社会保険は,社会保険料を使って運営されるものですが,日本の場合は,社会保険料だけではなく公費(税金)も財源として運営されているのが特徴です。
ただし,社会保険制度なので,財源の割合をみた場合,公費は社会保険料を超えるような制度設計はなされません。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題49 社会保険制度の財源に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。
2 介護保険の給付財源は,利用者負担を除き,都道府県が4分の1を負担している。
3 老齢基礎年金は,給付に要する費用の3分の2が国庫負担で賄われている。
4 労働者災害補償保険に要する費用は,事業主と労働者の保険料で賄われている。
5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金に対する国庫負担がある。
この中で,近年の制度改正で注意すべきものがあります。
雇用保険の給付の中には,雇用継続給付があり,従来は,「高年齢雇用継続給付」「育児休業給付」「介護休業給付」の3つで構成されていました。
2020・令和2年に制度改正があり,育児休業給付は,失業等給付の雇用継続給付から独立しています。
そのため,現在の雇用保険の基本構成は,以下のようになりました。
・失業等給付
・育児休業給付
・雇用保険二事業
保険料の負担は,失業等給付と育児休業給付は「労使折半」,雇用保険二事業は「事業主のみ」となっています。
それでは解説です。
1 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。
この選択肢は,第35回・問題50にまったく同じ表現で出題されています。
2 健康保険の給付費に対する国庫補助はない。
健康保険にも国民健康保険にも国庫補助はあります。
2 介護保険の給付財源は,利用者負担を除き,都道府県が4分の1を負担している。
都道府県が4分の1を負担しているのは,生活保護費です。
国が4分の3,都道府県及び福祉事務所を設置する市町村が4分の1を負担しています。
介護保険の場合は,国が25%(施設等給付は20%),都道府県が12.5%(施設等給付は17.5%),市町村が12.5%となっています。
3 老齢基礎年金は,給付に要する費用の3分の2が国庫負担で賄われている。
国民年金に対する国庫負担は,2分の1です。かつては3分の1でしたが,今は2分の1に引き上げられています。
国庫負担が2分の1に引き上げられたことはとても重要なことです。
生活保護受給者のように国民年金の保険料の納付が免除されている人は,国庫負担分が,給付されるためです。
例えば,40年間にわたって保険料が全額免除されている人は,老齢基礎年金の給付額は,満額の2分の1が給付されます。
国庫負担が3分の1だった場合は,満額の3分の1しか給付されないので,2分の1に引き上げられたことで,給付額も引き上げられたことになります。
しかし,満額でも年80万円程度なので,2分の1になったところで40万円程度にしかなりません。
障害基礎年金の給付額には減額制はないので,国民年金の障害等級2級の場合は,老齢基礎年金の満額と同額,1級では1.25倍に割り増しされます。
4 労働者災害補償保険に要する費用は,事業主と労働者の保険料で賄われている。
労災保険の保険料は,雇用保険などと異なり,事業主のみです。
5 雇用保険の育児休業給付金及び介護休業給付金に対する国庫負担がある。
これが正解です。
この問題が出題された当時,雇用継続給付は,「高年齢継続給付」「育児休業給付」「介護休業給付」がありました。
このうち,国庫負担があるのは,育児休業給付と介護休業給付です。
高年齢継続給付には国庫負担はありません。
これは,育児休業給付が独立した今も同じです。