社会福祉士の国家試験では,10問出題される科目は,「現代社会と福祉」「地域福祉の理論と方法」「高齢者に対する支援と介護保険制度」の3科目です。
7問出題される科目に比べるといずれも出題範囲が広いのが特徴です。
地域福祉の理論と方法も出題範囲は広いですが,現代社会と福祉と比べると,しっかり基本を押さえることで対処可能です。
頑張りましょう。
今日も社会福祉法を続けたいと思います。
第26回・問題36 社会福祉法における地域福祉に関係する規定についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。
2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。
3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。
4 市町村社会福祉協議会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。
5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。
「地域福祉の理論と方法」で,社会福祉法が1問まるごと出題されたのは,今日の問題も含めて,第22回,第26回,第30回の3回です。
2年連続出題されることが少ない傾向を考えると第31回は出題されることも本来は少ないかもしれません。
しかし,社会福祉法は,社会福祉の基本法なので,押さえておかなければなりません。
それでは,解説です。
1 地域住民には,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」の事業や活動を代替する役割があると規定されている。
社会福祉事業法から,2000年に社会福祉法に改正された際,地域福祉の推進主体として,「地域住民」が明記されました。
地域住民が主体的に地域の福祉問題の解決を図る「住民主体の原則」は,全国社会福祉協議会による「社会福祉協議会基本要項」(1962)で打ち出されて以来,社会福祉法で,「社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者」とともに地域福祉の推進主体として明記されたのです。
よって間違いです。
2 福祉サービスの利用に際して苦情があるとき,利用者は都道府県社会福祉協議会に設置された運営適正化委員会に申し立てることができるとされている。
運営適正化委員会は,都道府県県社協に設置され,苦情に対してのあっせんなどの業務を行っています。よって正解です。
運営適正化委員会は,ほかの科目でも超頻出ワードです。最優先して覚えたいです。
3 地域福祉計画の策定に当たっては,要援護者への意見聴取をしなければならないと規定されている。
市町村地域福祉計画は要援護者支援方策を盛り込むことになっています。
しかし,意見聴取をしなければならないとは規定されていません。
市町村地域福祉計画を策定・変更する場合,あらかじめ地域住民等の意見を反映させるよう努めると規定されているのみです。よって間違いです。
市町村地域福祉計画に盛り込むべき事項には法改正によって,以下が追加されています。
・地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項
・包括的な支援体制の整備に関する事項
4 市町村社会福祉協議会の業務は,「社会福祉を目的とする事業の企画及び実施」や「社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助」であり,「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」は含まれない。
〇〇は●●であるが,〇〇は●●ではない
この出題方法は,まず正解はありません。
「社会福祉を目的とする事業の調査,普及,宣伝,連絡,調整及び助成」も市町村社協の業務です。
よって間違いです。
都道府県社協の主な業務も押さえておきましょう。
・社会福祉を目的とする事業に従事する者の養成及び研修
・社会福祉を目的とする事業の経営に関する指導及び助言
経営に関する指導・助言があるのが,都道府県社協の特徴です。
5 共同募金において寄附金を募集する区域は都道府県を単位とし,募集期間は都道府県知事が定めるとされている。
共同募金は,第一種社会福祉事業でしたね。募集期間は厚生労働大臣が定めます。
<今日の一言>
勉強している人が得点でき,勉強が足りない人は得点できない,という国試問題が理想です。
正解選択肢は,最も重要なメッセージが込められています。
正解選択肢は,キラキラ見える
という理由はそこにあります。
勉強をしっかりした人は,そう思えるようになるはずです。
あと8か月間,頑張りましょう!!
最新の記事
成年後見人の職務
成年後見人の職務は,身上監護と財産管理です。 法務省の資料によると,それぞれ以下のように説明しています。 身上監護とは,ご本人の生活や健康の維持,療養等に関する仕事です。例えば,ご本人の住まいの確保,生活環境の整備,施設に入所する契約,...
過去一週間でよく読まれている記事
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
システム理論は,「人と環境」を一体のものとしてとらえます。 それをさらにすすめたと言えるのが,「生活モデル」です。 エコロジカルアプローチを提唱したジャーメインとギッターマンが,エコロジカル(生態学)の視点をソーシャルワークに導入したものです。 生活モデルでは,クライエントの...
-
ソーシャルワークは, ケースワーク グループワーク コミュニティワーク(コミュニティオーガニゼーション) とそれぞれの専門領域で発展していきました。 ソーシャルワークの統合化とは,それらのソーシャルワークとしての共通基盤を明確にすることを意味しています。 そのきっかけとなったのが...
-
様々なアプローチが第31回国試までに出題された回数を整理すると以下のようになります。 アプローチ名 出題回数 ・心理社会的アプローチ 9 ・機能的アプローチ 4 ・問題解決アプローチ ...
-
リッチモンドは,「人と環境」について ソーシャル・ケース・ワークは,「人と社会環境との間を個別に意識的に調整することを通して,パーソナリティを発達させる過程」である。 と述べています。 リッチモンドがこう述べたのは,1922年のことです。 しかしその後,「個」...
-
繰り返しになりますが,ソーシャルワークは欧米生まれです。 なじみのない外国語がたくさん使われますが,苦手だと思うととても損です。 さて,今日のテーマは「ジェネラリスト・アプローチとは何だろう?」です。 まずは前回の復習からです。 ソーシャルワークは,ケースワーク,...
-
コミュニティはさまざまな人が定義していますが,ヒラリーの研究によって,それらに共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが示されました。 しかし,現代では,空間が限定されないコミュニティが広がっています。それをウェルマンは,「コミュニティ開放論」と...