知識がそのまま答えになる問題は,タクソノミーⅠ型です。
勉強した知識を使って,考えることで答えを出す問題は,タクソノミーⅡ型です。
2回考える問題は,タクソノミーⅢ型です。
社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会の報告書では,タクソノミーⅡ型,あるいはタクソノミーⅢ型の出題を充実させることが提言されています。
タクソノミーⅢ型は,どのように出題するのか,第35回国家試験は興味を持っていましたが,一見するとどれがタクソノミーⅢ型に属する問題なのかわからない問題でした。
タクソノミーⅠ型とタクソノミーⅡ型をミックスしたような出題があります。
言ってみれば,タクソノミー1.5型という感じでしょうか。
第35回・問題93 19世紀中期から20世紀中期にかけてのソーシャルワークの形成過程に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 エルバーフェルト制度では,全市を細分化し,名誉職である救済委員を配置し,家庭訪問や調査,相談を通して貧民を減少させることを目指した。
2 セツルメント運動は,要保護者の個別訪問活動を中心に展開され,貧困からの脱出に向けて,勤勉と節制を重視する道徳主義を理念とした。
3 ケースワークの発展の初期段階において,当事者を主体としたストレングスアプローチが提唱された。
4 ミルフォード会議では,それまで分散して活動していたソーシャルワーク関係の諸団体が統合された。
5 全米ソーシャルワーカー協会の発足時には,ケースワークの基本的な事柄を広範囲に検討した結果として,初めて「ジェネリック」概念が提起された。
この問題の答えは,選択肢1です。
1 エルバーフェルト制度では,全市を細分化し,名誉職である救済委員を配置し,家庭訪問や調査,相談を通して貧民を減少させることを目指した。
ある程度勉強した人なら,エルバーフェルト制度の名前は知っているはずです。
エルバーフェルト制度そのものは知らずとも,民生委員の源流である済世顧問制度,方面委員制度は,いずれもエルバーフェルト制度を参考にして作られたことは,覚えておかなければならないことです。
この知識を使って考えることで,選択肢1が正解だろうと推測できます。
ただし,この問題は,既存の知識でどうにかなる問題です。
選択肢5にジェネリックが出題されているからです。
ジェネリックの概念が示されたのは,ミルフォード会議報告書なので,選択肢4と5は入れ替えになっていると推測できます。
選択肢2は,個別訪問活動という表現があるので,COSの活動だと推測できます。
選択肢3は,ストレングスアプローチは,それほど古くはないだろうと推測できます。
このように考えていくことができれば,選択肢1が残ります。
〈今日の一言〉
国家試験の出題が高度になっても,多くの問題は,既存の知識を使って考えると正解できるように作られます。
限られた時間の中で,推測しながら答えを出す作業は,確実に受験者を苦しめることになります。
タクソノミーⅡ型,Ⅲ型は,例示しての出題となるようなので,過去問を使って勉強する際は,正解できることを目的とするのではなく,ほかにどのような例があるかを考えると思考の精度が上がることでしょう。