2023年2月28日火曜日

社会保険と生活保護の特徴~その1

 社会保険と生活保護の違いに関する問題の出題頻度は,それほど高くありません。


第22回以降の国家試験では,第35回までには,第22回,第25回,第29回,第34回の4回しか出題されていません。


一般的に手にする過去3年間の過去問の範囲ではカバーしていません。

参考書などで確実に覚えておく必要があります。


それでは,今日の問題です。


第34回・問題51 社会保険と公的扶助に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会保険は特定の保険事故に対して給付を行い,公的扶助は貧困の原因を問わず,困窮の程度に応じた給付が行われる。

2 社会保険は原則として金銭給付により行われ,公的扶助は原則として現物給付により行われる。

3 社会保険は救貧的機能を果たし,公的扶助は防貧的機能を果たす。

4 社会保険は事前に保険料の拠出を要するのに対し,公的扶助は所得税の納付歴を要する。

5 公的扶助は社会保険よりも給付の権利性が強く,その受給にスティグマが伴わない点が長所とされる。


知識があって,しっかり考えて解けばそれほど難しい問題ではありませんが,知識不足だと確実に正解することができません。


知識がある人もしっかり考えることが必要なので,とても手ごわい問題です。


確実に正解するコツは,社会保険の場合は,年金保険など具体的な社会保険制度に当てはめて考えることです。


生活保護は,公的扶助と出題されることもありますが,その場合は,生活保護に置き換えて考えます。


生活保護は知っているけれど,公的扶助は知らない,なんてあほくさい理由でミスするのは手痛いミスです。


それでは解説です。


1 社会保険は特定の保険事故に対して給付を行い,公的扶助は貧困の原因を問わず,困窮の程度に応じた給付が行われる。


これが正解です。


保険事故とは,事前に決めてある保険が給付される条件が発生することをいいます。


たとえば,労災保険なら,業務災害,あるいは通勤災害が保険事故に当たります。


業務災害,あるいは通勤災害が原因による傷病の場合は,医療保険よりも労災保険が優先されるので,労災保険から給付されます。


公的扶助の場合,押さえておきたいのは「困窮の原因を問わず」という部分です。「無差別平等」は原理なので,生活保護法が定める範囲において,どんな理由であっても,困窮している事実に基づいて給付されます。


困窮という言葉を使っても「困窮する恐れ」は,生活困窮者自立支援法の対象となるところに注意が必要です。


2 社会保険は原則として金銭給付により行われ,公的扶助は原則として現物給付により行われる。


社会保険にも公的扶助にも,それぞれ金銭給付と現物給付があります。


たとえば,健康保険の場合だと,「療養の給付」は,現物給付,傷病手当金などの所得補償は,金銭給付です。


公的扶助,日本の生活保護の扶助の種類は8つあります。


医療扶助と介護扶助は現物給付を原則とします。


それ以外は,金銭給付を原則とします。


3 社会保険は救貧的機能を果たし,公的扶助は防貧的機能を果たす。


社会保険は,保険事故が生じた場合に給付されるので,防貧的機能を果たします。


例えば,雇用保険の失業等給付は,失業して貧困にならないように給付されます。


生活保護は,困窮している事実に基づいて給付されます。


困窮の状態から救い出すことから救貧的機能と表現されます。


4 社会保険は事前に保険料の拠出を要するのに対し,公的扶助は所得税の納付歴を要する。


社会保険は,事前に社会保険を拠出することが必要です。


公的扶助は,税を納付せずとも,困窮の事実に基づいて給付されます。


なお,社会保険でも事前に保険料を納付せずとも保険給付される場合があります。


たとえば,初診日が20歳前にある傷病によって障害になった場合は,20歳になると保険料を納付せずとも,障害基礎年金が受け取れる可能性があります。


保険料を免除されている場合も給付されます。


5 公的扶助は社会保険よりも給付の権利性が強く,その受給にスティグマが伴わない点が長所とされる。


権利性が強いのは,社会保険です。


そのために,受給に対してスティグマを伴いません。


公的扶助の場合は,スティグマを伴います。


生活保護を受けているのに「たばこを吸っている」「パチンコしている」など,口の悪い人にいろいろ言われそうですね。


言われずとも,そう思われるのではないかと,周りの目が気になります。

年金を受給している場合は,そんなことはありません。

2023年2月27日月曜日

国民年金に対する国庫負担

国民年金に対する国庫負担は,2004年・平成16年までは,費用の3分の1を負担していました。


それ以降,段階を追って,負担割合を引き上げ,2009年・平成21年に2分の1となりました。


2012年・平成24年には国民年金法を改正して,国庫負担割合の2分の1は,恒久化(これからもずっとという意味)されています。


それでは,今日の問題です。


第35回・問題55 公的年金制度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 厚生年金保険の被保険者は,国民年金の被保険者になれない。

2 基礎年金に対する国庫負担は,老齢基礎年金,障害基礎年金,遺族基礎年金のいずれに対しても行われる。

3 厚生年金保険の保険料は,所得にかかわらず定額となっている。

4 保険料を免除されていた期間に対応する年金給付が行われることはない。

5 老齢基礎年金の受給者が,被用者として働いている場合は,老齢基礎年金の一部又は全部の額が支給停正される場合がある。


ちょっとひねりを入れて出題した問題です。

知識があいまいな人は,簡単に引っ掛けられてしまうような問題のタイプだと言えます。


それでは,解説です。


1 厚生年金保険の被保険者は,国民年金の被保険者になれない。


これが第1のひねりです。


厚生年金保険の被保険者は,自動的に国民年金の第2号被保険者となります。


2 基礎年金に対する国庫負担は,老齢基礎年金,障害基礎年金,遺族基礎年金のいずれに対しても行われる。


これが正解ですが,第2のひねりとなっています。


おそらく,「国民年金には国庫負担がある」と出題されていれば,素直に正解だと認識できるでしょう。


国民年金には,老齢基礎年金,障害基礎年金,遺族基礎年金があります。それをばらして出題しているところが,ひねりポイントとなっています。


このようにちょっと出題の仕方を変えるだけで,受験者の頭に「?」を生じさせ,混乱に陥れる高度な作問技術だと思います。


落ち着いて考えると,たとえば,「老齢基礎年金には国庫負担はあるが,障害基礎年金には国庫負担はない」,「障害基礎年金には国庫負担はあるが,遺族基礎年金には国庫負担はない」といったように,給付の種類によって,国庫負担があったり,なかったりするのは,おかしな制度だと思います。そんなことはありません。


3 厚生年金保険の保険料は,所得にかかわらず定額となっている。


厚生年金の保険料は,報酬比例です。

定額なのは,国民年金の保険料です。


4 保険料を免除されていた期間に対応する年金給付が行われることはない。


老齢基礎年金の場合,保険料を免除されていた期間は,国庫負担分が考慮されます。


たとえば,今後40年間,ずっと全額免除されていた場合は,老齢基礎年金の満額の2分の1の金額が給付されます。


国庫負担が3分の1から2分の1に引き上げられたことは,実はとても重要なことです。


5 老齢基礎年金の受給者が,被用者として働いている場合は,老齢基礎年金の一部

又は全部の額が支給停正される場合がある。


これが第3のひねりです。


被用者として働いている場合に,年金の一部,又は全部の額が支給停正されることがあるのは,老齢厚生年金です。


老齢基礎年金と老齢厚生年金を混同させるように出題するのは,かなりの高頻度で行われています。


たとえば,年金分割のこと,障害等級のこと,そしてこの問題にもあるように保険料負担など,数々あります。


医療保険と年金保険は,もともとあった制度を活用して,皆保険,皆年金を作り上げたために,制度の構造が複雑です。


その分覚えるのが大変です。だからこそ出題されることを覚えておきたいです。


特別に難しいものを出題することなく問題の難易度を上げることができるので,これからの国家試験には打ってつけだと言えるでしょう。


〈今日の一言〉

国家試験に不合格になると,知識不足を悔やみます。

確かに知識不足の人もいるでしょう。知識不足の人は,知識をつけるための勉強をすれば合格できるでしょう。

しかし,しっかり勉強して受験しても何度も不合格になっている人は,決して知識不足ではないと思っています。

この学習部屋は,そういったた仲間が合格してくれることを目的として開設して今に至ります。

ぜひ活用して,知識を得点力に変えていっていただきたいと思います。

2023年2月26日日曜日

医療保険の保険者(社会保険を押さえるときの基本)

 

社会保険を押さえる時の基本

●誰が取り扱うの?(保険者)

●誰が加入するの?(被保険者)

●誰が保険料を負担するの?(社会保険料負担)

●誰が保険料を納付するの?(納付義務者)

●どんな時に給付されるの?(保険事故)

●どのくらい払うの?(保険料率)

 

今回は,このうちの医療保険の保険者について考えたいと思います。

 

医療保険

 健康保険 ➡ 各保険者(全国健康保険協会&健康保険組合)

 国民健康保険 ➡ 市町村&都道府県(都道府県は平成304月~)

          国民健康保険組合

 後期高齢者医療制度 ➡ 都道府県区域の全市町村が加入する広域連合

 

健康保険制度

 

健康保険の保険者は,主に中小企業の従業員が加入する全国健康保険協会,主に大企業や同業者が組合を作って保険者となる健康保険組合,の2つがあります。

 

全国健康保険と健康保険組合は,どちらも健康保険法が根拠法ですが,仕組みが若干異なります。

 

〈保険料率〉

 全国健康保険協会は,全国を基準として,都道府県ごとに割り増しが設定されています。

健康保険組合は,組合ごとに設定することができます。

 

〈給付内容〉

健康保険組合は,療養の給付(療養の現物給付のこと)に関して,法定給付のほかに,独自に人間ドックなどに給付する付加給付を定めることができます。

 

ここが注意点です。

 

療養の給付は,組合の独自性が出るところなので,この部分の国庫負担はありません。

 

ただし,事務費用に対しては国庫負担が行われています。このようにして,全国健康保険協会とのバランスを図っているようです。

 

それでは,今日の問題です。

 

34回・問題52 日本の社会保険の費用負担に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 健康保険組合の療養の給付に要する費用には,国庫負担がある。

2 患者の一部負担金以外の後期高齢者医療の療養の給付に要する費用は,後期高齢者の保険料と公費の二つで賄われている。

3 老齢基礎年金の給付に要する費用は,その4割が国庫負担で賄われている。

4 介護保険の給付に要する費用は,65歳以上の者が支払う保険料と公費の二つで賄われている。

5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金の支給に要する費用には,国庫負担がある。

 

この問題自体はなかなかの難問ですが,この問題が出題された当時,正解することはそれほど難しくはありませんでした。

 

なぜなら,第31回に同じものが正解になっているからです。

3年間の過去問の範囲で,同じものが正解になることはめったにないことですが,こういったところが第34回の合格基準点(ボーダーライン)が105点になった理由でしょう。

 

それでは,解説です。

 

1 健康保険組合の療養の給付に要する費用には,国庫負担がある。

 

前説のように,健康保険組合の療養の給付に要する費用には,国庫負担はありません。

 

この問題の難易度が高いのは,この選択肢が原因です。かなり細かい出題だからです。

 

2 患者の一部負担金以外の後期高齢者医療の療養の給付に要する費用は,後期高齢者の保険料と公費の二つで賄われている。

 

後期高齢者医療制度の財源の特徴は,現役世代の医療保険の保険者からの支援金の「後期高齢者支援金」があることです。

 

これが財源の4割を占めます。

 

この支援金の拠出が財政を苦しめている保険者もあるようです。

 

3 老齢基礎年金の給付に要する費用は,その4割が国庫負担で賄われている。

 

国民年金の国庫負担率は,5割(2分の1)です。

 

かつては,3分の1ですが,2分の1に引き上げられ,恒久化されています。

 

4 介護保険の給付に要する費用は,65歳以上の者が支払う保険料と公費の二つで賄われている。

 

介護保険の被保険者は,第1号被保険者と第2号被保険者があります。

 

もちろん,第2号被保険者の保険料も財源とします。

 

5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金の支給に要する費用には,国庫負担がある。

 

これが正解です。

 

この問題の難易度は決して低くはないですが,この選択肢が正解になったことで,正解しやすくなりました。

 

それは,第31回に以下の出題があったからです。

 

31回・問題49 社会保険制度の財源に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。

2 介護保険の給付財源は,利用者負担を除き,都道府県が4分の1を負担している。

3 老齢基礎年金は,給付に要する費用の3分の2が国庫負担で賄われている。

4 労働者災害補償保険に要する費用は,事業主と労働者の保険料で賄われている。

5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金に対する国庫負担がある。

 

この問題の正解も選択肢5です。

 

この問題の解説はこちら

https://fukufuku21.blogspot.com/2023/02/blog-post_24.html

2023年2月25日土曜日

国家試験の合格基準

国家試験が終わると合格基準点,いわゆるボーダーラインがどうなるのかが話題になります。


第15回国家試験以降,正解と合格基準点が発表されています。


最低点は72点,最高点は105点,ととても大きな振れ幅となっています。

どんな勉強をすれば合格できるのか,と疑問にも思うかもしれません。


しかし,合格基準点は変わっても,6割程度という合格基準は変わっていません。


合格基準点が変わるのは,問題の難易度の差です。


合格基準点が低いのは,正解できる問題が少なかった

合格基準点が高いのは,正解できる問題が多かった


今後はどうなるのかはわかりませんが,これまで問題の難易度によって,合格基準点を変更してきたのは,長期の視点からみるととても妥当なことだったように思います。


もし固定されていたなら,難易度が低い年に受験した人は有利になり,難易度が高い年に受験した人は不利になります。


口の悪い人は,あの人は,難易度が低い年だったから合格した,と言うこともあるでしょう。


毎年,同じ難易度を保てる問題を出題できるならそれに越したことはありません。


それが困難なので,難易度による補正を行って,年度間の不公正が出ないように調整していると考えています。


不合格になったあとに問題を見るのは辛いことだと思いますが,もし冷静に振り返ることができれば,本来は正解できていた問題をミスしているものが多いことに気がつくと思います。


ある程度の勉強をしてきた人なら,おそらくそういった問題で正解できていれば,合格できた点数になるはずです。


しかし,ミスは必ず起きます。それが少ない人は合格し,多い人は不合格になります。


言えることは,合格するために必要なことは,出題基準に示されたものの範囲を確実に覚えていけば,合格できる知識にはなることです。


あとは,いかにミスしないで正解することです。


そうすれば,合格基準点が変わっても,合格基準が変わらない限り,必ず合格できます。


それでは,今日の問題です。


第35回・問題50 日本の社会保険に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 国民健康保険は,保険料を支払わないことで自由に脱退できる。

2 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。

3 雇用保険の被保険者に,国籍の要件は設けられていない。

4 民間保険の原理の一つである給付・反対給付均等の原則は,社会保険においても必ず成立する。

5 介護保険の保険者は国である。


この問題の難易度は,決して高くはありません。


しかし,確実に正解することは簡単なことではありません。


それでは,解説です。


1 国民健康保険は,保険料を支払わないことで自由に脱退できる。


医療保険に限らず,社会保険は,被保険者の要件に当たる人は強制加入なのが特徴です。


加入が任意だと,社会保険の意味がなくなります。


2 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。


健康保険にも国民健康保険にも国庫補助があります。


本来,社会保険は,社会保険料を財源として運営される制度ですが,日本の社会保険には,公費も使われていることが特徴です。


ドイツの介護保険は,社会保険料のみで運営され,税金は使われていません。

日本の介護保険は,ドイツを参考にして作られましたが,こういったところに違いがみられます。


3 雇用保険の被保険者に,国籍の要件は設けられていない。


これが正解です。


日本は,難民条約を批准しているので,一部の制度を除くと社会保障制度には,国籍要件が設けられていません。


国籍要件がある制度の代表は,生活保護法です。


第35回国家試験では,以下の問題が出題されました。


永住外国人には生活保護法に基づく受給権がある。


外国人には,生活保護法が適用されないので,受給権は認められません。


永住外国人にも法は適用されませんが,予算措置として,生活保護を受けられるようにしています。


過去に外国人に生活保護法が適用されないことを出題した時には物議を醸しだしたことがありますが,社会保障制度に精通していることが求められる社会福祉士には確かな知識が求められます。


これは,問題77ですが,この選択肢を消去できないと正解するのは簡単ではありません。


4 民間保険の原理の一つである給付・反対給付均等の原則は,社会保険においても必ず成立する。


必ず」という子どもでも正解なりにくいことを知っているものが含まれた文章ですが,「給付・反対給付均等の原則」があるために,混乱して重要ポイントを見落とします。

そしてミスが起きます。


民間保険は,今までの出題が少ないので,過去問では学べません。


参考書などで学ぶことが必要です。


保険原理には,

収支相等の原則(支払額と支給額が同額であること)

給付・反対給付均等の原則(受け取れる額によって,保険料が変わること)

保険契約者平等待遇の原則(加入者のリスクによって,保険料が変わること)


があります。


社会保険は,民間保険のこれらの原則にのっとって制度がつくられているわけではありません。


給付・反対給付均等の原則は,例えば年金保険制度であれば,決まった保険料を支払って,それにあった金額を受給します。


自分は,多くもらいたいから,多く支払うという制度ではありません。


これを知らずとも「必ず」があるので,消去できます。


5 介護保険の保険者は国である。


社会保険を覚えるときのポイントの一つは,保険者を押さえることです。


介護保険の保険者は,市町村(および市町村の広域連合)です。


社会保険制度は細かくて覚えにくいと思いますが,そんなに複雑で細かい出題はされないので,しっかり覚えれば得点を稼ぐ科目になります。


今日の問題のようなものを確実に正解し,得点を積み重ねていけば,合格基準点は必ず超えられます。

2023年2月24日金曜日

社会保険制度の財源

社会保険は,社会保険料を使って運営されるものですが,日本の場合は,社会保険料だけではなく公費(税金)も財源として運営されているのが特徴です。


ただし,社会保険制度なので,財源の割合をみた場合,公費は社会保険料を超えるような制度設計はなされません。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題49 社会保険制度の財源に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。

2 介護保険の給付財源は,利用者負担を除き,都道府県が4分の1を負担している。

3 老齢基礎年金は,給付に要する費用の3分の2が国庫負担で賄われている。

4 労働者災害補償保険に要する費用は,事業主と労働者の保険料で賄われている。

5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金に対する国庫負担がある。


この中で,近年の制度改正で注意すべきものがあります。


雇用保険の給付の中には,雇用継続給付があり,従来は,「高年齢雇用継続給付」「育児休業給付」「介護休業給付」の3つで構成されていました。


2020・令和2年に制度改正があり,育児休業給付は,失業等給付の雇用継続給付から独立しています。


そのため,現在の雇用保険の基本構成は,以下のようになりました。


・失業等給付

・育児休業給付

・雇用保険二事業


保険料の負担は,失業等給付と育児休業給付は「労使折半」,雇用保険二事業は「事業主のみ」となっています。


それでは解説です。


1 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。


この選択肢は,第35回・問題50にまったく同じ表現で出題されています。

2 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。


健康保険にも国民健康保険にも国庫補助はあります。


2 介護保険の給付財源は,利用者負担を除き,都道府県が4分の1を負担している。


都道府県が4分の1を負担しているのは,生活保護費です。

国が4分の3,都道府県及び福祉事務所を設置する市町村が4分の1を負担しています。


介護保険の場合は,国が25%(施設等給付は20%),都道府県が12.5%(施設等給付は17.5%),市町村が12.5%となっています。


3 老齢基礎年金は,給付に要する費用の3分の2が国庫負担で賄われている。


国民年金に対する国庫負担は,2分の1です。かつては3分の1でしたが,今は2分の1に引き上げられています。


国庫負担が2分の1に引き上げられたことはとても重要なことです。


生活保護受給者のように国民年金の保険料の納付が免除されている人は,国庫負担分が,給付されるためです。


例えば,40年間にわたって保険料が全額免除されている人は,老齢基礎年金の給付額は,満額の2分の1が給付されます。


国庫負担が3分の1だった場合は,満額の3分の1しか給付されないので,2分の1に引き上げられたことで,給付額も引き上げられたことになります。


しかし,満額でも年80万円程度なので,2分の1になったところで40万円程度にしかなりません。


障害基礎年金の給付額には減額制はないので,国民年金の障害等級2級の場合は,老齢基礎年金の満額と同額,1級では1.25倍に割り増しされます。


4 労働者災害補償保険に要する費用は,事業主と労働者の保険料で賄われている。


労災保険の保険料は,雇用保険などと異なり,事業主のみです。


5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金に対する国庫負担がある。


これが正解です。


この問題が出題された当時,雇用継続給付は,「高年齢継続給付」「育児休業給付」「介護休業給付」がありました。


このうち,国庫負担があるのは,育児休業給付と介護休業給付です。

高年齢継続給付には国庫負担はありません。


これは,育児休業給付が独立した今も同じです。

2023年2月23日木曜日

社会保障制度審議会の勧告

現在の社会保障審議会は,厚生労働省に置かれていますが,かつてあった社会保障制度審議会は,内閣府に置かれていました。


社会保障制度審議会は,社会保障制度そのもののあり方を審議するためのものでした。


これまでの社会福祉士の国家試験に出題されている勧告は,1950年,1962年,1995年の3つです。


社会保障制度審議会勧告(1950年,62年,95年勧告)

https://fukufuku21.blogspot.com/2022/11/19506295.html


それでは,今日の問題です。


第27回・問題50 社会保障制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 1950年の社会保障制度審議会勧告は,日本の社会保障制度について,租税を財源とした社会扶助制度を中心に充実させるとした。

2 1952年の「ILO第102号条約」では,社会保障の給付事由の一つとして,すでに日本の介護保険法にいわれる意味での要介護状態にあることを挙げていた。

3 1962年の社会保障制度審議会勧告は,社会保障制度の体系化を構想し,社会福祉対策を「一般所得階層に対する施策」として位置づけた。

4 1981年の「難民条約」の批准に伴う法整備により,国民年金法,児童手当法,児童扶養手当法,「特別児童扶養手当法」から国籍要件が削除された。

5 1995年の社会保障制度審議会勧告は,後期高齢者医療制度の創設を提言した。


このように年号が羅列されていると,それだけで歴史が苦手な人はいやだと思うような問題かもしれません。


しかし,国家試験は歴史を重ね,出題のされ方がどんどん明確になってきており,知恵を働かせながら解くことができれば,年号は覚えることなく得点することができます。


それにもかかわらず,年号を覚えさせるような参考書がたくさんあるのは,かつては,法制度の成立順を答えさせるような問題があったからです。


第22回国家試験以降は,年号を問うような問題は社会福祉士の国家試験にはふさわしくないと判断しているのか,ほとんどみられません。


ただし,時代背景を押さえておくことは必要です。

法制度は,時代のニーズに合わせてつくられていくからです。


それでは解説です。


1 1950年の社会保障制度審議会勧告は,日本の社会保障制度について,租税を財源とした社会扶助制度を中心に充実させるとした。


またかと思う人もいるでしょう。


同じ内容のものが,第32回,第35回にも出題されています。


1950年勧告で提言された社会保障の方法は,保険的方法(社会保険)又は直接公の負担(社会扶助)であり,その中心は社会保険制度です。それで救済できない者に対しては社会扶助で補完することです。


日本は,ドイツを参考にして社会保障制度をつくったこともあり,社会保障制度の中心は,社会保険制度となります。


この仕組みを取り入れているために,社会保障財源の割合では,社会保険料は,税(公費)よりも多くなります。


2 1952年の「ILO第102号条約」では,社会保障の給付事由の一つとして,すでに日本の介護保険法にいわれる意味での要介護状態にあることを挙げていた。


第35回国家試験の出題に従えば,介護問題は,非貨幣的ニーズです。


1952年の「ILO第102号条約」の詳しい内容がわからなくても,この時代の社会保障は,貨幣的ニーズが中心であっただろうと推測することができます。


そうでなければ,日本の老人福祉法は,1963年・昭和38年につくられましたが,もっと早い段階でつくられていたのではないかと推測することも可能です。


3 1962年の社会保障制度審議会勧告は,社会保障制度の体系化を構想し,社会福祉対策を「一般所得階層に対する施策」として位置づけた。


1962年勧告では,社会保障施策を区分しています。


貧困階層に対する施策   ➡ 生活保護制度(社会扶助)

低所得階層に対する施策  ➡ 社会福祉制度(社会扶助)

一般所得階層に対する施策 ➡ 社会保険制度(社会保険)


社会福祉対策は,低所得階層に対する施策です。


そういった意味では,日本の高齢者施策は,貧困階層に対する施策(救護法&生活保護法) → 低所得階層に対する施策(老人福祉法) → 一般所得階層に対する施策(介護保険法)に発展してきたと整理することができます。


2000年・平成12年の介護保険は,施策のあり方を大きく変えたことが理解できるでしょう。


4 1981年の「難民条約」の批准に伴う法整備により,国民年金法,児童手当法,児童扶養手当法,「特別児童扶養手当法」から国籍要件が削除された。


これが正解です。


条約を批准するためには,国内法の整備が必要です。


難民条約では,社会保障は,自国民と同じ待遇を難民に与えることが規定されています。

そのため,現在の多くの法制度では,国籍要件が削除されています。


ただし,生活保護法には国籍要件が今もあります。

「国が生活に困窮するすべての国民に対し」という規定は今も変わりません。


外国人に生活保護法は適用されませんが,予算措置で生活保護と同等の措置が行われています。

そのために,生活保護法は外国人に適用されていると勘違いする人がいます。


第35回・問題77 日本国憲法の基本的人権に関する最高裁判所の判断についての次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

2 永住外国人には生活保護法に基づく受給権がある。


もちろん誤りです。


5 1995年の社会保障制度審議会勧告は,後期高齢者医療制度の創設を提言した。


1995年の社会保障制度審議会勧告で提言されたのは,公的介護保険の創設です。

時代を考えると納得でしょう。

2023年2月22日水曜日

社会福祉士の誕生

第37回の社会福祉士国家試験から,令和元年度カリキュラムに変わります。


それほど大きな変更はありませんが,少しずつ新しいものが加わっています。


精神保健福祉士の問題にヒントとなるものがあります。


精神保健福祉士の第25回・問題22 次の記述のうち,社会福祉士及び介護福祉士法制定の背景として,適切なものを1つ選びなさい。

1 社会福祉基礎構造改革の議論が行われ,個人の多様な需要に対し,地域での総合的な支援のための人材が求められた。

2 障害福祉サービスにおいて,ケアマネジメントを用いた生活支援を展開するための人材が求められた。

3 増大する介護需要に対応するために,老人,身体障害者等に関する福祉に対する相談や介護を依頼することができる専門的能力を有する人材が求められた。

4 福祉三法が整備される中,各都道府県等に社会福祉行政を担当する人材を配置することが求められた。

5 高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を営めるよう,地域包括ケアシステムの構築を推進する人材が求められた。


社会福祉士及び介護福祉士法は,社会福祉士の根拠法ですが,どのような背景によってできたのかは知らない人が多いのではないかと思います。


正解は,選択肢3です。


3 増大する介護需要に対応するために,老人,身体障害者等に関する福祉に対する相談や介護を依頼することができる専門的能力を有する人材が求められた。


社会福祉士及び介護福祉士法が制定されたのは,1987年・昭和62年です。


高齢化率14%以上の高齢化社会になることが予測される中,介護を担う人材が求められていました。


実は,昭和40年代には,すでに社会福祉士法を制定しようという動きがありましたが,さまざまな思惑の中,制定には至らず,このタイミングで介護の専門職(つまり介護福祉士)の抱き合わせで社会福祉士が誕生しました。


それはさておき・・・


増大する介護需要に対応するために,老人,身体障害者等に関する福祉に対する相談や介護を依頼することができる専門的能力を有する人材が求められたことが社会福祉士の誕生の背景です。


これは,社会福祉士の国家試験にはまだ出題されたことはありませんが,そのうち,必ず出題されます。


しっかり覚えておきたいです。

2023年2月21日火曜日

結局は・・・繰り返し・・・繰り返し・・・繰り返し・・・∞

日本の社会保障制度の中心は,社会保険制度です。

 

日本の社会保険制度は,終戦前にできたものと終戦後にできたものがあります。

 

終戦前にできたものは,

 

・健康保険

・国民健康保険

・厚生年金

 

の3つです。

 

戦後,これらを使って,皆保険・皆年金がつくり上げられました。

 

社会保障制度には,社会保険だけではなく税を財源とする社会扶助があります。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題49 日本の社会保障制度の歴史的展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では,日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。

2 1961年(昭和36年)に国民皆保険が実施され,全国民共通の医療保険制度への加入が義務づけられた。

3 1972年(昭和47年)に児童手当法が施行され,事前の保険料の拠出が受給要件とされた。

4 1983年(昭和58年)に老人保健制度が施行され,後期高齢者医療制度が導入された。

5 1995年(平成7年)の社会保障制度審議会の勧告で,介護サービスの供給制度の運用に要する財源は,公的介護保険を基盤にすべきと提言された。

 

この問題を見て,あれっと思う人もいるでしょう。

 

35回にそっくりの問題が出題されています。

 

国家試験問題は,かなりの部分が繰り返しとなっていますがこれはちょっと近すぎます。

 

正解は,選択肢5です。

 

5 1995年(平成7年)の社会保障制度審議会の勧告で,介護サービスの供給制度の運用に要する財源は,公的介護保険を基盤にすべきと提言された。

 

社会保障審議会の1995年勧告は,これで2回目の出題です。

 

この勧告で,公的介護保険の提言をしたかどうかはわからなくても,時期的には合っています。ちょっと難しめですが,ほかの選択肢は消去できるので,この選択肢が残ります。

 

それではほかの選択肢も確認します。

 

1 1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では,日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。

 

日本の社会保障制度の中心は,社会保険制度です。

 

1950年勧告で示されたものを脈々と受け継いでいると言えるでしょう。

 

2 1961年(昭和36年)に国民皆保険が実施され,全国民共通の医療保険制度への加入が義務づけられた。

 

過去の出来事は,過去のことではなく,「今」につながっています。

 

今でも医療保険制度は,単一の制度とはなっていません。

 

3 1972年(昭和47年)に児童手当法が施行され,事前の保険料の拠出が受給要件とされた。

 

児童手当は,税を財源とする社会扶助です。社会保険と異なり,保険料は財源とされません。

 

4 1983年(昭和58年)に老人保健制度が施行され,後期高齢者医療制度が導入された。

 

後期高齢者医療制度ができたのは,2005(平成17),老人保健法が改正されて,「高齢者医療確保法」になったときです。

 

〈今日の一言〉

 

国家試験は,少しずつ重なっていて,少しずつ違う

 

35回・問題49 日本の社会保障の歴史に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会保険制度として最初に創設されたのは,健康保険制度である。

2 社会保険制度のうち最も導入が遅かったのは,雇用保険制度である。

3 1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では,日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。

4 1986年(昭和61年)に基礎年金制度が導入され,国民皆年金が実現した。

5 2008年(平成20年)に後期高齢者医療制度が導入され,老人医療費が無料化された。

 

32回・問題49 日本の社会保障制度の歴史的展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では,日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。

2 1961年(昭和36年)に国民皆保険が実施され,全国民共通の医療保険制度への加入が義務づけられた。

3 1972年(昭和47年)に児童手当法が施行され,事前の保険料の拠出が受給要件とされた。

4 1983年(昭和58年)に老人保健制度が施行され,後期高齢者医療制度が導入された。

5 1995年(平成7年)の社会保障制度審議会の勧告で,介護サービスの供給制度の運用に要する財源は,公的介護保険を基盤にすべきと提言された。

 

5つの選択肢のうち,3つが同じことを取り上げています。

 

1950年勧告に至っては,まったく同じ文章です。まったく同じ文章で出題されるのは,極めてレアです。

 

国家試験に出題されているものの多くは,過去にも出題しているものを,「手を変え,品を変え」出題し,そのほかに新しいものを混ぜます。

 

勉強してきたものの知識を使って,消去しながら答えにたどりつくことができるのが今の国家試験です。


決して難しいものを出題せずとも,知識不足だと消去することができないので,正解できません。そのようにして,受験者はふるいにかけられていきます。


これが今の国家試験です。

2023年2月20日月曜日

社会保障制度の歴史~過去の出来事は過去の出来事ではない

今日のテーマは「社会保障制度の歴史~過去の出来事は過去の出来事ではない」です。


何の話をしようと思っているのか想像がつく人は,この学習部屋のディープな住民だと言えます。


ありがとうございます。


過去にできた制度は,その後に制度改正がなければ,今の制度となります。


当然のことだと言えますが,緊張感あふれる試験会場では,こういったことでさえ忘れてしまいます。とても怖いことだと思います。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題53 医療保障制度の歴史的展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 健康保険法(1922年(大正11年))により,農業従事者や自営業者が適用対象となった。

2 老人福祉法(1963年(昭和38年))により,国民皆保険が実現した。

3 老人保健法(1982年(昭和57年))により,高額療養費制度が創設された。

4 介護保険法(1997年(平成9年))により,老人保健施設が創設された。

5 健康保険法等の改正(2006年(平成18年))による「高齢者医療確保法」により,75歳以上の高齢者が別建ての制度に加入する後期高齢者医療制度が創設された。

(注) 「高齢者医療確保法」とは,「高齢者の医療の確保に関する法律」のことである。


特に注意が必要なのは,選択肢1です。

1 健康保険法(1922年(大正11年))により,農業従事者や自営業者が適用対象となった。


日本の医療保険は,被用者を対象とした健康保険と自営業者などを対象とした国民健康保険があります。


社会保障を少しでも勉強していれば,この過程で必ず出てくるものです。

しかし,このように歴史の展開の中で出題されると途端に難しくなります。


これが国家試験の現実です。確実に得点を積み重ねていくことは,一般的に考えられているほど簡単ではありません。


そこを乗り越えるために,この学習部屋では,毎日毎日情報を発信し続けています。


さて,今日の問題に戻ります。


もし,健康保険法ができたときに,農業従事者や自営業者が適用対象になっていたとしたら,そこから分離させて,国民健康保険をつくるにはよほどの理由があったはずです。


しかし,そんなことは勉強の最中に出てこなかったはずです。出てくるはずがありません。これは嘘なのですから。


日本の医療保険制度は,健康保険が先にできています。そしてこの健康保険法が日本の初めての社会保険立法となりました。


被用者を対象とする健康保険が先にできた理由は,その当時,盛んになっていた労働争議に対応するためです。


国は,ロシア革命や米騒動によって,国民の不満は国家を転覆させかねないことに気づき,この辺りから,社会事業に国が関与するようになっていきます。


国民健康保険ができた背景は,日中戦争が本格化する中,健康な兵士を送り出すことがあります。


ほかの選択肢も解説します。


2 老人福祉法(1963年(昭和38年))により,国民皆保険が実現した。


老人福祉法は,今は介護保険に隠れて,地味な存在になっていますが,法の目的は,高齢者の福祉の向上です。


社会保険に関する法律ではありません。そこから考えると矛盾していることがわかるでしょう。

しかし,そんなことにも気づかないのが国家試験の怖いところです。


国民皆保険が実現したのは,1958年・昭和33年の国民健康保険法が施行された1961年・昭和36年のことです。


あれっと思うでしょう。1958年は戦後です。国民健康保険は日中戦争に関連したものだと言っていなかったっけ?


戦前に作られた国民健康保険は,加入が任意でした。


戦後にできた国民健康保険は,加入が義務づけられました。そのようにして,健康保険と合わせて国民皆保険がつくり上げられました。


3 老人保健法(1982年(昭和57年))により,高額療養費制度が創設された。


これも落ち着いて考えると矛盾していることに気がつくはずです。


高額療養費制度は,高齢者のみを対象としているものではありません。


高額療養費制度は,健康保険法などを改正して1973年・昭和48年に創設されたものです。


福祉元年と呼ばれたこの年の出来事としては,老人医療費無料化,年金の物価スライド制の導入と並ぶ目玉の一つが高額療養費制度の創設です。


4 介護保険法(1997年(平成9年))により,老人保健施設が創設された。


老人保健施設は,現在は介護保険法に規定される介護保険施設です。


しかし,もともとは老人保健法が根拠法でした。


1986年・昭和61年の同法の改正によって創設されています。


社会人は,この資格の受験に圧倒的に有利だと思うのは,こういったことを人生の中で知っているからです。


大学生の中には,基礎的な勉強をしたことがない社会人が社会福祉士になってどうするのかと言う人がいると聞きます。


社会福祉士の国家試験は,資質のない人をふるいにかけるフィルターになっていることを忘れている発言です。


受験資格を得るルートを多様に設けているのは,多様な人材を求めていることに他ならないことを知らない発言です。


勉強不足の人は,福祉系大学生であっても,社会人であっても合格できないことを忘れています。



5 健康保険法等の改正(2006年(平成18年))による「高齢者医療確保法」により,75歳以上の高齢者が別建ての制度に加入する後期高齢者医療制度が創設された。


これが正解です。


しかし,これを正解にしにくいのは,高齢者医療確保法は,老人保健法によるものではないか,と考えてしまうからです。


冷静に考えてみると,既存の制度から独立させて新しい制度をつくる場合,既存の制度も改正しなければならないことに気づくはずです。


なぜなら,法制度は,複数の制度に重ならないようにつくられるからです。


例えば,国民年金法で,第一号被保険者は


日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者であって厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることができる者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者を除く


と規定されています。


このように規定されているのは,厚生年金が先にあって,そのあとに国民年金ができたことに他なりません。


第35回国家試験では「労働者の業務災害に関する保険給付については,労働者は労働者災害補償保険又は健康保険のいずれかの給付を選択することができる。」という出題がありましたが,そんなことは通常考えられません。法制度は,複数の制度に重ならないようにつくられるからです。

2023年2月19日日曜日

社会保障制度の発展と戦争の影響

社会保障制度を財源に着目して,分類すると


税を財源とする社会扶助方式

社会保険料を財源とする社会保険方式


に分けられます。


日本の場合,社会扶助方式は,社会福祉制度と生活保護制度があります。


そして,日本の社会保障制度の中心は,社会保険制度です。


この基本は確実に押さえておきたいです。


そのように方向づけたのは,多くの人が苦手としていると思いますが,1950年の社会保障制度審議会の勧告です。


歴史は過去の出来事ではなく,制度変更がなければ今の制度となります。


さて,今日のテーマは「社会保障制度の発展と戦争の影響」です。


日本の社会保障制度の発展に関して理解するためのキーポイントは,1945年以前とそれ以降に分けられることを整理しておくことです。


医療保険制度(健康保険制度&国民健康保険制度)と厚生年金保険制度は,1945年以前につくられたものです。


このうち,国民健康保険制度と厚生年金保険制度ができた背景には,戦争の影響が大きく関係しています。


国民健康保険制度は,健康な兵士を送り出すため


厚生年金保険制度は,戦争にかかる費用を確保するため


といった背景があります。


前回の記事も確認しておきたいです。

https://fukufuku21.blogspot.com/2023/02/blog-post_18.html


それでは今日の問題です。


第30回・問題52 公的年金制度の沿革に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会保障制度が本格的に整備されるようになった第二次世界大戦後,厚生年金保険制度が創設された。

2 国民年金法が1959年(昭和34年)に制定され,自営業者等にも公的年金制度を適用することにより,国民皆年金体制が実現することになった。

3 オイルショックに伴う急激なインフレに対処するため,1973年(昭和48年)改正により,厚生年金の給付水準を一定期間固定することとした。

4 持続可能な制度にする観点から,2004年(平成16年)改正により,老齢厚生年金の支給開始年齢を段階的に65歳から67歳に引き上げた。

5 将来の無年金者の発生を抑える観点から,2012年(平成24年)改正により,老齢基礎年金の受給資格期間を25年から30年に延長した。


歴史は過去のものではなく,途中で制度が変わらなければ,今の制度となります。


別の言い方をすれば,現在の制度を知っていると過去のことも推測できることがあります。


この問題であれば,選択肢4がそういったものに当たります。


4 持続可能な制度にする観点から,2004年(平成16年)改正により,老齢厚生年金の支給開始年齢を段階的に65歳から67歳に引き上げた。


現時点の支給年齢は,65歳です。


67歳に引き上げられたことはありません。


それでは,そのほかの選択肢を解説します。


1 社会保障制度が本格的に整備されるようになった第二次世界大戦後,厚生年金保険制度が創設された。


厚生年金保険制度は,1945年以前にできた制度です。


2 国民年金法が1959年(昭和34年)に制定され,自営業者等にも公的年金制度を適用することにより,国民皆年金体制が実現することになった。


これが正解です。


3 オイルショックに伴う急激なインフレに対処するため,1973年(昭和48年)改正により,厚生年金の給付水準を一定期間固定することとした。


給付水準を固定しては,インフレには対応できません。


この時に導入されたのは,物価によって給付水準が変動する物価スライド制です。


5 将来の無年金者の発生を抑える観点から,2012年(平成24年)改正により,老齢基礎年金の受給資格期間を25年から30年に延長した。


受給資格期間を延長すると将来の無年金者の発生を抑えることはできません。


逆に発生を増加させることになります。冷静に考えるとわかります。


受給資格期間は,15年から10年に短縮されました。




2023年2月18日土曜日

日本の社会保険制度の発展

日本の社会保険制度は,現在5つあります。


最初にできたのは,医療保険制度です。


そのあとに年金保険制度ができます。


これらは,第二次世界大戦が終わる前までに始まっています。


この2つの社会保険制度は,戦前にあった制度を利用して,皆保険,皆年金をつくり上げたために,複数の制度があり,複雑です。


戦後にできた,雇用保険制度,労働者災害補償保険制度,介護保険制度は,1つの制度で成り立っています。


最も先に出来上がったのは,労働者を対象とする健康保険制度です。


大正期にできました。


この時期にできた理由の一つには,ロシア革命が起きたことがあります。


日本でも労働争議が激しくなっており,社会主義運動も激しくなります。


そこに米騒動が起こり,政府を震撼させます。


そこで作られたのが,健康保険法です。


よく知られるドイツのあめとむち政策によく似ています。


次にできたのが,農業者や自営業などを対象とする国民健康保険制度です。


国民健康保険法は,1938年(昭和13年)につくられました。これは,戦争対策です。


農村の次男三男などを徴兵するために,健康でいてくれなければならなかったからです。


これで皆保険の原型ができましたが,まだこの時は任意加入でした。


皆保険は,1958年・昭和33年に強制加入の新しい国民健康保険法ができて,それが施行された1961年・昭和36年にできました。


年金保険制度で最初につくられたのは,厚生年金制度です。


日中戦争が激化する中,戦費を調達するためにつくられたものです。


厚生年金に加入していない人が加入する国民年金は,1959年・昭和34年にできて,それが施行された1961年・昭和36年にできました。


これによって皆年金ができたことになりますが,実際には,主婦などは任意加入でした。


本当に皆年金になったと言えるのは,1986・昭和61年の国民年金法改正によってできた基礎年金制度ですが,皆年金ができたとされるのは,1961年・昭和36年なので,間違えないようにしたいです。


労働保険と呼ばれる雇用保険と労災保険は,日本国憲法が定める働く権利を保障するためにつくられました。


それでは,今日の問題です。


第25回・問題50 医療保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 我が国初の社会保険立法である健康保険法は,1911(明治44)年に制定された。

2 1938(昭和13)年には,強制加入を求める国民健康保険法が制定された。

3 「福祉元年」と呼ばれた1973(昭和48)年から,老人保健制度が実施された。

4 1984(昭和59)年の健康保険法等の改正で,退職者医療制度が創設された。

5 2004(平成16)年の医療制度改革で,高齢者医療制度が創設された。


さすがは,魔の第25回国試と呼ばれる第25回らしい問題です。


合格基準点が過去最低の72点になりましたが,問題が難しすぎて,この点数を上回ることができたのは,わずか18%しかいなかったのです。


それでは解説です。


1 我が国初の社会保険立法である健康保険法は,1911(明治44)年に制定された。


健康保険法ができたのは,大正期です。


2 1938(昭和13)年には,強制加入を求める国民健康保険法が制定された。


この時はまだ任意加入でした。


3 「福祉元年」と呼ばれた1973(昭和48)年から,老人保健制度が実施された。


老人保健制度,すなわち老人保健法ができたのは,1983・昭和58年です。


福祉元年と呼ばれた年に老人医療費が無料化されて,老人保健法によって,老人医療費の一部負担が始まりました。


4 1984(昭和59)年の健康保険法等の改正で,退職者医療制度が創設された。


これが正解です。


退職者医療制度とは,健康保険と国民健康保険の間を埋めるための制度です。


労働者が現役の時には,健康保険に加入しますが,退職すると国民健康保険に加入することになります。


国民健康保険を圧迫しないために健康保険制度からの拠出金で運営されました。現在は廃止されています。


5 2004(平成16)年の医療制度改革で,高齢者医療制度が創設された。


この問題の難易度が高くなったのは,この選択肢のためです。


高齢者医療制度,すなわち,後期高齢者医療制度は,2004(平成16)年の医療制度改革で創設されたのではなく,2006(平成18)年の医療制度改革関連法によって創設されたものです。


意地が悪すぎです。


〈今日の一言〉


今日の問題はひどくないですか?


今は,もうこんな意地の悪い出題はされません。


そのために,この当時よりも正解しやすい問題が多くなり,合格基準点が高くなってきたのです。


正しく勉強した人は解けて,勉強不足の人は解けない


これが国家試験の理想です。


この問題が出題された年は,


正しく勉強した人も,勉強不足の人も解けない


という問題が多かったのです。


こういった問題だと受験者に差がつきにくく,逆に勉強不足の人が合格できる可能性が出てきてしまいます。


第26回以降は,国試改革が静かに進行して,現在に至っています。


第35回・問題49 日本の社会保障の歴史に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会保険制度として最初に創設されたのは,健康保険制度である。

2 社会保険制度のうち最も導入が遅かったのは,雇用保険制度である。

3 1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では,日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。

4 1986年(昭和61年)に基礎年金制度が導入され,国民皆年金が実現した。

5 2008年(平成20年)に後期高齢者医療制度が導入され,老人医療費が無料化された。


なんと素直な問題なのでしょう。


正解は,

1 社会保険制度として最初に創設されたのは,健康保険制度である。


勉強した人なら必ず目にしたはずのものを正解にしています。

勉強した人はできる可能性が限りなく高い問題だと言えます。


今後は,こんな出題が続いていくことでしょう。

2023年2月17日金曜日

社会保障制度の歴史

歴史と人名は苦手とする人は多いですが,歴史も人名も法制度のようには変わらないので,古い過去問もそのまま使えます。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題49 日本の社会保障の歴史的展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 被用者を対象とした社会保険制度として,まず健康保険法が施行され,その後,厚生年金保険法が施行された。

2 最初に実施された公的医療保険制度は,国民健康保険である。

3 後期高齢者医療制度は,介護保険制度と同時に創設された。

4 国民皆年金は,基礎年金制度の導入によって実現した。

5 第二次世界大戦後,社会福祉の制度は,身体障害者福祉法,児童福祉法,生活保護法の順に施行された。


私たちチームfukufuku21にとって,第29回国家試験はつい最近の感じがしますが,今となっては,ずいぶん昔となりました。


簡単に入手するのは困難ではないかと思うほどの昔の問題です。


参考書は,国家試験に出題されたものを参考にして作られるので,参考書に書かれているものの多くは,直近3年間の出題はなくても,過去のいつかの時点で出題されたものだと言えます。


しかし,国家試験に出題されたものであっても,もう出題されることはないだろうというものもあります。


国家試験は,5つの選択肢がなければ成立しません。しかも,正解以外は,誤りのものです。


今日の問題には,そういったものはありませんが,問題の中には,数合わせで出題するようなものがあります。


国家試験をみるとそういったものがよくわかりますが,参考書だけをみるとそれがわかりにくいので,すべてが重要だと思ってしまいます。


本当は,多くの人が思っているほど,国家試験は複雑でも高度でもありません。

覚えるべきものを確実に覚えると点数は伸びます。


それでは解説です。


1 被用者を対象とした社会保険制度として,まず健康保険法が施行され,その後,厚生年金保険法が施行された。


これが正解です。


健康保険法がわが国の社会保険立法の最初のものなので,当然これが正解になります。


どの社会保険制度と比べても,健康保険法が最も先になります。


単純ですね。


2 最初に実施された公的医療保険制度は,国民健康保険である。


選択肢1と関連しますが,健康保険法が先です。


3 後期高齢者医療制度は,介護保険制度と同時に創設された。


今の大学生は,介護保険法が導入された後に生まれた人たちです。


社会福祉士の国家試験は,社会人も数多く受験しますが,社会人の合格率は,大学生一般よりも高いことに気づいている人は実はそれほど多くないようです。


国家試験を実施する社会福祉振興・試験センターは,年代別の合格率を発表しません。


発表すると,20歳代よりもそれ以上の年代のほうの合格率が高いことが明らかとなるのではないかと思います。


なぜそう思うかと言えば,社会人が学ぶ一般養成施設の合格率は,大学の合格率よりも高いからです。


社会人は,それまでの人生で見聞きしてきたことの知識は確実に若い人よりも多いはずです。


さて,問題に話を戻すと,大学生は介護保険の導入も後期高齢者医療制度もリアルタイムでは知りません。


そのため,こういったわかりやすいものでも間違う人がいるはずです。


2000年の介護保険と同時に始まったものには,成年後見制度などがあります。後期高齢者医療制度が始まったのは,2005年です。


4 国民皆年金は,基礎年金制度の導入によって実現した。


国民皆年金・皆保険が実現したのは,1961(昭和36)年です。


基礎年金制度は,ずっと後の1986(昭和61)年に始まりました。


5 第二次世界大戦後,社会福祉の制度は,身体障害者福祉法,児童福祉法,生活保護法の順に施行された。


福祉三法の成立順は,旧生活保護法(1946年) → 児童福祉法(1947年) → 身体障害者福祉法(1949年) ⇒ 新生活保護法(1950年)です。


身体障害者福祉法の成立が遅くなったのは,GHQの影響です。


この当時の社会福祉制度は,GHQの指令のもとでつくられていきます。しかし,身体障害者の多くは,戦争によって生まれた傷痍軍人ですが,GHQは傷痍軍人を優先する施策は,無差別平等を示したSCAPIN775(社会救済に関する覚書)に反するものとして,傷痍軍人に対する施策を廃止させました。


そのあとに対象を広げた法制度を目指したために時間がかかっていました。


そんな折,ヘレン・ケラーさんが来日して,法制度の整備の機運が高まり,ようやく1949年に身体障害者福祉法が成立したのです。


身体障害者福祉法に規定される障害者の種類は,肢体不自由だけではなく,視覚障害,聴覚障害,言語機能障害が含まれたのは,ヘレン・ケラーさんの来日によるものです。


歴史が面白くなってきませんか。


今日の問題をみて,「あっ」と思った人もいるのではないでしょうか。


第35回国家試験では,非常によく似た問題が出題されています。


第35回・問題49 日本の社会保障の歴史に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会保険制度として最初に創設されたのは,健康保険制度である。

2 社会保険制度のうち最も導入が遅かったのは,雇用保険制度である。

3 1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では,日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。

4 1986年(昭和61年)に基礎年金制度が導入され,国民皆年金が実現した。

5 2008年(平成20年)に後期高齢者医療制度が導入され,老人医療費が無料化された。


正解は,選択肢1です。

1 社会保険制度として最初に創設されたのは,健康保険制度である。


正解も第29回の問題と同じです。


この問題の中で特に注意したいのは,選択肢3です。

3 1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では,日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。


日本は,ドイツを参考にして社会保障制度をつくったこともあり,社会保障制度の中心は,社会保険制度となります。


この方針のために,社会保障財源の割合では,社会保険料は,税(公費)よりも多くなります。


〈今日の一言〉


国家試験に向けた勉強は,最初は知識が少ないのでとても辛く感じることでしょう。


しかし,それでも勉強していくと多くのことが分かってくるので,いろいろなことがつながっていきます。


そのようになれば,知識があいまいになることもど忘れすることも少なくなります。

2023年2月16日木曜日

国家試験合格に必要なこと

何度も受験していると「どんな勉強をしたら合格するのだろう」と思うことも多いのではないでしょうか。


毎年,ある程度の勉強をして受験している人なら,合格する知識がついていてもよいと思います。


しかし,それにもかかわらず,ボーダーラインを超えないのは,何かに原因があると思います。それを明らかにして,その対策をしないと同じ結果になってしまいます。


その原因は人それぞれですが,一つには不適切な勉強方法があります。

参考書を変えたところで,勉強方法の見直しがないと結果はついて来ません。


最も見直しが必要なタイプは,合格基準点まであと数点足りない状況が何度も続いている人です。


今,この時期に問題は見たくないと思いますが,今なら,まだ問題を解いた時の思考のプロセスを覚えているのではないかと思います。


ここには多くの情報があります。


最後に正解を選べなかったのには,何かの理由があるように思います。

ミスを知ることは辛いですが,ぜひ一度問題を見直してみることをおすすめしたいです。


今回から数回にわたって,振り返りをしたいと思います。


※今日の問題は,お休みします。

2023年2月15日水曜日

第35回国家試験におけるタクソノミーⅡ型の問題~ファイナル

国家試験が終わると「今までと傾向が変わった」という感想が多く聞かれます。


しかし,受験生が感じるほど,傾向は大きく変わっていることはありません。


第35回国家試験では,タクソノミーⅡ型・Ⅲ型の出題が多くなったものの,結局は今までにも出題されていたものでした。


国家試験は常に一定程度変化しています。


そうでなければ,現場では役立たない「知識があっても知恵のない社会福祉士」を生み出すことになってしまいます。


今回は,第35回を振り返るシリーズの最後です。



第35回・問題9 次の記述のうち,性格特性.の5因子モデル(ビッグファイブ)の1つである外向性の特徴として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ささいなことで落ち込みやすい。

2 新しいことに好奇心を持ちやすい。

3 他者に対して親切である。

4 他者との交流を好む。

5 責任感があり勤勉である。


うまい出題です。


社会福祉士の国家試験は,選択肢が5つ必要です。ビッグファイブも5つなので,ぴったり合います。


ビッグファイブは,「外向性」「神経症傾向」「誠実性」「調和性」「(経験への)開放性」(知的好奇心)の5つが特性因子であるとするものです。


こんなものでもタクソノミーⅡ型として出題することができることに軽い感動を覚えます。


このような問題を出題されると驚きます。しかし,落ち着いて考えると設問は,外向性なので,ビッグファイブでなくても,外向性を示すものを選べば正解できます。


これが,経験への開放性だったら,難易度はぐんと上がったことでしょう。


それでは,解説です。


1 ささいなことで落ち込みやすい。

 → 神経症傾向


2 新しいことに好奇心を持ちやすい。

 → (経験への)開放性


3 他者に対して親切である。

 → 調和性


4 他者との交流を好む。

 → 外向性


5 責任感があり勤勉である。

 → 誠実性


ということで,正解は選択肢4の「他者との交流を好む」でした。


〈今日の一言〉


今日の問題の難易度は,かなり高いです。


なぜなら思考して答えるタクソノミーⅡ型だからです。


問われていること自体は,それほど難しくありません。


タクソノミーⅡ型・Ⅲ型は,知識があっても思考がうまくできないと正解することができないので,勉強する際は,簡単にでも例示できるくらいの知識にするように心がけましょう。


2023年2月14日火曜日

第35回国家試験におけるタクソノミーⅡ型の問題~その3

タクソノミーⅡ型・タクソノミーⅢ型の出題は受験者を苦しめますが,確実な知識があれば,何の問題もなく,多くの問題は正解できるはずです。


知識がある人でも解けない問題は,誰も解けないので,その分,合格基準点が下がります。


第35回・問題58 事例を読んで,これからの生活においてLさんが利用可能な「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスとして,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 Lさん(30歳)は,視覚障害により障害等級1級の身体障害者手帳の交付を受けている。慣れた場所では白杖を利用し単独で歩行でき,日中は一般就労に従事している。これまで実家暮らしで家族から介護を受けてきたが,職場近くの賃貸住宅を借り,そこで一人暮らしをしようと準備している。これからは,趣味や外食のため,行ったことがない所にも積極的に外出したいと考えている。Lさんの障害支援区分は3で,調理,洗濯,掃除等の家事援助を必要としている。

1 居宅介護

2 重度訪問介護

3 同行援護

4 行動援護

5 重度障害者等包括支援


これは,制度系のタクソノミーⅡ型です。

もしかすると,これがタクソノミーⅢ型かもしれません。


タクソノミーⅡ型とタクソノミーⅢ型の違いは,思考する回数です。

タクソノミーⅡ型は,1回であるのに対して,タクソノミーⅢ型は,2回です。


この問題の場合は,事例を読んで,1回目の思考をして,それぞれの選択肢を読んで,知識を想起し,もう一度,事例に戻れば,2回目の思考をすることになります。


これがタクソノミーⅢ型であるとすれば,問題の難易度は,Ⅲ型はⅡ型とそれほど変わらないかもしれません。


いずれにせよ,確実な知識があれば攻略できるので,決して恐れることはありません。


この問題の正解は,選択肢1と3です。


選択肢1の「居宅介護」は,「調理,洗濯,掃除等の家事援助を必要としている」という福祉ニーズに対応するものです。


選択肢3の「同行援護」は,「行ったことがない所にも積極的に外出したいと考えている」という福祉ニーズに対応するものです。

2023年2月13日月曜日

第35回国家試験におけるタクソノミーⅡ型の問題~その2

社会福祉士の国家試験は,出題範囲が広いですが,やみくもに出題されているわけではありません。

 

国家試験の実施機関として指定されている公益財団法人社会福祉試験・振興センターは,「出題基準」を示しています。

 

その範囲には収まっていないと思われる出題もなくはないですが,基本的に出題基準の範囲から出題されます。

 

平成19年度の改正カリキュラムによる国家試験は,第22回に始まり,第36回で終了します。

 

37回からは,令和元年度の改正カリキュラムによる国家試験となります。

このカリキュラムの出題基準はまだ発表されていませんが,早めに発表されることが予測され,第37回以降に受験する人は,その内容を学んでいくことになります。

 

さて,第36回国家試験は,平成19年度の改正カリキュラムの最後の年です。

35回国家試験もそうでしたが,第36回国家試験は,受験対策しやすい時です。

 

22回以降,国家試験を繰り返してきたので,どこがどのように出題されるかが明確になっているのです。

 

しかし,受験生を苦しめるのは,タクソノミーⅡ型・Ⅲ型の出題です。

 

35回・問題135 事例を読んで,B社会福祉士が,Cさんの希望を踏まえて特に意見を聴くべき職種として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 急性期病床を有する病院に医療ソーシャルワーカーとして勤務するB社会福祉士は,10日前から入院中のCさん(79歳,一人暮らし)の退院時カンファレンスに臨んだ。その会議には,Cさんを担当する看護師・理学療法士・作業療法士・管理栄養士・言語聴覚士・医療ソーシャルワーカー,Cさん本人が同席した。Cさんは軽度の脳梗塞を初めて発症して入院し,その後の治療等によって,基本的な日常生活動作や,言語・コミュニケーションに関する症状はほぼ消失したため,医学的には定期的な外来通院に移行できる状態である。しかし,利き腕の右手を動かしづらく,既存の調理器具ではうまく調理ができなくなっており,在宅生活には支援が必要な状況である。Cさんは,「調理はずっと行ってきたことなので,上手にできるようになりたい」と希望している。

1 看護師

2 理学療法士

3 作業療法士

4 管理栄養士

5 言語聴覚士

 

それぞれの専門職がどのような専門性をもっているのかを理解していないと確実に正解することは困難です。

 

正解は,選択肢3の「作業療法士」です。

 

理学療法士と作業療法士の違いを明確にわかっていることがこの問題で正解するために必要です。

 

職種

法に規定される業務

理学療法士

身体に障害のある者に対し,主としてその基本的動作能力の回復を図るため,治療体操その他の運動を行なわせ,及び電気刺激,マツサージ,温熱その他の物理的手段を加えること。

作業療法士

身体又は精神に障害のある者に対し,主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため,手芸,工作その他の作業を行なわせること。

言語聴覚士

音声機能,言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため,言語訓練その他の訓練,これに必要な検査及び助言,指導その他の援助。

 

応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るのが,作業療法士です。

 

この問題の難易度は決して高くはありません。なぜなら,そこそこの知識があれば,看護師,管理栄養士,言語聴覚士は,消去することが可能だからです。

 

試験後に,「2つまで絞り込めた」ということをよく聞きます。

 

しかし,残った2つから正解を選ぶためには,確実な知識に裏づけられた応用力が必要です。ここが合否を分けます。

2023年2月12日日曜日

第35回国家試験におけるタクソノミーⅡ型の問題~その1

第35回の国家試験を受験した人は,解きにくかったと感じた人もいたように思います。


問題自体は,それほど変わったものではなくても,出題の仕方を変えることで難易度が上がることがわかる感想です。


タクソノミーⅡ型,Ⅲ型は,例示しての出題のようなので,知識を例に合わせて考えることが必要です。


第35回の代表的なタクソノミーⅡ型の一つは,以下の問題でしょう。


第35回・問題76 次の記述のうち,医療チーム内で専門分野を超えて積断的に役割を共有するトランスディシプリナリモデルの事例として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 Fさんの病状が急変したため,医師は,看護師へ静脈注射機材の準備,薬剤師へ薬剤の準備,医療ソーシャルワーカーへ家族への連絡の指示を出した。

2 災害発生による傷病者の受入れのため,G病院長は,全職員の招集,医師へのトリアージ,看護師へ手術室の準備,医事課職員へ情報収集などの指示を出した。

3 Hさんの食事摂取の自立の希望を達成するため,理学療法士は座位保持,作業療法士は用具の選定,管理栄養士は食事形態,看護師は食事介助の工夫を行った。

4 一人暮らしで在宅療養中のJさんの服薬管理について,往診医,訪問看護師,薬剤師,訪問介護員,介護支援専門員等の自宅への訪問者それぞれが,Jさんとの間で確認することにした。

5 自立歩行を希望するKさんの目標をゴールに,理学療法士,作業療法士,看護師,介護福祉士とでケースカンファレンスを行い,立位保持訓練の方法を検討した。


トランスディシプリナリモデルはチームワークモデルの一つです。


一般的には,役割を交換して実務を行うことを言いますが,医療現場は,業務独占の専門職が存在するので,実際に役割を交換することはできません。


そういった意味で,この問題はとてもよい出題をしたように思います。


この問題の中で,本来自分が行うものと違う業務に関するものでありそうなのは,選択肢4と5でしょう。


しかし,選択肢4は,服薬管理という目標を共有して,それぞれの専門職がかかわっているので,インターディシプナリーモデルだと言えます。


ということで,正解は選択肢5だと考えます。


5 自立歩行を希望するKさんの目標をゴールに,理学療法士,作業療法士,看護師,介護福祉士とでケースカンファレンスを行い,立位保持訓練の方法を検討した。


1 Fさんの病状が急変したため,医師は,看護師へ静脈注射機材の準備,薬剤師へ薬剤の準備,医療ソーシャルワーカーへ家族への連絡の指示を出した。

2 災害発生による傷病者の受入れのため,G病院長は,全職員の招集,医師へのトリアージ,看護師へ手術室の準備,医事課職員へ情報収集などの指示を出した。

3 Hさんの食事摂取の自立の希望を達成するため,理学療法士は座位保持,作業療法士は用具の選定,管理栄養士は食事形態,看護師は食事介助の工夫を行った。


この3つは,マルチディシプナリーモデルです。


今後は,こういったタイプの問題が随所で出題されることが予測されるので,例示できるくらいの知識にして国家試験に臨むことが求められるでしょう。

2023年2月11日土曜日

今後の勉強のヒント~第35回国家試験を参考にして

 知識がそのまま答えになる問題は,タクソノミーⅠ型です。


勉強した知識を使って,考えることで答えを出す問題は,タクソノミーⅡ型です。


2回考える問題は,タクソノミーⅢ型です。


社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会の報告書では,タクソノミーⅡ型,あるいはタクソノミーⅢ型の出題を充実させることが提言されています。


タクソノミーⅢ型は,どのように出題するのか,第35回国家試験は興味を持っていましたが,一見するとどれがタクソノミーⅢ型に属する問題なのかわからない問題でした。


タクソノミーⅠ型とタクソノミーⅡ型をミックスしたような出題があります。


言ってみれば,タクソノミー1.5型という感じでしょうか。


第35回・問題93 19世紀中期から20世紀中期にかけてのソーシャルワークの形成過程に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 エルバーフェルト制度では,全市を細分化し,名誉職である救済委員を配置し,家庭訪問や調査,相談を通して貧民を減少させることを目指した。

2 セツルメント運動は,要保護者の個別訪問活動を中心に展開され,貧困からの脱出に向けて,勤勉と節制を重視する道徳主義を理念とした。

3 ケースワークの発展の初期段階において,当事者を主体としたストレングスアプローチが提唱された。

4 ミルフォード会議では,それまで分散して活動していたソーシャルワーク関係の諸団体が統合された。

5 全米ソーシャルワーカー協会の発足時には,ケースワークの基本的な事柄を広範囲に検討した結果として,初めて「ジェネリック」概念が提起された。


この問題の答えは,選択肢1です。


1 エルバーフェルト制度では,全市を細分化し,名誉職である救済委員を配置し,家庭訪問や調査,相談を通して貧民を減少させることを目指した。


ある程度勉強した人なら,エルバーフェルト制度の名前は知っているはずです。


エルバーフェルト制度そのものは知らずとも,民生委員の源流である済世顧問制度,方面委員制度は,いずれもエルバーフェルト制度を参考にして作られたことは,覚えておかなければならないことです。


この知識を使って考えることで,選択肢1が正解だろうと推測できます。


ただし,この問題は,既存の知識でどうにかなる問題です。


選択肢5にジェネリックが出題されているからです。


ジェネリックの概念が示されたのは,ミルフォード会議報告書なので,選択肢4と5は入れ替えになっていると推測できます。


選択肢2は,個別訪問活動という表現があるので,COSの活動だと推測できます。


選択肢3は,ストレングスアプローチは,それほど古くはないだろうと推測できます。


このように考えていくことができれば,選択肢1が残ります。


〈今日の一言〉


国家試験の出題が高度になっても,多くの問題は,既存の知識を使って考えると正解できるように作られます。


限られた時間の中で,推測しながら答えを出す作業は,確実に受験者を苦しめることになります。


タクソノミーⅡ型,Ⅲ型は,例示しての出題となるようなので,過去問を使って勉強する際は,正解できることを目的とするのではなく,ほかにどのような例があるかを考えると思考の精度が上がることでしょう。

2023年2月10日金曜日

国家試験の行方

カリキュラムが変わっても受験資格がなくなるわけではありませんが,できれば第36回で合格したいです。


第37回国家試験からは,令和元年度カリキュラムの国家試験に切り替わります。


第35回と第36回は,新しいカリキュラムによる国家試験への移行期間に位置づけられていますが,第35回国家試験を見る限り,それほど大きな変化は見られないので,第36回国家試験も同じような出題になるのだと考えられます。


最も重視したいのは,知識があることを前提にして,思考することで答えを出すタクソノミーⅡ型・Ⅲ型の問題に対応できる力です。


第35回・問題15 次の記述のうち,ヴェーバー(Weber,M.)の合法的支配における法の位置づけとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 法は,被支配者を従わせ,超人的な支配者の権力を貫徹するための道具である。 

2 法は,伝統的に継承されてきた支配体制を正当化するための道具である。

3 法は,支配者の恣意的な判断により定められる。

4 法は,神意や事物の本性によって導き出される。

5 法は,万民が服さなければならないものであり,支配者も例外ではない。


この問題は,タクソノミーⅠ型とⅡ型の中間と言えるものかもしれません。


ある程度勉強した人なら,ヴェーバーの支配システムは必ず目にしていたはずです。


出題は,合法的支配が問われていますが,確実に正解するためには,伝統的支配とカリスマ的支配についても思い出すことが必要です。


それらを使って答えを考えます。


結構高度な思考が求められます。


1 法は,被支配者を従わせ,超人的な支配者の権力を貫徹するための道具である。 


これは,カリスマ的支配に関連するものだと言えるでしょう。


2 法は,伝統的に継承されてきた支配体制を正当化するための道具である。


これは,伝統的支配に関連するものだと言えるでしょう。


3 法は,支配者の恣意的な判断により定められる。


これは,カリスマ的支配に関連するものだと言えるでしょう。


4 法は,神意や事物の本性によって導き出される。


これは,神意というところから伝統的支配に関連するものだと言えるでしょう。


5 法は,万民が服さなければならないものであり,支配者も例外ではない。


これが正解です。


合法的支配は,近代の民主国家の姿です。自分たちで定めた法やルールは,定めた本人にも適用されます。


この問題の元ネタがあります。


第27回・問題16 法と社会,そこに成立する秩序との関係に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ホッブズ問題とは,人々の私的利益の追求こそが,万人の万人に対する闘争状態を克服することを明らかにした議論のことをいう。

2 合法的支配とは,形式的に正しい手続きを経て定められた法に基づいていることを理由に,人々がその支配を受け入れていることをいう。

3 抑圧的法とは,支配者が被支配者を抑圧し黙らせるための手段として用いられるが,支配者自身もその法の支配を受けなければならないものをいう。

4 応答的法とは,法が政治から分離され,社会のメンバーすべてが等しく従うべき普遍的なルールとして形式化され,体系化されたものをいう。

5 自律的法とは,普遍性を維持しつつも社会の要請に応えるために,より柔軟で可塑的な運用を可能にする新たな法のあり方のことをいう。


この問題の正解は,選択肢2です。


この出題に従えば,第35回の問題は,以下のように考えることもできます。


1 法は,被支配者を従わせ,超人的な支配者の権力を貫徹するための道具である。


→ 抑圧的法


3 法は,支配者の恣意的な判断により定められる。


→ 抑圧的法


5 法は,万民が服さなければならないものであり,支配者も例外ではない。


→ 自律的法


つまり,合法的支配は,自律的法に含まれる概念だと言えます。



〈今日の一言〉


本当の知識だと言えるのは,例で説明できることだと思います。


そうすれば,ボーダーラインがどうなろうとも,必ず合格をつかめるはずです。

2023年2月9日木曜日

受験生を苦しめるタクソノミーⅡ型・Ⅲ型

35回国家試験の文字数は,おおよそ45,000字でした。

 

34回は約48,000字だったので,3,000字くらい減っています。

 

問題の文字数は,第25回以降減少して,第31回以降また増加してきましたが,久々の減少です。

 

35回の文字数は,第32回と第33回のちょうど中間あたりです。

 

文字数が多いと引っ掛けポイントに気づきにくいので注意が必要ですが,文字数が少なくなると引っ掛けポイントを見つけやすくなります。

 

しかし,受験生を苦しめるのは,タクソノミーⅡ型,タクソノミーⅢ型の問題です。

 

知識をもとに考えて答えなければならないので,問題が高度になり,そして解くのに時間がかかります。

 

35回で文字数を減らしたのは,そのためなのではないかと思います。

 

〈タクソノミーⅡ型の出題の例〉

 

35回・問題3 次のうち,疾病の予防に関する記述として,正しいものを1つ選びなさい。

1 特定健康診査は一次予防である。

2 糖尿病予防教室は一次予防である。

3 ワクチン接種は二次予防である。

4 リハビリテーションは二次予防である。

5 胃がんの手術は三次予防である。

 

一次予防

疾病にならないこと。

二次予防

疾病を早期発見すること。

三次予防

疾病を重度化させないこと。

 

この表には書いていませんが,手術などの治療は二次予防に含まれます。

 

正解は選択肢2です。

糖尿病予防教室は,疾病にならないために行われるので,一次予防にあたります。

 

一次予防,二次予防,三次予防のそれぞれの意味を知っていて,事例にあてはめて考えるタクソノミーⅡ型のタイプです。

 

決して難易度が高い問題ではありませんが,確実に正解するのは決して簡単ではありません。

 

合否を分けるのは,こういった問題を確実に正解するか,あるいは正解できたり間違ったり,安定していないか,といったことです。

 

丸暗記勉強にとどまると対応できないので,必ず理解するレベルまで覚えることが重要になります。


次回からは,タクソノミーⅡ型,Ⅲ型の問題に焦点を当てて,その対策を数回にわたって紹介していきたいと思います。

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