コミュニティはさまざまな人が定義していますが,ヒラリーの研究によって,それらに共通するものとして
・社会的相互作用
・空間の限定
・共通の絆
があることが示されました。
しかし,現代では,空間が限定されないコミュニティが広がっています。それをウェルマンは,「コミュニティ開放論」と名付けています。
今回のテーマは,今までに何度も取り上げてきたコミュニティとアソシエーションです。
コミュニティは多くの人が取り上げていますが,地域の人のつながりをコミュニティとアソシエーションに分類したのは,マッキーバーです。
コミュニティ |
地理的・文化的な地域性を結合要素とした社会集団です。 |
アソシエーション |
特定の関心を共同して追求するために設立された,人為的な機能集団です。 |
国試問題が非公開だった第1・2回を除いて,現在,確認できる問題の中で,最初にアソシエーションが出題されたのを確認できるのは,第3回国家試験です。
国家試験の初期から出題されているということです。
その問題です。
第3回・問題131 一般に近代化の重要な特徴の組み合わせとして,次のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 家族の縮小 ―― 集団主義 ―― 業績主義
2 都市化 ―――― 産業化 ――― 官僚制化
3 民主化 ―――― 産業化 ――― コミュニティ形成
4 人口減少 ――― 民主化 ――― マス・メディアの発達
5 都市化 ―――― 合理化 ――― 属性主義
この中にアソシエーションは含まれませんが,選択肢3のコミュニティ形成が,正しくはアソシエーションです。
これからわかるように,社会変動的にとらえると
コミュニティからアソシエーションに進化する,と言えます。
なお,この問題は,単純そうに見えてかなり複雑な思考が求められるタクソノミーⅡ型の問題です。
それでは解説です。
1 家族の縮小 ―― 集団主義 ―― 業績主義
組み合わせて誤っているのは「集団主義」ではなく「個人主義」です。
ソーシャルワーク専門職のグローバル定義では,個人主義への傾倒への反省から,集団主義が打ち出されています。
2 都市化 ―――― 産業化 ――― 官僚制化
これが正解です。
官僚制は,合法的支配をより進化させたものです。
かなり難しいですが。消去法でこれが残ります。
3 民主化 ―――― 産業化 ――― コミュニティ形成
コミュニティは,原始時代から存在します。
マッキーバーは,家族をアソシエーションに分類しているので工業化を意味する産業化する以前からアソシエーションは存在しますが,産業化によって,よりアソシエーションは形成されます。
4 人口減少 ――― 民主化 ――― マス・メディアの発達
民主化ではなく,産業化です。
5 都市化 ―――― 合理化 ――― 属性主義
属性主義ではなく,業績主義です。
この問題は,社会学の問題なので,社会学の用語で構成されています。
こういった問題によって今の国家試験が作られてきました。
もう一問,参考のために古い問題を紹介して今日を終わります。
第15回・問題51 アソシエーションに関する次の記述のうち,適切なものに○,適切でないものに×をつけたその組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A アソシエーションを,集団の一つの類型としてコミュニティと対にして設定したのは,イギリス生まれのアメリカの社会学者マッキーバー(MacIver,R.)である。
B アソシエーションには,営利団体,官庁,政党,組合は含まれるが,教会,学校は含まれない。
C アソシエーションは,特定の関心や目的を実現するためにつくられる組織をいう。
D アソシエーションは,コミュニティを基盤として,その部分として自生的・無意図的に形成される集団のことである。
※組み合わせは省略。
答え
Aは正解。
Bは誤り。教会,学校もアソシエーションです。
Cは正解。
Dは誤り。コミュニティを基盤として,その部分として自生的・無意図的に形成される集団は,コミュニティです。
現在,組み合わせ問題がなくなった理由は,すべての選択肢の答えがわからなくても,正解できてしまうからです。