「権利擁護と成年後見制度」は苦手だなぁ,と思っていることも多いと思います。
現場でなじみのないものが多いので,仕方がないところかもしれません。
そのために0点を恐れている人も多いことも仕方がないところでしょう。
しかし,基本ポイントをしっかり押さえることができれば,苦手だと思っている人でも0点どころか3~4点は取れます。
この科目の攻略の一番の方法は,気力を振り絞って問題を解くことです。
法律には道筋があるので,気力さえあれば,その道筋を見つけ出すことができるでしょう。
さて,今日も前説なしに,今日の問題をみましょう。
第24回・問題74
後見人の責務に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 成年後見人は,被後見人の身上に関する事務を遂行するに当たっては,被後見人本人の意思を尊重する義務は負わない。
2 成年後見人は,不適切な事務遂行行為によって第三者に損害を与えた場合,被後見人に事理弁識能力があるときには,その第三者に対して損害賠償責任を負わない。
3 未成年後見人は,被後見人に対する事務を遂行するに当たっては,善良な管理者としての注意義務を負う。
4 成年後見人は,財産のない被後見人に対する事務を遂行するに当たっては,善良な管理者としての注意義務は負わない。
5 未成年後見人は,被後見人たる児童が同居の親族に該当する場合,未成年後見人が被後見人の財産を横領したとしても刑を免除する親族間の特例が適用される。
「善管注意義務(善良な管理者としての注意義務)」とは,その職務に期待されている義務を果たすことです。
この回で初めて出題されました。
そのため,解けなかった人も多かったかもしれません。
しかし,気力を振り絞れば何とか道筋は見えます。
それでは解説です。
1 成年後見人は,被後見人の身上に関する事務を遂行するに当たっては,被後見人本人の意思を尊重する義務は負わない。
これを正解にした人は,合格点に達していても不合格にしてしまっても良いくらいの問題です。
もちろん間違いです。
2 成年後見人は,不適切な事務遂行行為によって第三者に損害を与えた場合,被後見人に事理弁識能力があるときには,その第三者に対して損害賠償責任を負わない。
被後見人は,一時的に事理弁識能力が戻ったとしても,法律行為は制限されていることは前回紹介したとおりです。
後見人はいつでも適切に事務を遂行する「善管注意義務」があります。
それを怠った時には,責任が生じます。
時には損害賠償責任を負うこともあります。よって間違いです。
3 未成年後見人は,被後見人に対する事務を遂行するに当たっては,善良な管理者としての注意義務を負う。
未成年後見人ももちろん善管注意義務はあります。
よって正解です。
4 成年後見人は,財産のない被後見人に対する事務を遂行するに当たっては,善良な管理者としての注意義務は負わない。
財産がなくても善管注意義務はあります。
よって間違いです。
5 未成年後見人は,被後見人たる児童が同居の親族に該当する場合,未成年後見人が被後見人の財産を横領したとしても刑を免除する親族間の特例が適用される。
これが難しかったものだと思います。
これを正解にしてしまった受験生もいたのではないかと思います。
親族間の特例とは,配偶者や直系親族,同居の親族には,刑法の規定を免除する特例があるというものです。
例えば,子どもが親のお金をくすねても罪には問われないといったものです。
この問題を正解できるかどうかは,この選択肢を消去できたかどうかが大きく分かれます。
親族間の適用が分からなくても,今読めば「財産を横領」という言葉から正解にはしにくいと思います。
同居の親族の場合は,親族間の特例があります。
しかし,後見人になると善管注意義務がありますので,特例は適用しません。
というか適用されたら,何のための後見人なのか,その意味がなくなります。
<今日の一言>
日常,文章を見続ける仕事をしているような人でなければ,午前中の最後はふらふらになっていると思います。
国試は脳の体力が必要です。
試験前には,必ず150問を通して解く訓練を何度も行うことが大切です。
それがつまらないポカをしないためのコツです。