2021年12月20日月曜日

グループワークにおけるメンバー間の葛藤

グループワークは,集団を用いて援助するものです。

 

集団を活用しないのでしたら,グループワークを行う必要がありません。

グループワーカーの器量が求められます。ケースワーク(個別援助技術)の要素とグループワーク(集団援助技術)のスキルが必要だからです。


グループワークのプロセス 

プロセス

段階

注意点

準備期

ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階

この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。

開始期

メンバーが集まって,グループワークを始める前までの段階

この段階には「契約」と呼ばれるワーカーの役割などをメンバーに説明する段階が含まれます。グループワークでの約束事などを確認し,援助関係をつくります。

作業期

ワーカーとメンバーが課題解決に向けて,活動を行う段階

この段階では,グルーブの仲間意識が生じたり,対立したりすることもあります。しかし,これらはグルーブダイナミクス(集団力学)を活用したグループワークでは重要な意味を持ちます。

終結期

グループワークを終える段階

振り返りや反省などを行い,次の段階へつなげます。そのため,移行期とも言われます。

 

それでは,今日の問題です。

 

22回・問題109 グループワークにおけるメンバー間の葛藤への援助者の対応に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 グループの健全な成長に向けて,メンバー同士の衝突を避け,葛藤を取り上げないようにする。

2 葛藤が生じた場合,グループ全体にかかわる課題にではなく,メンバー個々の言動に関してコメントするように促す。

3 強く意見を主張するメンバーにリーダーシップをとらせる。

4 葛藤の背後には,他者を理解しようとするエネルギーが隠れており,それを引き出してグループが成長する手助けをする。

5 解決策を見いだすためには,グループ全体の意思決定を優先させ,メンバー個人の心配事やニーズの表出を控えさせる。

 

グループを活用していないのは,これらです。

 

1 グループの健全な成長に向けて,メンバー同士の衝突を避け,葛藤を取り上げないようにする。

2 葛藤が生じた場合,グループ全体にかかわる課題にではなく,メンバー個々の言動に関してコメントするように促す。

5 解決策を見いだすためには,グループ全体の意思決定を優先させ,メンバー個人の心配事やニーズの表出を控えさせる。

 

これらは,すべて誤りです。

 

特に選択肢1の「グループの健全な成長に向けて,メンバー同士の衝突を避け,葛藤を取り上げないようにする」は最もだめです。

 

葛藤はとても重要です。

 

正解は選択肢4です。

 

4 葛藤の背後には,他者を理解しようとするエネルギーが隠れており,それを引き出してグループが成長する手助けをする。

 

これでわかるように,葛藤が重要なのは,その背後には,他者を理解しようとするエネルギーが隠れているからです。

葛藤は,クライエントが変化・成長するきっかけとなるものです。これを活用しないで何を活用する? といった感じでしょう。

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