2017年12月31日日曜日

試験に合格する勉強法~量的調査の徹底理解②!!

「社会調査の基礎」は,午後の試験の最初の科目です。この科目で勢いをつけて,解き進みたいところです。

社会福祉士の国家試験の科目は19科目あります。ほとんどの科目は他の科目とどこかでつながっていますが,この科目はほとんどつながりません。

唯一つながるのは「地域福祉の理論と方法」の地域福祉計画の見直しする時に,どんな方法を使うか,という事例問題でしょう。

KJ法,アンケート収れん法などの知識が必要です。

この科目が苦手だと思うのは,他の科目との関連があまりないところにあると考えられます。

さて,今日は,横断調査と縦断調査を押さえていきます。


国家試験では,第24回と第27回の2回のみの出題ですが,1問まるごと出題されています。

ぜんぜん難しくないので,しっかり押さえて備えたいところです。


断調査
 ある時点で行う調査。

縦断調査
 一定の期間を開けて,複数回行う調査。同じ対象者(パネル)に対して複数回行うパネル調査は縦断調査の一つ。


さて,これを押さえて今日の問題です。

24回・問題78

横断調査と縦断調査に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 広い地域を対象に行う調査は横断調査であるが,狭い地域のなかで若者と老人など多様な人を対象に行う調査は縦断調査である。

2 同じ対象者に,一定の期間にわたって複数回調査を行うパネル調査は,横断調査に含まれる。

3 1回限りの横断調査でも2つの変数の間の相関関係を見出すことはできるが,因果関係を明らかにするにはパネル調査の方が適している。

4 内閣を支持するか否かについて2つの時点で横断調査を繰り返し,内閣支持率に変化がなければ,支持・不支持の態度が変化した人がいなかったことが分かる。

5 パネル調査における「パネルの摩耗(又は脱落)」とは,第1回目の調査において無回答者が生じることをいう。


この科目は,知識がそのまま答えになるものよりは,ちょっと思考を使って問題を読む必要がある問題が多いのが特徴です。

そういう意味では,理論系科目に位置すると言えるでしょう。

それでは詳しく見ていきましょう!!


1 広い地域を対象に行う調査は横断調査であるが,狭い地域のなかで若者と老人など多様な人を対象に行う調査は縦断調査である。

複数回行うのが縦断調査です。よって間違いです。


2 同じ対象者に,一定の期間にわたって複数回調査を行うパネル調査は,横断調査に含まれる。

パネル調査は,縦断調査の一種です。

よって間違いです。


3 1回限りの横断調査でも2つの変数の間の相関関係を見出すことはできるが,因果関係を明らかにするにはパネル調査の方が適している。


因果関係とは,例えば「生活習慣と健康状態」などです。

一回きりの横断調査よりも同じ対象者に複数回行うことの方が向いています。

よって正解です。


4 内閣を支持するか否かについて2つの時点で横断調査を繰り返し,内閣支持率に変化がなければ,支持・不支持の態度が変化した人がいなかったことが分かる。


これがちょっと頭を使う問題ですね。


内閣支持率は全体の数値です。一人ひとりの態度を表しているものではありません。

支持していた人が不支持になった数と不支持から支持になった数が同数なら,全体の数値は本科しないことになります。

よって間違いです。


5 パネル調査における「パネルの摩耗(又は脱落)」とは,第1回目の調査において無回答者が生じることをいう。


これはちょっと難しかった問題です。

「パネルの摩耗」という言葉が出題されたのはこの回が初めてだったからです。

しかし,ヒントはあります。

かっこの中に「脱落」という言葉があるからです。

脱落は,途中でいなくなってしまう意味が読み取れます。そう思うことができれば,この選択肢は消去できたはずです。

なぜなら脱落は「第1回目」で起きることではなさそうだ,想像できるからです。

よって間違いです。



パネルの摩耗とは,調査を複数回行う過程で,調査対象者(パネル)が少なくなっていくことです。

2017年12月30日土曜日

試験に合格する勉強法~量的調査の徹底理解①!!

「社会福祉調査」の方法には,量的調査と質的調査があります。

そのうちの量的調査は,アンケートなどでデータを集めて,分析することで母集団の性質を探る方法です。

母集団のすべてを調査する全数調査を行えば,母集団とのずれは生じることはありません。

しかし,測定誤差と呼ばれる誤解答や記入漏れなどが生じることがあります。

また調査に時間がかかることで,最初の時点と最終の時点では状況が変わってしまうことがあります。

全数調査であっても完璧な調査を行うことは極めて困難です。


そのため量的調査の調査法には,母集団のすべてを調査するのではなく,母集団の一部を調査する「標本調査」という方法があります。


標本を取り出す(サンプリング)方法が適切ではないと母集団のうちの偏ったデータを調査することになります。


社会調査は,世論調査など古くから行われて来ました。サンプリングの重要性を知らしめたのは,1930年代のアメリカ大統領選挙の世論調査です。


あめ調査会社(A社)は,自動車を保有する人と電話を保有する人に対して調査しました。

もう一方の調査会社(B社)は,母集団をいくつかの層に分けて,その割合ごとに調査数を決めていくといった割当法を取りました。

割り当てた数に合わせて知り合いに調査を協力してもらいました。

どちらも有意抽出ですが,予測結果は別なものとなりました。

見事当てたのはB社です。

A社が調査対象とした自動車保有者と電話保有者は一部の人です。母集団の性質と相当ずれていたことでしょう。


B社はこの調査では的中しましたが,その後の1940年代の大統領選挙では外しています。

そこで有意抽出の限界が明確になり,無作為抽出の方法が考えられていくことになります。

無作為抽出の方法はたくさんありますが,母集団の性質とずれない抽出方法はそれだけ難しいものです。

社会調査は,正しく行わないと正しい結果は得られません。

社会調査の基礎は難しいと感じる人は多いと思います。

しかし,それは先人たちの工夫のたまものです。それをかみしめながら勉強していきましょう。


それでは,今日の問題です。

23回・問題79

社会調査における標本抽出に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 大きな駅の周辺で道行く人々の中から,何の意図も作為もなく偶然に出会った人々を集めて調査の対象者とすることは,無作為抽出の手法である。

2 確率抽出と非確率抽出とでは,非確率抽出によるサンプルの方が,母集団に対する代表性が高いサンプルといえる。

3 大きな母集団を対象に無作為抽出を行う際には,乱数表を使った単純無作為抽出が最も適している。

4 多段抽出は,単純無作為抽出に比べて,サンプルから母集団の特性値を推定する際の精度が下がる。

5 事前に母集団のいくつかの属性の構成比率が分かっている場合は,最も代表性の高いサンプルを獲得できるのは,割当法(クォータ ・サンプリング)による標本抽出である。

確率抽出は無作為抽出,非確率抽出は有意抽出のことです。
さて,それでは詳しくみていきましょう。


1 大きな駅の周辺で道行く人々の中から,何の意図も作為もなく偶然に出会った人々を集めて調査の対象者とすることは,無作為抽出の手法である。


一見無作為抽出だと思えるかもしれません。

しかし,その駅を選んだ理由,調査する時間,は無作為でしょうか。

学校に近い駅,ビジネス街に近い駅,時間帯によっても変わります。

こう考えると無作為ではないことがよく分かることでしょう。

もちろん有意抽出です。


2 確率抽出と非確率抽出とでは,非確率抽出によるサンプルの方が,母集団に対する代表性が高いサンプルといえる。

非確率抽出は,有意抽出です。

よって間違いです。


3 大きな母集団を対象に無作為抽出を行う際には,乱数表を使った単純無作為抽出が最も適している。


現在では乱数表はパソコンソフトで作成できますが,一回ずつ抽出するのは大変です。

数の少ない時は向いていますが,大きな場合は大変です。

よって間違いです。


4 多段抽出は,単純無作為抽出に比べて,サンプルから母集団の特性値を推定する際の精度が下がる。


多段抽出というものが分からなくても,最も精度の高い抽出法は,単純無作為抽出です。ほかのどの方法であってもそれよりは精度が下がります。

当然ですね。よって正解です。


5 事前に母集団のいくつかの属性の構成比率が分かっている場合は,最も代表性の高いサンプルを獲得できるのは,割当法(クォータ ・サンプリング)による標本抽出である。


アメリカ大統領選挙で紹介したように,割当法は有意抽出です。

よって間違いです。

国試では,何度も割当法が出題されています。内容よりも有意抽出であることが分かっていれば十分です。


2017年12月29日金曜日

国試に合格したいのならば,これを押さえろ!! 社会福祉調査の基礎編

多くの受験生は,共通科目の勉強に多くの時間を費やして,専門科目に時間をかけない傾向があります。

共通科目はもちろん押さえていかなければならないのは当然ですが,たとえ共通科目で点数が伸ばせなくても,専門科目で十分カバーできます。

さて,今日は社会調査の基礎のポイントです。

難しいと思うのは「ピアソン」などの統計に関するものがあるからだと思いますが,それが出題されてもわずか1問,あるいは2問です。

ほかの部分で十分カバーできます。

苦手意識さえ持たなければ,これからの時間でも十分得点できる科目に変化していくでしょう。

<社会福祉調査の基礎>

1.統計法
2.基幹統計
3.統計委員会
4.全数調査
5.標本調査
6.無作為抽出
7.有意抽出
8.標本誤差
9.横断調査
10.縦断調査
11.パネル調査
12.自計式調査
13.他計式調査
14.郵送調査
15.留置調査法
16.個別面接調査法
17.集合調査法
18.名義尺度
19.順序尺度
20.間隔尺度
21.比例尺度
22.ダブルバーレル質問
23.キャリーオーバー効果
24.イエステンデンシー
25.ステレオタイプ効果
26.濾過質問
27.コーディング
28.エディティング
29.クロス集計
30.相関係数
31.最頻値
32.中央値
33.分散
34.四分位範囲
35.箱ひげ図
36.バブルチャート
37.ヒストグラム
38.レーダーチャート
39.自然観察法
40.統制的観察法
41.参与観察法
42.非参与観察法
43.アクション・リサーチ
44.自由面接法
45.半構造化面接法
46.構造化面接法
47.フォーカス・グループ・インタビュー
48.ドキュメント分析
49.KJ
50.グラウンデッド・セオリー
51.トライアンギュレーション


これらのアイテムを見て,簡単に説明できるようであれば十分です。


もし説明できないものがあったなら,そこを改めて確認しましょう。

2017年12月28日木曜日

国試に合格する勉強法とは? ~日常生活自立支援事業の出題率は88.9%!!

日常生活自立支援事業は,現行カリキュラムになってからの出題率は,

なんと! 88.9%です。


出題されなかったのは,第25回のみです。

必ず出題されると言っても良いくらいの出題確率です。


日常生活自立支援事業の覚えておきたいアイテム

・福祉サービス利用援助事業

・実施団体

・援助内容 

・専門員/生活支援員

・契約締結審査会

・運営適正化委員会


たったこれだけです。

それでは今日の問題です


23回・問題7

日常生活自立支援事業に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 日常生活自立支援事業は国庫補助事業であり,第二種社会福祉事業に規定された「福祉サービス利用援助事業」に該当する。

2 日常生活自立支援事業の実施主体は都道府県であり,事業の一部を地域包括支援センターに委託できることになっている。

3 日常生活自立支援事業の利用者の内訳は,認知症高齢者,知的障害者,精神障害者がほぼ同じ割合となっている。

4 日常生活自立支援事業の事業内容には,福祉サービスの利用援助や苦情解決制度の利用援助のほか,本人の契約行為の取消しを含む日常的金銭管理などがある。

5 日常生活自立支援事業において具体的な支援を行う生活支援員は,社会福祉士や精神保健福祉士の資格があって一定の研修を受けた者とされている。


すべてが絶対に覚えておきたいものばかりですね。

それでは詳しく見て行きましょう!!


1 日常生活自立支援事業は国庫補助事業であり,第二種社会福祉事業に規定された「福祉サービス利用援助事業」に該当する。


これが正解です。


2 日常生活自立支援事業の実施主体は都道府県であり,事業の一部を地域包括支援センターに委託できることになっている。


実施主体は,いつも引っ掛けで出題されます

実施主体は都道府県社協(及び指定都市社協)です。

事業の一部は市町村社協等に委託して実施されます。

よって間違いです。


3 日常生活自立支援事業の利用者の内訳は,認知症高齢者,知的障害者,精神障害者がほぼ同じ割合となっている。


認知症高齢者と精神障害者ではどちらが多いかは分からなくても,知的障害者のもともとの数は少ないので,同数ということはなさそうだと分かることでしょう。


認知症高齢者>精神障害者>知的障害者

となっています。

よって間違いです。



4 日常生活自立支援事業の事業内容には,福祉サービスの利用援助や苦情解決制度の利用援助のほか,本人の契約行為の取消しを含む日常的金銭管理などがある。



成年後見制度には取消権がありますが,日常生活自立支援事業は取消権がありません。

よって間違いです。


5 日常生活自立支援事業において具体的な支援を行う生活支援員は,社会福祉士や精神保健福祉士の資格があって一定の研修を受けた者とされている。


専門員と生活支援員の仕事の違いはしっかり押さえておく必要があります。


生活支援員の任用資格は特にありません。

よって間違いです。



<今日のまとめ>

日常生活自立支援事業の援助内容は,福祉サービスの利用援助,日常的金銭管理サービス,書類等預かりサービスですが,成年後見制度のような専門的な支援を受けるようにものではありません。

日常的金銭管理サービスは,預金の払い出しなど少額の扱いですし,書類等預かりサービスも,掛け軸などのような高額なものではなく,土地の権利書などです。



 生活支援員は,訪問介護員の生活援助のような役割を担います。

2017年12月27日水曜日

国試に合格する勉強法とは? ~成年後見制度の基本ポイント②

「権利擁護と成年後見制度」は苦手だなぁ,と思っていることも多いと思います。

現場でなじみのないものが多いので,仕方がないところかもしれません。

そのために0点を恐れている人も多いことも仕方がないところでしょう。

しかし,基本ポイントをしっかり押さえることができれば,苦手だと思っている人でも0点どころか34点は取れます。

この科目の攻略の一番の方法は,気力を振り絞って問題を解くことです。

法律には道筋があるので,気力さえあれば,その道筋を見つけ出すことができるでしょう。


さて,今日も前説なしに,今日の問題をみましょう。


24回・問題74

後見人の責務に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 成年後見人は,被後見人の身上に関する事務を遂行するに当たっては,被後見人本人の意思を尊重する義務は負わない。

2 成年後見人は,不適切な事務遂行行為によって第三者に損害を与えた場合,被後見人に事理弁識能力があるときには,その第三者に対して損害賠償責任を負わない。

3 未成年後見人は,被後見人に対する事務を遂行するに当たっては,善良な管理者としての注意義務を負う。

4 成年後見人は,財産のない被後見人に対する事務を遂行するに当たっては,善良な管理者としての注意義務は負わない。

5 未成年後見人は,被後見人たる児童が同居の親族に該当する場合,未成年後見人が被後見人の財産を横領したとしても刑を免除する親族間の特例が適用される。


「善管注意義務(善良な管理者としての注意義務)」とは,その職務に期待されている義務を果たすことです。

この回で初めて出題されました。

そのため,解けなかった人も多かったかもしれません。

しかし,気力を振り絞れば何とか道筋は見えます。

それでは解説です。


1 成年後見人は,被後見人の身上に関する事務を遂行するに当たっては,被後見人本人の意思を尊重する義務は負わない。

これを正解にした人は,合格点に達していても不合格にしてしまっても良いくらいの問題です。

もちろん間違いです。


2 成年後見人は,不適切な事務遂行行為によって第三者に損害を与えた場合,被後見人に事理弁識能力があるときには,その第三者に対して損害賠償責任を負わない。


被後見人は,一時的に事理弁識能力が戻ったとしても,法律行為は制限されていることは前回紹介したとおりです。

後見人はいつでも適切に事務を遂行する「善管注意義務」があります。

それを怠った時には,責任が生じます。

時には損害賠償責任を負うこともあります。よって間違いです。

3 未成年後見人は,被後見人に対する事務を遂行するに当たっては,善良な管理者としての注意義務を負う。


未成年後見人ももちろん善管注意義務はあります。

よって正解です。


4 成年後見人は,財産のない被後見人に対する事務を遂行するに当たっては,善良な管理者としての注意義務は負わない。


財産がなくても善管注意義務はあります。

よって間違いです。


5 未成年後見人は,被後見人たる児童が同居の親族に該当する場合,未成年後見人が被後見人の財産を横領したとしても刑を免除する親族間の特例が適用される。


これが難しかったものだと思います。

これを正解にしてしまった受験生もいたのではないかと思います。


親族間の特例とは,配偶者や直系親族,同居の親族には,刑法の規定を免除する特例があるというものです。

例えば,子どもが親のお金をくすねても罪には問われないといったものです。


この問題を正解できるかどうかは,この選択肢を消去できたかどうかが大きく分かれます。

親族間の適用が分からなくても,今読めば「財産を横領」という言葉から正解にはしにくいと思います。

同居の親族の場合は,親族間の特例があります。

しかし,後見人になると善管注意義務がありますので,特例は適用しません。

というか適用されたら,何のための後見人なのか,その意味がなくなります。


<今日の一言>

日常,文章を見続ける仕事をしているような人でなければ,午前中の最後はふらふらになっていると思います。

国試は脳の体力が必要です。

試験前には,必ず150問を通して解く訓練を何度も行うことが大切です。


それがつまらないポカをしないためのコツです。

2017年12月26日火曜日

国試に合格する勉強法とは? ~成年後見制度の基本ポイント

 旧カリキュラムの法学と現カリキュラムの権利擁護と成年後見制度の大きな違いは,現在の科目では,成年後見制度は必ず出題されるところです。

科目名にも入っているので当然ですね。

それでは,解説なしに今日の問題です。

22回・問題73

成年後見に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 成年被後見人が建物の贈与を受けたとき,成年後見人はこれを取り消すことができない。

2 保佐開始の審判を受けていた者が,事理弁識能力を欠く常況になった場合には,家庭裁判所は,職権で後見開始の審判を行うことができる。

3 成年被後見人が成年後見人の同意を得ないでした婚姻は,これを取り消すことができる。

4 自己の所有する不動産を売却した成年被後見人は,成年後見人の同意を事前に得ていた場合には,これを取り消すことができない。

5 成年被後見人が自己の所有する不動産を売却したとき,その時点で意思能力を有していた場合でも,成年後見人は契約を取り消すことができる。


さすがは,現行カリキュラムによる1回目の国試の第22回の出題っぽいです。

重要ポイントを押さえています。

ほとんどの人はもう第22回の問題は見ることも手に入れることも困難ですが,第22回の問題は,これからはこのように出題します,

準備よろしくね,と宣言している問題がそろっています。

そのため,実はその後繰り返し繰り返し出題される率は,第22回が一番多いです。

だからと言って,古本屋やネットオークションで入手しても,制度改正についての知識がないと危険ですのでおすすめできません。



さて,それでは詳しく見ていきましょう。


1 成年被後見人が建物の贈与を受けたとき,成年後見人はこれを取り消すことができない。


法定後見には,後見,保佐,補助の3類型があります。


そのうち,後見類型は,財産管理権,代理権,取消権が付与されます。


被後見人は,事理弁識能力を欠く常況にある者です。

そのため後見人の取消権は,すべての法律行為に関してあります。


ただし,日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消すことができません

これは特に重要なところです。

また,婚姻,離婚などの身分行為も取り消すことができません。これらは保佐類型,補助類型も同様です。

問題に戻ると,建物の贈与を受けても取り消すことができます。

よって間違いです。


2 保佐開始の審判を受けていた者が,事理弁識能力を欠く常況になった場合には,家庭裁判所は,職権で後見開始の審判を行うことができる。


保佐類型は,精神上の障害により判断能力が著しく不十分な者です。

保佐人には同意権と取消権が付与されます。

同意権とは「この法律行為は行ってもよい」と保佐人が同意することです。

後見人に同意権はありません。その理由は,後見人が同意した法律行為であっても期待する法律行為は行うことができないと考えられるからです。


さて,後見開始の審判についてです。

申立権者の申立てによって,家庭裁判所は後見開始の審判を行います。

家庭裁判所の職権で成年後見人を選任します。

よって間違いです。

職権で行うのは,成年後見人の選任であり,後見開始の審判ではありません。

これは何度も出題されているポイントです。確実に覚えましょう。


3 成年被後見人が成年後見人の同意を得ないでした婚姻は,これを取り消すことができる。


先述のように,身分行為は取り消すことができません。

よって間違いです。


4 自己の所有する不動産を売却した成年被後見人は,成年後見人の同意を事前に得ていた場合には,これを取り消すことができない。


先述のように後見人には,同意権はありません。

それは同意していても被後見人には期待する法律行為を行うことができないと考えられているためです。

後見人が同意していても同意していなくても,被後見人のなした法律行為は取り消すことができます。よって間違いです。


5 成年被後見人が自己の所有する不動産を売却したとき,その時点で意思能力を有していた場合でも,成年後見人は契約を取り消すことができる。


被後見人は,先述のように「事理弁識能力を欠く常況にある者」です。

しかし,一時的に意思能力を有していた場合でも,取り消すことができます。

よって正解です。


なぜなら,被後見人は法律行為が制限されているからです。


<今日の一言>

成年後見制度は,一見複雑そうに見えるかもしれませんが,過去問や模擬問題集を丁寧に押さえていけば,十分に対応可能です。

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