行政不服申立て制度は何度も取り上げていますが,ここでもう一度整理しなおしてみます。
介護保険法の要介護認定
➡ 介護保険審査会(都道府県に設置)
障害者総合支援法の障害支援区分認定
➡ 都道府県知事
生活保護の決定
➡ 都道府県知事
国民健康保険の保険料
➡ 国民健康保険審査会(都道府県に設置)
保育所利用の処分
➡ 市町村長
ここで注意したいのは,都道府県には任意設置の障害者介護給付費等不服審査会がありますが,審査請求先はあくまでも都道府県知事ということになります。
間違えないようにしましょう。
さて,それでは今日の問題です。
第24回・問題70改
行政処分と行政不服申立てに関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 介護保険法における介護保険給付に関する処分や障害者総合支援法における介護給付費等に係る処分に不服がある場合には,都道府県知事に審査請求を行うことができる。
2 最近の判例によると,生活保護の実施機関が被保護者に対して行う生活の維持,向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示が行政処分に当たることはないとされている。
3 審査請求に対する裁決はできる限り速やかに行われるべきではあるが,拙速な判断は避けるべきであるから,介護保険法,障害者総合支援法,生活保護法などの社会保障立法には裁決をすべき期間についての定めはない。
4 介護保険法における介護保険給付に関する処分や障害者総合支援法における介護給付費等に係る処分の取消しを求める訴訟は,原則として審査請求に対する裁決を経た後でなければ提起できない。
5 介護保険法や障害者総合支援法における審査請求は,文書で行わなければ受理されない。
いかにも法制度の問題らしい問題ですね。
法制度は知っているだけで点数が取れるので,最後の仕上げにはうってつけです。
さて,それでは詳しく見ていきましょう。
1 介護保険法における介護保険給付に関する処分や障害者総合支援法における介護給付費等に係る処分に不服がある場合には,都道府県知事に審査請求を行うことができる。
介護保険サービスと障害福祉サービスの制度は共通点もありますが,審査請求先は異なります。
介護保険法
➡ 介護保険審査会(都道府県に設置)
障害者総合支援法
➡ 都道府県知事
ここで注意したいのは,都道府県には任意設置の障害者介護給付費等不服審査会がありますが,審査請求先はあくまでも都道府県知事ということになります。
間違えないようにしましょう。
2 最近の判例によると,生活保護の実施機関が被保護者に対して行う生活の維持,向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示が行政処分に当たることはないとされている。
指導又は指示は行政処分に当たります。
だから不服がある場合は都道府県知事に対して審査請求を行うことになります。
もちろん最近の判例でもこんなものはありません。よって間違いです。
「こんな判例があるのか,知らない」なんて思うと試験委員の仕掛けたトラップにはまります。こんな判例はなく,試験委員が作ったでたらめだからです。
本試験が難しく感じるのは,このようなでたらめの選択肢(もちろん間違い)をはさみこんでいるからです。
本試験が難しく感じるのは,このようなでたらめの選択肢(もちろん間違い)をはさみこんでいるからです。
3 審査請求に対する裁決はできる限り速やかに行われるべきではあるが,拙速な判断は避けるべきであるから,介護保険法,障害者総合支援法,生活保護法などの社会保障立法には裁決をすべき期間についての定めはない。
3つの法律のうち,生活保護法では,50日と定められています。
よって間違いです。介護保険法と障害者総合支援法には定めはありません。
4 介護保険法における介護保険給付に関する処分や障害者総合支援法における介護給付費等に係る処分の取消しを求める訴訟は,原則として審査請求に対する裁決を経た後でなければ提起できない。
これが正解です。
これを審査請求前置主義と言います。
5 介護保険法や障害者総合支援法における審査請求は,文書で行わなければ受理されない。
これらは,文書,あるいは口頭でも不服を申し立てることができます。よって間違いです。
審査請求を行える期間は・・・
処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月です。
法改正によって従来の60日から変更になっています。しっかり覚えておきましょう。