2021年12月31日金曜日

介護概論の流れをくむ問題

社会福祉士の国家試験は,現時点(第33回)までに大きな改正が一度行われています。


改正前には,介護概論という科目がありました。


平成19年度改正によって,介護概論は消滅し,老人福祉論と合わせた「高齢者に対する支援と介護保険制度」になりました。


問題数が限られるため,出題のレパートリーは狭く,第22~33回の国家試験を見ると,びっくりすることに認知症ケアに関する問題はたった1回しかありません。


今日取り上げるのも超レアな問題です。


出題の優先順位を考えたとき,出題する余裕がなくなってしまったのかもしれません。

しかし,介護概論の流れをくむ出題は一定数あるので,確実に正解できるようにしておきたいです。


特に覚えておきたいは,片麻痺のある人の介護です。

・車いすへの移乗

・服の着脱

・杖歩行

この3点は,確実に覚えておきたいです。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題120 事例を読んで,訪問介護員が行うAさんへのこれからの介護に関する次の記述のうち,訪問介護計画に盛り込むべき内容として,優先順位の最も高いものを一つ選びなさい。

〔事例〕

 Aさん(88歳,男性)は寝たきり状態で,自分で寝返りができない。84歳の妻が日中,食事の世話やおむつを換えたりしているが,夜間は一度も換えず,入浴もしていない。身長165cm,体重42kgで手足は細くやせている。

 老老介護の状態を知った近所の住民が市役所に連絡し,介護保険制度を利用することになり,介護支援専門員による居宅サービス計画が作成された。訪問介護が開始されてから1か月後,訪問介護員が仙骨部に褥瘡の初期段階と見られる発赤があるのを発見した。

1 家事負担の軽減として部屋の掃除を増やす。

2 体位変換の回数を増やし,妻の協力も依頼する。

3 妻に料理のメニューを紹介する。

4 日中はおむつを厚く重ね,交換回数を減らす。

5 このまま様子を見る。


今は褥瘡の治療とケアの方法が確立されていますが,歴史を見たとき,たかだか30年くらいの話です。


それよりも前は,褥瘡を逆に悪化させるようなケアが行われていました。


知らないというのは,怖いものです。


さて,この問題は「優先順位の最も高いもの」を選びます。


「適切なものを選ぶもの」ではないことが注意ポイントです。


今の国家試験では,この事例ほど情報は多くないので,何を優先すべきなのか明確です。


ポイントは,これからの介護に関するものです。


つまり,今までの状況と変わったものを選べばよいことになります。


今までと変わっていない状況のものは,すでに訪問介護計画に含まれていると考えられるからです。


これらの状況に合うものは選択肢2しかありません。


2 体位変換の回数を増やし,妻の協力も依頼する。


体位変換は2時間ごとに行うというのは,エビデンスがありませんが,褥瘡の予防には,除圧が欠かせません。


ほぼ完全な除圧には,エアマットレスの利用が適切ですが,この問題の中にはないので,体位変換が適切です。


2時間ごとというのは,おおよその目安であり,もっと少なくて良い人もいますし,もっと多くする必要がある人もいます。

Aさんは,低栄養状態にあると考えられるので,褥瘡リスクは高い人です。

そのため,「3 妻に料理のメニューを紹介する。」も適切ですが,初期の褥瘡があるAさんにとって,優先すべきなのは,褥瘡を悪化させないための対応です。


2021年12月30日木曜日

老人福祉の発展

今日の高齢者施策の中心は,介護保険制度ですが,社会福祉士なら,社会福祉制度である老人福祉制度は確実に覚えておきたいところです。


老人福祉法が出題されるときには,多くの場合,養護老人ホームが含まれます。


それだけ,重要視していることがよくわかるでしょう。


老人福祉法で規定される入所要件は,


65歳以上の者であって、環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けることが困難なもの


この経済的理由というのが,養護老人ホームの最大の特徴です。


歴史をひもとくとその理由がよくわかります。


救護法 → 養老院

生活保護法 → 養老施設

老人福祉法 → 養護老人ホーム


このように変遷し,現在に至ります。当初から貧困対策だったことがよくわかります。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題119 第二次世界大戦後の我が国の高齢者保健医療福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 経済的に困窮した高齢者を対象とする入所施設として,「旧生活保護法」で保護施設,「新生活保護法」では養護老人ホームが設けられた。

2 特別養護老人ホームは,高齢者への経済的援助と介護を行う施設として,老人福祉法(昭和38年)に規定された。

3 デイサービス,ショートステイサービス等は,福祉関係八法改正(平成2年)によって,それまでの措置事業から契約対象の事業に位置づけられた。

4 老人医療費の無料化は,国の制度としては老人福祉法の改正(昭和48年)により行われたが,老人保健法の制定(昭和57年)により一部自己負担が導入された。

5 「ゴールドプラン21」は,介護保険制度が始まった2000(平成12)年度から10か年計画でスタートし,サービス基盤の整備目標や今後の方向性を明らかにした。

(注)1 「旧生活保護法」とは,1946(昭和21)年に制定された生活保護法のことである。

2 「新生活保護法」とは,1950(昭和25)年に制定された生活保護法のことである。


選択肢1と2は,誤りであることがわかるでしょう。


選択肢1は前説で書いた通りです。


選択肢2は,経済的が関連するのは,養護老人ホームです。


特別養護老人ホームの入所要件は,


65歳以上の者であって、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なもの


3 デイサービス,ショートステイサービス等は,福祉関係八法改正(平成2年)によって,それまでの措置事業から契約対象の事業に位置づけられた。


措置から契約に変わったのは,介護保険法(2000年施行)です。


福祉関係八法改正では,第二種社会福祉事業に規定されています。



4 老人医療費の無料化は,国の制度としては老人福祉法の改正(昭和48年)により行われたが,老人保健法の制定(昭和57年)により一部自己負担が導入された。


これが正解です。


これは極めて重要です。


確実に押さえておきたいです。



5 「ゴールドプラン21」は,介護保険制度が始まった2000(平成12)年度から10か年計画でスタートし,サービス基盤の整備目標や今後の方向性を明らかにした。


もう今はゴールドプラン等は,出題されないと思います。


しかもこんないじわるな出題されることはないでしょう。


ゴールドプラン 1989年 (10か年計画)

新ゴールドプラン 1994年 (10か年計画の後期計画)

ゴールドプラン21 1999年 (5か年計画)


年と期間の2つが間違っています。


2021年12月29日水曜日

運営適正化委員会

運営適正化委員会は,社会福祉法に規定され,都道府県社会福祉協議会に設置されています。


〈業務〉

・日常生活自立支援事業の福祉サービス利用援助事業の適正な運営のための助言・勧告。

・福祉サービスに対する苦情の解決のための相談等。


2番目の福祉サービスに対する福祉サービスに対する苦情の解決のための相談等は,苦情の解決のあっせんをするものであって,福祉サービス事業者への改善命令を出すようなものではありません。


改善命令などを出すことができるのは,指定権者や認可権者です。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題118 福祉サービスの適切なサービス提供体制の確保の方法と実際に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 福祉サービスにおけるサービス・マネジメントとは,ケアマネジメントやケースマネジメントの方法を示したものである。

2 社会福祉法に規定する運営適正化委員会は都道府県社会福祉協議会に設置され,福祉サービス利用援助事業の適正な運営の確保とともに,福祉サービスの利用者からの苦情に適切に対応するために設けられている。

3 「福祉サービス第三者評価事業」は,福祉サービスの質の向上のために,社会福祉法に規定された措置として社会福祉事業の経営者にその受審が義務づけられている。

4 福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)とは,発生した事故による利用者への損害賠償に対処するためのものである。

5 福祉サービスの事業者にもISO9001の審査を受ける団体が出てきているが,このISO9001とは,サービスを提供した結果について審査認定するものである。


知識なしで正解することはできない問題です。


しかし,正解は,選択肢2です。


2 社会福祉法に規定する運営適正化委員会は都道府県社会福祉協議会に設置され,福祉サービス利用援助事業の適正な運営の確保とともに,福祉サービスの利用者からの苦情に適切に対応するために設けられている。


近年の国試問題にはみられない長い文章ですが,そのおかげで,運営適正化委員会のポイントがすべて入っています。


第22回国試は,本当に貴重です。


それでは,ほかの選択肢も解説します。


1 福祉サービスにおけるサービス・マネジメントとは,ケアマネジメントやケースマネジメントの方法を示したものである。


サービス・マネジメントは,サービス提供の質管理を行うものです。


ケアマネジメント(ケースマネジメント)は,ソーシャルワークの一技法です。


3 「福祉サービス第三者評価事業」は,福祉サービスの質の向上のために,社会福祉法に規定された措置として社会福祉事業の経営者にその受審が義務づけられている。


福祉サービス第三者評価事業の受審が義務づけられているのは,児童福祉法の社会的養護の施設だけです。


質向上のために,以下のように規定されています。


社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者の立場に立つて良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない。


4 福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)とは,発生した事故による利用者への損害賠償に対処するためのものである。


リスクマネジメントは,事故を発生させない取り組みも含みます。



5 福祉サービスの事業者にもISO9001の審査を受ける団体が出てきているが,このISO9001とは,サービスを提供した結果について審査認定するものである。


ISOには,さまざまな規格があり,そのうちの9001は,質の管理の規格です。


審査するのは,マニュアルなど,どのようにサービスを提供する仕組みがあるかどうかです。


2021年12月28日火曜日

CSとES

今回は,CS(Customer Satisfaction=顧客満足)とES(Employee Satisfaction=従業員満足)を取り上げます。


CSを上げるには,ESを上げることが必要です。


ESが上がるとCSが上がり,CSが上がるとESが上がります。


このような好循環が生まれます。


CSを高めても,ESをないがしろにするような組織は,おそらく長続きしないでしょう。


それでは今日の問題です。


第22回・問題117 サービス・マネジメントに関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。


1 ドナベディアン(Donabedian,A.)によれば,ヘルスケアの質は「結果」(outcome)で評価されるものである。

2 サービスの消費者が知覚するサービスの質は,何が提供されたのかではなく,どのようにして提供されたのかによって評価される。

3 デミング(Deming,W.E.)らが提唱した統計的品質管理手法は,製造業の品質管理に使われるものであり,サービスの品質管理に使うことはできないとされる。

4 サービスの従事者に対して,自主性と判断の自由度を与えることは,優れたサービスを提供することにつながるとされる。

5 サービス・デリバリー・システムという考え方によれば,サービスの水準はサービス従事者とサービスの消費者との二者間の関係によって決まる。


何,これ? と思うような問題です。


しかし,迷わなければ,正解にたどり着けるはずです。


別な言い方をすれば,迷うと正解にたどり着くことはできません。


答えは,今ならすぐわかりますね?


4 サービスの従事者に対して,自主性と判断の自由度を与えることは,優れたサービスを提供することにつながるとされる。


なぜこの選択肢が正解なるのかと言えば,


サービスの従事者に対して,自主性と判断の自由度を与えること → ESアップ


ESが上がると「優れたサービスを提供する」,その結果,CSが上がる


こういったプロセスとなります。


ほかの選択肢も見てみます。


1 ドナベディアン(Donabedian,A.)によれば,ヘルスケアの質は「結果」(outcome)で評価されるものである。


結果は重要でしょう。


例えば,医療では,手術の成功が大切です。


しかし,患者に評価されるのは,結果だけではなく,どのように医療が提供されたか,ということもあるでしょう。


ドナベディアンが示したヘルスケアの質


・構造

・過程

・結果


で評価されます。


構造は,配置された職員数などです。


職員数が多いからといって,質の高いサービスが提供されるかどうかはわかりませんが,少なくとも必要数に足りないような職員数では,満足なサービスの提供はできないでしょう。


過程は,サービスの提供の過程のことです。


つまり,どのように提供されたのか,が過程です。


結果が良くても,乱暴な物の言い方をするようなサービスの提供では評価は低くなります。


結果は,どのような成果があったか,です。


結果は問題文にあったように,サービスの提供には,極めて重要な要素です。


2 サービスの消費者が知覚するサービスの質は,何が提供されたのかではなく,どのようにして提供されたのかによって評価される。


サービスの質の評価は

・サービスの内容

・サービスの提供の仕方


の両方が関連します。


3 デミング(Deming,W.E.)らが提唱した統計的品質管理手法は,製造業の品質管理に使われるものであり,サービスの品質管理に使うことはできないとされる。


デミングらが提唱した統計的品質管理手法とは,PDCAサイクルのことです。


PDCAサイクルの詳しいことは,調べておいてほしいですが,サービスの品質管理にも用いられます。


5 サービス・デリバリー・システムという考え方によれば,サービスの水準はサービス従事者とサービスの消費者との二者間の関係によって決まる。


サービス・デリバリー・システムが最もよくわからないものでしょう。


おそらくもう出題されないように思いますが,簡単に言えば,サービスの提供するための仕組みだと言えるでしょう。


ネットで調べると,最も上位に表示されるのは,大阪市立大学 名誉教授の白澤政和先生の記事です。


このように一般的によく知られていないものが出題されても,正解になることはめったにあることではないので,決して慌てないことが重要です。


サービス・デリバリー・システムは,サービスを提供するための仕組みだとすれば,制度設計なども関係するでしょう。

2021年12月27日月曜日

キャリア・レインボー

キャリアは,仕事の経歴といった意味で使われることが多いと思います。


しかし,本来のキャリアは,仕事に関するものだけではありません。


そのために,近年では,キャリア・レインボーという用語が使われるようになってきています。


レインボーの7色になぞらえて,人のキャリアは,仕事面だけではなく,人生の中でのさまざまな経歴を表現したものが,キャリア・レインボーです。


社会福祉士の国試にはまだ出題されたことがありませんが,多様な生き方が目指される中,ぜひ覚えておきたいものです。


社会福祉士の国試に出題されるキャリアがつく用語は結構多いです。


そのうち,わかりにくいのは,キャリア・アンカーキャリア・プラトーでしょう。


キャリア・アンカーのアンカーは錨(いかり)を意味しています。


転職する際などで,自分が最も大切にしたいキャリアの中心だと言えるでしょう。錨があるから船は安定して停まっていられます。


キャリア・プラトーのプラトーは,高原状態を意味しています。


キャリア・プラトーは,高原状態になぞらえて,キャリアが頭打ちになることをいいます。


わかりやすい例で言えば,ある程度キャリアを積み重ねると,組織での役職もそれ以上上がらず,給料も頭打ちとなります。


これがキャリア・プラトーの状態です。


こういった状態になると,転職や起業を考える人もいるでしょう。


大きな組織だと,先輩を見ることで,どんなキャリアになるかが見えるからかもしれません。


しかし,どんなものにも頭打ち状態はあります。そこで限界を感じるのか,それ以上努力するかは,その人の生き方次第だと言えるでしょう。


国試勉強も同じです。勉強を始めた最初は,知識が増えていくので,問題がどんどん解けるようになっていきます。


しかし,ある程度のところまで来ると,点数は伸びなくなります。


これも高原状態です。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題116 福祉サービス提供組織における人材の確保と育成,労務管理に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい 。

1 「新人材確保指針」は,福祉・介護サービス分野に従事する人材の確保のために,労働環境の整備の促進,キャリアアップの仕組みの構築,潜在的な有資格者等の参入の促進等の方策を示したものである。

2 就業規則を作成することが義務づけられている事業所においては,就業規則の作成又は変更に当たっては,労働者の過半数を代表する者の同意を得ることが法律上の要件とされている。

3 通常の労働者と同視すべき短時間労働者については,教育訓練や福利厚生を通常の労働者と同じにする必要はない。

4 個人のキャリアとは,専門性の向上や専門資格の取得を指すものではなく,例えば定年まで勤務し,その中で役職が昇進していくという組織内ポストの上昇を指すものである。

5 軽度かつ短時間の作業に当たる宿直業務について,労働基準監督署長の許可を受けていなくとも,通常の勤務時間と同様の実労働時間に組み入れなくてよい。

(注) 「新人材確保指針」とは,「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」(平成19年厚生労働省告示約289号)のことである。


難易度が高い問題ですが,もうこんな感じの問題は出題されないでしょう。


この問題の難易度が高いのは,選択肢1が正解だからです。


1 「新人材確保指針」は,福祉・介護サービス分野に従事する人材の確保のために,労働環境の整備の促進,キャリアアップの仕組みの構築,潜在的な有資格者等の参入の促進等の方策を示したものである。


2007年に出された指針が,2020年代になってもまだ出題されることはないと思います。


それでは,ほかの選択肢を見ていきたいと思います。


2 就業規則を作成することが義務づけられている事業所においては,就業規則の作成又は変更に当たっては,労働者の過半数を代表する者の同意を得ることが法律上の要件とされている。


就業規則の作成又は変更に当たっては,労働基準法で以下のように規定されます。


使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない


3 通常の労働者と同視すべき短時間労働者については,教育訓練や福利厚生を通常の労働者と同じにする必要はない。


これは,今も出題される可能性があります。


同一労働・同一賃金の制度が導入されているからです。



4 個人のキャリアとは,専門性の向上や専門資格の取得を指すものではなく,例えば定年まで勤務し,その中で役職が昇進していくという組織内ポストの上昇を指すものである。


前説で述べたように,キャリアは仕事上の意味合いで使われることが多いですが,本来はそれにとどまりません。


多くのキャリアが存在します。その中には,もちろん専門性の向上や専門資格の取得を目指すものもあるでしょう。


また,仕事を離れて,家庭の仕事をする,子育てをする,趣味の仲間と交流する,定年後も新しい資格取得を目指す,こういったこともすべてキャリアです。


キャリア・レインボーとは,なかなか素敵なネーミングです。



5 軽度かつ短時間の作業に当たる宿直業務について,労働基準監督署長の許可を受けていなくとも,通常の勤務時間と同様の実労働時間に組み入れなくてよい。


宿直は,仕事があまりない職場の宿直だとしても,家で過ごしているわけではありません。

そこから消去することはできるでしょう。


それよりもこの問題でびっくりなのは,労働基準監督署長の許可を受けている場合は,通常の勤務時間と同様の実労働時間に組み入れなくてよいという規定があることです。


どのように算定するのか知りませんが,ちょっと辛そうです。

2021年12月26日日曜日

寛大化の誤差~人事考課の留意点

人事考課は,今は多くの組織で取り入れられているものだと思います。


個別面談で課題を明らかにして,その課題をクリアするための目標を立てます。


あらかじめ決めておいた期間が過ぎると,また面談を行い,目標に対してどうだったのかを評価します。


しかし,評価するのは決して簡単なことではありません。


そのために大きな組織では考課者訓練を行います。


そうしないと,評価が甘くなりがちな寛大化の誤差や一部の欠点のために全体の評価が厳しくなるハロー効果などを生じてしまうためです。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題115 福祉サービス提供組織における人材養成と確保に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。 

1 OJT(On-the-Job-Training)とは,教育訓練の方法の一つであり,職場を離れて行う職務教育訓練方法のことである。

2 OFF-JT(Off-the-Job-Training)とは,教育訓練の方法の一つであり,作業遂行の過程で中断・再開して行う訓練方法のことである。

3 教育訓練の方法の一つである自己啓発は,職場における上司などの直接の指導を受けながら行う能力開発の方法である。

4 人事考課における考課者の判断は,客観的な評価要素を定めて明確な定義づけを行っていれば,ハロー効果(halo effect)や寛大化の誤差(leniency error)などの影響を受けることはない。

5 ジョブ・ローテーション(job rotation)の目的の一つは,同じ仕事に長く従事することによって生じるマンネリズムを防止することである。


勉強不足の人は,当惑し混乱してしまうような問題でしょう。


それでは,解説です。


1 OJT(On-the-Job-Training)とは,教育訓練の方法の一つであり,職場を離れて行う職務教育訓練方法のことである。

2 OFF-JT(Off-the-Job-Training)とは,教育訓練の方法の一つであり,作業遂行の過程で中断・再開して行う訓練方法のことである。


この2つは,入れ替わっています。


そのため,こういったように出題してくれれば,受験生としては,2つとも消去できるのでラッキーです。


ただし,このようなことに気づくためには,ある程度の知識が必要です。



3 教育訓練の方法の一つである自己啓発は,職場における上司などの直接の指導を受けながら行う能力開発の方法である。


自己啓発を知らなくても,自己という名称から自分で行うことなのだろうという目星はつけられます。


こういったものを確実に消去できないと正解するのはかなり難しくなります。


合格する人と合格しない人の差は,実はこんなところにあるように思います。


教科書や過去問題集にあるものだけが出題されるのではあれば,記憶力の高い受験生が有利です。


現場では,知識があっても知恵のない社会福祉士を必要としていません。


そう思いませんか?



4 人事考課における考課者の判断は,客観的な評価要素を定めて明確な定義づけを行っていれば,ハロー効果(halo effect)や寛大化の誤差(leniency error)などの影響を受けることはない。


ようやくここで,今日のテーマの寛大化の誤差が登場してきました。


内容はともかく


言い切り表現に正解少なし


影響を受けることはない,という断定的表現は,だれか一人でも影響を受けることがあったら,成り立ちません。そのために言い切り表現は,正解が少なくなります。


ただし,法制度は別です。


法制度は,法の適用範囲をきっちり定めるために,言い切り表現でも正解になります。



5 ジョブ・ローテーション(job rotation)の目的の一つは,同じ仕事に長く従事することによって生じるマンネリズムを防止することである。


これが正解です。


この問題の難易度が高いのは,この選択肢をすぐ正解にはできにくいからです。


しかし,これが正解です。


だから,ほかの選択肢を消去しなければならないものは,確実に消去しないと,得点力は上がりません。


別な言い方をすれば,消去できる力があれば,得点できると言うこともできそうです。

2021年12月25日土曜日

リーダーシップ理論

リーダーシップ理論の出題頻度はかなり高いです。

 

基本的に覚えていてほしいのは,

 

コンティンジェンシー理論(状況適合理論)です。

 

適切なリーダーシップスタイルは,状況によって変わるとするものです。

 

オーソドックスなのは,PM理論ですが,コンティンジェンシー理論ではありません。

 

なぜなら,PM型が最も優れたリーダーシップだと言っているからです。

 

それでは,今日の問題です。

 

 

22回・問題114リーダーシップに関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

 

1 三隅二不二によれば,リーダーシップM行動は,集団の目標達成に志向したリーダーシップ行動である。

2 三隅二不二によれば,リーダーシップP行動は,集団や組織の中で生じた人間関係の緊張を解消するリーダーシップ行動である。

3 三隅二不二のリーダーシップPM論によれば,一つのリーダーシップの行動には,その程度の相違はあっても,PMが同時に含まれている。

4 フィードラー(Fiedler,F.E.)によれば,有効なリーダーシップのスタイルは,達成すべき課題の構造や,リーダーとメンバーの関係には影響されないことが望ましい。

5 ヴェーバー(Weber,M.)によれば,すべてのリーダーシップにはカリスマ性が必要である。


PM理論は,以下のように示すことができます。














ということで,選択肢3が正解です。


3 三隅二不二のリーダーシップPM論によれば,一つのリーダーシップの行動には,その程度の相違はあっても,PとMが同時に含まれている。


上記の図でもすべてPとMが含まれています。


それでは,ほかの選択肢も確認します。


1 三隅二不二によれば,リーダーシップM行動は,集団の目標達成に志向したリーダーシップ行動である。


M行動は,スタッフへの配慮などです。この問題で言えば,集団や組織の中で生じた人間関係の緊張を解消するリーダーシップだということになります。


2 三隅二不二によれば,リーダーシップP行動は,集団や組織の中で生じた人間関係の緊張を解消するリーダーシップ行動である。


P行動は,組織の目標を達成するためのリーダーシップです。この問題で言えば,集団の目標達成に志向したリーダーシップということになります。


4 フィードラー(Fiedler,F.E.)によれば,有効なリーダーシップのスタイルは,達成すべき課題の構造や,リーダーとメンバーの関係には影響されないことが望ましい。


フィードラー理論こそが,コンティンジェンシー理論です。

適切なリーダーシップは,状況によって変わります。


フィードラー理論は,以下のように示すことができます。













5 ヴェーバー(Weber,M.)によれば,すべてのリーダーシップにはカリスマ性が必要である。


ウェーバーの提唱するリーダーシップスタイルは,


・伝統的支配

・カリスマ的支配

・合法的支配


3種類です。それぞれ簡単にでも説明できるようにしておきましょう。


このうち,合法的支配には,カリスマ性は必要ではありません。カリスマのような特殊な人がもつ能力ではなく,みんなから認められて,リーダーとなっていきます。

2021年12月24日金曜日

メイヨーらによるホーソン実験

メイヨーらが行ったホーソン工場での実験は,科学的管理論の正しさを実証することが目的でしたが,この実験によって,人間関係が重要であることが認識されるようになりました。

 

こういった転機となるものは,とても重要です。

 

この試験では,作業環境や休憩時間や賃金などを変えてみて,その作業効率がどのように変化するかを検証しました。

 

社会調査的に言えば,「作業環境」「休憩時間」「賃金」は,独立変数

 

「作業効率」は,従属変数

 

これらの関連を調べるためには,「重回帰分析」を用います。

 

「作業環境」と「作業効率」の関連を調べるときは,回帰分析で良いのですが,このように独立変数が複数ある場合は,重回帰分析を用いるのです。

 

ホーソン実験では,関連を調べた結果,明確な有意差が見られなかったといういうことだったのだと思います。

 

独立変数を「人間関係」に変えて,改めて,関連を調べてみたら,有意差があったということなのでしょう。

 

具体的には,どんな実験をしたのかはよくわかりませんが,とにかくホーソン実験は重要です。

 

ホーソン実験の覚えるべきポイントは,作業効率を上げる要因は,賃金や作業環境などではなく,職場のインフォーマルな人間関係である,ということです。

 

ホーソン実験が出題された場合,このことを正しく述べているかどうかをチェックすることが大切です。

 

それでは今日の問題です。

 

22回・問題113 組織理論に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

 

1 ヴェーバー(Weber,M.)が挙げた官僚制に特有な機能様式は,官庁組織に関するものである。

2 テイラー(Taylor,F.W.)が挙げた管理の第一の目標は,従業員一人一人の賃金を一律に低く抑えることである。

3 メイヨー(Mayo,G.E.)やレスリスバーガー(Roethlisberger,F.J.)は,各作業者の態度は賃金などの作業条件に依存していると主張した。

4 バーナード(Bamard,C.)は,組織成立の要件を,相互に意思を伝達できる人々がおり,それらの人々が行為を貢献しようとする意欲をもって,共通目的の達成を目指すとき,としている。

5 サイモン(Simon,H.A.)は,一人の孤立した個人は,極めて合理性の程度の高い行動をとることが可能であると主張した。

 

選択肢3は正解ではないことはすぐわかるでしょう。その調子です。

 

前説で述べた科学的管理論とは,選択肢2のテイラーが提唱したものです。

 

それでは,解説です。

 

1 ヴェーバー(Weber,M.)が挙げた官僚制に特有な機能様式は,官庁組織に関するものである。

 

官僚制とは,組織が機能するための原理です。

 

官僚組織に関するものだけではありません。

 

 

2 テイラー(Taylor,F.W.)が挙げた管理の第一の目標は,従業員一人一人の賃金を一律に低く抑えることである。

 

科学的管理論の手法は,標準的な作業量を定めるところから始まります。

 

その作業量よりも多くの製品を作ることができれば,高い賃金が与えられます。

 

その作業量よりも少ない製品しか作ることができなければ,低い賃金が与えられます。

 

このように,賃金をエサにして,作業効率を高めようとしたのが,科学的管理論にもとづいたマネジメントです。

 

これを打ち破ることになったのが,ホーソン実験だということです。

 

3 メイヨー(Mayo,G.E.)やレスリスバーガー(Roethlisberger,F.J.)は,各作業者の態度は賃金などの作業条件に依存していると主張した。

 

ホーソン実験は,作業効率は賃金などにあまり依拠しないことを明らかにしたものです。

 

もし,賃金に依拠しているのであれば,科学的管理論と何ら変わらないものとなってしまいます。

 

関係するのは,組織の中のインフォーマルな人間関係でしたね。

 

 

4 バーナード(Bamard,C.)は,組織成立の要件を,相互に意思を伝達できる人々がおり,それらの人々が行為を貢献しようとする意欲をもって,共通目的の達成を目指すとき,としている。

 

これが正解です。

 

この国試当時は,とても難しかったものだった思いますが,今は参考書などに必ず書いてありますね。

 

5 サイモン(Simon,H.A.)は,一人の孤立した個人は,極めて合理性の程度の高い行動をとることが可能であると主張した。

 

サイモンが提唱したのは,一人人の意思決定は独立したものではなく,関連することで,合理性の高い行動をとることができるというものです。

 

サイモンはよくわからなくても,孤立した個人が,適切に行動できるとは思えないので,消去することができるでしょう。

 

 

<今日の一言>

 

今日の問題は,10年の時を超えて,第33回国試で以下のように出題されています。

 

33回・問題121 経営の基礎理論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 バーナード(Barnard,C.)によれば,公式組織の3要素とは,コミュニケーション,貢献意欲,共通目的である。

2 アッシュ(Asch,S.)の実験によれば,集団の中で孤立無援の状態で異議を唱えるのと,一人でも同じ考えの仲間がいるのとでは,集団力学的に違いはない。

3 テイラー(Taylor,F.)は,労働者の感情を重視し人間関係に重きを置く経営管理を提唱した。

4 メイヨー(Mayo,G.)らによって行われたホーソン実験では,生産性に影響を与える要因が,人間関係よりも労働条件や作業環境であることが確認された。

5 ハインリッヒの法則とは,集団力学における集団規範に関するものである。

 

作りがそっくりですね。

 

正解も同じくバーナードです。

 

1 バーナード(Barnard,C.)によれば,公式組織の3要素とは,コミュニケーション,貢献意欲,共通目的である。

 

3年間の過去問をしっかりやれば合格できる

 

と声高に言う人はいっぱいいます。

 

しかし,3年間の過去問では知識量が圧倒的に足りないので,その内容を完璧に覚えたとしても合格基準点は越えないことは火を見るよりも明らかです。

 

今の国試は,過去問が膨大にあるので,近年出題されたものがすぐ出題されるということはあまりないのです。

2021年12月23日木曜日

福祉サービスの組織と経営

福祉サービスの組織と経営は,平成19年改正で登場した科目です。


社会福祉士らしい科目だと思うのですが,苦手だと思う人が多くて残念な感じがします。


社会福祉士以外には福祉の資格では学ぶことがないだけに,しっかり学べば,職場でも差がつくと思います。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題112 特定非営利活動法人と社会福祉法人に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 特定非営利活動法人は,行政への届出の続きだけで設立できる。

2 社会福祉法人と特定非営利活動法人は,原則として,実施する事業のために必要な資産を自ら所有することが,法人設立の条件となっている。

3 特定非営利活動法人における「理事会」と社会福祉法人の「理事会」は,業務に関して,同じ役割をもっている。

4 社会福祉法人は,介護サービス事業を実施する上で,特定非営利活動法人に比べ,法人税の取扱いが優遇されている。

5 社会福祉法人は,社会福祉事業以外の事業を実施することについて,特に制限が設けられていない。


第22回国試が実施された頃がとても懐かしいです。


こんな問題が出題されるのだ,と新鮮に感じました。


今見ると,正解するのは簡単ですが,当時はどんな問題が出題されるのかがわからなかったので,とてつもなく難しかったのです。


今見ると,合格基準点が低いので,その時代に受験したかったと思う人もいるかもしれませんが,その考えは間違っています。


今は情報が多くあるので,その当時よりも格段に解きやすくなっているのです。


さて,今日の問題に話は戻りますが,内容は難しいですが,正解するのは決して難しくはありません。


なぜなら,正解は選択肢4だからです。



4 社会福祉法人は,介護サービス事業を実施する上で,特定非営利活動法人に比べ,法人税の取扱いが優遇されている。


これが正解だとわからなくてもほかの選択肢は消去できるので,正解するのはそれほど難しくありません。


1 特定非営利活動法人は,行政への届出の続きだけで設立できる。


特定非営利活動法人の設立は,所轄庁による「認証」が必要です。


社会福祉法人・医療法人の設立は,「認可」が必要です。


2 社会福祉法人と特定非営利活動法人は,原則として,実施する事業のために必要な資産を自ら所有することが,法人設立の条件となっている。


この条件があるのは,社会福祉法人です。


3 特定非営利活動法人における「理事会」と社会福祉法人の「理事会」は,業務に関して,同じ役割をもっている。


同じではないから,出題する意味があります。


違いは分かりますか?


特定非営利活動法人の理事会は,特定非営利活動促進法では規定がありません。


社会福祉法人の理事会は,社会福祉法で,

一 社会福祉法人の業務執行の決定

二 理事の職務の執行の監督

三 理事長の選定及び解職


の業務を行うことが規定されています。


理事会よりも覚えておきたいのは,最高議決機関です。


社会福祉法人 → 評議員会

特定非営利活動法人 → 社員総会


4 社会福祉法人は,介護サービス事業を実施する上で,特定非営利活動法人に比べ,法人税の取扱いが優遇されている。


先に書いたように,これが正解です。社会福祉法人は,さまざまな優遇があります。


5 社会福祉法人は,社会福祉事業以外の事業を実施することについて,特に制限が設けられていない。


社会福祉法人は,公益事業も収益事業も行うことができますが,もちろん制限があります。

2021年12月22日水曜日

記録の文体

社会福祉士の国家試験には,記録の文体が出題されます。しかし,そんなものを出題する意味があるのかと思う人もいるでしょう。

しかし,その意図はいちいち説明されませんが,国家試験の出題には,すべて意図があります。

国家試験が終わると,にわか評論家が「この問題は良問」「この問題は悪問」といったことを述べますが,問題の作りには良し悪しはあっても,出題自体に悪問はないと強く主張したいです。


それでは今日の問題です。


第22回・問題111 病院のUソーシャルワーカー(社会福祉士)は,事故により車いすが必要となったVさん(50歳代,男性)との間で,信頼関係が形成できずにいたため,スーパービジョンを受けることとし,以下の記録(一部抜粋)を作成した。

 〇月×日 Vさんの部屋に入ったが,ベッドに横たわるVさんは,固く目を閉じたままであった。「おはようございます」と声をかけたときには,一瞬表情が動いたようにも見えたが,返事はなかった。付き添っていた妻が「Uさんがお見えですよ」と声をかけたが,やはり反応はなかった。少し待った後,妻に「最近の具合はいかがですか」と尋ねた。「私とは少しずつ話すようになってきたんですけどね」とうつむき加減に答えた。(後略)

 次のうち,この記録の文体を表すものとして,適切なものを一つ選びなさい。

1 この記録は,クライエントの言動を逐語的に記したものである。 

2 この記録は,クライエントの言葉を箇条書きにしている。 

3 この記録は,クライエントの言動などが時間経過にそって記述されている。

4 この記録は,クライエントの言動のうち主な項目を要約している。 

5 この記録は,クライエントの言動について∪ソーシャルワーカーの解釈を加えている。



登場人物は


Vさん

Vさんの妻

Uソーシャルワーカー


の3名です。


逐語的に書くと以下のようになります。


U:おはようございます。

V:・・・・・・

妻:Uさんがお見えですよ。

V:・・・・・・

U:最近の具合はいかがですか

妻:私とは少しずつ話すようになってきたんですけどね。


逐語記録は,このように,何の解釈も含めず,省略せず,言動をひたすら記述するものです。

支援記録では用いられることはありません。


それでは,どこで用いられるのでしょうか。


どちらかと言えば,介入の効果を検証するなどの場合に用いられるものです。


逐語記録を書くためには,クライエントとのやりとりをしっかり覚えておく必要があります。


覚えておけるのは,クライエントのやりとりが行き当たりばったりではないということです。


記録の文体を出題している意味はちゃんとあることがわかるようです。


それでは解説です。


1 この記録は,クライエントの言動を逐語的に記したものである。


逐語記録は,先に示したように,何の解釈もせず,省略もせず,書き綴ったものです。


2 この記録は,クライエントの言葉を箇条書きにしている。


箇条書きはわかりますね。


〈例〉


国試合格に重要なこと

・計画的に勉強する。

・模試を受験する。

・クラスメイトと問題を出し合う・

・泣き言は言わない。

・学習部屋の問題を毎日解く。


まだまだいっぱいあります。


合格に最も重要なことは,合格したいと思う強い気持ちです。



3 この記録は,クライエントの言動などが時間経過にそって記述されている。


これが正解なのですが,ちょっと迷うのは「一瞬表情が動いたようにも見えた」という記述です。


そのために


5 この記録は,クライエントの言動について∪ソーシャルワーカーの解釈を加えている。


この選択肢が正解に思う人もいるかもしれません。しかし,解釈を加えるなら「ありがとう」と言ったように見えた,といった感じになります。


さらに言えば,沈黙していたのは,Vさんの機嫌がよくなかったのだろうか,いった感じです。


4 この記録は,クライエントの言動のうち主な項目を要約している。


クライエントのVさんは,要約するどころか,話を一切していません。


2021年12月21日火曜日

コンサルテーション

第22回以降の国家試験でスーパービジョンが出題されなかったのは,現時点(第33回国家試験まで)まででは,たった1回だけです。


そのたった1回は,コンサルテーションが出題されたためです。


コンサルテーションは,外部の専門家から指導・助言を受けることです。


スーパービジョンの機能には,教育的機能,支持的機能,管理的機能がありますが,コンサルテーションはこのうちの管理的機能がないところに特徴があります。


それはそうです。


コンサルテーションを行うコンサルタントは,組織の外部の人間なのですから,内部の人と異なり,管理的な側面を持つことはありません。


それでは今日の問題です。


第22回・問題110 事例を読んで,相談援助におけるコンサルテーションの機能に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。

〔事 例〕

 医療機関に入職して2年目のT医療相談室員(社会福祉士)は,治療について,患者と家族の意向が食い違う事例を担当していたが,板挟みの状態に陥って打開策が得られなくなった。T相談室員は,相談室長からこの事例についてコンサルテーションを受けるよう勧められた。

1 コンサルタントは,自分でこの患者に面接して,分析したいと提案した。 

2 コンサルタントは,自分の助言に従い実行するようにT相談室員に指示した。

3 コンサルタントは,T相談室員の担当ケースについて責任をもつと約束した。 

4 コンサルタントは,相談室員同士で事例を検討するための時間を定期的に確保するように相談室に提案した。 

5 コンサルタントは,テーマと目標を自力で設定するようにT相談室員に命じた。


コンサルテーションが持つ機能は,教育的機能と支持的機能です。


その視点から考えると明確ですが,そうでなくても答えは見えていることでしょう。


それでは,解説です。


1 コンサルタントは,自分でこの患者に面接して,分析したいと提案した。

3 コンサルタントは,T相談室員の担当ケースについて責任をもつと約束した。


コンサルタントが,もし分析するのなら,コンサルタントも同席して行うライブ・スーパービジョンのようなものでしょう。


同じく,担当ケースに対して責任をもつということもありません。何せコンサルテーションには管理的機能はないのですから当然でしょう。


2 コンサルタントは,自分の助言に従い実行するようにT相談室員に指示した。

5 コンサルタントは,テーマと目標を自力で設定するようにT相談室員に命じた。


コンサルタントは,管理的機能は持ちません。


コンサルティに指示したり,命じたりする権限は持ちません。


コンサルタントの提案や助言を取り入れるか,取り入れないかは,コンサルティの判断です。


コンサルタントは,コンサルティにあくまでも指導・助言するものです。


4 コンサルタントは,相談室員同士で事例を検討するための時間を定期的に確保するように相談室に提案した。


これが正解です。


知識なしでも選べるでしょう。


なぜなら,これだけが「提案する」という柔らかめの表現となっているからです。


つまり,私たちチームfukufuku21が提唱している


あいまい表現に正解多し


です。

2021年12月20日月曜日

グループワークにおけるメンバー間の葛藤

グループワークは,集団を用いて援助するものです。

 

集団を活用しないのでしたら,グループワークを行う必要がありません。

グループワーカーの器量が求められます。ケースワーク(個別援助技術)の要素とグループワーク(集団援助技術)のスキルが必要だからです。


グループワークのプロセス 

プロセス

段階

注意点

準備期

ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階

この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。

開始期

メンバーが集まって,グループワークを始める前までの段階

この段階には「契約」と呼ばれるワーカーの役割などをメンバーに説明する段階が含まれます。グループワークでの約束事などを確認し,援助関係をつくります。

作業期

ワーカーとメンバーが課題解決に向けて,活動を行う段階

この段階では,グルーブの仲間意識が生じたり,対立したりすることもあります。しかし,これらはグルーブダイナミクス(集団力学)を活用したグループワークでは重要な意味を持ちます。

終結期

グループワークを終える段階

振り返りや反省などを行い,次の段階へつなげます。そのため,移行期とも言われます。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題109 グループワークにおけるメンバー間の葛藤への援助者の対応に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 グループの健全な成長に向けて,メンバー同士の衝突を避け,葛藤を取り上げないようにする。

2 葛藤が生じた場合,グループ全体にかかわる課題にではなく,メンバー個々の言動に関してコメントするように促す。

3 強く意見を主張するメンバーにリーダーシップをとらせる。

4 葛藤の背後には,他者を理解しようとするエネルギーが隠れており,それを引き出してグループが成長する手助けをする。

5 解決策を見いだすためには,グループ全体の意思決定を優先させ,メンバー個人の心配事やニーズの表出を控えさせる。

 

グループを活用していないのは,これらです。

 

1 グループの健全な成長に向けて,メンバー同士の衝突を避け,葛藤を取り上げないようにする。

2 葛藤が生じた場合,グループ全体にかかわる課題にではなく,メンバー個々の言動に関してコメントするように促す。

5 解決策を見いだすためには,グループ全体の意思決定を優先させ,メンバー個人の心配事やニーズの表出を控えさせる。

 

これらは,すべて誤りです。

 

特に選択肢1の「グループの健全な成長に向けて,メンバー同士の衝突を避け,葛藤を取り上げないようにする」は最もだめです。

 

葛藤はとても重要です。

 

正解は選択肢4です。

 

4 葛藤の背後には,他者を理解しようとするエネルギーが隠れており,それを引き出してグループが成長する手助けをする。

 

これでわかるように,葛藤が重要なのは,その背後には,他者を理解しようとするエネルギーが隠れているからです。

葛藤は,クライエントが変化・成長するきっかけとなるものです。これを活用しないで何を活用する? といった感じでしょう。

2021年12月19日日曜日

グループワーク(集団を用いた援助技術)

 

グループワークは,集団を用いて援助するものです。

 

集団を活用しないのでしたら,グループワークを行う必要がありません。

 

グループワークのプロセス 

プロセス

段階

注意点

準備期

ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階

この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。

開始期

メンバーが集まって,グループワークを始める前までの段階

この段階には「契約」と呼ばれるワーカーの役割などをメンバーに説明する段階が含まれます。グループワークでの約束事などを確認し,援助関係をつくります。

作業期

ワーカーとメンバーが課題解決に向けて,活動を行う段階

この段階では,グルーブの仲間意識が生じたり,対立したりすることもあります。しかし,これらはグルーブダイナミクス(集団力学)を活用したグループワークでは重要な意味を持ちます。

終結期

グループワークを終える段階

振り返りや反省などを行い,次の段階へつなげます。そのため,移行期とも言われます。

 

 

それでは,今日の問題です。

 

第22回・問題108 事例を読んで,グループワークの場面でのR児童指導員(社会福祉士)の発言に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。

〔事例〕

 X児童養護施設では,入所している高校生7人を対象として,「親との関係を考える」というテーマでグループワークを実施している。月に1回の頻度(全6回)で開催し,R児童指導員が担当している。2回目のセッションにおいて,S君が,「みんなの話を聞いていると,親といい関係を保ちたいとか取り戻したいみたいな発言が多いけど,僕は親のことは嫌いだし,顔も見たくないんだよ」と発言した。

1 みんなの意見とは少し違うので,今は黙っていてくれないかな。

2 でもご両親はS君のこと,嫌いではないと思うよ。

3 へえ,何があったの? 僕に聞かせてよ。

4 誰かS君が前向きになれるような言葉をかけてあげてよ。

5 そうなんだね。ここで,もう少し話してくれないかな。

 

2回目のセッションだということなので,作業期にあたります。

 

S君には,さまざまな葛藤が生じてきているようです。

 

ここをうまく活用することがグループワーカーの腕の見せ所です。

 

正解は,選択肢5です。

 

5 そうなんだね。ここで,もう少し話してくれないかな。

 

これによって,S君が何を考えているのがわかります。

 

似たようなものには,選択肢3があります。

 

3 へえ,何があったの? 僕に聞かせてよ。

 

これもS君の発言を促しているものですが,これが答えにならないのは,過去の出来事を確認する意味がないからです。

 

援助に役立つものなら,情報が必要ですが,援助に役立つのかどうかわからないものを聞くのは無責任です。

2021年12月18日土曜日

ソーシャルサポート・ネットワーク・アプローチ

 国家試験で重要なのは,知らない言葉が出題されても動じない強い心です。


今回のテーマは,「ソーシャルサポート・ネットワーク・アプローチ」です。


直訳風に言えば,ネットワークを活用した社会的支援法ということになるでしょう。


おおよその意味さえ分かれば,国試では対応可能です。


逆によく分からないと思うと,焦り,慌てふためき,適切な思考ができなくなります。


最後の最後に差がつくのはこういったところではないかと思います。


それでは,今日の問題です。


第22回・問題107 ソーシャルサポート・ネットワーク・アプローチに関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 社会における自然発生的ネットワークに対して関与しない。 

2 社会資源間のネットワークのコーディネーションは実施しない。 

3 インフォーマル及びフォーマルな社会資源を有機的につなぎ,ネットワークを形成する。

4 クライエントを取り巻く環境のうち,ニーズの心理的アセスメントに焦点を当てる。

5 クライエント個人が持つ既存のソーシャルネットワークには期待せず,短期的にサポートネットワークを形成する。



問題づくりが下手なので,知識なしでも消去できるものがあります。



1 社会における自然発生的ネットワークに対して関与しない。 

2 社会資源間のネットワークのコーディネーションは実施しない。 

5 クライエント個人が持つ既存のソーシャルネットワークには期待せず,短期的にサポートネットワークを形成する。


解説せずとも,よいくらいに,日本語的に消去できてしまいます。


迷うのは,次の選択肢でしょう。


3 インフォーマル及びフォーマルな社会資源を有機的につなぎ,ネットワークを形成する。

4 クライエントを取り巻く環境のうち,ニーズの心理的アセスメントに焦点を当てる。



正解は選択肢3ですが,その前に選択肢4を解説したいと思います。


ニーズのとらえ方には,バイオ-サイコ-ソーシャルモデルというものがあります。


バイオ 身体的

サイコ 心理的

ソーシャル 社会的


社会福祉士は,ソーシャル的側面からクライエントにアプローチしますが,バイオ的側面もサイコ的側面も重要です。


正解である選択肢


3 インフォーマル及びフォーマルな社会資源を有機的につなぎ,ネットワークを形成する。


この中にある「有機的」とは,変化していくことを意味したものです。


有機的の対義語は,無機的です。


社会福祉士の国家試験で,無機的(変化しないこと)がもし出題されたら,ほぼ間違いであると考えて良いと思います。


2021年12月17日金曜日

ケアマネジメントについて

ケアマネジメントは,日本では介護保険の導入とともに広く知られるようになりましたが,ケアマネジメントを行うのは,高齢者分野に限ったものではありません。

 

しかし,国家試験問題を解く時は,高齢者のケアマネジメントをイメージするとミスすることなく,正解できます。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題106 相談援助技術の一つとしてのケアマネジメントに関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 ケアマネジメントは,アウトリーチによるものではなく,クライエント自らが相談にくることから始められる。

2 ケアマネジメントは,一つの社会資源で対応可能なニーズを抱えるクライエントに効果的である。

3 ケアマネジメントでは,社会資源の活用が必要であるが,これには,クライエント本人の家族などは含まれない。

4 ケアマネジメントでは,様々な社会資源を選択的に活用して計画を立てる。

5 ケアマネジメントでは,慎重に立てられた計画に基づき,利用するサービスを多くの専門家が連携して決定するので,計画の見直しはほとんど行われない。

 

 

何と下手に作られた問題なのでしょう。

 

ケアマネジメントを知らない小学生でもおそらく正解できます。

 

近年でも下手な問題は時々見られますが,これほど明確なものはめったにあるものではありません。

 

この問題のように知識がなくても正解できてしまう問題は,国家試験に向きません。

 

なぜなら,受験生に差がつかないからです。

 

理想の問題は,勉強した人は解けて,勉強が足りない人は解けないものです。

 

この問題の正解は,選択肢4です。

 

4 ケアマネジメントでは,様々な社会資源を選択的に活用して計画を立てる。

 

この文章で引っ掛かる表現は「選択的に」だと思います。しかし,ここで使っている意味は,これがないと様々な社会資源をすべて使うという意味にとる人もいるかもしれないという保険のためだと考えられます。

 

ほかの選択肢は圧倒的にだめですが,念のために解説します。

 

1 ケアマネジメントは,アウトリーチによるものではなく,クライエント自らが相談にくることから始められる。

 

焦るとこれも正解だと思う人もいるかもしれません。

 

しかし,この出題スタイルは,正解になることはありません。

 

もちろんアウトリーチも含みます。

 

 

2 ケアマネジメントは,一つの社会資源で対応可能なニーズを抱えるクライエントに効果的である。

 

この選択肢は,選択肢2と逆の意味です。

 

この選択肢があることで,正解は,選択肢2と4に絞り込むことができます。

 

ここに気がつくことができれば,得点力は上がるでしょう。

 

3 ケアマネジメントでは,社会資源の活用が必要であるが,これには,クライエント本人の家族などは含まれない。

 

社会資源には,フォーマルな社会資源とインフォーマルな社会資源があります。

 

家族や地域住民は,インフォーマルな社会資源です。

 

5 ケアマネジメントでは,慎重に立てられた計画に基づき,利用するサービスを多くの専門家が連携して決定するので,計画の見直しはほとんど行われない。

 

これは,引っ掛けようとする意図によってつくられた問題です。

 

この選択肢を正解だと思う人はいないかと思いますが,この文章のようにムダな表現を付け加えているものは,引っ掛けるための仕掛けです。

2021年12月16日木曜日

解決志向アプローチ

 様々なアプローチは,一問一答式と事例問題の両方のスタイルで出題されています。

 

事例問題で得点できるようになって初めて「理解できた」と言えるのかもしれません。

 

解決志向アプローチは,特徴的なので,事例でもわかりやすいと言えます。

 

22回・問題105 事例を読んで,解決志向アプローチに基づくP相談員(社会福祉士)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。

〔事 例〕

 P相談員は総合病院の医療相談室で働いている。Qさん(40歳代,男性)は難病で入院3か月目を迎えても退院のめどが立たず,うつ状態にある。P相談員がQさんと5日目の面接に臨んだところ,Qさんは「夜は,なかなか眠れません。このまま職を失って,家族を路頭に迷わせるのではないかと考えたり,職場のみんなにも負担をかけるばかりで。いっそ死んでしまったほうが楽になるのかもしれません。そのほうが誰にも迷惑をかけないような気がして」と消え入りそうな声で言葉をつないだ。

1 問題があまりにも深刻なため,安易にコメントをせずにうなずきを繰り返した。

2 Qさんの気持ちが言葉に込められているので,その一つ一つを丁寧に復唱することにとどめた。

3 Qさんの気持ちが少しでも前向きになるよう,「もうすぐよくなるから大丈夫ですよ」と明るく声かけをした。

4 死にたくなるつらさを受け止め,「Qさんがこれまでやってこれたのはなぜでしょうか」と問いかけた。

5 「家族を支えられるのはQさんだけなので,何とか頑張りましょう」と励ました。

 

解決志向アプローチは,様々な質問を用いるのが特徴です。

 

正解は,選択肢4です。

 

4 死にたくなるつらさを受け止め,「Qさんがこれまでやってこれたのはなぜでしょうか」と問いかけた。

 

Qさんがこれまでやってこれたのはなぜでしょうか。

 

という質問は,コーピングクエスチョンと呼ばれるものです。


解決志向アプローチは,クライエントとワーカーの対話を通して,解決した未来を描くものです。

ワーカーは,クライエントの語りを傾聴し,クライエントに教えてもらうという姿勢で面接していきます。

その時に用いられるのが質問の技法です。

ワーカーは,クライエントに質問を投げかけることで,クライエントがそれに対して自分で考えて答えていきます。

今までの国家試験で出題された実績のある質問は以下の通りです。

エクセプション・クエスチョン
エクセプションは,例外を意味し,多くの場合はうまくいかないものであっても,うまくいった時を思い起こしてもらうことで,その例外が多く発生することを目的にした質問です。

クライエントはうまくいかないことに目を向けがちですが,毎回だめだったわけではなく,うまくいくこともあります。そこに気がついてもらうことが大切です。


スケーリング・クエスチョン
今までの体験などを数値化して答えてもらう質問です。
現在の状況がとても辛いと思っても,もうちょっと頑張れそうだと思えることを目的としています。


コーピング・クエスチョン
今までの困難な状況をどのように乗り越えてきたのかを尋ねる質問です。


サバイバル・クエスチョン
サバイバルは,生き延びることを意味しています。サバイバル・クエスチョンは,コーピング・クエスチョンの一つで,コーピング・クエスチョンを用いる時よりももっともっと辛い状況の時に用います。

辛い状況であっても生き延びてきたからこそ今があります。
そのことを称賛し,クライエントに勇気をもってもらうことを目的とした質問です。


ミラクル・クエスチョン
最も解決志向アプローチっぽい質問です。

2021年12月15日水曜日

面接技法に関する出題

 第2233回の出題 

 

出題数

22

23

27

29

30

32

33

閉じられた質問

5

感情の反映

3

言い換え

3

要約

3

自己開示

2

沈黙

2

開かれた質問

2

明確化

2

アイメッセージ

2

直視

1

要約

1

助言・提案

1

繰り返し

1

相づち

1

非言語的な表現

1

直面化

1

対決

1

共感

1

ミラクルクエスチョン

1

支持

1

 

少なくとも2回以上出題されているものは,確実に押さえておきたいです。

 

それでは,今日の問題です。

 

 

22回・問題104 婦人相談所の配偶者暴力相談支援センターに,夫の暴力の相談で来所したNさん(31歳,女性)が,「私は一体これからどうしたらいいでしょうか。小さい子どもを抱えて別れることもできず,ただこの状況に耐え続けるしかないのでしょうか」といって沈黙した。それに対して,相談員(社会福祉士)は「今は八方ふさがりの状態で,とてもおつらいのですね」と応じた。

 次のうち,この相談面接の技法を表すものとして,適切なものを一つ選びなさい。

1 直視

2 要約

3 感情の反映

4 助言・提案

5 自己開示

 

例によって,逐語録的に書き換えます。

 

C:私は一体これからどうしたらいいでしょうか。

  小さい子どもを抱えて別れることもできず,ただこの状況に耐え続けるしかないのでしょうか。

 (沈黙)

 W:今は八方ふさがりの状態で,とてもおつらいのですね。

 

面接技法の事例を確実に正解するためのコツは,ワーカーの応答だけに着目します。

 

今は八方ふさがりの状態で,とてもおつらいのですね。

 

つらい」という感情に関するものは,

 

3 感情の反映

 

これしかありません。

 

感情には,喜怒哀楽がありますが,喜・楽は,ソーシャルワーク場面で取り上げられることはなさそうです。

 

そうすると,怒・哀ということになるでしょう。

 

つまり,あまり喜ばしくないものです。

 

つらい」「苦しい」「かなしい」といった感情を反映することになるでしょう。

 

もう一回,事例として出題されているときはこんな感じです。

 

C:親には迷惑を掛けたくないし,行政のお世話になるのも気が引ける…

 (沈黙)

 W:どうにもならなくて,おつらいのですね。

 

またまた「つらい」です。

 

答えは,感情の反映ということになりそうです。

 

選択肢を確認してみます。

 

1 開かれた質問

2 直面化

3 自己開示

4 対決

5 感情の反映

 

やっぱり「感情の反映」が含まれています。

 

22回以降では,面接技法に関する事例はこの2回しか出題されていません。

 

ワーカーが「おつらいのですね」と返したら,感情の反映とみて,間違いなさそうです。

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