2018年6月30日土曜日

内閣総理大臣に要注意!!

今回も「福祉行財政と福祉計画」を続けます。

それでは,早速今日の問題です。

第30回・問題46 次の記述のうち,厚生労働大臣の役割として,正しいものを1つ選びなさい。

1 介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針を定める。

2 都道府県が老人福祉計画に確保すべき老人福祉事業の量の目標を定めるに当たって従うべき基準を定める。

3 障害者基本法に規定される障害者基本計画を作成しなければならない。

4 市町村が市町村地域福祉計画を策定する際に参酌すべき基準を定める。

5 子ども・子育て支援事業計画の基本的な指針を定める。

この問題は,今年の問題です。

初めて,国の役割が丸ごと出題されたものです。

意表を突かれたのではないでしょうか。

国は,市町村・都道府県の上位計画である,基本指針,基本計画を策定します。

注意すべきものは,厚生労働大臣ではなく,内閣総理大臣が定めるものがあることです。

それでは解説です

1 介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針を定める。

これが正解です。

2 都道府県が老人福祉計画に確保すべき老人福祉事業の量の目標を定めるに当たって従うべき基準を定める。

従うべき基準
標準
参酌すべき標準

というレベルがあります。

拘束力が高いのは,従うべき基準

拘束力が中くらいなのは,標準

拘束力が低いのは,参酌すべき標準


従うべき基準が定められるのは,職員配置,建物などの大きさなどです。

標準を定めるのは,施設や通所施設の定員などです。

参酌すべき標準が定められるのは,民生委員の定員などです。

確保すべき老人福祉事業の量の目標は,地域の実情によって変わります。

従うべき基準は適さないと思えればOKです。

正しくは,参酌すべき標準です。よって間違いです。


3 障害者基本法に規定される障害者基本計画を作成しなければならない。

障害者基本法は,特別な法律です。

なぜなら,障害者権利条約に沿った国際的な協調が必要だからです。

そのため,内閣府が所管しています。

障害者基本計画は,政府(内閣総理大臣)が作成します。よって間違いです。


4 市町村が市町村地域福祉計画を策定する際に参酌すべき基準を定める。

地域福祉計画には,国による上位計画がないことが特徴です。

よって,間違いです。


5 子ども・子育て支援事業計画の基本的な指針を定める。

子ども子育て支援法を含めた子ども・子育て関連3法も内閣府が所管しています。

そのため基本指針を定めるのは,政府(内閣総理大臣)となります。

よって間違いです。


〈今日のまとめ〉

 基本指針,基本計画を定めるのは,国です。

 その中には,厚生労働大臣が定めるものと内閣総理大臣(政府)が定めるものがあります。

 内閣総理大臣(政府)が定めるものは

 障害者基本計画
 子ども・子育て支援事業計画の基本指針

 要注意です!!

2018年6月29日金曜日

試験委員が仕掛けたトラップ

3か月で合格できるよ

3年間の過去問を3回解けば合格できるよ

今までは,根拠のないアドバイスをどんな意味でするのだろう

とその話を耳にするたびに腹立たしく思ってきました。

しかし,最近はとてもありがたく思うようになってきました。

なぜなら,みんなが本気で勉強したら,合格基準点が限りなく高くなることもあり得るからです。

合格するつもりがなく受験する,いわゆる「記念受験組」は国試会場では迷惑な存在でしたが,この人がいることで,合格基準点がそれほど上がらずに済んでいました。

記念受験組がいないと,受験者の競争になってしまいます。

国はどのように考えているのかが,今年の国試で見えたように思います。

つまり,重視しているのは「合格率」だと思うのです。

そういった意味で,

3か月で合格できるよ

3年間の過去問を3回解けば合格できるよ

はありがたいアドバイスだと思うのです。

なぜなら,それらのアドバイスを真に受けた人は,合格することはかなり難しいです。

ある人は

早くから勉強したら忘れるから追い込み勉強で集中した方がいいよ

というアドバイスを信じて,11月から勉強を始めて不合格になりました。

よく聞くとアドバイスしてくれた人は,医師であり,社会福祉士を取った人らしいです。
特殊な人のアドバイスは参考になりません。


国試の理想形は・・・

勉強した人が解けて,勉強が足りない人は解けない

というものだと思っています。

勉強した人も勉強が足りない人も解けない

あるいは

勉強が足りない人も解ける

というのは,資格試験には適切な出題ではないと思います。

それでは今日の問題です。


第24回・問題46 福祉に関する計画と財政との関係に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 児童福祉法において,市町村保育計画に定める保育サービス供給体制確保の見込み量等に基づいて算定した保育費用の予想額等に照らし,市町村は保護者から徴収する保育料の水準を定めることとされている。

2 次世代育成支援対策推進法において,一般事業主行動計画に定めた女性の雇用目標を達成しなかった一般事業主は,到達水準等に照らして算定された納付金を賦課されることとされている。

3 介護保険法において,市町村介護保険事業計画に定める介護給付等対象サービスの見込み量等に基づいて算定した保険給付に要する費用の予想額等に照らし,市町村は第1号被保険者に対する介護保険料率を算定することとされている。

4 障害者基本法において,障害者基本計画に定める公共的施設のバリアフリー化の整備目標量等に基づいて算定した整備費用の予想額等に照らし,公共交通事業者はバリアフリー化費用の一部を利用者から徴収することができることとされている。

5 社会福祉法において,市町村地域福祉計画に定める地域における社会福祉事業の供給体制確保の見込み量等に基づいて算定した各種事業費用の予想額等に照らし,市町村は市町村民税について超過課税を行うことができることとされている。


この問題は,前回の問題と違い,国試問題としての破たんがありません。


内容も国試の理想形である

勉強した人が解けて,勉強が足りない人は解けない

を実現していると思います。

答えは3。それ以外はすべてでたらめ文章です。

介護保険法において,市町村介護保険事業計画に定める介護給付等対象サービスの見込み量等に基づいて算定した保険給付に要する費用の予想額等に照らし,市町村は第1号被保険者に対する介護保険料率を算定することとされている。

これだけを読めば,これが正しいものだと思えるはずです。

勉強が足りない人は,言い回しをそろえた他の選択肢に惑わされて,ここにたどり着くのそんなに簡単ではないはずです。

間違い選択肢をうまく作って,正解選択肢を隠していると思います。

勉強不足の人は,簡単に試験委員が仕掛けたトラップに引っ掛けられていきます。

ほかの選択肢の解説はしません。


〈今日の一言〉

この問題を初めて見たときは,とても難しく感じたはずです。

なぜなら,間違い選択肢はすべてでたらめ文章なので,どんな勉強した人でも知らない文章だからです。

それが国試の怖さです。

しかし,しっかり勉強を重ねたら,試験委員が仕掛けたトラップに引っ掛けられることなく,正解にたどり着けます。

特に「福祉行財政と福祉」はそのように問題が作成されています。

今はとにかく基礎力をつける時です。

2018年6月28日木曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~福祉計画の種類(2)

「福祉行財政と福祉計画」はまとめの科目ではなく,最初に取り組んでほしい科目です。

実は,法制度の中心的科目は,「社会保障」だと考えていました。

それも間違いではないのですが,「社会保障」は,社会保障制度全体を学ぶのではなく,基本は「社会保険制度」を学ぶ科目のように思います。

カリキュラムが改正される時には,社会保障制度全体を押さえる科目にするか,逆に潔く「社会保険」という科目にしてしまえば良いと思います。

何を言いたいかといえば,社会保険は,分野論で言えば,保健医療,高齢者にしか適用されず,地域福祉,低所得者,児童,障害(一部),の領域はかやの外です。

つまり,社会保障の科目で学ぶ内容は,一部の科目にしか活用できないと思います。

それに比べて,福祉行財政と福祉で学ぶ内容は,極めて広範囲にわたります。

そういう面で,法制度を学ぶ入り口の科目としては最適だと思うようになってきました。

具体的に言えば,各領域に共通するものを見つけやすいと思います。

分野論では,共通するものを押さえたうえで,それと違うものを押さえていくといった手法が使えます。

それでは今日の問題です。


第23回・問題46 市町村が策定する福祉等の計画に基づく事業を実施するための財源に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 市町村老人福祉計画に定められた老人福祉事業の実施に要する費用については,介護保険法による給付に優先して,市町村が支弁することになっている。

2 現行の市町村介護保険事業計画に盛り込まれる包括的支援事業については,第2号被保険者の保険料の負担はない。

3 市町村障害福祉計画に基づき市町村が支弁する障害福祉サービス費等の負担対象額について,国・都道府県が3分の1ずつを負担するものとされている。

4 市町村地域福祉計画には,市町村の一般財源によって実施される事業に限定して盛り込むこととされている。

5 市町村健康増進計画に基づく健康増進事業は,市町村の一般財源から2分の1,国民健康保険財源から2分の1の支出で実施されるものとされている。

法制度に関するものは,しっかり押さえないと得点することはほとんどできません。

なぜなら,国語的に破たんした問題は少ないからです。

さて,今日の問題は,選択肢2が正解です。

制度が分かっていないとこれを〇にすることは難しいです。

しかし,この問題は,受験テクニックに長けたスーパー小学生は内容を知らずに正解してしまう可能性があります。

内容は分からなくても,何となく「これかな?」と思うのです。

この問題には,実は破たんポイントがあります。

なぜなら,選択肢2だけが,否定形になっているからです。

それ以外はすべて肯定形です。

すべて否定形にする,あるいはすべて肯定形にする。

否定形と肯定形をほどよく織り込む。

という処理をしないと,意図せずして「答えはこれだよ」と示してしまうこともあります。

今はこんなへぼ問題が出題されることはないと思いますが,解答テクニックの一つとして覚えておいて良いと思います。

ほかの選択肢も簡単に解説すると,

1は,介護保険が優先されるからです。

2は正解です。

3は,国,都道府県,市町村の負担割合が違います。

国が2分の1,都道府県と市町村はそれぞれ4分の1です。

4は,もちろん特定財源も盛り込みます。一般財源で行う単独事業は15%,特定財源で行う補助事業は85%,圧倒的に補助事業の方が多かったですね。

5は,このような規定はありません。


(今日の一言)

健康増進法に基づく健康増進事業では,以下のような事業が行われています。

(1)健康手帳の交付
(2)健康教育
(3)健康相談
(4)機能訓練
(5)訪問指導
(6)総合的な保健推進事業


ここで着目したいのは,健康手帳の交付です。

健康手帳は,(2)~(5)を受けた者,及び高齢者医療確保法に基づく特定健康診査を受けた者に対して市町村が交付するものです。

手帳にはいくつかの種類があります。

市町村が交付するもの → 健康手帳,母子健康手帳
 高度,かつ専門的な判断は求められません。

都道府県が交付するもの → 身体障害者手帳,精神障害者保健福祉手帳,療育手帳
 障害認定という,高度,かつ専門的な判断が求められます。

発達障害者には,発達障害のための手帳はありませんが,精神保健福祉法では精神障害者の中に発達障害者を含みます。

2018年から,障害者雇用促進法に基づく法定雇用率の算定基礎に精神障害者が加わり,雇用義務化されています。

今まで発達障害者は,精神障害者保健福祉手帳の交付を受けることは少なかったかもしれません。

しかし精神障害者が雇用義務化されたことにより,発達障害者も交付を受けることで,就職しやすくなり,また働きやすくなるのではないかと期待しているところです。

2018年6月27日水曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~福祉計画の種類と内容

今日から「福祉行財政と福祉計画」のうちの「福祉計画」に入りたいと思います。

既に今まででもいくつかは,出てきましたが,覚えるべき福祉計画の数が多くて整理しないととても歯が立ちません。

福祉計画に関しての平成30年4月から変更されたものをいくつか取り上げてみたいと思います。

・地域福祉計画の策定が任意から努力義務になった。

・医療計画の策定期間が,5年から6年になった。

・障害者総合支援法に基づく障害福祉計画と児童福祉法に基づく障害児福祉計画を「一体」で策定することができることとなった。

などなど。

この中で,特に重要なのは,地域福祉計画です。

各分野の上位計画として,包括した内容を定めることになりました。

地域福祉計画の特徴は,国による上位計画が存在していないことです。

自由に自分たちで工夫して地域福祉を作り上げなさい,ということなのだと思います。


<市町村地域福祉計画に含むべき事項>

(改正前)

一 地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項
二 地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項
三 地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項

(改正後)

一 地域における高齢者の福祉,障害者の福祉,児童の福祉その他の福祉に関し,共通して取り組むべき事項
二 地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項
三 地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項
四 地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項


<都道府県地域福祉支援計画に含むべき事項>

(改正前)

一 社会福祉を目的とする事業の企画及び実施
二 社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助
三 社会福祉を目的とする事業に関する調査、普及、宣伝、連絡、調整及び助成

(改正後)

一 地域における高齢者の福祉,障害者の福祉,児童の福祉その他の福祉に関し,共通して取り組むべき事項
二 市町村の地域福祉の推進を支援するための基本的方針に関する事項
二 社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項
三 福祉サービスの適切な利用の推進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項

市町村地域福祉計画,都道府県地域福祉支援計画ともに

地域における高齢者の福祉,障害者の福祉,児童の福祉その他の福祉に関し,共通して取り組むべき事項

が加わっています。

しっかり覚えておきましょう。

それでは,今日の問題です。

第25回・問題46 福祉計画等の目的に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 高齢者の医療の確保に関する法律では,後期高齢者医療広域連合は,国が定める医療費適正化基本指針に基づき,広域連合内の医療費適正化を推進するための医療費適正化計画を定めるものとしている。

2 介護保険法では,市町村介護保険事業計画は,当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に加え,老人福祉センターなどの介護給付等対象サービス以外の老人福祉事業の供給体制の確保に関する計画として定めるものとしている。

3 障害者基本法では,都道府県障害者計画は,厚生労働大臣が定める基本指針に即して,障害福祉サービスの提供体制の確保等について,各市町村を通ずる広域的見地から定めるものとしている。

4 児童福祉法では,市町村保育計画は,地域における子育て支援,児童の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備,職業生活と家庭生活との両立の推進などを実施するための計画として定めるものとしている。

5 社会福祉法では,都道府県地域福祉支援計画は,市町村地域福祉計画の達成に資するため,各市町村を通ずる広域的見地から,社会福祉を目的とする事業の健全な発展のための基盤整備に関する事項等を一体的に定める計画とされている。


難易度が高い問題です。

<法制度の基本>

法に定められた範囲で適用され,他領域を犯さない。

これはすべての法の基本原則です。

そのために,法制度のすき間が発生してしまうことがあります。

福祉計画に合わせると・・・

老人福祉計画は,老人居宅生活支援事業(居宅系サービス),老人福祉施設(入所系サービス)の老人福祉事業の供給体制の確保に関する計画です。

介護保険事業計画は,介護保険事業の供給体制の確保に関する計画です。

これを頭に入れながら,解説していきたいと思います。


1 高齢者の医療の確保に関する法律では,後期高齢者医療広域連合は,国が定める医療費適正化基本指針に基づき,広域連合内の医療費適正化を推進するための医療費適正化計画を定めるものとしている。

高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)は,後期高齢者医療制度の根拠法です。同制度の保険者は,都道府県のすべての市町村による広域連合です。

医療費適正化計画を定めるのは,都道府県です。よって間違いです。


2 介護保険法では,市町村介護保険事業計画は,当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に加え,老人福祉センターなどの介護給付等対象サービス以外の老人福祉事業の供給体制の確保に関する計画として定めるものとしている。

介護保険事業の確保に関する計画は,市町村介護保険事業計画で定めます。

老人福祉事業の確保に関する計画は,市町村老人福祉計画で定めます。

よって間違いです。


3 障害者基本法では,都道府県障害者計画は,厚生労働大臣が定める基本指針に即して,障害福祉サービスの提供体制の確保等について,各市町村を通ずる広域的見地から定めるものとしている。

障害者に関する法制度は,障害者基本法と障害者総合支援法があります。

障害者基本法は,障害者の施策に関する基本的な計画で,定めるのは障害者計画です。

障害者総合支援法は,障害者の支援のための障害福祉サービス(自立支援給付と地域生活支援事業)に関する計画で,定めるのは障害福祉計画です。

障害福祉サービスの提供体制の確保等について定めるのは,障害福祉計画です。よって間違いです。


4 児童福祉法では,市町村保育計画は,地域における子育て支援,児童の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備,職業生活と家庭生活との両立の推進などを実施するための計画として定めるものとしている。

児童福祉法が根拠法となる市町村保育計画は,現在はなくなり,その内容は,子ども・子育て支援事業計画の中に含まれています。

子ども関係の法も2つあります。

次世代育成支援対策推進法と子ども・子育て支援法です。

この関係性は,障害者基本法と障害者総合支援法と似ています。

次世代育成支援対策推進法は,次世代育成支援に関する環境整備などに関するもので,定めるのは行動計画です。

子ども・子育て支援法は,子ども・子育て支援に関するもので,定めるのは子ども・子育て支援事業計画です。

行動計画は,地域における子育て支援,児童の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備,職業生活と家庭生活との両立の推進などを実施するための計画です。

子ども・子育て支援計画は,子ども及びその保護者に必要な子ども・子育て支援給付及び地域子ども・子育て支援事業に関する計画です。

よって間違いです。


5 社会福祉法では,都道府県地域福祉支援計画は,市町村地域福祉計画の達成に資するため,各市町村を通ずる広域的見地から,社会福祉を目的とする事業の健全な発展のための基盤整備に関する事項等を一体的に定める計画とされている。

これが正解です。基盤整備に関するものを定めるのは,都道府県地域福祉支援計画です。


〈今日のまとめ〉

福祉計画の種類はたくさんあります。

それぞれには根拠法があります。福祉計画を整理する時は,根拠法を押さえるのが効果的です。

2018年6月26日火曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~福祉行財政の動向のまとめ

日本の福祉のターニングポイントがいくつかあります。

一つ目は,国が福祉行政に力を入れるようになった「米騒動」

GHQ主導による「戦後改革」

市町村が福祉の第一線となった「福祉関係八法改正」

2025年に向けた現在進行中の「社会保障制度改革」

はその中心ではないでしょうか。もちろん,人によってターニングポイントとするのは違うと思います。

そのうちの福祉関係八法改正を見てみたいと思います。

その前に,2018年は「米騒動」から100年となります。

米騒動の背景,内容,その後の影響などをぜひ整理していただきたいと思います。

さて,改めて,福祉関係八法改正です。

今は,福祉計画は数多くあります。次回からはそれらを押さえていきたいと思いますが。その最初が「老人保健福祉計画」です。

これが福祉関係八法改正で,市町村に策定が義務付けられました。

老人福祉と障害者福祉に関する入所措置の権限が都道府県から町村に移譲され,福祉サービス提供の第一線の機関として市町村が位置づけられています。
知的障害者はその後権限移譲されました。児童福祉の入所措置は,現在も都道府県の役割のままです。

児童の入所措置は市町村に権限移譲されていない理由は,児童にとって施設入所は親から引き離されることを意味し,高度な判断が求められるからです。

それでは今日の問題です。

第29回・問題46 1990年(平成2年)以降の行財政等の動向に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 いわゆる福祉関係八法改正によって,自治体に地域福祉計画の策定が義務づけられた。

2 介護保険法の施行によって,新ゴールドプランが策定された。

3 「地方分権一括法」の施行によって,養護老人ホームへの入所措置は市町村の法定受託事務となった。

4 平成の大合併によって,市の数は減少した。

5 「三位一体の改革」によって,国庫補助金及び地方交付税が削減された。

(注)1 「地方分権一括法」とは,「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」のことである。
2 「三位一体の改革」とは,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(いわゆる「骨太の方針2003」,平成15年6月27日閣議決定)などに基づいて行われた一連の地方財政改革をいう。

福祉行財政の動向の最終回には,とてもふさわしい問題だと思います。

それでは解説です。


1 いわゆる福祉関係八法改正によって,自治体に地域福祉計画の策定が義務づけられた。

地域福祉計画は絶対に押さえておかなければなりません。

地域福祉計画は,2000年の社会福祉法で策定は任意とされました。

2018年に,策定は努力義務に変更されています。

福祉関係八法改正によって策定が義務付けられたのは,老人保健福祉計画です。

老人保健法が老人医療確保法に変更になった際に,老人保健計画の策定義務はなくなり,老人福祉計画のみに策定義務があります。



2 介護保険法の施行によって,新ゴールドプランが策定された。

ゴールドプランは,高齢社会の到来を見越して,1989(平成元)年に策定されたものです。

10年計画として策定されましたが,全国の目標値を積み上げると,ゴールドプランで示した数値を超えてしまい,数値を修正して作られたものが,新ゴールドプラン(1994・平成6年)です。

その後,1999年にゴールドプラン21が策定されたのが最後として,その後は高齢者福祉に関するものは策定されていません。


3 「地方分権一括法」の施行によって,養護老人ホームへの入所措置は市町村の法定受託事務となった。

「地方分権一括法」の施行によって,地方公共団体の事務は,自治事務と法定受託事務に再編されました。

基本的に福祉に関する事務は自治事務です。

老人福祉法による入所措置も自治事務です。

よって間違いです。

養護老人ホームは,国試では超頻出です。

というのは,老人福祉法が制定する前から存在し,入所要件が「経済的理由」によるものとなっているからです。

養護老人ホームの始まりは,救護法により規定された「養老院」です。それが,旧・生活保護法で「養老施設」となり,1963(昭和38)年の老人福祉法で「養護老人ホーム」と規定されました。

この経緯から現在も入所要件に「経済的理由」があるのです。

しっかり覚えていきましょう。


4 平成の大合併によって,市の数は減少した。

いわゆる「平成の大合併」で,それ前までは,3,000以上あった市町村数が約1,700まで減少しました。

静岡市と清水市の合併のように,市同士の合併もあると思いますが,多くは市と町村との合併,町村同士が合併して市になる,といったことが行われました。


その結果として,減ったのは,町村数,増えたのは市ということになります。


5 「三位一体の改革」によって,国庫補助金及び地方交付税が削減された。

一般的に,三位一体の改革で行われたことは

①国庫補助金の削減
②税財源の権限移譲
③地方交付税の見直し

です。

地方交付税が見直されたことで,結果,どうなったのかはあまり語られていないことかもしれません。

もちろん地方交付税も削減しています。



<福祉行財政の動向のまとめ>

・社会保障関係費は,国の予算のうちで最も大きな割合を占めている。

・収入を国と地方を分けると国の方が多い。

・支出を国と地方を分けると地方の方が多い。

・地方の支出を都道府県と市町村に分けると市町村の方が多い。

・地方の収入のうち,最も多いのは,地方税である。

・地方の支出のうち,最も多いのは,民生費である。

・地方の支出を都道府県と市町村に分けると,都道府県で最も多いのは教育費,市町村で最も多いのは民生費である。

・民生費の内訳で最も多いのは,児童福祉費である。


これらは,1990年以降の動向を押さえると理解できます。

・中央集権から地方分権へ

・市町村の役割の拡大

これらは,今後大きな改革で路線変更がなされない限り,加速して進んでいきます。

一般財源を使って,市町村が知恵を出して地域共生社会を構築していくことになります。

2018年6月25日月曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~推測して答えを引き出す方法

平成30年の制度改正は,いわゆる団塊の世代が後期高齢者となる2025年に向けたものです。

今日のテーマ

推測して答えを引き出す方法

勉強していて,自分の覚えたところと違う部分が出題されることは絶対あります。

それが国試だからです。

しかし,知っていることから,答えを引き出せることはたくさんあります。

それが推測力です。

基本を押さえていれば,正解にたどり着きやすくなります。

平成30年では,社会福祉法,介護保険法,障害者総合支援法などさまざまなものが改正されています。

一つひとつは重要ですが,社会福祉士の国家試験でとても重要な改正の一つは,国民健康保険法の改正でしょう。

「社会保障」の科目でも取り上げたいと思いますが,市町村国民健康保険の保険者に都道府県が加わりました。これによって,市町村はお金の出入りを扱い,運営主体は都道府県の役割となりました。

社会保険制度の根幹は,保険者,被保険者,保険料負担,保険事故の4つです。

日本の社会保険制度は,年金,医療,介護,雇用,労災の5つです。

根幹部分がどのように作られているのかを整理してみるところから学習は始まります。

この春の市町村国保の保険者が変わることは,根幹部分の変更なので極めて重要です。

因みに平成29年8月に国民年金(基礎年金)の受給資格を得られる期間が従来の25年から10年に短縮したことも根幹にかわる部分です。

しっかり押さえていきましょう。

変化が大きい時なので,とても大変だと思うかもしれません。

しかし,知っている知識から推測していけば,解ける問題もあります。

それで解けなければ,みんなが解けない問題です。
心配することはありません。

大切なのは・・・

後からよく考えたら解けた

こういった問題をいかに減らすことができるかです。

今の国試はサバイバルゲーム。ミスの少ない人が合格し,ミスを多くした人が不合格になります。

さて,今日の問題は,特別会計の中身が初めて出題されたものです。

かなりの人が引っ掛けられた問題だと思います。

一緒に推論を積み重ねていきましょう。

第30回・問題43 「平成29年地方財政の状況」(総務省)が示す2015年度(平成27年度)の地方財政において,次に示す民生費及び特別会計事業の費目のうち,歳出金額が最も多いものを1つ選びなさい。

1 生活保護費

2 児童福祉費

3 老人福祉費

4 介護保険事業費

5 国民健康保険事業費

選択肢1~3は,前回まで紹介してきたように,

①児童福祉費,②老人福祉費,③生活保護費の順となります。現在は,2位が社会福祉費ですが,2位と3位が年度によって変わります。

1位が児童福祉費だということを覚えておけば良いです。

さて,問題は,特別会計である介護保険事業費と国民健康保険事業費と一般会計であるそれぞれの費目では,どちちが多いかという推論です。

生活保護,児童福祉,老人福祉は,それぞれ税財源によって運営しています。

介護保険と国民健康保険は,それぞれ社会保険料と税を財源として運営しています。

社会保険料分多いのではないかと推測できます。

社会保障給付費の財源割合でも,社会保険料約6割,税は約4割です。

そうなると,選択肢1~3は消去できます。

次は,介護保険特別会計と国民健康保険特別会計の規模はどちらが大きいかを推測します。

そこでまたまた社会保障給付費を活用します。

現在は,年金が約5割,医療が約5割,福祉その他は約2割です。

国民健康保険は「医療」,介護保険は「福祉その他」です。

そこから

国民健康保険>介護保険

と推測します。

実際に答えは,選択肢5が正解でした。

金額は,多い方から

国民健康保険事業費は約16兆円
介護保険事業費は約9兆円
児童福祉費は約7兆円
老人福祉費は約6兆円
生活保護費は約4兆円

生活保護費が増大しているといっても,国民健康保険事業費の約4分の1です。

<今日の一言>

推測するためには,確かな知識が必要です。

つまり・・・

勉強した人は解ける,勉強が足りない人は解けない。

国家試験は,そうでなければなりません。チームfukufuku21は本気でそう思っています。

クイズの帝王みたいな人が,解ける問題ではだめなのです。

実際には,不適切問題になるのを防ぐために,クイズの帝王が合格点を取ってしまうような問題になります。

それでもまだ勉強した人でも解けないという問題よりはましです。

(おまけ)

福祉に関係するものでは,市町村は介護保険と国民健康保険は特別会計を設けなければなりません。

国民健康保険は,都道府県も保険者になったことで,都道府県も特別会計を設けています。

2018年6月24日日曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~基本は過去問

「●●白書に目を通しましょう」

と言う先生がいます。

しかし,私たちチームfukufuku21はそういうことを安易に言う人が嫌いです。

具体的に「ここの部分をこのように気を付けて目を通しなさい」という人は信用できますが,単に「目を通しておくように」というのは,あまりにざっくりしすぎているからです。

特に国試対策の先生が言う言葉ではありません。

学校の勉強なら,白書に目を通して全体像を押さえることは必須でしょう。

国試に向けた勉強ではそんな時間はありません。

効率的な勉強が欠かせません。

時には,「急がば回れ」も重要なことがありますが,白書類だけは,「回って回って,道に迷う」と思っています。白書の情報量は膨大です。

だからこそ,ポイントを教えてほしいのです。

さて,今日のテーマは「基本は過去問」です。

これは,「福祉行財政と福祉計画」に限りませんが,特にこの科目は,過去問分析が重要です。

なぜならこの科目は

少しずつ重なっていて,少しずつ違う

のルールに従って,過去を積み重ねることで,問題が構築されているからです。

そうしないと,0点を取る人が続出してしまうからだと考えられます。

今日の問題もそんな問題です。

第28回・問題45 「平成27年版地方財政白書」(総務省)に基づく2013年度(平成25年度)の市町村の民生費に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 目的別歳出のうち,民生費の割合は総務費の割合より少ない。

2 目的別歳出の民生費のうち,老人福祉費の割合は児童福祉費の割合より少ない。

3 目的別歳出の民生費のうち,市町村の歳出額は都道府県の歳出額より少ない。

4 民生費の性質別内訳をみると,扶助費の割合は人件費の割合より少ない。

5 民生費の目的別扶助費の状況をみると,補助事業の割合は単独事業の割合より少ない。

答えは,すぐ分かるはずです。

正解は,選択肢2です。

民生費の内訳で最も多いのは,児童福祉費だからです。

第30回国試では,特別会計(介護保険と国民健康保険)と合わせて出題されてびっくりしましたが,考えてみたら,福祉と社会保険では社会保険の方が会計規模が大きくなるのは当然です。

なぜなら,福祉は税が財源ですが,社会保険は税+社会保険で運用しているからです。

1が間違いなのは,民生費が最も多いからです。

2は正解。

3は市町村のほうが多いです。市町村は基礎的自治体として住民サービスを直接行うからです。

4が間違いなのは,扶助費が最も多いからです。

5が間違いなのは,補助事業の方が多いからです。


<今日のまとめ>

この5つの選択肢は,また何度も出題されるのかもしれませんが,この中でダークホースなのは,選択肢5です。補助事業が85%,単独事業が15%。圧倒的に補助事業が多いです。

補助事業は補助がある事業,単独事業は自主財源で行う事業です。

補助事業が多い,というのは,福祉に関しては,国が筋道をつけたものに従って地方が動いていることを示しています。

つまり,地方税や地方交付税はの一般財源は,福祉には多く使われずに,他の領域に使われていると言えるのではないでしょうか。

これからは,補助事業に頼らず,一般財源で地域共生社会を作り上げていかなければなりません。

国庫補助から一般財源化する,という流れは,「我が事・まるごと地域共生社会」に沿ったものなので,選択肢5がダークホースだと考えるわけです。

白書も福祉の勉強には重要ですが,効率的な勉強をするためには,この科目では,過去問を丁寧に取り組むほうがよいと思います。

白書を読んでも,そこからどのように出題されるか分かりませんし,目を通したからと言って膨大な情報を覚えられるとは思います。

ただし,古い過去問は,制度が古くなっていることがあるので,古本屋で購入することはお勧めしません。
そのため,学校によっては,過去問を最新の内容にして,提供してくれる学校もあると思います。

そうでない人は,過去問を整理したものが参考書なので,やっぱり参考書を丁寧に取り組むのが良いと思います。

白書に興味があるなら,資格取得後,あるいは3年次以前に読みましょう。

国試勉強で白書が必要なのは,全部に目を通すことではなく,過去問や参考書に取り組んでいる時,理解を深めるために使用します。


2018年6月23日土曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~この科目を制したものが国試を制する!!

今週から,福祉行財政の動向を取り上げています。

「数字を覚えるのが大変」という人がいます。

そう思う人は数字を丸覚えしようとしていませんでしょうか。

「福祉行財政と福祉」は現行カリキュラムで,独立した科目となりました。

そのおかげで,何を覚えたら良いのかが,とても明確になったように思います。

旧カリキュラムの時は,「社会福祉原論」という科目に含まれていた内容です。

さて,今日のテーマです。

この科目を制したものが国試を制する!!

大学のカリキュラムによって,開講年次は変わってくるかもしれませんが,できれば「現代社会と福祉」と「福祉行財政と福祉計画」は,分野論を学ぶ前に学んでほしい科目です。

「福祉行財政と福祉計画」は,分野論の総まとめの科目である,と言う人もいます。私たちチームfukufuku21はそうだと思っていません。

分野論から入ると,制度全体が見えづらいです。

制度はどのように作られているのか,といった構造の根幹を押さえにくいのです。

勉強時間がたっぷりあれば,帰納的に事柄をまとめていくのも良いと思います。

しかし,国家試験には,「福祉行財政と福祉」とい制度を横断している科目があります。

この科目は,演繹的な学びができると思います。

つまり,制度の骨格を押さえ,分野論で深く学ぶというスタイルです。

テキストもそれを意識して作られたらよいのに,と思います。

チームfukufuku21は,どの制度にも当てはまる共通項を提示していきたいと考えています。

そういったことから,福祉行財政と福祉計画をしっかり押さえることが,国試の得点力を上げると考えています。

それでは,今日の問題です。

第27回・問題42 地方財政関係資料(平成24年2月発行(総務省))などに基づく2010年度(平成22年度)の地方財政に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 

1 租税総額に占める国税と地方税の割合は,地方税の方が大きい。

2 地方交付税・国庫支出金等を除いた国の歳出は,地方の歳出より多い。

3 地方交付税総額の一部に酒税とたばこ税が充てられている。

4 公債費の支出額は,国より地方の方が多い。

5 地方歳入の決算の内訳をみると,地方税が半分以上を占めている。

現在ではこの問題は成立せず,答えはありません。

その理由が分かる人は相当勉強が進んでいます。

地域共生社会は,日本が明治政府以来,中央集権的に進めてきた政策を大きく転換させるものです。

1990年代からすでに地方分権は始まっていますが,ここにきて潮目が大きく変わっています。

これまでは,日本国内であれば,基本的に同じサービスが受けられました。

例としては,介護保険に見ることができます。ケアマネジャーが創設され,津々浦々の居宅の要介護者を支援しています。家族手当も出さずに,介護を社会化するのだ,という強い意図があったのだと言えます。

それがここにきて,「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)で地方がサービスを創出することになりました。

一億総活躍社会とは,サービス提供者,サービス受給者という線引きするものではなく,誰もが我が事として,地域福祉の担い手となるものです。

それが,国試でしつこく,

老人クラブは収益事業を行える
町内会は収益事業を行える
消費生活協同組合は福祉に関連した事業を行える

といった出題がされているところにつながっています。

総合事業は一つの例です。このようなものは,他分野でも出てくることでしょう。

それが地域共生社会です。

地方が自分たちで何かを行おうと思うと財源が必要です。

住民も企業も少ない地域は財源を確保することは大変です。

そこで重要となるものが,地方交付税です。

平成26年の税制改革で,「地方法人税」が創設されました。

これは地方という名称がついていますが,国税です。

これまでは,地方交付税は,法人税,消費税,酒税,所得税,たばこ税の国税5税の一定の割合を財源として地方に交付してきました。

この改革で,たばこ税から地方法人税を地方交付税の財源としたのです。そのために今日の問題は成立しなくなっています。

地方法人税は,一定の割合ではなく,そのすべてが地方交付税の財源とされます。

さて,今日の問題に戻ります。ポイントは,国の収入と地方の収入の関係,国の支出と地方の支出の関係,地方の収入の内訳です。

これからは,これからも必ず出題されることでしょう。

なぜなら,地域共生社会の実現には,財源が極めて重要だからです。

ポイントを押さえて,解説していきます。丸暗記ではすぐ忘れますが,理屈が分かれば,絶対に忘れません。

1 租税総額に占める国税と地方税の割合は,地方税の方が大きい。

国税は,国が集めるお金,地方税は,地方公共団体が集めるお金です。

2010年当時は,国が約60%,地方が約40%でした。今は少しその割合は近づいてきて,国が55%,地方が約45%になっていますが,国の方が多いです。よって間違いです。

国が集めると,地方公共団体の状況に応じて分配することができます。

そのため,国税は地方にとって極めて重要なのです。


2 地方交付税・国庫支出金等を除いた国の歳出は,地方の歳出より多い。

さて,次は支出です。市町村は住民のニーズを知る基礎的自治体です。

都道府県は,市町村を広域的な立場から支援する広域的自治体,国は地方自治体の支援を行います。

以前のように,市町村の上部組織が都道府県,都道府県の上部組織が国,という関係ではありません。

この関係性で,国よりも地方の方が支出が多くなります。収入とは逆になっている逆の割合で,国が約40%,地方が約40%です。よって間違いです。

地方が多くなるのは,住民サービスを行うためです。国は整備基盤を行います。

地方に目を向けると,整備基盤を行うのは,都道府県の役割です。福祉における整備基盤とは,専門職の確保,質の向上などを指します。これは絶対に覚えておきたいです。


3 地方交付税総額の一部に酒税とたばこ税が充てられている。

出題当時は正解でした。しかし今は税制が変わり,間違いとなります。

先述のように現在は,たばこ税に変わって地方法人税が加わっています。

地方法人税は,地方税である地方住民税の一部を国税化したものです。

そのため,地方法人税が創設されたといっても企業の税負担が増えたわけではありません。現政権がそのような政策を通すわけがありません。

地方法人税は,今まで国試で出題されてことはありませんが,創設されて数年が経っていますので出題されるには期が熟してきたと言えます。


4 公債費の支出額は,国より地方の方が多い。

公債費は,借金です。国の方が公債費が大きくなっています。よって間違いです。
5 地方歳入の決算の内訳をみると,地方税が半分以上を占めている。

またまた前回に引き続き同じ設問です。

地方税は財源移譲によって大きくなっていくものかもしれません。しかし半分以上は占めません。そこまで地方税が大きくなってしまうと,地方格差が大きくなってしまうからです。

地方税が約35%,地方交付税が約20%,国庫支出金が約15%です。よって間違いです。
しっかり覚えましょう。

<今日の一言>

地方交付税は,お金の使途は決まっていません。

国庫支出金は,お金の使途が決まっているものです。

国庫支出金が大きいと中央集権的だと言えます。

一般財源が大きいと,地方分権だと言えます。

地方税が大きければよいかと言えば,必ずしもそうではなく,人口が少ない地方公共団体は財源を確保しにくいものとなります。

地域差をなくすために,国税が必要です。

財源移譲し,国庫支出金を減らし,地方交付税を見直す。

これが三位一体改革と呼ばれた改革です。

地方交付税の財源として,消費税に目が向きがちですが,地方法人税が創設されたことも忘れてはいけません。

2018年6月22日金曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~数字には意味がある

前回から,福祉行財政と福祉計画の中の「福祉行財政の動向」に入っています。
たくさんの数字が出てきます。

福祉行財政と福祉計画の攻略法~数字の覚え方のコツ
http://fukufuku21.blogspot.com/2018/06/blog-post_21.html

今日は,用語を整理します。

一般財源 お金の使い道が決まっていない収入 地方税,地方交付税など。
特定財源 お金の使い道が決まっていない収入 国庫支出金など。
民生費 地方公共団体の福祉に関する費用
扶助費 要援護者の支援のための費用など
補助費 各種団体に対する助成金など
公債費 借入金と利子の合計

これらを押さえて,今日の問題です。

第23回・問題45 「地方財政白書」(平成22年版)に基づく平成20年度の地方財政の状況に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 民生費について,都道府県の合計額と市町村の合計額を比較すると,都道府県は市町村の約2.5倍の規模となっている。

2 目的別歳出の構成比を団体種類別に見ると,都道府県においては民生費が最も大きな割合を占めるのに対して,市町村においては教育費が最も大きな割合を占める。

3 都道府県・市町村を通じた扶助費純計額の目的別内訳を見ると,老人福祉費が最も大きく,次いで児童福祉費,生活保護費の順となっている。

4 都道府県・市町村を通じた民生費純計額の財源構成を見ると,国庫支出金の割合が最も大きく,一般財源等の約2倍の規模となっている。

5 歳出全体に占める扶助費の割合を,政令指定都市と町村とで比較すると,町村の方が低い割合となっている。

またまた古い問題だと思う人もいるかもしれません。
しかし,この当時と今では金額は違っていても,割合はほとんど違いがありません。
なぜなら,新しい社会保険ができるなどの抜本的な制度改正はないからです。

今日のテーマ
数字には意味がある
を意識しながら,解説していきます。

1 民生費について,都道府県の合計額と市町村の合計額を比較すると,都道府県は市町村の約2.5倍の規模となっている。

民生費は,地方公共団体の福祉に要する費用です。

福祉は,市町村に権限移譲が進んでいます。

福祉六法のうち,都道府県がまだ所管しているのは,生活保護法,児童福祉法,母子及び父子並びに寡婦福祉法の三法のみです。

市町村は,福祉六法すべてを所管します。ただし,町村が生活保護法の事務を行う場合は,福祉事務所を設置している場合です。

福祉サービス費は,支給決定した者が支給します。

さて,ここまでの説明で,民生費は,都道府県と市町村ではどちらが規模が多いか分かりますか?

市町村は都道府県の2.5倍です。


2 目的別歳出の構成比を団体種類別に見ると,都道府県においては民生費が最も大きな割合を占めるのに対して,市町村においては教育費が最も大きな割合を占める。

市町村と都道府県を合計すると民生費が最も多いことは分かりました。

では市町村と都道府県を分けるとどうなると思いますか?

都道府県は,市町村立の小中学校の教職員の人件費を負担しています。少子化でも児童福祉費は意外とお金がかかるのです。

民生費の規模は,市町村の方が大きかったですね。都道府県は少なかったです。

この関係で,都道府県では教育費が第1位。市町村では民生費が第1位となります。


3 都道府県・市町村を通じた扶助費純計額の目的別内訳を見ると,老人福祉費が最も大きく,次いで児童福祉費,生活保護費の順となっている。

さて,最もハードルが高い問題です。

前回の問題を知っている人は簡単でしょう。

この後,何度も出題され,とうとう第30回では,そのせいで引っ掛けに使われてしまいました。

老人福祉費は,介護保険ができたことで,老人福祉法が適用されるものは少なくなっています。高齢化率が高まっても,老人福祉法が適用されるのはそれほど多くはありません。

児童福祉費は,高齢者と違って,児童全員に発生します。また児童手当もあります。少子化で児童数が少なくても,児童福祉費はかかります。

生活保護費は,保護率が上がっても,対象となるのは住民のうちのほんの一部です。

さて,この情報で,最も多いと思うのは,老人福祉費,児童福祉費,生活保護費,ではどれが多いと思いますか?

児童福祉費です。よって間違いです。


4 都道府県・市町村を通じた民生費純計額の財源構成を見ると,国庫支出金の割合が最も大きく,一般財源等の約2倍の規模となっている。

これも前回のものの焼き直し問題です。

国庫支出金は,使い道を決めて地方に支出されるものです。

最も多いのは,地方税,次は地方交付税,国庫支出金は第3位ということになります。

よって間違いです。

地方分権の時代に,国庫支出金(特定財源)が第1位になることはありません。そして財源移譲されている時代に,地方交付税(一般財源)が第1位になることはありません。そうなると,必然的に第1位は地方税(一般財源)となります。


5 歳出全体に占める扶助費の割合を,政令指定都市と町村とで比較すると,町村の方が低い割合となっている。

これが難しかったと思います。

扶助費 要援護者の支援のための費用など
補助費 各種団体に対する助成金など


扶助費が多いのは,市町村
補助費が多いのは,都道府県

では扶助費を町村と指定都市を分けるとどうなるのでしょうか。

とても難しいです。

指定都市の数は少ないですが,人口規模が大きいです。
指定都市は,都道府県の事務のうち,一部の権限移譲されています。

この情報を読んで,指定都市と町村ではどちらが扶助費は多いと思いますか?
答えは,指定都市です。

ということで,これが正解です。

2018年6月21日木曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~数字の覚え方のコツ

今日から,福祉行財政と福祉計画の中の「福祉行財政の動向」に入ります。

たくさんの数字が出てきます。

どの数字を覚えたらよいのか分からない

国試が近くなるという焦りの声が聞こえてきます。

勉強していたのは,平成27年度なのに,そのあと,新しい数字が発表されている。その数字を覚え直さなければならないのか。

といった理由からでしょう。

しかし国試では小さな違いを問う問題は絶対にありません。

それは,チームfukufuku21が過去に指摘していることです。

国家試験に出てくる数字を覚えるコツ!!(2017/09/14)
http://fukufuku21.blogspot.com/2017/09/blog-post_14.html

この記事の中にありますが,年度によって順位が変わるものを出題することはまずありません。

問題を作るときの基準の中に,おそらくこれも含まれているのではないか,と推測しています。

それでは,今日の問題です。

第22回・問題44 「地方財政白書」(平成21年版)に示された平成19年度の我が国の地方財政の状況に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 国と地方を通じた財政支出(最終支出・約150兆円)のうち,国と地方の割合は,およそ6:4である。

2 地方公共団体の歳出を目的別に見てみると,民生費が最も大きな割合を占め,以下,教育費,土木費の順となっている。

3 地方公共同体の民生費の歳出を目的別に見てみると,生活保護費が最も大きな割合を占め,以下,老人福祉費,児童福祉費の順となっている。

4 地方公共団体の歳入の純計(一般財源と特定財源を含む)において,地方税による歳入は,約6割を占めている。

5 市町村のうち,実質収支が赤字で,いわゆる赤字団体となっている自治体は,全体の約2割を占めている。

なんて古い問題を出すのか
と思う人もいるでしょう。
しかし,ここに勉強の本質があるのです。
そこを押さえているか否かによって,学習効率も得点力も大きく変わります。

数字を覚える時のポイント
・順位(1位)。
・多い(あるいは少ない)方に着目。
・5割を超えているのか,超えていないのか。
・なぜそうなっているか。

そこを意識しながら,勉強していきましょう。
それでは解説です。

1 国と地方を通じた財政支出(最終支出・約150兆円)のうち,国と地方の割合は,およそ6:4である。

最新の数字である平成27年度の財政支出は,168兆円となっています。しかし,国と地方の割合は,この当時とあまり変わらず,国が4,地方が6,という割合です。よって間違いです。

支出は地方が大きいと押さえます。

理由はたくさんあると思います。その一つとして,福祉に目を向けると,市町村は基礎的自治体で住民サービスを行っているからだ,というのもあるでしょう。

2 地方公共団体の歳出を目的別に見てみると,民生費が最も大きな割合を占め,以下,教育費,土木費の順となっている。

これが正解です。

民生費とは,地方公共団体が福祉に要する費用を言います。

2000年以前には,土木費が一番多かった時代もありますが,現在は民生費がどんどん大きくなって,ずっと1位です。絶対王者という位置づけだと思ってよいでしょう。

今日の問題は,現行カリキュラムの第1回の国試である第22回です。

今後,民生費を出題するから,気をつけなさい,と示した問題です。

3 地方公共同体の民生費の歳出を目的別に見てみると,生活保護費が最も大きな割合を占め,以下,老人福祉費,児童福祉費の順となっている。

次は民生費の内訳です。最も多いのは児童福祉費です。2位は社会福祉費であったり,老人福祉費であったりしています。しかし生活保護費はいつもそんなに多くはありません。

少子化にも関わらず,児童福祉費がなぜ多いのか,と思う人もいるでしょう。

このように,一般的なイメージと違うところが狙われやすいところです。

日本は小・中学校は義務教育によって,基本的には無料です。本当は教科書代なども無料であって良いのですが,ある時の国会答弁によって,教科書代は除かれることになってしまったと言われています。

本題に戻ります。毎年100万人が誕生しています。900万人は義務教育を受けていることになります。実際には保育などもあるので,児童福祉の対象はもっと多いと思います。

高齢化率は高くなっていますが,すべての高齢者が福祉を理由としているわけではありません。しかも現在は福祉ではなく,社会保険で介護サービスが提供されています。

児童福祉費が一番多いのは,こういった理由からです。

4 地方公共団体の歳入の純計(一般財源と特定財源を含む)において,地方税による歳入は,約6割を占めている。

この設問もこれまでに何度も出題されてきたものです。

三位一体改革によっ,財源が地方に移譲されていますが,半分まで至っていません。約35%です。

2位は地方交付税,3位が国庫支出金です。


5 市町村のうち,実質収支が赤字で,いわゆる赤字団体となっている自治体は,全体の約2割を占めている。

赤字になっているのは,1%未満です。厳しい状況にありますが,2割には至っていません。

国から地方にわたるお金には,地方交付税と国庫支出金があります。

地方交付税は近い道が決まっていないものです。

国庫支出金は近い道が決まっているものです。

<今日のまとめ>

税金には,国が集める国税と地方が集める地方税があります。

今は,地方の時代。地域共生社会は,地域の知恵と工夫によって構築されます。
国が決めて,地域がそれに従って事務を行うという時代は福祉に限れば過去のものとなりつつあります。

そこを押さえると,地方の収入で

国庫支出金が最も多いということはあり得ないと思います。このようになぜそうなっているのかを考えながら勉強していきましょう。

そうすれば,必ず得点力は上がります。

2018年6月20日水曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~専門職の配置の整理

皆さんが目指している社会福祉士は,福祉の国家資格です。

国家試験を受けるためには,厚生労働大臣が指定する一般養成施設を修了しなければなりません。

福祉系大学では,それぞれの大学のカリキュラムの開講科目を読み替えることによって,受験資格が得られます。

受験資格を得るためには高いハードルが設けられていて,誰でも受験できるものではないにもかかわらず,合格率は約30%です。

合格率があまり高くない理由には,受験する方にあきらめ心があるように思います。

今年2月に行われた第30回国試から5か月が経ちました。

合格できれば良い

ではなく

合格した自分の姿を心に描いて,前を向けて確実に進んでいきましょう。

さて,今日も福祉行財政と福祉計画を続けます。

多くの人は,歴史や人名が苦手だと言います。しかし,出題ポイントは決まっています。

しっかり勉強すれば,確実に他の人と差をつけることができるでしょう。

しかし合格に必要なのは,歴史や人名に関するものに強くなることではなく,法制度をいかに確実に覚えているか,ということにかかっています。

取れる問題は確実に取れることが必要です。

福祉行財政と福祉計画をしっかり勉強していけば,必ず他の科目の実力がアップします。

第31回国試で必ず合格したい方は,そのことを十分意識してほしいと思います。

多くの人は,参考書を購入すると,「人体の構造と機能及び疾病」から学習を始めることでしょう。

今の時点で,心理学理論や社会理論を学んでいる人はペースが遅いです。

まだ精神保健福祉士の資格がなかった頃は,今と科目の配置がまったく違い,社会福祉原論,各分野論,社会保障,地域福祉,援助技術,心理学,社会学,法学,医学,介護といった順番となっています。

学ぶ効果を考えると,よい順番のように思います。

心理学理論や社会理論は後回しにしても良いように思います。

それでは今日の問題です。

第29回・問題45 社会福祉における専門職に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 知的障害者福祉司は,都道府県の設置する知的障害者更生相談所に配置されなければならない。

2 児童福祉司は,社会福祉士として2年以上児童福祉事業に従事した者のうちから任用しなければならない。

3 身体障害者福祉司は,市及び福祉事務所を設置する町村では,その設置する福祉事務所に配置されなければならない。

4 主任介護支援専門員は,保健師,社会福祉士と共に福祉事務所に配置されなければならない。

5 都道府県の社会福祉主事は,都道府県に設置する福祉事務所において,老人福祉法,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法に関する事務を行う。

この問題は必ず得点しなければならない問題です。

この手のスタンダードだと思われる問題を確実に得点することが合格するには欠かせません。

しかし,勉強不足の人は引っ掛けポイントにかなりの率で引っ掛けられて得点できないものだったかもしれません。

それでは解説です。

1 知的障害者福祉司は,都道府県の設置する知的障害者更生相談所に配置されなければならない。

これが正解です。知識がある人は,これを見た瞬間に答えが分かったはずです。

一問の問題を解く時間を1分30秒に設定して,タイマーで計りながら解く練習する人がいます。

しかし,それは絶対にやってはいけない勉強法です。

なぜなら

平均すると1分30秒かもしれませんが,すぐ解ける問題もありますし,時間をかける必要がある問題もあります。時間を計るなら,1問ずつではなく,2時間15分で83問を解く訓練です。

多くの人はこれをせずに受験に臨みます。そして焦り,得点できる問題を落とします。

そうならないために,模擬試験は必ず受験することをお勧めしたいです。


2 児童福祉司は,社会福祉士として2年以上児童福祉事業に従事した者のうちから任用しなければならない。

前回の問題と同じタイプの問題です。

社会福祉士は,実務経験がなくても任用されます。実務経験が必要なのは,社会福祉主事です。

よって間違いです。


3 身体障害者福祉司は,市及び福祉事務所を設置する町村では,その設置する福祉事務所に配置されなければならない。

身体障害者福祉司が必置の機関は,都道府県の身体障害者更生相談所です。よって間違いです。

市及び福祉事務所を設置する町村では,任意となっています。


4 主任介護支援専門員は,保健師,社会福祉士と共に福祉事務所に配置されなければならない。

3職種が配置されているのは,地域包括支援センターです。よって間違いです。社会福祉士が必置の機関は,地域包括支援センターしかありません。


5 都道府県の社会福祉主事は,都道府県に設置する福祉事務所において,老人福祉法,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法に関する事務を行う。

引っ掛けポイントは,この選択肢です。

都道府県の設置する福祉事務所が所管する法律は,権限移譲によって,福祉六法のうち,生活保護法,児童福祉法,母子及び父子並びに寡婦福祉法の三法となっています。

よって間違いです。

「都道府県の福祉事務所は」ではなく,「都道府県の社会福祉福祉主事は」となっているところが,この選択肢で迷わせるポイントだったと思います。


<今日の一言>

法制度を制したものが国試を制する!!



2018年6月19日火曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~任用資格の整理

福祉に関する専門職に採用されるための資格を「任用資格」と言います。

任用資格と聞いて最もなじみ深いのは「社会福祉主事任用資格」でしょう。

福祉施設の施設長,生活相談員の任用資格に位置づけられているからだと思います。

社会福祉士がなかったときの名残だと言えるでしょう。

国にとって,社会福祉主事はとても重要な資格です。

戦後,旧・生活保護法の保護事務を補助していたのは,民生委員でした。

GHQは,それを問題視し,有給の官吏の創設を求めます。その結果できたのが,社会福祉主事です。

社会福祉士は,多くの職種の任用資格があります。

社会福祉主事もその一つです。

社会福祉士は,福祉事務所の社会福祉主事に任用することができるという意味です。

しかし,福祉事務所の中でも社会福祉士が任用できない聖域があります。

それが,GHQの肝いりで作られた生活保護の現業事務です。

社会福祉士がこの業務に就くためには,大学等で指定科目を履修していわゆる3科目主事を持っているか,社会福祉主事養成機関で学ばなければなりません。

ここまでは国試で出題されることはありませんが,社会福祉主事が補助機関になった時の流れを脈々と受け継いでいることにびっくりですね。

さて,今日の問題です。

第23回・問題44 社会福祉行政における任用資格に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 児童福祉司でなければ,児童福祉に関する相談・指導・助言を行うことを業としてはならない。

2 児童福祉司が職務を行う担当区域は,人口おおむね5千から8千を標準として,児童相談所長が定める。

3 都道府県は,その設置する福祉事務所に,身体障害者福祉司を置かなければならない。

4 市町村の身体障害者福祉司は,当該市町村の福祉事務所の長の命を受けて,身体障害者の福祉に関し,当該福祉事務所の所員に対して技術的指導を行う。

5 社会福祉士が知的障害者福祉司に任用されるためには,知的障害者の福祉に関する業務に2年以上従事した経験が必要とされている。


勉強しなければ,まったく分からない問題だと思います。

そして,勉強した人でも,すぐ答えはこれだと思えないかもしれません。

そういった面では,頻出のものが並んだ問題ですが,難易度は極めて難しいからです。

それでは解説です。


1 児童福祉司でなければ,児童福祉に関する相談・指導・助言を行うことを業としてはならない。

児童福祉司は,児童相談所に必置の専門職です。平成28年の児童福祉法が改正されて,虐待防止のために児童相談所の組織が変更になっています。

そろそろ出題されてくることでしょう。

それについては,別の機会に詳しく紹介したいと思います。

さて,問題に戻ります。

福祉に関するもので,業務独占の資格は存在していません。もちろんこんな規定はありません。間違いです。


2 児童福祉司が職務を行う担当区域は,人口おおむね5千から8千を標準として,児童相談所長が定める。

平成28年改正で,配置数の標準数が変更になっています。

現在は,人口4万に1人以上配置することです。よって間違いです。

新しく加わったことは,

全国平均より虐待対応の発生率が高い場合には,児童虐待相談対応件数に応じて配置数の上乗せを行うこととして政令に規定する。


3 都道府県は,その設置する福祉事務所に,身体障害者福祉司を置かなければならない。

身体障害者福祉司は,都道府県に必置の身体障害者更生相談所に置かれます。

よって間違いです。


4 市町村の身体障害者福祉司は,当該市町村の福祉事務所の長の命を受けて,身体障害者の福祉に関し,当該福祉事務所の所員に対して技術的指導を行う。

これが正解です。

しかしこれが難しいのは2つのポイントがあるからです。

一つ目のポイント 町村は福祉事務所の設置は任意とされている。
二つ目のポイント 福祉事務所の身体障害者福祉司の配置は任意。

必置の場合は,明確ですが,実際に配置されたときは,誰に指導を受けて何を業務にするかは,盲点です。

そういう面で,すぐに正解にできなったことでしょう。

しかし,ほかの選択肢をしっかり消去できれば,結果的にこれが答えとして残ります。


5 社会福祉士が知的障害者福祉司に任用されるためには,知的障害者の福祉に関する業務に2年以上従事した経験が必要とされている。

社会福祉士の場合は,児童福祉司,身体障害者福祉司,知的障害者福祉司ともに実務がなくても任用されます。

社会福祉主事の場合は,2年以上の実務経験を必要とします。

ここからも国は,社会福祉主事は保護事務のスペシャリストとして位置付けているということが分かるように思います。



2018年6月18日月曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~想像力を高めること

国試が終わったあとの感想としてよくあるのは

今年の出題傾向が変わったね

というものです。

しかし,国試は

少しずつ重なっていて,少しずつ違う

が基本です。

少しずつ違うの部分は毎年1~2割です。

逆に少しずつ重なっている部分は,8~9割です。

1~2割の部分が国試のくせ者です。

ここの部分に振り回されて,本来は解けるべき問題でも解けなくなります。


さて,今日のテーマは,「想像力を高めること」です。

どんなに勉強しても,1~2割は勉強したことがないものが出題されます。

知っているものを「ど忘れ」するのではなく,知らないものです。

そこの対応法が想像力です。

創造力は,確かな知識があることが前提となります。

しかし確かな知識があっても,勉強するときに意識しないと想像力は高まりません。


それでは,今日の問題です。

第28回・問題44 福祉事務所に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 都道府県の設置する福祉事務所は,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法に定める事務のうち,都道府県が処理することとされているものをつかさどる。

2 福祉事務所の所長は,その職務の遂行に支障がない場合においても,自ら現業事務の指導監督を行うことはできない。

3 現業を行う所員の定数は,被保護世帯数に応じて最低数が法に定められている。

4 町村が福祉事務所を設置した場合には,社会福祉主事を置くこととされている。

5 2003年(平成15年)4月現在と2014年(平成26年)4月現在を比べると,都道府県の設置する福祉事務所数は増えている。

福祉事務所は,社会福祉法に「福祉に関する事務所」として,規定されるものです。

福祉事務所は,頻出でありながら,この問題を初めて見た人は「ハッ」とさせられたことでしょう。

なぜなら,法制度だけではなく,動向を含めて出題されているからです。

それでは解説です。


1 都道府県の設置する福祉事務所は,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法に定める事務のうち,都道府県が処理することとされているものをつかさどる。

市町村の福祉事務所は,福祉六法をつかさどりますが,都道府県の福祉事務所は,権限移譲によって,生活保護法,児童福祉法,母子及び父子並びに寡婦福祉法の3法をつかさどっています。よって間違いです。

勉強していなくても,設問では生活保護が入っていないことで間違いだと想像できるでしょう。


2 福祉事務所の所長は,その職務の遂行に支障がない場合においても,自ら現業事務の指導監督を行うことはできない。

これは,過去に何度も出題された実績があるものですし,どの参考書にも必ず以下のように書いてあります。

査察指導員と現業員は社会福祉主事でなければならない。

福祉事務所の長は,その職務の遂行に支障がない場合,自ら現業事務の指導監督を行うことができる。

よって間違いです。


3 現業を行う所員の定数は,被保護世帯数に応じて最低数が法に定められている。

ここで,先日の覚え方が生きてきます。

<基準に従い>
文字通り,国の基準に従わなければならないものです。福祉施設の建築基準,職員の配置数などがこれに当たります。

<基準を標準として>
国の基準と異なっていても,合理的な場合は許されるものです。福祉施設の入所定員,通所施設の利用定員,福祉事務所の現業員(ケースワーカー)数,児童相談所の児童福祉司数などがこれに当たります。児童相談所の児童福祉司は,以前は,「基準を参酌して」でしたが,現在は拘束力が大きい「基準を標準として」に変更されています。

<基準を参酌して>
国の基準を参考にして,定めることができるものです。民生委員・児童委員の定数などがこれに当たります。そのほかには,「基準に従い」「基準を標準として」以外のすべてのものです。

ということで,現業員数は,最低数ではなく,「標準」ということになります。よって間違いです。

4 町村が福祉事務所を設置した場合には,社会福祉主事を置くこととされている。

これは正解ですが,これを間違いだと思った人がいたと思います。

なぜなら,町村は福祉事務所の設置は任意なので,社会福祉主事の配置も任意だと思ってしまう可能性があるからです。しかし,福祉事務所には社会福祉主事は必置ですから,当然任意で設置した福祉事務所であっても必置となります。


5 2003年(平成15年)4月現在と2014年(平成26年)4月現在を比べると,都道府県の設置する福祉事務所数は増えている。

これが最も難しいものだと思います。

もともと任意だったものが,必置になれば増加する可能性はあります。

しかし,都道府県は福祉事務所は必置です。増加する可能性は少ないです。

そこでピンと来た人もいるかもしれませんが,2000年代になって,いわゆる「平成の大合併」が行われました。それによって3,000以上あった市町村数が2,000を切りました。

都道府県が設置していた郡部が市に昇格した自治体があります。

そのため,都道府県の設置する福祉事務所は減少しています。よって間違いです。

平成の大合併を想像できることが,この問題をより正解できる決め手だったように思います。

2018年6月17日日曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~国試で最高のパフォーマンスを発揮する!

ある人が以前言っていたことです。

学習戦略は,合格をつかむベクトル

その人曰く,「努力すれば,必ず結果が出る。しかし,その努力は必ずしも最適なものとは限らない」とのことです。

ここから,「学習戦略は,合格をつかむベクトル」という考え方につながっていきます。

合格するために一定レベルの知識が求められているとします。

変数Yが合格基準点を超える一定レベルの知識
変数Xが勉強に費やす時間(つまり努力)
係数aが戦略
定数bが試験の難易度

これを数式に表すと

Y=aX+b

となります。

社会福祉士の国試は,特にY=X(努力によって国試の点数が決まる)ではありません。

a(戦略)が間違っていると,Yに到達するには,X(勉強時間)が大きくならなければなりません。

合格基準点を99,定数bを9とすると

a(戦略)
0.1の場合 → Xは900
1の場合 → Xは90
1.1の場合 → Xは81.8

aは傾きなので,aが大きくなれば,Yに到達するには努力は小さくて済みます。

aが小さいと,より多くの努力をしなれければ,Yに到達できません。

何度も受験されている人は,「合格基準点にあと数点足りなかった」ということが毎年続いているのではないでしょうか。合格基準点の上下によって,自分の得点も同じように上下している状態です。

それは,努力が成果につながっていないことを示します。

昨年と同じ勉強法をしていると,必ず同じ結果になります。

なぜなら,努力した分前回よりも知識がついているはずなのに得点が伸びていないことを繰り返しているからです。

戦略は何よりも大切です。

係数aが0.9よりも1.1の方が良いです。

ということで,今日の問題です。

第28回・問題43 不服申立て制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 国民健康保険の保険料に不服があるときは,国民健康保険団体連合会に審査請求することができる。

2 介護保険の要介護認定に不服があるときは,介護保険審査会に審査請求することができる。

3 生活保護の決定に不服があるときは,市町村長に審査請求することができる。

4 「障害者総合支援法」の介護給付費等の支給に不服があるときは,運営適正化委員会に審査請求することができる。

5 介護保険サービスの内容に不服があるときは,給付費等審査委員会に審査請求することができる。

不服申立てに関する出題は「福祉行財政と福祉計画」で出題されたのは,この時の一回だけですが,他科目では超頻出です。

旧カリ時代を含めてもほぼ毎回どこかの科目で出題されています。

つまり,覚える優先度はトップレベルだということになります。


今日の問題は,解ける人と解けない人がはっきり分かれることでしょう。

このような問題をしっかり押さえていくことが,合格するための戦略には欠かせません。

それでは解説します。


1 国民健康保険の保険料に不服があるときは,国民健康保険団体連合会に審査請求することができる。

国民健康保険団体連合会(国保連)は,利用者からの苦情を受けて,サービス事業者に対する必要な指導及び助言を行っています。

しかし国民健康保険の審査請求先ではありません。審査請求先は,都道府県に設置される国民健康保険審査会です。

よって間違いです。

国保連は,現行カリキュラムでは,超頻出です。第26回を除き,毎年出題されます。絶対に押さえておかなければなりません。


2 介護保険の要介護認定に不服があるときは,介護保険審査会に審査請求することができる。

これが正解です。介護保険の要介護認定の審査請求先は,都道府県に設置される介護保険審査会です。

3 生活保護の決定に不服があるときは,市町村長に審査請求することができる。

生活保護の審査請求先は,都道府県知事です。

生活保護法では,再審査請求の規定もあります。再審査請求先は厚生労働大臣です。


4 「障害者総合支援法」の介護給付費等の支給に不服があるときは,運営適正化委員会に審査請求することができる。

「障害者総合支援法」の介護給付費等の支給に関する審査請求先は,都道府県知事です。

都道府県知事は,都道府県に障害者介護給付等不服審査会が設置されている場合は,同審査会に審査を行わせることができますが,あくまでも審査請求先は,都道府県知事です。しっかり覚えていきましょう。


5 介護保険サービスの内容に不服があるときは,給付費等審査委員会に審査請求することができる。

給付費等審査委員会は国保連に設置され,保険者である市町村の委託を受けて介護給付費請求明細書等の審査を行っています。

介護保険サービスの内容に不服があるときは,国保連に苦情申立てができます。

審査請求は,行政の処分に対する不服申立て制度です。介護保険サービスは,行政の処分ではありません。


<今日の一言>

「現代社会と福祉」&「福祉行財政と福祉計画」をしっかり学ぼう!!

先述のように,不服申立てが「福祉行財政と福祉計画」で出題されたのはこの回のみです。

しかし,他科目では超頻出です。

この2つの科目は,他の科目に広げていくための入り口であると考える理由は,こんなところにあります。

特に,「福祉行財政と福祉計画」が取り扱っているのは,他分野でも多く取り扱われる法制度です。

他分野の総まとめであると考えるよりも,この科目でしっかり覚えたうえで,他分野に広げていった方が,確実な知識になりやすいです。ということは,国試全体の得点力を上げることにつながります。

この科目を苦手だと思わないで,しっかり学べば底力が必ずつきます!!

係数aを上げることに直結します。

少ない努力で最高のパフォーマンスを発揮するには,正しい学習戦略が欠かせません。

これからも私たちチームfukufuku21は,学習戦略を練るための情報を提供していきますので,ご参考にしていただけましたら幸いです。

2018年6月16日土曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~学習戦略の立て方

福祉行財政と福祉計画の特徴は,分野論ではないことです。

分野論ではない科目には「現代社会と福祉」もあります。

「福祉行財政と福祉計画」と「現代社会と福祉」の違いは,前者は,法制度に関するもの,後者は福祉政策に関するもの,という点です。

旧カリキュラムでは,この2つの科目は「社会福祉原論」という一つの科目でしたが,現行カリキュラムによって分離させたのです。

社会福祉原論は難易度の高い科目でした。それを2つに分けても難易度の高さは同様です。

福祉行財政と福祉に関して言えば,国試での出題のされ方は,出題ポイントが定まってきています。

しかし,受験する側にしてみれば,難易度が高い科目であることには変わりません。

今日取り上げる問題もそんな問題です。

第25回・問題42 福祉事務所及び社会福祉施設等の設備運営基準を定める地方公共団体の条例に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 福祉事務所において現業を行う所員の数については,各事務所につき,社会福祉法で定める数を標準として定めるものとされている。

2 児童福祉施設に配置する従業者及びその員数については,厚生労働省令で定める基準を標準として定めるものとされている。

3 養護老人ホームの入所定員については,厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとされている。

4 介護保険法の指定居宅サービス事業に係る居室・療養室及び病室の床面積については,厚生労働省令で定める基準を参酌して定めるものとされている。

5 障害者総合支援法の指定障害福祉サービス事業に係る利用定員については,厚生労働省令で定める基準を参酌して定めるものとされている。


勉強が足りない人にとっては,まったく答えが分からない問題です。

勉強した人でも,答えるのはとても難しいものだと思います。

この問題は,この科目の典型例だと言えるでしょう。

制度が違う内容のものを横並びにしているからです。

この手の問題の攻略法は,決まっています。

前回と同じように,共通事項を押さえて,例外事項を押さえることです。

戦略を立てなければ,正攻法では間違う確率が高くなります。

地方公共団体が条例を定める場合,3つのポイントがあります。

<基準に従い>
文字通り,国の基準に従わなければならないものです。福祉施設の建築基準,職員の配置数などがこれに当たります。

<基準を標準として>
国の基準と異なっていても,合理的な場合は許されるものです。福祉施設の入所定員,通所施設の利用定員,福祉事務所の現業員(ケースワーカー)数,児童相談所の児童福祉司数などがこれに当たります。

児童相談所の児童福祉司は,以前は,「基準を参酌して」でしたが,現在は拘束力が大きい「基準を標準として」に変更されています。


<基準を参酌して>
国の基準を参考にして,定めることができるものです。民生委員・児童委員の定数などがこれに当たります。そのほかには,「基準に従い」「基準を標準として」以外のすべてのものです。

もう一度整理してみましょう。

基準に従い → 建築基準や職員の配置数など

基準を標準として → 施設の入所定員,児童相談所の児童福祉司の配置数など

基準を参酌して → 民生委員・児童委員の定数など

さて,これを頭に入れて,解説です。


1 福祉事務所において現業を行う所員の数については,各事務所につき,社会福祉法で定める数を標準として定めるものとされている。

福祉事務所において現業を行う所員の数 → 「基準を標準として」

よって正解です。


2 児童福祉施設に配置する従業者及びその員数については,厚生労働省令で定める基準を標準として定めるものとされている。

福祉施設の職員配置数 → 「基準に従い」

よって間違いです。

3 養護老人ホームの入所定員については,厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとされている。

福祉施設の入所定員 → 「基準を標準として」


よって間違いです。


4 介護保険法の指定居宅サービス事業に係る居室・療養室及び病室の床面積については,厚生労働省令で定める基準を参酌して定めるものとされている。

福祉施設の建築基準 → 「基準に従い」

よって間違いです。


5 障害者総合支援法の指定障害福祉サービス事業に係る利用定員については,厚生労働省令で定める基準を参酌して定めるものとされている。

利用定員 → 「基準を標準として」

よって間違いです。


<今日の一言>

福祉行財政と福祉計画は,学習戦略を立てるための科目

今日の問題を見たときは,何を手がかりにして解けばよかったのか,さっぱり分からなかったのではないでしょうか。

しかし,先述の押さえるべきポイントが頭に入ったあとは,すらすら解けたのではないとょうか。

国試問題の多くは,このような問題です。

決してこれ以上深く突っ込んでは出題されません。

福祉行財政と福祉計画は,難易度の高い科目だと思います。

なぜなら,しっかりした知識が必要だからです。

あいまいな知識では,得点するには難しいです。

国試全体でもそうです。

国試に合格するには,深い知識が必要なのではなく,しっかりした知識が必要です。

この科目は難しいですが,覚え方の戦略を立てる上で,手がかりが多くあふれています。

制度一つひとつでは,見えないものが,制度間を並べてみると,その共通点,相違点が見えてくるからです。

そこに気がついて学習を進めていくと,分野論の科目でも必ず得点力が上がります。

人によっては,「この科目は,分野論の総まとめだ」と表現することもあります。

確かにそうとも言えます。しかし,分野論から入るよりも,各科目の要素がちりばめられている「現代社会と福祉」「福祉行財政と福祉計画」を先に押さえたほうが,確実な力をつけられると思います。

総まとめではなく,分野論の入り口となるからです。

総まとめだと思うと,知識があいまいになります。

この科目を手がかりにして,覚え方戦略を立ててみましょう。

制度間の共通点,相違点に着目することがコツです。

2018年6月15日金曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~都道府県と市町村の整理

国家試験は,問題に正確性がなければなりません。つまり,正解選択肢であれば,誰が見ても見ても正解,間違い選択肢であれば,誰が見ても間違いでなければなりません。

その点,法制度に関する問題は,法制度を出題するので,正確性を担保しやすいと言えます。

間違い選択肢を作る際に,最も多く使われる手法は・・・

市町村と都道府県を入れ替える

法制度は数多くあり,すべてを覚えるのは至難の業です。

そのため,戦略が必要です。

共通事項を押さえて,例外を覚える

これだけで,知らないものが出題されても,かなり対応可能です。


<共通事項>
市町村は,高度な判断を求められる事務は行わない。
市町村は,専門職の確保・育成に関する事務は行わない。
市町村は,医療に関する事務は行わない。
市町村は,福祉に関する給付を行う。


<例外事項>
高度な判断を求められるものであるが,介護保険の要介護認定,障害者の障害支援区分認定は,市町村の事務。
福祉関係八法改正(1990)で,高齢者と障害者の入所措置は,市町村に権限移譲されている。
市民後見人の研修は,市町村が行う。

共通部分の裏返しは,都道府県の役割だということになります。

それでは,今日の問題です。


第29回・問題44 社会福祉制度の利用に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 児童福祉法によれば,市町村は,児童養護施設への入所申請があった場合,入所の措置を採らなければならない。

2 子ども・子育て支援法によれば,認定子ども園を利用する場合,保護者は,市町村から支給認定を受けなければならない。

3 生活保護法によれば,保護の実施機関は,保護の開始の申請のあった日から七日以内に決定内容を申請者に通知しなければならない。

4 「障害者総合支援法」によれば,市町村は,介護給付費等を支給決定障害者等に代わって,指定障害福祉サービス事業者等に支払うことはできない。

5 介護保険法によれば,都道府県は,指定する介護老人福祉施設の行う介護福祉施設サービスの利用に対して,施設介護サービス費を支給しなければならない。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。


市町村と都道県の役割が整理されていればそんなに難しくはないですが,整理されていなければとてつもなく難しい問題だと思います。

国試はこういった問題が理想です。

正しく勉強した人は,必ず成果が出ます。

勉強していると,焦りや不安が出てきますが,ポイントを押さえれば,その壁は超えられます。

もう一度,前説を頭に入れて,問題を読みましょう。

<共通事項>
市町村は,高度な判断を求められる事務は行わない。
市町村は,専門職の確保・育成に関する事務は行わない。
市町村は,医療に関する事務は行わない。
市町村は,福祉に関する給付を行う。


<例外事項>
高度な判断を求められるものであるが,介護保険の要介護認定,障害者の障害支援区分認定は,市町村の事務。
福祉関係八法改正(1990)で,高齢者と障害者の入所措置は,市町村に権限移譲されている。
市民後見人の研修は,市町村が行う。


それでは,解説です。


1 児童福祉法によれば,市町村は,児童養護施設への入所申請があった場合,入所の措置を採らなければならない。

児童の入所措置は,市町村に権限移譲されませんでした。

理由は,児童が施設入所する場合,親から児童を引き離すことになります。

極めて高度な判断が求められます。そのため市町村には,権限移譲されていないのです。
よって間違いです。


2 子ども・子育て支援法によれば,認定子ども園を利用する場合,保護者は,市町村から支給認定を受けなければならない。

子ども・子育て支援法は,市町村が子ども・子育て支援の実施主体,国と都道府県は市町村を重層的に支えることを規定しています。

施設型給付(認定こども園,幼稚園,保育所を通じた共通の給付)

地域型保育給付(小規模保育等への給付)

これらは市町村が支給決定しています。よって正解です。


3 生活保護法によれば,保護の実施機関は,保護の開始の申請のあった日から七日以内に決定内容を申請者に通知しなければならない。

これは市町村,都道府県の役割から外れた問題です。共通事項,例外事項に当てはまりません。

しかし,資力調査を行い,決定するのに7日間は短すぎると感じませんか。

答えは,14日以内です。よって間違いです。


4 「障害者総合支援法」によれば,市町村は,介護給付費等を支給決定障害者等に代わって,指定障害福祉サービス事業者等に支払うことはできない。

障害福祉サービスは,社会福祉制度です。利用者が自己負担分を支払います。市町村はサービス事業者に介護給付費等を支払います。よって間違いです。

介護保険と違って,代理受領という考え方はありません。

5 介護保険法によれば,都道府県は,指定する介護老人福祉施設の行う介護福祉施設サービスの利用に対して,施設介護サービス費を支給しなければならない。

福祉に関する給付は市町村。もちろん介護保険の施設介護サービス費等の支給は市町村です。よって間違いです。


<今日の一言>

市町村と都道府県の役割は,法制度が出題される科目では超頻出です。
ぜひ,自分なりに共通事項,例外事項を見つけ出してください。

勉強には,戦略が必要です。
このことによって,得点力が何倍にも高まります。

多くの人が苦手としている歴史や人名。

しかし,本当に差が出るのは,こういった法制度です。


2018年6月14日木曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~地方公共団体の事務の整理

今回は,地方自治法による地方公共団体の事務を整理しましょう。

地方公共団体の事務は2つ

自治事務 
地方公共団体が行う事務全般。福祉・教育など。法定受託事務を除いたもの。

法定受託事務
医療法人,社会福祉法人の認可や生活保護法の保護事務など。

たった2種類です。

法定受託事務は2つに分かれます。

第一号法定受託事務 → 本来は国が行う事務。

第二号法定受託事務 → 本来は都道府県が行う事務。

以前は法定受託事務は,委任事務と呼ばれていました。

委任と受託の違いは,受託は,地方公共団体が主体,委任は国が主体です。
中央集権から地方分権に移行する流れの一つです。

参考書には,団体委任事務,機関委任事務がどのように今の形になったのか,という経緯が書かれていますが,そこに関しては出題されたことは今まで一度もありません。

覚えるべきなのは,現在は自治事務と法定受託事務の2つのみということになります。

ところで,生活保護法の目的には2つあります。

最低限度の生活保障と自立の助長です。

最低限度の生活保障は法定受託事務です。
自立の助長は自治事務です。

ここで分かるのは,全国一律の基準で実施されるのは,法定受託事務だということです。

介護保険の介護認定は全国一律です。しかし介護保険などの福祉は自治事務です。なぜそれにもかかわらず自治事務なのは,現在の総合事業でも分かるように,地方公共団体が自分たちで考えて,運用できる部分があるからです。障害者総合支援法も同様です。

それでは,今日の問題です。

第24回・問題42 法定受託事務に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 地方自治法において,法定受託事務は,自治事務,団体委任事務と並んで,地方公共団体が処理する事務の一つとされている。

2 地方自治法において,法定受託事務に関して市町村長が行った行政処分に不服のある者は,他の法律に特別の定めがある場合を除いて,都道府県知事に対して行政不服審査法による審査請求をすることができるとされている。

3 介護保険法に基づいて市町村が介護保険を行うことは,市町村の第一号法定受託事務である。

4 第二号法定受託事務に関して,市町村は条例を制定することができず,都道府県知事が必要な規則を定めることになっている。

5 必要な場合に国の各大臣が所定の手続きを経て代執行を行うことは,かつての機関委任事務と異なり,法定受託事務制度では認められないものとされている。

勉強しなければ,まったく分からない問題です。

このような問題が解けるか解けないか,がトータルすると大きな差になっていきます。

勉強が足りない人が解ける試験であってはなりません。

そういった意味では,この問題は理想的に思えます。

受験する人は大変だと思いますが,だからこそ価値のある資格になります。

それでは解説です。


1 地方自治法において,法定受託事務は,自治事務,団体委任事務と並んで,地方公共団体が処理する事務の一つとされている。

参考書のごちゃごちゃした説明で混乱していると引っ掛けられます。

地方公共団体の事務は,自治事務と法定受託事務の2つです。

よって間違いです。

機関委任事務,団体委任事務などは過去のものです。

シンプルに

地方公共団体の事務は,自治事務と法定受託事務の2つ

と覚えましょう。


2 地方自治法において,法定受託事務に関して市町村長が行った行政処分に不服のある者は,他の法律に特別の定めがある場合を除いて,都道府県知事に対して行政不服審査法による審査請求をすることができるとされている。

この問題はごちゃごちゃしたもので,難易度が高いですが,これが正解です。

意外とシンプルなところに正解が配置されています。


3 介護保険法に基づいて市町村が介護保険を行うことは,市町村の第一号法定受託事務である。

介護保険は,自治事務です。よって間違いです。


4 第二号法定受託事務に関して,市町村は条例を制定することができず,都道府県知事が必要な規則を定めることになっている。

第二号法定受託事務は,都道府県が本来行う事務を市町村が行うものです。主体は受託する地方公共団体にあります。

この基本をしっかり押さえましょう。

市町村も第二号法定受託事務に関して条例を定めます。


5 必要な場合に国の各大臣が所定の手続きを経て代執行を行うことは,かつての機関委任事務と異なり,法定受託事務制度では認められないものとされている。

「代執行が何かについて分からない」と思うと答えられないように思うかと思います。

かつての機関委任事務,そして法定受託事務について無理に並べているので,余計な言葉が加わっています。


代執行が行えないのではあれば,

必要な場合に国の各大臣が所定の手続きを経て代執行を行うことは,法定受託事務制度では認められないものとされている。

でよいはずです。

人は嘘をつくとき饒舌になる

というものですね。

もちろん間違いです。

さて,代執行とは・・・

義務者が行わなかったことを行政庁が代わりに行うことです。
近年では,沖縄の米軍基地問題で代執行が行われました。それて耳に残っていた人もいるのではないでしょうか。

この米軍基地問題は,知事による承認取り消しについて,国が代執行を行いました。

2018年6月13日水曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~利用方法の整理

2000年の社会福祉法によって,福祉の利用方法はそれまでの措置から契約制度へ転換するようになりました。

措置制度は,行政処分により,サービス利用するものです。

契約制度だけではなく,措置制度も残っています。

それでは今日の問題です。

第27回・問題45 措置制度などに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 措置制度では,措置権者とサービス利用者の間の委託契約に基づいてサービスが提供される。

2 措置制度では,措置権者からサービス利用者に対して支払われる措置費をサービス提供事業者が代理受領する。

3 措置制度が適用される福祉サービスの費用は,全額国の負担とされている。

4 利用契約方式をとる制度の下でも,やむを得ない事由がある場合には,措置制度が適用される。

5 生活保護法では,行政庁が保護の必要な者に対して職権で保護を行うという職権保護が原則である。

いかにも「福祉行財政と福祉計画」という感じの問題です。

しかし,決して難しくありません。

それでは解説です。


1 措置制度では,措置権者とサービス利用者の間の委託契約に基づいてサービスが提供される。

措置制度は,措置権者の行政処分によってサービス利用するものです。

措置権者は,サービス提供事業者に委託します。

委託されたサービス提供事業者は福祉サービスを提供します。

よって間違いです。


2 措置制度では,措置権者からサービス利用者に対して支払われる措置費をサービス提供事業者が代理受領する。

代理受領は,社会保険などに採用される方式です。サービス提供事業者は保険料分を保険者から受け取ります。

代理受領に対して,償還払いという方式もあります。

償還払いは・・・

利用者は利用料を全額支払い,その後保険料分を受け取ります。フランスの医療保険は,償還払い方式を採用しています。

後から戻ってくるといっても,先に利用料を全額支払わなければならないので,サービス利用が抑制されます。

さて,措置制度です。

措置権者は,サービス提供事業者に委託料を支払います。よって間違いです。


3 措置制度が適用される福祉サービスの費用は,全額国の負担とされている。

福祉は自治事務です。全額国の負担ではなく,地方公共団体も負担します。よって間違いです。


4 利用契約方式をとる制度の下でも,やむを得ない事由がある場合には,措置制度が適用される。

例えば,特別養護老人ホームは,老人福祉法の措置制度,介護保険の契約制度の両方があります。
よって正解です。


5 生活保護法では,行政庁が保護の必要な者に対して職権で保護を行うという職権保護が原則である。

現・生活保護法でも職権保護は残っていますが,原則は申請主義です。よって間違いです。
職権保護をとっていたのは,恤救規則,救護法,旧・生活保護法です。

<おまけ~保育所方式>

福祉サービスの利用方式には,もう一つ「保育所方式」と呼ばれるものがあります。

保育所方式は,利用者はサービス提供事業者と直接契約はせず,利用者は利用を希望する施設を選択したうえで,行政に申込みます。

契約は行政と行います。



2018年6月12日火曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~各分野の制度を整理する~応益負担と応能負担

「福祉行財政と福祉計画」は,分野論ではありません。

各分野の制度の横並び,いわゆる横断的に出題されるのが特徴です。

別な見方をすれば,各分野で学ぶことの「総まとめ」です。

ということは,この科目でしっかり覚えておくことは,各科目の底力をアップさせることになります。


さて,今日の問題は,前回に関連して,費用の支払い方式です。

第23回・問題42 社会保障各制度における利用者による費用の一部負担に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 健康保険法に基づき保険医療機関等から療養の給付を受ける者は,原則として定率の一部負担金を保険医療機関等に支払わなければならない。
2 児童福祉法に基づく保育の実施として保育所への入所が行われた場合は,所得にかかわらず一定額の費用徴収が行われる。
3 都道府県の措置により児童養護施設への入所が行われた場合の費用の一部負担額は,原則として家庭裁判所がこれを定める。
4 市町村の措置により養護老人ホームへの入所が行われた場合は,原則として応益負担原則に基づき,費用徴収が行われる。
5 介護保険における居宅介護サービス費の支給は,指定事業者が代理受領することにより,結果として応能負担原則に基づく利用者負担を実現している。

この問題を解くポイント

応能負担
 支払い能力によって,利用料を支払う方式。福祉サービスなどが応能負担を取っています。


応益負担
 サービスを受けた量に対して,利用料を支払う方式。医療保険,介護保険などが応益負担を取っています。

これを読んで「あれっ?」と思った人は,勉強が進んでいる証拠です。

社会保障制度審議会の1962年勧告では,社会保障制度を以下のように区分しました。

貧困階層に対する施策   → 生活保護制度
低所得階層に対する施策  → 社会福祉制度
一般所得階層に対する施策 → 社会保険制度

福祉サービスは,低所得者層に対する施策です。

社会保険制度は,一般所得階層に対する施策です。

社会保険制度は,支払い能力がある一般所得階層に対する施策であるため,応益負担が取られていると言えます。

応能負担,あるいは応益負担が出題されたときは,その制度は,社会福祉制度なのか,社会保険制度なのか,を考えましょう。

以前は,シンプルな覚え方ができませんでした。

なぜなら,障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)ができたとき,社会福祉制度にもかかわらず,応益負担を原則としたからです。

この部分が問題となり,法では応益負担を原則としながら,応能負担を取り入れました。応能負担が原則と法に明記されたのは,総合支援法成立時です。

しかし,社会福祉制度である障害福祉サービスに応益負担を取り入れることは,国にとって大きなチャレンジだったと思います。

応能負担は,ややもすると利用者にスティグマを与えます。応益負担は,それがありません。

本当の論点は,障害者が応益負担できるほどの所得がなかったことだったと思います。

そうであれば,応益負担できるほどの所得補償をする方法もあったはずです。

福祉サービス提供事業者には,応益負担であっても応能負担であっても同じ収入があります。それを考えると,障害者に対する所得補償をしても国等の負担は増加することはないはずです。

障害者にスティグマを与えずにサービス利用できる道を開いたのに,応能負担に戻ってしまったことはちょっと残念だと思ってしまいます。

そのことで,国試での覚えるポイントは,とてもシンプルになったのは確かです。

社会福祉制度は応能負担が原則。

社会保険制度は応益負担が原則。

それでは解説です。

1 健康保険法に基づき保険医療機関等から療養の給付を受ける者は,原則として定率の一部負担金を保険医療機関等に支払わなければならない。

これが正解です。「定率の一部負担金」とは,応益負担を示しています。

2 児童福祉法に基づく保育の実施として保育所への入所が行われた場合は,所得にかかわらず一定額の費用徴収が行われる。

保育所は,社会福祉制度です。
保育所はなじみ深いので間違いだと分かると思いますが,応能負担です。よって間違いです。

3 都道府県の措置により児童養護施設への入所が行われた場合の費用の一部負担額は,原則として家庭裁判所がこれを定める。

児童養護施設の費用負担は,都道府県が定めます。よって間違いです。家庭裁判所が出てきてびっくりしたことでしょう。成年後見制度における後見人への謝礼は,家庭裁判所が定めるのでそれに引っ掛けて出題されたものだと思います。

4 市町村の措置により養護老人ホームへの入所が行われた場合は,原則として応益負担原則に基づき,費用徴収が行われる。

高齢者分野は,老人福祉法と介護保険法の2つがあります。

老人福祉制度は社会福祉制度。

介護保険制度は社会保険制度。

措置によって利用するのは,社会福祉制度です。したがって,養護老人ホームの利用料は,応能負担です。

よって間違いです。


5 介護保険における居宅介護サービス費の支給は,指定事業者が代理受領することにより,結果として応能負担原則に基づく利用者負担を実現している。

介護保険制度は,社会保険制度は応益負担です。よって間違いです。


<今日の一言>

社会保障制度は,さまざまな制度で成り立っているので,複雑そうに見えます。

しかし,制度にはそれを成り立たせる原理があります。

それを整理できれば,かなり得点力が上がります。

効率よく勉強する人は,こういう部分を見つけるのが上手です。

共通するものを覚えて,それに当てはまらないものを見つけたら,それを重点的に覚えます。

2018年6月11日月曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法~各分野の制度を整理する

「福祉行財政と福祉計画は横断的」と表現されることが多い科目です。
その意味は,分野による縦割りの出題ではなく,各分野を並べた出題がされるからです。

そのため,各制度の性質などを押さえておくことが得点力を上げます。

それでは,今日の問題です。

第27回・問題43 保険料及び利用料に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 介護老人福祉施設のサービスのうち,食費,居住費その他日常生活に要する費用については,利用者の自己負担となっている。
2 介護保険の第2号被保険者の保険料は,年金保険者を通じて徴収されることになっている。
3 生活保護受給者のうち,65歳以上の者が介護保険の給付を受けたときの1割自己負担分は,生活扶助として支給される。
4 「障害者総合支援法」では,利用料の1割を利用者が負担する応益負担を原則としている。
5 保育料は,保護者の前年度の所得税額によって決定され,児童の年齢によって差が出ることはない。

パッと見て,知識なしでも,選択肢5は正解ではなさそうだと思えるのではないでしょうか。

その感覚は,覚えておいてください。

勉強を進めるうちに,こういったものでも引っ掛けられてしまうからです。

この問題で出題されている分野は

高齢者(2問)
低所得者
障害者
児童・家庭

の4つです。

問題としては,5つの領域ではなく,4つの領域になっていないところに不完全さを感じる問題です。

5つの選択肢があった場合,5つがばらばらになっているのが,完成度の高い問題です。

分野で言えば,地域福祉と更生保護がありますが,この問題にはそぐわないので,高齢者が2つになったと思います。

国試問題は,実はこんなところにほころびを生じることがあります。

もともと4つしかないものを出題しようと思ったら,1つを何かで埋めなければなりません。

足した一つだけ論調が違っていたりします。

この問題では,高齢者を2つにしているところに出題者の意図を感じます。

高齢者分野で仕事をしている人にとっては,ぜんぜん難しい問題ではないと思いますが,答えが分からず,お手上げ状態になりそうなときは,ぜひこんな角度から問題を眺めてみましょう。

このように2つ同じものが重なって出題して時は,どちらかに正解を隠していることが多いです。

さて,解説です。


1 介護老人福祉施設のサービスのうち,食費,居住費その他日常生活に要する費用については,利用者の自己負担となっている。

介護保険制度が始まった当時,いわゆるホテルコストは,施設サービスに含まれていました。そのため居宅では全額自己負担になるものが,施設入所すると保険料負担があるので1割負担で済みました。

そのアンバランスさを修正することで,現在は,ホテルコストは自己負担となっています。よって正解です。


2 介護保険の第2号被保険者の保険料は,年金保険者を通じて徴収されることになっている。

第2号被保険者は,医療保険の被保険者です。そのため,保険料は医療保険の保険者が徴収しています。


3 生活保護受給者のうち,65歳以上の者が介護保険の給付を受けたときの1割自己負担分は,生活扶助として支給される。

生活保護受給者は,介護保険の第2号被保険者ではないので,保険料の支払いはありません。

65歳以上になると,生活保護受給者も,第1号被保険者となります。そのため,保険料の支払いが生じます。その時は,生活扶助に介護保険料分を加算して支給します。よって間違いです。

介護保険サービスを受けたときの1割の自己負担分が介護扶助として支給されます。


4 「障害者総合支援法」では,利用料の1割を利用者が負担する応益負担を原則としている。

障害者総合支援法は,障害者自立支援法を改正したものです。

障害者自立支援法では,応益負担を原則としていました。しかし,介護保険と違って応益負担には無理がありました。

なぜなら,障害者の中には,老齢基礎年金だけで生活している人も多くいます。障害等級1級でも年額100万円はありません。そこで途中から応能負担を導入し,総合支援法で応能負担を原則としたのです。

よって間違いです。


5 保育料は,保護者の前年度の所得税額によって決定され,児童の年齢によって差が出ることはない。

これは,制度を知らなくてもすぐ×をつけられるでしょう。

差が出ることはない,というところから「差が出ることがある」ということが想像できるからです。もちろんその通りです。

よって間違いです。

2018年6月10日日曜日

福祉行財政と福祉計画の攻略法

今回から,「福祉行財政と福祉計画」を取り上げていきたいと思います。

この科目は,現行カリキュラムになる前は,「社会福祉原論」という科目の一部を成していました。

ここから分かるように,この科目は,児童,障害,高齢者といった「分野論」ではありません。

覚える内容自体は,この科目が他に比べて難しいということはありません。

なぜなら,旧カリキュラム時代からも出題されてきた内容とは言え,本格的に出題されるようになったのは,現行カリキュラムからなので,覚えるポイントがそれほどの広がりを見せていないからです。

しかし,試験問題になると,格段に難しくなります。

そのためには,覚える戦略が必要とします。そこはおいおい伝えていきたいと思います。


それでは,今日の問題です。

第27回・問題42 地方財政関係資料(平成24年2月発行(総務省))などに基づく2010年度(平成22年度)の地方財政に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 租税総額に占める国税と地方税の割合は,地方税の方が大きい。
2 地方交付税・国庫支出金等を除いた国の歳出は,地方の歳出より多い。
3 地方交付税総額の一部に酒税とたばこ税が充てられている。
4 公債費の支出額は,国より地方の方が多い。
5 地方歳入の決算の内訳をみると,地方税が半分以上を占めている。

実は,この問題は,出題時点では成立していましたが,今は正解なしとなっています。

この問題の難易度は高いと思います。しかし,勉強をしっかりした人なら,何とか得点できたのかもしれません。

というのは,国試の特徴である

少しずつ重なっていて,少しずつ違う

を踏襲しているからです。しかも,多くの人が手にする過去3年間の出題と重なっているからです。

少しずつ重なっている問題は,これです。

第24回・問題45 福祉行財政の動向に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 平成21年度の国・地方を通じた目的別歳出額構成比を見ると,公債費が最も大きな割合を占めており,次いで社会保障関係費,国土保全及び開発費,機関費の順となっている。
2 平成19年度の社会保障給付費の財源については,約6割が税で,約4割が社会保険料で賄われている。
3 平成21年度の租税収入総額に占める国税と地方税の割合を見ると,地方税の占める割合の方が高い。
4 地方交付税の財源としては,所得税,法人税,固定資産税のそれぞれにつき一定割合を乗じて算出した額が充てられることになっている。
5 「地方財政白書」(平成23年版)によれば,平成21年度において,国内総支出に占める中央政府と地方政府の都合は,地方政府が中央政府の約2.6倍となっている。

重なっているところを確認しましょう。


第27回 租税総額に占める国税と地方税の割合は,地方税の方が大きい。
 ↓   ↓
第24回 平成21年度の租税収入総額に占める国税と地方税の割合を見ると,地方税の占める割合の方が高い。


第27回 地方交付税・国庫支出金等を除いた国の歳出は,地方の歳出より多い。
 ↓   ↓
第24回 「地方財政白書」(平成23年版)によれば,平成21年度において,国内総支出に占める中央政府と地方政府の都合は,地方政府が中央政府の約2.6倍となっている。


第27回 地方交付税総額の一部に酒税とたばこ税が充てられている。
 ↓   ↓
第24回 地方交付税の財源としては,所得税,法人税,固定資産税のそれぞれにつき一定割合を乗じて算出した額が充てられることになっている。


第27回 公債費の支出額は,国より地方の方が多い。
 ↓   ↓
第24回 平成21年度の国・地方を通じた目的別歳出額構成比を見ると,公債費が最も大きな割合を占めており,次いで社会保障関係費,国土保全及び開発費,機関費の順となっている。(ちょっとだけかすっている程度)

第27回 地方歳入の決算の内訳をみると,地方税が半分以上を占めている。
 ↓   ↓
第24回 重なる部分なし。


5つの選択肢のうち,3つが完全に対応しています。

この科目は,苦手としている人が多いため,第24回国試では特に0点になってしまった受験生が多かったと言われています。

勉強が足りない人が点数が取れないのは,致し方ないと思います。

しかし,合格基準点に達していたにもかかわらず,0点科目になるのは,その科目だけが難易度が高いことを意味します。

大学生にとっては,不合格になると内定取り消しになることもあるので,大変な問題となってしまいます。

そこで,特にこの科目には,0点にならないように,第26回くらいから勉強した人だけが解ける仕掛けをしているように感じます。

その一つがこの問題です。

それでは解説です。

第27回 租税総額に占める国税と地方税の割合は,地方税の方が大きい。
第24回 平成21年度の租税収入総額に占める国税と地方税の割合を見ると,地方税の占める割合の方が高い。

国税と地方税の割合は6:4

国税の方が大きいということになります。

よって,第27回も第24回も間違いです。

第27回 地方交付税・国庫支出金等を除いた国の歳出は,地方の歳出より多い。
第24回 「地方財政白書」(平成23年版)によれば,平成21年度において,国内総支出に占める中央政府と地方政府の都合は,地方政府が中央政府の約2.6倍となっている。

歳入は,国の方が大きかったですね。

支出を見ると,今度は国よりも地方の方が大きくなっています。

その比率は,第24回に出題されているように,地方が国の2倍以上です。

よって,第27回は間違い,第24回は正解です。


第27回 地方交付税総額の一部に酒税とたばこ税が充てられている。
第24回 地方交付税の財源としては,所得税,法人税,固定資産税のそれぞれにつき一定割合を乗じて算出した額が充てられることになっている。

第27回のこの選択肢が今は変わっているので,正解なしとなります。

地方交付税は,地方の財政などに合わせて,国税5税に一定割合を乗じて支出するものです。

出題時点での国税5税には,法人税,所得税,酒税,消費税,たばこ税でした。
なので,第27回は,この時点では正解です。今は,たばこ税が地方法人税に変わっています。

第24回は,固定資産税が入っているので間違いです。
なお,固定資産税は,国税ではなく,地方税です。

現在の地方交付税の財源となる国税5税は,

法人税,所得税,酒税,消費税,地方法人税

の5つです。

しっかり覚えましょう。

第24回をしっかり押さえていた人は,第27回国試で正解できたことでしょう。


第27回 公債費の支出額は,国より地方の方が多い。
第24回 平成21年度の国・地方を通じた目的別歳出額構成比を見ると,公債費が最も大きな割合を占めており,次いで社会保障関係費,国土保全及び開発費,機関費の順となっている。

公債費は交際費ではありません。簡単にいうと,国及び地方公共団体の借金です。

国の公債費の方が大きいということになります。第27回は間違いです。地方の借金が大きいと危険な状態だと言えます。

第24回は,最も大きいのは社会保障関係費です。こちらも間違いです。


第27回 地方歳入の決算の内訳をみると,地方税が半分以上を占めている。
第24回 重なる部分なし。

地方の歳入は,地方税が3割,地方交付税が約2割,国庫支出金が約2割です。

よって間違いです。

地方税が最も多いですが,半分以上はありません。よって間違いです。

<今日の一言>

地方税は,地方公共団体が集めて,自由に使い道を決めることができる一般財源です。

地方交付税は,国が集めた国税5税の一部を地方公共団体の財政に合わせて交付するものです。地方交付税も自由に使い道を決めることができる一般財源です。

国庫支出金は,国から地方に使途を決めて交付する特定財源です。

日本は,明治政府以来,国が方向性を決める中央集権国家として,近代化を図ってきました。

国が集めたお金を地方に交付します。

しかし,今は地方分権の時代です。そのため,財源を地方に移す「三位一体改革」が実施されました。

それでも,まだ地方税が3割程度です。

日本は,今地域共生社会の実現を目指しています。

地域共生社会では,地域が自分たちで考えて,自分たちで作り上げる社会です。そこには中央集権的な発想はありません。

住んでいる地域によって,提供されるサービスは異なって来ます。それに必要な財源も自分たちで集めなければなりません。

そのため,地方税はおそらくこれから伸びてくると思いますが,まだ今は3割程度です。

なお,第24回
平成19年度の社会保障給付費の財源については,約6割が税で,約4割が社会保険料で賄われている。

これは,超頻出問題です。しっかり押さえなけれはなりません。

日本の社会保障制度は,

社会保険制度
社会福祉制度
生活保護制度

で成り立っています。

日本の社会保険制度は,税も使われていますが,社会保険料が中心です。

社会福祉制度と生活保護制度は,税財源で運営されます。

そのうち社会保険制度は,大多数を対象としています。

そのため,税(公費)と社会保険料を比べると社会保険料の方が多くなります。

2018年6月9日土曜日

社会福祉士の国家試験に合格できない間違った勉強法

社会福祉士の国家試験は・・・

現在は150問です。

第1回と第2回の国家試験は公開されていないので分かりませんが,第3~5回はなんと170問も出題されていたのです。

精神保健福祉士は現在163問ですが,それよりも問題数が多かった時代がありました。

第6回からは,150問となり,第30回に至るまで同じ問題数となっています。

倒産したT社

初期の頃の国家試験の参考書は,

C社「ワークブック」

T社「必携」

この2つしかなかった時代でした。

C社はどのように初期の参考書を作ったのかは知りません。

T社は,実際に受験した人に情報を聞いて,問題を再現したそうです。

問題が非公開だった時代に受験された方は本当に大変だったと思います。

その後,多くの出版社が参考書に参入してきました。

T社は,老舗だったにもかかわらず,後発組に負けて,数年前にとうとう倒産してしまいました。

「必携」がなぜ最後の方は売れなくなったのかは,今はよく分かります。

初期の問題は,問題数が多かったこともあり,一つひとつの問題がとてもシンプルでした。

A=B

つまり,リッチモンド=『ソーシャル・ケース・ワークとは何か』といった単純な覚え方でも十分得点できたのです。

その時代に作った「必携」は,その後出題の仕方が変わったのにもかかわらず,初期のスタイルを基本的に変えなかったことが,売れなくなった理由だと考えられます。


ずばり,国試の変化に対応できなかったことが,倒産してしまった理由だと考えられます。


「球筋がキラキラ光って見えた」川上哲治

初期の問題であったとしても,今出題しても良い問題もあります。

しかし,この本の訳者はだれか,といった問題もあり,今見ると,出題意図がはっきり見えないものもありました。

いつ変化したのかは明確ではありませんが,今の国試問題は,出題意図が何となく見えるものが増えてきたように思います。

それが

「正解選択肢はキラキラして見える」と先日表現したものです。

「打撃の神様」と言われた故・川上哲治さんは,当時の日本のプロ野球の打率のトップだった.377を記録した年に,

「球筋がキラキラ光って見えた。バットはそこに向かって振るだけです」と語りました。

後年,彼は「球筋が光って見えたのは,その年だけだった」といったことを語っています。

それはさておき,彼が打撃の神様になったのは,他人の練習時間も奪ってしまうほど,練習に練習を重ねたことに他なりません。

もともとセンスはあったと思いますが,それを開花させたのは,徹底した練習だと考えられます。

川上さんは,日本版,元祖「二刀流」の人です。


社会福祉士の国家試験に合格できない間違った勉強法

さて,今日のテーマです。

T社は,国家試験という敵の変化に対応できませんでした。

もっと今の国試に精通した人が執筆メンバーにいればよかったのだと思います。

「国試」という目標を制覇するための戦略に欠けたと言えます。

「必携」が良かった理由は,

項目が分かりやすかったことです。

例えば

必携
 かつて存在したT社が出版した社会福祉士国試の参考書。

といった感じです。

それに比べると,C社「ワークブック」は項目が独立していないので,読んでみないと何を指した内容か分からないといった感じです。しかし国試に必要な内容が書かれています。

この二つをうまく組み合わせることで,学習効果は上がったと言えます。
しかし,今は2つを組み合わせた勉強ができません。そこが残念でなりません。


まず「必携」の失敗談から学ぶことは,2つあります。

1 かつては良かったけれど,今が良いかは分からない。
2 国試に精通した人ではない人は,時代の変化に対応できない。

国試に失敗する人とは・・・

・全体像を押さえられない人。
・敵を知る努力をしない人。

の2つに集約できます。

すべての戦いは,情報収集力と分析能力が勝負を分けます。


一方,故・川上哲治さんのエピソードは「球筋がキラキラ光って見えた」が印象的です。

ここから学ぶべき点も2つあります。

・人の練習時間も奪ってしまうほどの練習量。
・自分の内部に潜む弱音心を克服した。

豊富な練習に裏付けられた自信が「球筋がキラキラ光った見えた」という今なら「神った」と状況を作り出したのではないでしょうか。


国試に失敗する人の共通点

・自分で限界を作っている。
・敵を知る努力をしない。

といったものが見えてきます。

ぜひ「正解選択肢がキラキラ光って見えた」という経験をしてみてください。

努力次第で,必ずそうなります。

ヒントは,今後もたくさん提供していきますが,最後は自分でつかみ取ることが大切です。
弱音心からは何も生まれません。

そして,敵(国試)を知らない人は,間違った覚え方をしてしまいます。


敵を知らない人の覚え方

ネットの個人ブロクは今はほとんど見たことはありませんが,かつてずっと見守っていたブロクがありました(今は合格して閉鎖)。

その人は,ある時,社会保障関係費の内訳を一つひとつ覚えようとしていました。

年金医療介護保険給付費(旧:社会保険費)〇%
生活保護費〇%
社会福祉費〇%
保健衛生対策費〇%
雇用労災対策費(旧・失業対策費)〇%

といった具合です。

覚えるのは,とても大変だと思います。そのために,語呂合わせを作って覚えていました。

しかし,国試で社会保障関係費で出題されるのは,

一般会計歳出に占める社会保障関係費の割合は30%。
社会保障関係費の70%以上が,年金医療介護保険給付費。

この2つだけです。

年金医療介護保険給付費が70%を超えているわけですから,ほかのものが20%,あるいは30%というものはないと想像できます。

例えば,

近年の生活保護受給者の高まりから,社会保障関係費に占める生活保護費の割合は3割を占めている。

といった出題がされても,生活保護費の割合が分からなくても,3割は占めることはない,と想像できるでしょう。もちろん間違いです。10%程度のところに

こんなことをそのブログにコメントした記憶があります。

敵を知らないことは・・・

努力しても,覚えるポイントがずれる

こんなことがあることを実感しました。

因みに30%という数字は,不思議に福祉に縁があり,

厚生労働省の予算も国家予算の約30%,予算額も約30兆円です。

今改めて,ネットで社会保障関係費を調べると,国の資料に

平成 29 年度予算における社会保障関係費は 32 兆 4,735 億円であり、一般会計歳出(97
兆 4,547 億円)の 33.3%を占める。前年度当初予算比で 4,997 億円(+1.6%)の増額となり、3年連続で 30 兆円を超え過去最大となった。社会保障関係費の内訳は、年金給付費 11 兆 4,831 億円(前年度比+1.5%)、医療給付費11 兆 5,010 億円(前年度比+2.0%)、介護給付費3兆 130 億円(前年度比+2.8%)、少子化対策費2兆 1,149 億円(前年度比+4.5%)、生活扶助等社会福祉費4兆 205 億円(前年度比+0.3%)、保健衛生対策費 3,042 億円(前年度比+6.2%)、雇用労災対策費 368 億円(前年度比▲73.0%)となっている。

平成 29 年度(2017 年度)社会保障関係予算― 医療・介護制度改革と一億総活躍社会に向けた施策 ―
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2017pdf/20170201079.pdf

と書かれているので,ここ数年のうちに内訳の表記が変わったのかもしれません。

こうなると,なおのこと,細かいことを覚えても意味がなくなるでしょう。

大局を押さえておけば,長く使える知識になります。
細かい部分にこだわると,それはすぐに陳腐な知識となり,すぐ使えなくなります。








2018年6月8日金曜日

迷い道に誘う「受験生あるある」

参考書の発行が早まってきている理由

社会福祉士の受験参考書の発行は年々早まってきていることをご存知でしょうか。

20年ほど前に比べると確実に2か月以上早くなっています。

過去問題集に至っては,半年も早くなっています。

もちろん,他社よりは早く出版したいという出版社の思惑もあるでしょう。

それよりも,早くなった大きなファクターは,最新の法改正はほとんど出題されないことがあるように思います。


国試問題をよく知らない先生は,


6月までの法改正は出ます。

とおっしゃる方もいます。

確かにそういう時代もあったかもしれません。

しかし,実際に,6月の国会で成立したものが次の年の国試に出題されたものは,近年では,平成28年の改正発達障害者支援法が第29回国試に出題されたのみです。

この時に出題されたのは,発達障害者の定義が変わったところです。
つまり,法の中心となる部分です。


150問中のわずか1問です。

このように書くと,その1問が合否を分けるかもしれないので重要だ,と思われる方もいるかもしれません。

確かに確率的には,そういうこともあるかもしれません。

しかし実際には,合否を分けているのは,本来は知っておかなければならないことがあいまいになってしまい,引っ掛けられていることです。



<古い参考書は使えない?>

試験対策の先生の話をもう一つします。


最新の数字を覚えましょう。

新しい参考書を購入してください。

というアドバイスがあります。

これを真に受けて,受験する年になってようやく,新しい参考書を入手し,そこから勉強を始めようとします。

しかし,社会福祉士の国試の特徴は・・・

・最新の法制度はほとんど出題されない。
・細かい数字は問われない。

ということがあります。ごくまれに,

国民医療費が40兆円を超えた

といったぎりぎりラインを問うこともあります。あとからこの手の問題を見ると,やっぱり最新の数字を覚えなければならない,と思うかもしれません。

しかし,丁寧に他の選択肢を読んでいけば,勉強した人は,他の選択肢は消去することでかできて,正解にたどりつくことができます。

国試は,勉強した人が解けて,勉強が足りない人は解けないものでなければなりません。

勉強した人も解けない。

勉強しなくても解ける。

これらばかりの問題だとしたら,勉強した人と勉強が足りない人の差がほとんど生まれなくなってしまいます。

年度によって,1位になるものと2位になるものが入れ替わるものは,正解選択肢としては出題されません。

というか,間違い選択肢としても出題されないでしょう。なぜならそれは本筋ではないからです。


<受験生あるある>


参考書によって,示されている年度が違う。どれを覚えたらよいか。

〇〇年度の数字は覚えたけれど,ほかの年度が出題されたら答えられない。


社会福祉士の国試に出題されるデータは,数字が大きいので,割合の変化はそうそう変わるわけではありません。

押さえなければならないのは,

最新の数字ではなく,傾向です。

5割を超えているのか,超えていないのか,といったことです。

私たちチームfukufuku21のメンバーは,参考書で基礎力をつけてから,過去問や模擬試験で実力をつけるというのが一番の方法だと考えていた時もあります。

これは正統派の勉強法だと思います。

しかし,最近は,それがベストでもないように思えてきています。

なぜなら,先述のような受験生あるあるが発生しているからです。

最少の努力で,最大の効果を得られる勉強法を考えたとき,まずは国試ではどのように出題されているのかを知る,という方法もありだと考えるようになってきました。

そうすれば,どの数字を覚えたらよいのか,といった疑問は生まれないからです。

覚えるのはどちらの数字でもなく傾向です。

法制度は,成立して数年経ってから出題されることが多いです。

裁判員制度が導入されたのは,平成21年5月です。

国試で出題されたのは,平成30年2月の第30回です。


<今日のまとめ>

最新の法改正はほとんど出題されない。

細かい数字は出題されない。

旧カリ時代は,1科目の問題数は,社会福祉援助が30問,それ以外の科目は10問ずつでした。

1科目の出題数が多かったことで,さまざまな出題ができたのだと思います。

しかし,今は,相談援助の理論と方法は別にして,多くの科目は7問です。

3問減ったということは,出題する問題に大きな変化をもたらしています。

国試には,本当に覚えてほしいものを中心として出題されるので,最新の法制度を出題する余裕はなくなっているのです。

参考書は,昨年版のものでも十分使えます。

国試を長期の視点で見ると,最新の数字はあっと言う間に使えない知識となります。

それより重要なものは,

どのようにして地域は成り立ったのか。
日本人としての「知」はどこにあるのか。

といった地域共生社会のベースになるもの

法制度はどのようにどのように作られてきたのか。
法制度はどのような思想によって成り立っているのか。

といった法制度全体のストラクチャー(構造)

これらを意識して勉強すると必ず知識はつながっていきます。

※今日の問題はお休みします。

2018年6月7日木曜日

社会福祉士国家試験に合格するための6月の勉強法

第31回社会福祉士国家試験の日程は

平成31年2月3日(日)

つまりあと8か月です。

6月7日時点で,第31回の国家試験に向けて勉強している人はまだ少ないことでしょう。

3か月で合格できる

ということを本気で信じている人が多いからです。

中には,実際にその期間の勉強で合格する人もいます。

しかし,それは本当に一部の人です。

第30回の国家試験では,久々に合格率が30%まで回復しましたが,70%の人は不合格になっている事実を忘れてはなりません。

10月から勉強して合格した

この言葉を信じている人は,そう思っていればよいと思います。

合格できない70%に入ってもらいましょう。

みんなが危機感を持って勉強したら,合格基準点が上がってしまう恐れがあります。

問題の難易度が上がってもその頑張りのせいで,得点できるようになったら,とても厳しい試験となってしまいます。

国家試験の文字数が年々短くなっていることは,問題文に引っ掛けポイントが少なくなることを意味します。

以前は,勉強しても点数が取れにくい問題であったことに対して,今は勉強したら得点できる問題を出題するようになってきています。

逆に言うと,問題文が短くなっていることは,日本語的に破たんしているような問題は少なくなっているので,勘の良さでは,得点できる時代ではなくなっています。


数年前までは,口の悪い人は

国語の問題だ

と言った人もいます。

しかし今はそうではありません。

わずか4~5年前であっても大きく国試は大きく変化しています。


結論です。

第31回国試に合格するために6月にすべき勉強とは・・・


この時期にいかに基礎力をつけることができるか。

これにかかっています。

3か月で合格できるという都市伝説を信じている人は,まだ勉強を本格化させていないはずです。

この間に差をつけたいものです。

今日も社会福祉法の問題を続けます。

第30回・問題35 社会福祉法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村は,地域福祉計画の策定において,福祉サービス利用者の意見聴取をしなければならない。

2 地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は,相互に協力して地域福祉の推進に努めなければならない。

3 市町村社会福祉協議会は,地域福祉コーディネーターを配置しなければならない。

4 市町村社会福祉協議会は,社会福祉を目的とする事業を経営する者又は更生保護事業を経営する者の3分の2以上が参加していなければならない。

5 共同募金会は,共同募金を行うには,市町村社会福祉協議会の意見を聴き,配分委員会の承認を得て,共同募金の目標額を公告しなければならない。



昨日の問題と重ねてみましょう。

第26回・問題36 社会福祉法における地域福祉に関係する規定についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。

2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。

3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。

4 市町村社会福祉協議会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。

5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。


第30回選択肢1 → 第26回選択肢3
第30回選択肢2 → 対応なし
第30回選択肢3 → 第26回選択肢2
第30回選択肢4 → 対応なし
第30回選択肢4 → 対応なし


第26回国試と重なっている部分は2つだけです。

選択肢2

福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。

が正解です。

この選択肢のポイントは,運営適正化委員会はどこに設置されているか,です。

第26回国試には出題されていませんが,社会福祉士の国試の基本である第22回には,


社会福祉法に規定する運営適正化委員会は都道府県社会福祉協議会に設置され,福祉サービス利用援助事業の適正な運営の確保とともに,福祉サービスの利用者からの苦情に適切に対応するために設けられている。


という同じ趣旨の出題があり,正解となっています。

ほかの選択肢も簡単に解説します。

1は,第26回で分かるように「福祉サービス利用者の意見聴取をしなければならない」という規定はされていないので間違いです。

2は正解。

3は,地域福祉コーディネーターは,地域の実情に合わせて弾力的に配置されます。市町村社協にも配置されていますが,配置義務はありません。よって間違いです。

4は,前々回の問題にあったように,3分の2ではなく「過半数」です。よって間違いです。

5は,募集期間は厚生労働大臣が定めます。よって間違いです。


<今日の一言>

3か月の勉強で合格できる,という都市伝説とともに


3年間の過去問題を解けば合格できる


という都市伝説があります。


今日の問題で分かるように,正解選択肢と同じ問題は第22回までさかのぼらなければなりません。

しかも社会福祉法がまるごと1問出題されたのは,第22回,第26回,第30回の3回のみです。

前回出題されたのは,4年前です。

3年間の過去問だけでは合格できないようにしていることが分かると思います。

重要なのは,過去3年間にも出題されていますが,その範囲だけでは,知識が少なすぎです。

7問出題の科目なら,たった21問しかありません。

現行カリキュラムは第22~30回の9回行われています。

この範囲の過去問の知識があれば,合格するためには十分ですが,過去3年間ではどうにもならないと思えるでしょう。

2018年6月6日水曜日

国家試験に合格する勉強法~社会福祉法の整理~その2

社会福祉士の国家試験では,10問出題される科目は,「現代社会と福祉」「地域福祉の理論と方法」「高齢者に対する支援と介護保険制度」の3科目です。

7問出題される科目に比べるといずれも出題範囲が広いのが特徴です。

地域福祉の理論と方法も出題範囲は広いですが,現代社会と福祉と比べると,しっかり基本を押さえることで対処可能です。

頑張りましょう。

今日も社会福祉法を続けたいと思います。

第26回・問題36 社会福祉法における地域福祉に関係する規定についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。
2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。
3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。
4 市町村社会福祉協議会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。
5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。

「地域福祉の理論と方法」で,社会福祉法が1問まるごと出題されたのは,今日の問題も含めて,第22回,第26回,第30回の3回です。

2年連続出題されることが少ない傾向を考えると第31回は出題されることも本来は少ないかもしれません。
しかし,社会福祉法は,社会福祉の基本法なので,押さえておかなければなりません。

それでは,解説です。


1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。

社会福祉事業法から,2000年に社会福祉法に改正された際,地域福祉の推進主体として,「地域住民」が明記されました。

地域住民が主体的に地域の福祉問題の解決を図る「住民主体の原則」は,全国社会福祉協議会による「社会福祉協議会基本要項」(1962)で打ち出されて以来,社会福祉法で,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」とともに地域福祉の推進主体として明記されたのです。

よって間違いです。


2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。

運営適正化委員会は,都道府県県社協に設置され,苦情に対してのあっせんなどの業務を行っています。よって正解です。
運営適正化委員会は,ほかの科目でも超頻出ワードです。最優先して覚えたいです。


3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。

市町村地域福祉計画は要援護者支援方策を盛り込むことになっています。

しかし,意見聴取をしなければならないとは規定されていません。

市町村地域福祉計画を策定・変更する場合,あらかじめ地域住民等の意見を反映させるよう努めると規定されているのみです。よって間違いです。


市町村地域福祉計画に盛り込むべき事項には法改正によって,以下が追加されています。

・地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項
・包括的な支援体制の整備に関する事項

4 市町村社会福祉協議会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。

〇〇は●●であるが,〇〇は●●ではない

この出題方法は,まず正解はありません。

「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」も市町村社協の業務です。

よって間違いです。


都道府県社協の主な業務も押さえておきましょう。

・社会福祉を目的とする事業に従事する者の養成及び研修
・社会福祉を目的とする事業の経営に関する指導及び助言

経営に関する指導・助言があるのが,都道府県社協の特徴です。


5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。

共同募金は,第一種社会福祉事業でしたね。募集期間は厚生労働大臣が定めます。


<今日の一言>

勉強している人が得点でき,勉強が足りない人は得点できない,という国試問題が理想です。

正解選択肢は,最も重要なメッセージが込められています。

正解選択肢は,キラキラ見える

という理由はそこにあります。

勉強をしっかりした人は,そう思えるようになるはずです。

あと8か月間,頑張りましょう!!

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