2022年12月24日土曜日

運営適正化委員会

都道府県社会福祉協議会に設置される運営適正化委員会は,社会福祉法の成立の2000(平成12)年に創設されています。

 

運営適正化委員会

(運営適正化委員会)

第八十三条 都道府県の区域内において、福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するとともに、福祉サービスに関する利用者等からの苦情を適切に解決するため、都道府県社会福祉協議会に、人格が高潔であつて、社会福祉に関する識見を有し、かつ、社会福祉、法律又は医療に関し学識経験を有する者で構成される運営適正化委員会を置くものとする。

(運営適正化委員会の行う福祉サービス利用援助事業に関する助言等)

第八十四条 運営適正化委員会は、第八十一条の規定により行われる福祉サービス利用援助事業の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、当該福祉サービス利用援助事業を行う者に対して必要な助言又は勧告をすることができる。

2 福祉サービス利用援助事業を行う者は、前項の勧告を受けたときは、これを尊重しなければならない。

(運営適正化委員会の行う苦情の解決のための相談等)

第八十五条 運営適正化委員会は、福祉サービスに関する苦情について解決の申出があつたときは、その相談に応じ、申出人に必要な助言をし、当該苦情に係る事情を調査するものとする。

2 運営適正化委員会は、前項の申出人及び当該申出人に対し福祉サービスを提供した者の同意を得て、苦情の解決のあつせんを行うことができる。

 

確実に覚えておきたいのは,

 

福祉サービス利用援助事業を行う者に対して必要な助言又は勧告をすることができる。

 

指導などのような強制力はありません。

 

そのために,以下のような規定があります。

(運営適正化委員会から都道府県知事への通知)

第八十六条 運営適正化委員会は、苦情の解決に当たり、当該苦情に係る福祉サービスの利用者の処遇につき不当な行為が行われているおそれがあると認めるときは、都道府県知事に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。

 

必要な場合は,都道府県知事が指導や指定の取り消しなどを行います。

 

それでは,今日の問題です。

 

26回・問題36 社会福祉法における地域福祉に関係する規定についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。

2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。

3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。

4 市町村社会福祉協議会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。

5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。

 

知識がなくても消去できそうな選択肢もあるので,実質は4つの選択肢の中から答えを選ぶ問題となっています。

 

それでは,解説です。

 

1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。

 

地域住民は,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者とともに地域福祉の推進主体です。

 

地域共生社会の時代,地域住民は重要な役割を果たしますが,「社会福祉を目的とする事業を経営する者」の事業を代替することはできません。それだと福祉のプロフェッショナルは必要ないことになってしまいます。

 

2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。

 

これが正解です。

 

3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。

 

市町村地域福祉計画を策定する際には,「市町村は、市町村地域福祉計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、地域住民等の意見を反映させるよう努める」と規定されています。

 

都道府県地域福祉支援計画を策定する際には,「都道府県は、都道府県地域福祉支援計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催等住民その他の者の意見を反映させるよう努める」と規定されています。

 

いずれも意見聴取しなければならない,という規定はありません。地域福祉計画の策定は努力義務なのに「意見聴取しなければならない」という義務があるはずがありません。

 

4 市町村社会福祉協議会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。

 

知識なしでも消去できそうなのは,この選択肢です。

 

この選択肢の文章

 

「〇〇は▲▲であるが,□□は▲▲ではない」といったものが,正解になったことは今までに一度もありません。

 

5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。

 

募集期間を定めるのは,厚生労働大臣です。地域によって募集期間が異なっている,という話は聞いたことがないでしょう。

 

募集期間は誰が定めるのか覚えていなかったとき,焦ってしまいます。しかし,そうであっても落ち着いて知っている知識を活用して答えを考えることがとても重要です。

 

合否を分けるのは,国試当時にいかに柔軟な思考ができるかにかかっていると言っても決して過言ではないと思います。

 

「落ち着いて考えれば正解できた,その問題が正解できていたなら,合格できた」というのでは悲しすぎます。

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