2018年6月8日金曜日

迷い道に誘う「受験生あるある」

参考書の発行が早まってきている理由

社会福祉士の受験参考書の発行は年々早まってきていることをご存知でしょうか。

20年ほど前に比べると確実に2か月以上早くなっています。

過去問題集に至っては,半年も早くなっています。

もちろん,他社よりは早く出版したいという出版社の思惑もあるでしょう。

それよりも,早くなった大きなファクターは,最新の法改正はほとんど出題されないことがあるように思います。


国試問題をよく知らない先生は,


6月までの法改正は出ます。

とおっしゃる方もいます。

確かにそういう時代もあったかもしれません。

しかし,実際に,6月の国会で成立したものが次の年の国試に出題されたものは,近年では,平成28年の改正発達障害者支援法が第29回国試に出題されたのみです。

この時に出題されたのは,発達障害者の定義が変わったところです。
つまり,法の中心となる部分です。


150問中のわずか1問です。

このように書くと,その1問が合否を分けるかもしれないので重要だ,と思われる方もいるかもしれません。

確かに確率的には,そういうこともあるかもしれません。

しかし実際には,合否を分けているのは,本来は知っておかなければならないことがあいまいになってしまい,引っ掛けられていることです。



<古い参考書は使えない?>

試験対策の先生の話をもう一つします。


最新の数字を覚えましょう。

新しい参考書を購入してください。

というアドバイスがあります。

これを真に受けて,受験する年になってようやく,新しい参考書を入手し,そこから勉強を始めようとします。

しかし,社会福祉士の国試の特徴は・・・

・最新の法制度はほとんど出題されない。
・細かい数字は問われない。

ということがあります。ごくまれに,

国民医療費が40兆円を超えた

といったぎりぎりラインを問うこともあります。あとからこの手の問題を見ると,やっぱり最新の数字を覚えなければならない,と思うかもしれません。

しかし,丁寧に他の選択肢を読んでいけば,勉強した人は,他の選択肢は消去することでかできて,正解にたどりつくことができます。

国試は,勉強した人が解けて,勉強が足りない人は解けないものでなければなりません。

勉強した人も解けない。

勉強しなくても解ける。

これらばかりの問題だとしたら,勉強した人と勉強が足りない人の差がほとんど生まれなくなってしまいます。

年度によって,1位になるものと2位になるものが入れ替わるものは,正解選択肢としては出題されません。

というか,間違い選択肢としても出題されないでしょう。なぜならそれは本筋ではないからです。


<受験生あるある>


参考書によって,示されている年度が違う。どれを覚えたらよいか。

〇〇年度の数字は覚えたけれど,ほかの年度が出題されたら答えられない。


社会福祉士の国試に出題されるデータは,数字が大きいので,割合の変化はそうそう変わるわけではありません。

押さえなければならないのは,

最新の数字ではなく,傾向です。

5割を超えているのか,超えていないのか,といったことです。

私たちチームfukufuku21のメンバーは,参考書で基礎力をつけてから,過去問や模擬試験で実力をつけるというのが一番の方法だと考えていた時もあります。

これは正統派の勉強法だと思います。

しかし,最近は,それがベストでもないように思えてきています。

なぜなら,先述のような受験生あるあるが発生しているからです。

最少の努力で,最大の効果を得られる勉強法を考えたとき,まずは国試ではどのように出題されているのかを知る,という方法もありだと考えるようになってきました。

そうすれば,どの数字を覚えたらよいのか,といった疑問は生まれないからです。

覚えるのはどちらの数字でもなく傾向です。

法制度は,成立して数年経ってから出題されることが多いです。

裁判員制度が導入されたのは,平成21年5月です。

国試で出題されたのは,平成30年2月の第30回です。


<今日のまとめ>

最新の法改正はほとんど出題されない。

細かい数字は出題されない。

旧カリ時代は,1科目の問題数は,社会福祉援助が30問,それ以外の科目は10問ずつでした。

1科目の出題数が多かったことで,さまざまな出題ができたのだと思います。

しかし,今は,相談援助の理論と方法は別にして,多くの科目は7問です。

3問減ったということは,出題する問題に大きな変化をもたらしています。

国試には,本当に覚えてほしいものを中心として出題されるので,最新の法制度を出題する余裕はなくなっているのです。

参考書は,昨年版のものでも十分使えます。

国試を長期の視点で見ると,最新の数字はあっと言う間に使えない知識となります。

それより重要なものは,

どのようにして地域は成り立ったのか。
日本人としての「知」はどこにあるのか。

といった地域共生社会のベースになるもの

法制度はどのようにどのように作られてきたのか。
法制度はどのような思想によって成り立っているのか。

といった法制度全体のストラクチャー(構造)

これらを意識して勉強すると必ず知識はつながっていきます。

※今日の問題はお休みします。

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