制度の特徴は,税を財源とする国民保健サービス(NHS)があることです。
基本的に無料で医療を受けることができます。
とても良い制度のように思うかもしれませんが,決まったGP(総合診療医)で受診しなければならないため,いつも混雑し,緊急性のないものは,何か月も待たされることがあります。
それを嫌う人は,民間医療保険に加入する人もいます。
これだと自分で医療機関を選んで診療を受けることができます。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題55 諸外国における医療や介護の制度に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 アメリカには,全国民を対象とする公的な医療保障制度が存在する。
2 イギリスには,医療サービスを税財源により提供する国民保健サービスの仕組みがある。
3 フランスの医療保険制度では,被用者,自営業者及び農業者が同一の制度に加入している。
4 ドイツの介護保険制度では,介護手当(現金給付)を選ぶことができる。
5 スウェーデンには,介護保険制度が存在する。
正解を2つ選ぶ問題です。1つはすぐわかると思いますが,もう1つが手ごわいです。
それでは,解説です。
1 アメリカには,全国民を対象とする公的な医療保障制度が存在する。
アメリカは,全国民を対象とする公的医療保険制度はありません。
低所得者を対象とする「メディケイド」
高齢者・障害者等を対象とする「メディケア」
それ以外の人は,民間の医療保険に加入します。
2 イギリスには,医療サービスを税財源により提供する国民保健サービスの仕組みがある。
これが1つめの正解です。
3 フランスの医療保険制度では,被用者,自営業者及び農業者が同一の制度に加入している。
フランスの医療保険制度は,職域ごとに異なる制度があるのが特徴です。
ドイツも同様です。
4 ドイツの介護保険制度では,介護手当(現金給付)を選ぶことができる。
これがもう1つの正解です。
日本はドイツの介護保険を参考にして作りましたが,異なる部分がいくつかあります。
ドイツの介護保険の特徴
・介護手当がある。
・0歳から被保険者となる。
・障害者も対象とする。
・財源は保険料のみで,税は使われていない。 など
もし日本もドイツを見習っていたら,介護離職があっても生活ができて,財源ももっと安定していたのではないかと思います。
5 スウェーデンには,介護保険制度が存在する。
スウェーデンは,高福祉高負担の国として知られます。
介護も医療も社会保険方式ではなく,社会扶助方式で提供されています。
ただし,年金は,低所得者を除き,社会保険制度が採用されています。