2021年7月31日土曜日

ICT(情報通信技術)の活用

ネット回線を用いたICTの発展は,生活そのものを大きく変えました。


しかし,活用できる人と活用できない人には,大きな格差が生じます。


第34回国試の申し込みは,過去に受験したことがある人はインターネットからできるようになりました。受験の手引きを取り寄せなくても受験申込みできる道が開いたのです。


しかしそういったものを使えなければ,従来通りの申し込みをする必要があります。


そういったICTに関しての情報格差を「デジタル・デバイド」といいます。


インターネットでのサイトのみ確認できるような情報は,そこにアクセスできなければ入手することができません。


とはいうものの活用できるものはどんどん活用していくことが大切です。


そのうえで,アクセスできない人の対応をどうするかを同時に考えていきます。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題118 社会福祉領域における情報通信技術(ICT)の活用に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 情報リテラシーとは,情報通信ネットワークを利用するのに必要な知識や技術のことである。

2 デジタル・デバイドとは,福祉情報の積極的な活用を意味する。

3 データベース化された業務情報の活用には,データファイルの管理運営が大切である。

4 援助における情報収集の段階で,ⅠT機器による音声・画像の記録は禁止されている。

5 電子メールによる相談は,個人情報保護の観点から受け付けられない。


ICTに関連する用語はカタカナのものが多いです。


ソーシャルワークの比ではありません。


覚えるのは大変ですが,別な言い方をすれば,日常生活の中でも得られる情報でもあります。


ミスしないようにしっかり考えて答えましょう。


それでは,解説です。


1 情報リテラシーとは,情報通信ネットワークを利用するのに必要な知識や技術のことである。


これが1つめの正解です。


現在では,小中学校でも情報リテラシーに関する授業を行っています。


2 デジタル・デバイドとは,福祉情報の積極的な活用を意味する。


前説のとおり,デジタル・デバイドは,ICTに関する情報格差です。


便利になればなるほど格差は大きくなります。


3 データベース化された業務情報の活用には,データファイルの管理運営が大切である。


これがもう1つの正解です。


4 援助における情報収集の段階で,ⅠT機器による音声・画像の記録は禁止されている。


これはよくよく考えてみると,おかしなものです。


音声・画像の記録が禁止されている,とのことですが,どの法律で禁止されているのでしょうか。


もちろん誤りです。


5 電子メールによる相談は,個人情報保護の観点から受け付けられない。


電子メールでの相談は,とても重要です。

対面では話しにくいことでもメールでは相談できることもあります。


もちろん個人情報の保護は重要です。


2021年7月30日金曜日

個人情報保護法

個人情報保護法は知っていても実際に同法に目を通したことがある人はそれほど多くないかもしれません。

 

個人情報保護法で規定されているさまざまな定義を整理します。

 

 

個人情報

 生存する個人に関する情報であって,次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一 当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等(文書,図画若しくは電磁的記録)に記載され,若しくは記録され,又は音声,動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ,それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)

二 個人識別符号が含まれるもの

 

個人識別符号

一 特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字,番号,記号その他の符号であって,当該特定の個人を識別することができるもの

二 個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ,又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され,若しくは電磁的方式により記録された文字,番号,記号その他の符号であって,その利用者若しくは購入者又は発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ,又は記載され,若しくは記録されることにより,特定の利用者若しくは購入者又は発行を受ける者を識別することができるもの

 

要配慮個人情報

本人の人種,信条,社会的身分,病歴,犯罪の経歴,犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別,偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。

 

個人情報取扱事業者

個人情報データベース等を事業の用に供している者をいう。ただし,次に掲げる者を除く。

一 国の機関

二 地方公共団体

三 独立行政法人等

四 地方独立行政法人

 

個人情報取扱事業者は,以前は,個人データの取扱量が一定数以上に限定されていましたが,現在はその規定はありません。

 

また,国や地方公共団体等は含まれません。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題117 個人情報の保護に関する法律に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 個人情報取扱事業者には,地方公共団体が含まれる。

2 個人情報取扱事業者の義務は,規定されていない。

3 健康診断やその他の検査の結果の情報の取得に当たっては,原則として本人の同意を得ることが必要とされている。

4 個人情報の有用性に配慮しつつ,個人情報取扱事業者の権利利益を保護することを目的としている。

5 個人情報保護に関する官民を通じた基本となる事項を定めた法律である。

 

 

法を知らないと正解するのはかなり難しい問題です。

 

それでは解説です。

 

1 個人情報取扱事業者には,地方公共団体が含まれる。

 

かなりびっくりですが,個人情報取扱事業者には,国や地方公共団体等は含みません。

 

2 個人情報取扱事業者の義務は,規定されていない。

 

もちろん規定されています。

 

3 健康診断やその他の検査の結果の情報の取得に当たっては,原則として本人の同意を得ることが必要とされている。

 

これが1つめの正解です。

 

4 個人情報の有用性に配慮しつつ,個人情報取扱事業者の権利利益を保護することを目的としている。

 

目的としているのは,個人の権利利益です。

 

5 個人情報保護に関する官民を通じた基本となる事項を定めた法律である。

 

これが2つめの正解です。

 

この問題の難易度が高いのは,

受験生は個人情報保護法について詳しくないため,選択肢1で引っ掛けられてしまうからです。

 

本当にびっくりしますが,個人情報取扱事業者には,国や地方公共団体等が含まれないのです。

2021年7月29日木曜日

ソーシャルワークにおけるエンゲージメント

今回は,ソーシャルワークにおけるエンゲージメントを取り上げます。


第30回の国試で出題されるまでは,あまり知られていなかったものです。


エンゲージメントは,インテーク(受理面接)とほぼ同義語です。


それにもかかわらず,インテークのほかにエンゲージメントが使われるようになった理由は,インテークにはスクリーニングの意味合いも含むものですが,エンゲージメントは,クライエントとソーシャルワーカーは対等な立場にあるという意味合いがあるからです。


そのために,「契約」という意味がある「エンゲージメント」が使われます。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題116 相談援助におけるプランニングに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 実現することが困難な課題を重視し,策定しなければならない。

2 サービス優先アプローチに基づいて策定しなければならない。

3 クライエントと協働して策定しなければならない。

4 短期目標は,将来的なビジョンを示すものとして設定しなければならない。

5 策定したプランの内容に基づいて,エンゲージメントをしなければならない。


プランニング(計画立案)に関する問題です。


決して難しい問題ではありませんが,エンゲージメントという見慣れないものが含まれているので,それによって難易度が上がります。


一問一答式の勉強の限界は,この問題のように,ほかの選択肢との相互作用によるものの練習ができないことです。


正解は,選択肢3です。


3 クライエントと協働して策定しなければならない。


この選択肢だけが単体であった場合に,×をつける人はまずいないでしょう。

それが国試の怖いところです。


今日のテーマであるエンゲージメントを含めて出題しているので,そこで混乱するのです。


それを克服するためには,最終的には国試と同じ5択の問題を解いて仕上げることが必要です。


一応ほかの選択肢も解説します。


1 実現することが困難な課題を重視し,策定しなければならない。


実現するのが困難なら,その目標は解決されないことになります。

そんな目標なら意味がないでしょう。


2 サービス優先アプローチに基づいて策定しなければならない。


サービス優先アプローチとは,提供できるサービスの中から選ぶタイプのものです。

必要なのは,クライエントの福祉ニーズを解決するためのニーズ優先アプローチです。


4 短期目標は,将来的なビジョンを示すものとして設定しなければならない。


将来的なビジョンから設定するのは,長期目標です。


5 策定したプランの内容に基づいて,エンゲージメントをしなければならない。


エンゲージメントは,ほぼインテークの意味です。

つまり援助の最初の段階でエンゲージが行われることになります。


エンゲージメントは,まだまだなじみのないものかもしれませんが,一度出題されたことで,これからも出題されることがあるでしょう。



2021年7月28日水曜日

スーパービジョンの3つの機能

教育的機能 

価値・知識・技術を教える機能


支持的機能 

スーパーバイジーを支える機能


管理的機能 

スーパーバイジーの業務を管理する機能


これを頭に入れて,今日の問題です。


第30回・問題115 ソーシャルワークにおけるスーパービジョンに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 スーパーバイジーとは,スーパーバイズする立場の人のことである。

2 意義は,クライエントへのサービスの質,専門性の質などの維持・向上を図るために業務の振り返りを促すことにある。

3 管理的機能とは,スーパービジョン関係を用いて情緒的・心理的な面をサポートすることである。

4 支持的機能とは,専門職としての知識・技術・価値・倫理を習得させることである。

5 教育的機能とは,業務遂行が可能になるように適切な業務量などに目配りすることである。


スーパービジョンはほぼ毎年出題されているので,確実に覚えたいです。


それでは,解説です。


1 スーパーバイジーとは,スーパーバイズする立場の人のことである。


スーパービジョンを行うのは,スーパーバイザー


スーパービジョンを受けるのは,スーパーバイジー


2 意義は,クライエントへのサービスの質,専門性の質などの維持・向上を図るために業務の振り返りを促すことにある。


これが正解です。


というか,これをすぐ正解だと確定するのは難しいので,ほかの選択肢を確実に消去することが必要です。


3 管理的機能とは,スーパービジョン関係を用いて情緒的・心理的な面をサポートすることである。


管理的機能は,業務遂行が可能になるように適切な業務量などに目配りすることです。


4 支持的機能とは,専門職としての知識・技術・価値・倫理を習得させることである。


支持的機能は,スーパービジョン関係を用いて情緒的・心理的な面をサポートすることです。


5 教育的機能とは,業務遂行が可能になるように適切な業務量などに目配りすることである。


教育的機能は,専門職としての知識・技術・価値・倫理を習得させることです。


〈オマケ〉

スーパービジョンで覚えておいておきたいものに「パラレルプロセス」があります。


パラレスプロセスとは?

スーパーバイザーとスーパーバイジーとの関係が,ワーカーとクライエントの関係で展開されていくようになること。

もともとは精神分析学の概念です。

ということは,スーパーバイジーは,無意識のうちにスーパーバイザーとの関係をクライエントに向けてしまうものだと考えられます。

その結果がパラレルプロセスとなります。







2021年7月27日火曜日

グループワークの事例問題

ソーシャルワークは,以下のように分かれます。


①ケースワーク

②グループワーク

③コミュニティワーク


今回は,そのうちのグループワークの事例問題です。


グループワークは,集団を活用した援助技術です。


この視点を忘れるとミスの原因となります。


集団を活用しないのであれば,グループワークを行う意義が損なわれます。


第30回・問題114 事例を読んで,グループワークでのG社会福祉士の対応に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 G社会福祉士は,子どもをがんで亡くした親の集まりの会を開くことにした。最初の集まりで,自己紹介を行った後,メンバーは自分自身が現在気になっていることについて話し始めた。Hさんの順番になったところ,Hさんは涙を浮かべて何か言おうとするが言葉に詰まる様子であった。

1 Hさんに退出を促し,別室で過ごすよう伝える。

2 Hさんの気持ちを受け止め,できる範囲で話をするよう伝える。

3 グループ活動を中断し,Hさんと別室で個人面談を行う。

4 Hさんの思いをメンバーが共有できるように,グループ全体に働き掛ける。

5 Hさんの言葉を待たずに,順番を飛ばして次の人に話をするよう促す。


グループを活用しているのは,5つの選択肢の中でも明確です。


正解は選択肢2と4です。


2 Hさんの気持ちを受け止め,できる範囲で話をするよう伝える。

4 Hさんの思いをメンバーが共有できるように,グループ全体に働き掛ける。


これらと比べるとそれ以外の選択肢は,グループを活用していません。


1 Hさんに退出を促し,別室で過ごすよう伝える。

3 グループ活動を中断し,Hさんと別室で個人面談を行う。

5 Hさんの言葉を待たずに,順番を飛ばして次の人に話をするよう促す。


この中では


3 グループ活動を中断し,Hさんと別室で個人面談を行う。


はちょっと迷うかもしれません。


しかし,設問はグループワークなので,これは絶対に正解になり得ません。


<今日の一言>


今日の問題は,決して難しくありません。


しかし,設問を忘れるとこのようなものでもミスします。


そんなことはないよ


と笑っている人は要注意です。


国試では,普段はしないようなミスが起きるものです。

どれだけ慎重に取り組んでも発生します。


そういった面で,合格するためには,正解できる問題は確実に正解することです。


ミスが少ない人が合格すると言っても良いでしょう。

2つ選ぶ問題を見落とすことだって,よく起きるミスです。

問題の読み間違い,2つ選ぶことを忘れる,などミスは必ず起きます。


それが国試の怖いところです。


学校受験のように,科目ごとの休憩はありません。午前,午後ともスタートしたら,終わりまでの午前は2時間15分,午後は1時間45分,問題を解き続けます。

最初でペースを崩されると,途中で立て直すことが難しいのです。


近年の国試では,再び問題の文字数が増えてきているので,時間に余裕はないはずです。


知識があることは合格に必要なことですが,それだけで合格できるほど楽な試験ではありません。


国試問題に負けない強い心を持って,国試に臨みましょう。


2021年7月26日月曜日

グループワークのプロセス

 今回は,グループワーク(集団援助技術)を取り上げます。 

 

プロセス

段階

注意点

準備期

ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階

この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。

開始期

メンバーが集まって,グループワークを始める前までの段階

この段階には「契約」と呼ばれるワーカーの役割などをメンバーに説明する段階が含まれます。グループワークでの約束事などを確認し,援助関係をつくります。

作業期

ワーカーとメンバーが課題解決に向けて,活動を行う段階

この段階では,グルーブの仲間意識が生じたり,対立したりすることもあります。しかし,これらはグルーブダイナミクス(集団力学)を活用したグループワークでは重要な意味を持ちます。

終結期

グループワークを終える段階

振り返りや反省などを行い,次の段階へつなげます。そのため,移行期とも言われます。

 

 

これを確認したところで,今日の問題です。

 

30回・問題113 グループワークの展開過程において用いられる主な援助技術に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 準備期には,契約の締結がなされる。

2 開始期には,援助関係の形成がなされる。

3 作業期には,波長合わせがなされる。

4 終結期には,集団規範の形成がなされる。

5 移行期には,個人的事情や思いの分かち合いがなされる。

 

 

しっかりした知識がないとかなり難しいかもしれません。

 

それでは解説です。

 

1 準備期には,契約の締結がなされる。

 

準備期に行われるのは,波長合わせです。

 

2 開始期には,援助関係の形成がなされる。

 

これが正解です。

 

3 作業期には,波長合わせがなされる。

 

作業期に行われるのは,集団規範の形成です。

 

4 終結期には,集団規範の形成がなされる。

 

終結期に行われるのは,振り返りや反省などです。

 

5 移行期には,個人的事情や思いの分かち合いがなされる。

 

移行期は,終結期ともいいます。つまり移行期に行われるのは,振り返りや反省などです。

 

個人的事情や思いの分かち合いがなされるのは,開始期です。開始期では,契約なども行われます。

2021年7月25日日曜日

国試に必ず出題されるものってあるの?

試験対策の講座を受講すると講師が「ここは必ず出題されるよ」と言うことがあります。


この講師は,試験委員なのでしょうか。

試験委員でさえ,自分が作った問題が出題されることは知らされていないはずです。


もし試験委員であれば,そんなことを話したら大変なこととなります。


第22回以降,第33回まで必ず出題されているのは,


様々なアプローチ

心理療法


の2つしかありません。


ほとんど毎回出題されているものとしては,スーパーピジョンがあるだけです。


これらだって,必ず出題されるものではなく,今までそうなっているだけです。


それにもかかわらず「ここは必ず出題されるよ」というのは,嘘っぽいです。

チームfukufuku21は,そんなことを言いません。というか,言えないことを知っているからです。


「様々なアプローチ」「心理療法」「スーパービジョン」以外で「必ず出題されるよ」という先生がいたら,その根拠を聞きましょう。


根拠を言える人はだれ一人いないはずです。だって試験センターには守秘義務があるのですから。


正しくは,「今までに出題されたことがあるので要注意」といった感じでしょう。


国試合格に重要なことは,至って当たり前なものをいかに覚えきることができるかです。

それなしで合格するのは,とても難しいと思えるのです。


試験対策を担当する先生に期待するのは,覚えにくいものをわかりやすく教えてくれることです。


●●を押さえておきましょう,なんてあいまいな言葉でお茶を濁すような講師ははっきり言って嫌いです。


●●は●●と理解すると覚えやすいです,と言ってほしいものです。


1点2点が合否を分けることを知っているなら,出るか出ないかわからないものを覚えさせるのではなく,出題される確率が高いものをどのように覚えるのかを教えるほうが重要だと思うのです。


※今日の問題はお休みします。

2021年7月24日土曜日

社会資源リターンズ

前回に引き続き,今回も社会資源を取り上げます。

 

まずは,社会資源の整理です。

 

フォーマルな社会資源

制度化されたもの。

例:介護保険サービス,障害福祉サービスなど。

インフォーマルな社会資源

制度化されていないもの。

例:家族,友人,地域住民,ボランティア,法人が提供する独自のサービスなど。

 

社会資源とは,クライエントの福祉ニーズの充足のために用いられるものです。

 

別な言い方をすれば,クライエントの福祉ニーズの充足のために用いられるものはすべて社会資源です。

 

これらをしっかり押さえたところで,今日の問題です。

 

30回・問題112 事例を読んで,E家庭支援専門相談員(社会福祉士)が行った社会資源のアセスメントに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 Y乳児院に入所しているFちゃん(2)の母親は,自身の慢性疾患による病状が安定したことから,引取りを希望している。そのため,E家庭支援専門相談員はFちゃんの退所を検討することとした。面談の結果,母親の状況として把握したことは以下のとおりである。

 退所後は,母親とFちゃんの二人で暮らす予定である。親族は他県に住む母親の姉だけである。近隣の人とは挨拶程度の付き合いである。

1 近隣の人は,挨拶程度の付き合いなので社会資源に該当しないと判断する。

2 他県に住む母親の姉は,遠方なので社会資源に該当しないと判断する。

3 母親のかかりつけ医は,Fちゃんにとっても社会資源に該当すると判断する。

4 地域子ども・子育て支援サービスを利用するために必要な情報は,社会資源に該当すると判断する。

5 退所した乳児院は,社会資源に該当しないと判断する。

 

この問題は,つくり方は下手だなぁと思います。

 

社会資源に該当しないと判断する  3つ

社会資源に該当すると判断する   2つ

 

正解は2つ

 

社会資源に該当すると判断するの2つが正解になりやすいと言えます。

 

整理すると

 

社会資源に該当しないと判断する

1 近隣の人は,挨拶程度の付き合いなので社会資源に該当しないと判断する。

2 他県に住む母親の姉は,遠方なので社会資源に該当しないと判断する。

5 退所した乳児院は,社会資源に該当しないと判断する。

 

社会資源に該当すると判断する

3 母親のかかりつけ医は,Fちゃんにとっても社会資源に該当すると判断する。

4 地域子ども・子育て支援サービスを利用するために必要な情報は,社会資源に該当すると判断する。

 

明らかに色づけが異なりますね。

 

正解は,選択肢3と4ということになります。

 

とてもわかりやすいでしょう。


なぜこのようになるのかと言えば,社会資源に該当しない,というものを正解にしようと思ったらかなり難しいからです。該当しない,といった言い切りのものが正解になりにくいのはそうった意味です。

2021年7月23日金曜日

フォーマルな社会資源とインフォーマルな社会資源

社会資源は,フォーマルなものとインフォーマルなものに分類することができます。

 

フォーマルな社会資源

制度化されたもの。

例:介護保険サービス,障害福祉サービスなど。

インフォーマルな社会資源

制度化されていないもの。

例:家族,友人,地域住民,ボランティア,法人が提供する独自のサービスなど。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題111 ソーシャルワークで活用されるインフォーマルな社会資源の特微に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 制度化されたサービスである。

2 利用者は,一定の手続と受給要件を満たす者に限られる。

3 利用者との私的な人間関係を通して,援助が提供される。

4 フォーマルな社会資源と比べ,提供されるサービスの継続性や安定性は高い。

5 フォーマルな社会資源と比べ,利用者の個別的な状況に対する融通性は乏しい。

 

奇をてらったものではありませんが,より具体的な知識の展開を求められる問題です。

 

うまいなぁ,と思います。

 

それでは,解説です。

 

1 制度化されたサービスである。

 

制度化サービスは,フォーマルな社会資源です。

 

2 利用者は,一定の手続と受給要件を満たす者に限られる。

 

利用者は,一定の手続と受給要件を満たす者に限られるのは,フォーマルな社会資源です。

 

3 利用者との私的な人間関係を通して,援助が提供される。

 

これが正解です。

 

利用者との私的な人間関係を通して,援助が提供されるのは,インフォーマルな社会資源です。

 

4 フォーマルな社会資源と比べ,提供されるサービスの継続性や安定性は高い。

 

インフォーマルな社会資源は,制度化されていないものです。人の自発性に任されるので,継続性や安定性はフォーマルな社会資源に比べると低くなります。

 

友人が亡くなったら,その資源はなくなってしまいます。

 

フォーマルな社会資源は,たとえその法人がなくなっても,代替する法人があります。

 

5 フォーマルな社会資源と比べ,利用者の個別的な状況に対する融通性は乏しい。

 

フォーマルな社会資源は,法的根拠などによって提供されるので,制度の範囲内での提供となります。

 

法令に反することを行うと指定が外される恐れさえあります。インフォーマルな社会資源は,そういった規制はありません。

 

<今日の一言>

 

今日の問題で,選択肢4,あるいは5を正解だと思った人は,頭を柔らかくする必要があります。

 

こんな問題でも受験者に差が生じます。点数が伸びないのは,決して難しい問題が解けないことではないのです。

 

国試に応用力は必要ないと思いますが,もし必要だとすれば,こういった問題を正解できる柔らかな頭でしょう。それが社会福祉士に求められるからです。

 

合格には決して深い知識は必要としません。必要なのは確実な知識です。

2021年7月22日木曜日

ストレングス

ストレングスとは,強みと訳されるものです。


クライエントのもつ強みを見出してアプローチします。


ストレングス視点に基づいた事例で完成度が高いと思う問題があります。


第26回・問題98 事例を読んで,病院の医療福祉相談室に勤めるC医療ソーシャルワーカー(社会福祉士)のストレングス視点に基づく対応として,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 Dさん(30歳,男性)は,パートナーとの性交渉によって体調に異変を感じながらも悪い検査結果が出るのを恐れ,医療機関を受診していなかった。しかし気になっていたため,悩みを打ち明けた友人に強く勧められて半年を過ぎてようやく受診に至った。その結果,HIV感染症と診断され,初めて医療福祉相談室に紹介されてきた。Dさんは「この歳でアルバイトだけで一人暮らしをしている。実家の両親には話していない。自分はダメな人間だ」と自分を強く卑下する心情を吐露した。C医療ソーシャルワーカーは,その深刻な気持ちを受け止めて対応した。 

1 「この病気になったのはとても大変なことですよね」と言う。

2 「親身になって受診を勧めてくれる友人がいるではないですか」と言う。

3 「エイズ発症後の入院に備えて,両親に早く知らせた方が良いですよ」と言う。

4 「HIVに感染してもエイズを発症するとは限らないので安心してください」と言う。

5 「こうして受診にこぎ着けられたのは大きな一歩だと思いますよ」と言う。


正解は,選択肢2と5です。


ストレングスは,クライエントの内部にも外部にも見出すことができます。


選択肢2

2 「親身になって受診を勧めてくれる友人がいるではないですか」と言う。


これはクライエントの外部にあるストレングスです。


選択肢5

5 「こうして受診にこぎ着けられたのは大きな一歩だと思いますよ」と言う。


これはクライエントの内部にあるストレングスです。

いずれもクライエントがもつストレングスに気づきを与えています。



さて,これをもとにして,今日の問題です。


第30回・問題110 事例を読んで,C相談支援専門員(社会福祉士)によるストレングス視点に基づいた対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 X指定特定相談支援事業所のC相談支援専門員は,軽度の知的障害があるDさん(18歳)の,特別支援学校高等部卒業後のサービス利用に関する会議を開催することとなった。会議では,Dさん自身からサービス利用について話をしたいとの希望があったので,発言の機会を持つことにしていた。しかし,直前になって,「みんなの前に出るのが不安なので,発言できるか分からない」と言った。

1 サービス実施には専門職の意見が重要視されるので,Dさんが発言をやめても差し支えないと伝える。

2 C相談支援専門員がDさんの思いを代わりに伝えるので,発言しなくても良いと説明する。

3 発言すると自分が決めた以上は,最後まで責任を持ってやり遂げるように指導する。

4 自分から発言しようとしたことを尊重し,会議で発言する内容や方法を一緒に考える。

5 代わりに家族に発言してもらった方が良いと提案する。


この問題は,第26回の問題に比べると少し質が落ちます。

なぜなら,ストレングス視点に基づいて考えなくても,正解が出せるからです。


こういったところが第30回国試の合格基準点が過去最高の99点になった要因の一つでしょう。

合格基準点がどうなっても,確実な知識をもつ人は合格基準点を越えます。


第30回国試問題の正解は,選択肢4です。


4 自分から発言しようとしたことを尊重し,会議で発言する内容や方法を一緒に考える。


★自分から発言しようとしたこと


この部分がクライエントの内部にあるストレングスです。


★会議で発言する内容や方法を一緒に考える


この部分がクライエントの外部にあるストレングスです。


ワーカー自身もストレングスです。そんなワーカーになりたいものですね。


2021年7月21日水曜日

モニタリングとは

モニタリングとは,支援(インターベンション)の実施中に行われるもので,支援が計画通りに進んでいるかなどを確認します。そのうえで必要な場合は,再アセスメントなどを検討するものです。


ほかのプロセスに比べていつどのように実施されるのかがわかりにくいので,本当に要注意です。


テレビ業界では,モニターで映像を確認することをモニタリングというみたいですが,それとは若干異なります。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題109 ケアマネジメントの方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 スクリーニングの結果,ケースの終結が判断される。

2 アセスメントでは,精神面・身体面の把握のみならず,住環境,家族関係,経済状況,援助の状況など幅広い生活障害全般の把握を行う。

3 ケアプランの作成は,過去の類似事例と同様の内容で作成する。

4 ニーズと資源の接合(リンケージ)は専門職主導で行い,决定後にクライエントに内容の説明をする。

5 モニタリングには,支援が必要と判断された人を支援提供機関などに連絡し,紹介することが含まれる。


こんな問題で間違う人がいるのか,と思う人もいるかもしれません。


しかし,こんな問題でも間違うのが国試です。国試では読み間違い,勘違いなど,普段はしないようなミスを犯すものです。


正解は,選択肢2です。


2 アセスメントでは,精神面・身体面の把握のみならず,住環境,家族関係,経済状況,援助の状況など幅広い生活障害全般の把握を行う。


アセスメントそのものでしょう。


それでは解説です。


1 スクリーニングの結果,ケースの終結が判断される。


スクリーニングは,支援の初期段階で,相談者が支援の対象となるかを判断するものです。


3 ケアプランの作成は,過去の類似事例と同様の内容で作成する。


ケアマネジメントは,ソーシャルワークの一技法です。


過去の類似事例と同様の内容で作成するのだったら,ケースワークの原則(バイステックの七原則)の「個別化」の原則に反します。


4 ニーズと資源の接合(リンケージ)は専門職主導で行い,决定後にクライエントに内容の説明をする。


ソーシャルワークでは,この選択肢のように「専門職主導」といったタイプの表現が含まれるものは,正解にはなり得ません。


なぜなら「自己決定の原則」に反するからです。


5 モニタリングには,支援が必要と判断された人を支援提供機関などに連絡し,紹介することが含まれる。


この問題で間違う可能性を高めているのはこの選択肢です。


しっかり勉強していないと,モニタリングはわかりにくいものだからです。


再度,確認します。


モニタリング


支援(インターベンション)の実施中に行われるもので,支援が計画通りに進んでいるかなどを確認します。そのうえで必要な場合は,再アセスメントなどを検討します。


日本語では,経過観察と訳されていますね。


支援が必要と判断された人を支援提供機関などに連絡し,紹介することは,リファーラルといいます。


リファーラルという用語が国試に登場したのは,第24回,第26回,第33回の3回しかありません。


それにリファーラルの意味として出題されたのが,今日の問題である第30回です。


モニタリングとともに,スクリーニング,リファーラルなどソーシャルワークにはカタカナ用語が多いのですが,意味をしっかり覚えておかないと,その言葉から意味を推測することができないので,受験者に差がつきやすくなります。


カタカナ語は苦手,などとのんきなことを言っていられません。こういったものを確実におさえていくことが合格への第一歩です。

知識不足の人が解答テクニックで合格できるような試験では決してありませんから,甘く見ないことが必要です。

2021年7月20日火曜日

面接技法~特に重要なのは感情の反映

第22回の国家試験以降,面接技法が出題されたのは,以下の通りです。


第22回(事例)

・直視

・要約

・感情の反映

・助言・提案

・自己開示


第23回

・繰り返し

・沈黙

・言い換え

・相づち

・閉じられた質問


第27回

・閉じられた質問

・言い換え

・明確化

・要約

・アイメッセージ


第29回

・閉ざされた質問

・要約

・感情の反映

・沈黙

・非言語的な表現


第30回(事例)

・開かれた質問

・直面化

・自己開示

・対決

・感情の反映


第32回

・言い換え

・共感

・ミラクルクエスチョン

・アイメッセージ

・閉じられた質問


第33回

・明確化

・閉じられた質問

・支持

・開かれた質問

・要約


ここに示したものは,きっちりと覚えたいです。


実際の面接場面で使えるためには,覚えるだけではなく,具体的に考えることが必要です。


これらの中で,わかりにくいものとわかりやすいものがあると思います。


その筆頭は,感情の反映です。


感情の反映は,クライエントの発言の情緒的な面を言葉にして返す技法です。


〈具体例〉 ※国試に出題されたもの


「私は一体これからどうしたらいいでしょうか。小さい子どもを抱えて別れることもできず,ただこの状況に耐え続けるしかないのでしょうか」といって沈黙した。

それに対して,相談員(社会福祉士)は「今は八方ふさがりの状態で,とてもおつらいのですね」と応じた。


「小さい子どもを抱えて別れることもできず」というクライエントの言葉を「八方ふさがりの状態」と言い換えた上で


「ただこの状況に耐え続けるしかないのでしょうか」を「とてもおつらいのですね」と「つらい」と感情を表現しています。


かなり高度な面接技法です。


だからこそ,国試では重要視されます。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題108 事例を読んで,Q市社会福祉協議会のA社会福祉士の用いた面接技法を示すものとして,正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Q市社会福祉協議会に,一人暮らしのBさん(42歳,男性)が生活が苦しいと相談に訪れた。Bさんは20代後半まで正規就労していたが,体調不良により離職した。それ以来,不安定な就労が続いている。「親には迷惑を掛けたくないし,行政のお世話になるのも気が引ける…」と黙り込むBさんに,A社会福祉士は,「どうにもならなくて,おつらいのですね」と伝えた。

1 開かれた質問

2 直面化

3 自己開示

4 対決

5 感情の反映


答えは,今ならすぐわかるのではないでしょうか。


「おつらいのですね」と感情の反映をしています。


ということで,正解は選択肢5です。


直面化は特に重要なので。しっかり理解しておきたいです。

2021年7月19日月曜日

コミュニティワークは重要です

伝統的なソーシャルワークは,

 

ケースワーク

グループワーク

コミュニティワーク

 

として発展してきたことを学んだ人もいることでしょう。

 

この統合を図ったのは「ジェネリック」という考え方でした。

 

37回から実施される新しいカリキュラムでは,「ソーシャルワークの理論と方法」という科目が誕生しますが,この科目の中で目を引くのがコミュニティワークです。

 

⑦コミュニティワーク

1 コミュニティワークの意義と目的

・ソーシャルインクルージョン

・住民参加

2 コミュニティワークの展開

・地域アセスメント

・地域課題の発見・認識

・実施計画とモニタリング

・組織化

・社会資源の開発

・評価と実施計画の更新

 

まるで地域福祉の科目のようです。

 

地域共生社会の実現に向けて,社会福祉士の果たす役割は「コミュニティワークだ」ということをまるで示しているようです。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題107 事例を読んで,L社会福祉士が,個別支援を地域支援に展開していくための対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 社会福祉協議会に勤務するL社会福祉士は,民生委員からMさん(72歳,男性)のことが気になると相談を受けた。Mさんは1年ほど前に妻を亡くし,それ以降,自宅に閉じ籠もっているという。その後,民生委員とMさん宅を訪問するうちに,「慣れない家事に苦労し,悩みを打ち明けられる人もいない」という思いを聞くことができた。民生委員によると,この地域には一人暮らしの男性高齢者が他にもいるということだった。

1 民生委員にMさん宅での食事づくりを依頼する。

2 Mさんに対し,介護保険制度における訪問介護の利用を勧める。

3 Mさんに対し,友人を作るように助言する。

4 住民に呼び掛け,Mさんと同じような状況にある高齢者が參加しやすい居場所づくりを進める。

5 一人暮らしは困難と判断し,施設入所に向けて手続を進める。

 

この問題は,ケースワークをきっかけとしてコミュニティワークに拡大することを目指したものです。

 

単なる事例問題としても解くことができますが,問題の求めるものを押さえて考えるとミスしません。

 

1 民生委員にMさん宅での食事づくりを依頼する。

2 Mさんに対し,介護保険制度における訪問介護の利用を勧める。

3 Mさんに対し,友人を作るように助言する。

5 一人暮らしは困難と判断し,施設入所に向けて手続を進める。

 

これらはすべて,Mさんに対するケースワークです。

 

コミュニティワークになっているのは,

 

4 住民に呼び掛け,Mさんと同じような状況にある高齢者が參加しやすい居場所づくりを進める。

 

この選択肢しかありません。

 

明確すぎる問題です。

2021年7月18日日曜日

記録の目的など

緊張感のある国家試験会場では,普段はしないミスが起きます。


どれだけ慎重に問題を読んでも必ずと言ってもよいほど起きます。

このミスが少ない人は合格し,ミスが多い人は合格できません。


今日の問題も何の変哲も引っ掛けもない問題ですが,頭が固いとミスします。


第30回・問題106 ソーシャルワークの記録に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 個人情報の保護よりも閲覧のしやすさを優先して保管する。

2 文章で表現し,記号や図は使用しない。

3 クライエントやその家族からの情報は,正式な記録とはならない。

4 サービス利用者本人には非開示としなければならない。

5 適正に援助業務を遂行したことを説明するための証拠となる。


うっかりするとミスしそうなのは,選択肢2です。


2 文章で表現し,記号や図は使用しない。


ジェノグラムやエコマップなどのマッピング技法も記録です。


アセスメントに用いられます。


このように書くと「なるほど」と思うかもしれませんが,冷静に判断ができないのが国試の怖さです。


「こんな問題で間違うことはない」と思う人は,要注意です。先に書いたように,ミスは必ず起きます。


国試会場は,自分の頭で考えなければならない問題もあります。


それまでに勉強してきた知識では答えられないような問題です。


正解は,選択肢5です。


5 適正に援助業務を遂行したことを説明するための証拠となる。


記録の種類などを中心に勉強してきた人は肩透かしを食うような問題でしょう。


しかし,これが国試の現実です。


<今日の一言>


国試は,さまざまな知識を用いて答えるように作った問題も出題されます。


なぜなら,知識があっても実践力のない社会福祉士は現場では必要としていないからです。

知識があるのは,必要条件ですが,十分条件ではありません。


国試に落ち着いて臨むというのは,かなり難しいことかもしれません。

しかし,少しでも気持ちに余裕をもつことができたら,ミスは減らせます。


そのために必要なことは「自分は精いっぱい勉強してきた」と思えることだと思っています。

今の勉強は大変なことだと思いますが,その努力は自己肯定感を高めるといった意味で重要です。

落ち着いて問題を読めば解けるというタイプの問題をどれだけミスしないかが重要なのです。


2021年7月17日土曜日

「この段階」の対応を問う事例問題

国家試験では,さまざまなスタイルの問題が出題されます。

 

事例問題の近年の定番は「この段階における」「この場面における」「この時点」などといった状況を設定した出題です。

 

対応そのものは不適切でなくても,「この段階」では適切ではないという問題です。

 

「この段階における」がいつから出題されているのかと思って調べたら,第24回が初めてでした。(この場面は第28回が初めて)

 

それ以前は一度も出題されていません。

 

それでは今日の問題です。

 

30回・問題105 事例を読んで,この段階における社会福祉協議会のH社会福祉士の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 P町の社会福祉協議会のH社会福祉士は,J民生委員からKさん世帯の相談を受けた。Kさん(70歳,女性)は,一人息子(45歳)との二人暮らしである。息子は20代に統合失調症を発症し,その後,精神科に入退院を繰り返していた。1年前に退院し,定期的に通院していたが,このところ通院が不定期になっている。最近,J民生委員はKさんから,「息子が暴力まではいかないが,暴言を吐くことがある」と聞き,Kさん世帯を心配するようになった。

1 P町の保健師と家庭を訪問し,息子の病状と世帯の生活状態を把握する。

2 息子に社会生活技能訓練(SST)を受けさせるための手続を行う。

3 息子の主治医に連絡し,措置入院の手続を行う。

4 息子の自立を当面の目標にして,就労支援サービスに結び付ける。

5 Kさん一家の家計状況について,地域住民から情報収集を行う。

 

この問題の「この段階」は,初回面接の前です。

 

この段階で真っ先に行うべきものは,「状況確認」です。

 

1 P町の保健師と家庭を訪問し,息子の病状と世帯の生活状態を把握する。

 

これしかあり得ません。


〈おまけ〉


赤字が正解です。


「この段階において」が初めて登場した問題


第24回・問題93 事例を読んで,Aさんの発言に対するG相談員(社会福祉士)のこの段階における対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。

〔事例〕
 R総合病院の相談室に,妻(51歳)と息子(17歳)の三人で暮らしているAさん(56歳)が,妻の主治医から紹介されて来所した。Aさんは,妻がこのたび若年性認知症と診断され,初めて相談室を訪れた。G相談員が面接を開始するとAさんは,「妻の調子がおかしくなって家族の生活が一変した。妻は家事もまともにできなくなり,私が仕事から帰ってきても部屋は散らかっているし,食事の準備もできていない。私も疲れているのでつい怒鳴ってしまう。このたび若年性認知症と診断され,これから通院を続ける必要もあるが,息子の受験も近いので困っている。どうしたらいいか」と話した。

1 妻を入院させることを提案して,専門病院への入院手続を進める。

2 Aさんの怒鳴るという行為をたしなめ,妻の気持ちに寄り添うよう指示する。

3 息子のことを大切にするように伝えて,息子の受験を優先するように提案する。

4 妻への介護が十分にできるように,Aさんに就労のあり方を見直すように勧める。

5 具体的なサービスに関する情報提供を行い,継続しての面接をAさんに提案する。



「この場面において」が初めて登場した問題


第28回・問題103 事例を読んで,この場面におけるJ社会福祉士の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕
 Kさん(85歳,男性)は,このところ物忘れが目立つ認知症の妻(82歳)を自宅で介護してい る。Kさんは当初,「自分ひとりで介護する」と言い,他県に住む一人息子に頼ることや,デイサービスなどを利用することを拒否していた。しかし最近は疲れを感じるようになり地域包括支援センターに相談に来た。
 J社会福祉士は,Kさんへの初回面接を行った。

1 Kさんに構造化面接を行い,虐待の有無を確認する。

2 Kさんの頑張りを労い,介護を継続するよう勧奨する。

3 Kさんに適切な認知症ケアの方法についての知識を伝える。

4 Kさんに家族会に参加することを勧める。

5 Kさんの気持ちを受け止めながら話を聴き,総合的な状況把握を行う。


「この時点」が初めて出題された問題


第24回・問題105 地域包括支援センターに勤務するJ社会福祉士は,地区の民生委員から,「近所に住むKさんのことなのですが,70代後半の女性で一人暮らしをしています。最近,どうも様子がおかしく,季節にそぐわない服装で出歩き,足元もおぼつかなくなっています。少し痩せてきているようにも見えます。また,家の周りにはごみが散乱して悪臭が漂い,近隣住民からの苦情が増えています。私も何度か訪ねているのですが,いつもすごい剣幕で『用はない,帰れ!』の一点張りです。何か良い方法がないものでしょうか」と相談を受けた。民生委員から相談を受けた後,すぐさま,J社会福祉士はKさん宅を訪問したが,その日はKさんに拒否されて会うことができなかった。
 次のうち,この時点でのJ社会福祉士の対応として,最も適切なものを一つ選びなさい。

1 玄関に名刺やKさん宛のメモを置いて,Kさん宅への訪問を継続する。

2 民生委員に今後の対応をゆだね,状況に変化があった際の報告を依頼する。

3 Kさん宅に電話を入れ,センターに来所するよう伝える。

4 民生委員と協力して,Kさん宅のごみの片付けを行う。

5 Kさんの意向を尊重し,センターに連絡があるのを待つ。



2021年7月16日金曜日

インテーク(受理面接)

相談援助の過程で最も多く出題されるのは,インテークです。


初回面接は,クライエントにとって特別だからです。


初回面接と2回目の面接では,圧倒的に異なるのは,クライエントはワーカーのことを知らないということです。


知らない場所で知らない人に話すというのは,クライエントにとって日常ではありません。


そのことをよく理解して,面接に臨むワーカーは対応が大きく変わることでしょう。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題104 相談緩助の過程におけるインテーク段階に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 クライエントの主訴を把握し,ソーシャルワーカーが所属する機関の機能について説明する。

2 クライエントの支援計画の策定のために,具体的なサービスを検討する。

3 クライエントの生活全般にわたり支援の効果を評価し,支援経過を確認する。

4 クライエントとその環境全般にわたる多様な情報を収集し,支援計画を作成する。

5 クライエントと共に支援の成果について話し合い,今後の生活目標を設定する。


簡単に見えるこのような問題でも。実際に正解するのは,簡単なことではありません。


なぜなら,国試には読み間違い,勘違い,早合点がつきものだからです。


それでは解説です。


1 クライエントの主訴を把握し,ソーシャルワーカーが所属する機関の機能について説明する。


→ これが正解です。


2 クライエントの支援計画の策定のために,具体的なサービスを検討する。


→ 初回面接で,具体的なサービスを検討するのは,早すぎます。これはプランニングでしょう。


3 クライエントの生活全般にわたり支援の効果を評価し,支援経過を確認する。


→ モニタリングです。


4 クライエントとその環境全般にわたる多様な情報を収集し,支援計画を作成する。


→ プランニングです。


5 クライエントと共に支援の成果について話し合い,今後の生活目標を設定する。


→ エバリュエーションです。


2021年7月15日木曜日

エンパワメントアプローチ

今回は,エンパワメントアプローチを取り上げます。

 

アプローチ名

援助方法

影響を与えた主な理論

提唱者

エンパワメントアプローチ

クライエントが抑圧された状況を認識して,潜在能力に気づいて,対処能力を高められるようにかかわる。

ソーシャルアクション

ソロモン

 

抑圧という言葉が使われていたら,エンパワメントアプローチかフェミニストアプローチです。

 

こういったポイントを見つけ出すことができれば,得点力はすごいことになります。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題103 エンパワメントアプローチに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 人・状況・両者の相互作用という三つの相互関連性からクライエントの問題を捉え,「状況の中の人間」という視点を重視する。

2 観察可能な行動として問題を捉え,行動に影響する諸条件を操作することにより行動を変容させる。

3 危機的な状況に陥ったクライエントにできるだけ早期に介入し,現実を受け入れ再出発することを支援する。

4 クライエントが,自分の置かれている抑圧状況を認識し,潜在能力に気付き,対処能力を高めることに焦点を当てる。

5 クライエントのニーズを援助機関の機能との関係で明確化し,その機能を個別化して提供することに焦点を当てる。

 

この問題は,とてもセンスのあるものです。

 

すべての選択肢にうそはありません。

 

うそがいないのに,問題を成り立たせるというのは,勉強する立場にとっても,国試を受験する人にとっても,有難いものです。

 

1 人・状況・両者の相互作用という三つの相互関連性からクライエントの問題を捉え,「状況の中の人間」という視点を重視する。

 

→ 心理社会的アプローチ

 

2 観察可能な行動として問題を捉え,行動に影響する諸条件を操作することにより行動を変容させる。

 

→ 行動変容アプローチ

 

3 危機的な状況に陥ったクライエントにできるだけ早期に介入し,現実を受け入れ再出発することを支援する。

 

→ 危機介入アプローチ

 

4 クライエントが,自分の置かれている抑圧状況を認識し,潜在能力に気付き,対処能力を高めることに焦点を当てる。

 

→ エンパワメントアプローチ

 

5 クライエントのニーズを援助機関の機能との関係で明確化し,その機能を個別化して提供することに焦点を当てる。

 

→ 機能的アプローチ

 

ということで,正解は選択肢4ということになります。

2021年7月14日水曜日

課題中心アプローチ

 今回は,課題中心アプローチを取り上げます。

 

〈課題中心アプローチの特徴〉 

提唱者:リードとエプスタイン

影響を受けているもの:プラグマティズム(実用主義)。また,心理社会的アプローチ,問題解決アプローチ,行動変容アプローチにも影響を受けている。

特徴的な部分:課題を明らかにして,ワーカーとクライエントが達成可能な目標を期限を定めて共有化すること。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題102 リード(ReidW.)とエプスタイン(EpsteinL.)が提唱した課題中心アプローチに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ストレングスモデルの影響を受けている。

2 過去に起きた出来事について探索し,問題の原因を究明する。

3 支援期間を短期に設定し,処遇目標や面接の回数などを明確化する。

4 クライエント自らが解決困難と考える問題を,支援対象とする。

5 精神分析的な方法を用いて,クライエントのアセスメントをする。

 

 

この問題は,ポイントを押さえて勉強した人なら,答えがすぐわかるはずです。

 

あなたは,すぐわかりましたか?

 

それでは解説です。

 

1 ストレングスモデルの影響を受けている。

 

課題中心アプローチは,たくさんのものに影響を受けていますが,ストレングスモデルは当てはまりません。

 

ストレングスモデルは,クライエントのもつストレングス(強み)に着目した援助スタイルです。

 

それに対して,課題中心アプローチは,クライエントの課題を明らかにして,その課題を解決するものです。

 

まったく違うことがわかるでしょう。

 

2 過去に起きた出来事について探索し,問題の原因を究明する。

 

問題の原因を究明するのは,医学モデルでしょう。課題中心アプローチのポイントは,今起きている課題です。

 

3 支援期間を短期に設定し,処遇目標や面接の回数などを明確化する。

 

これが正解です。

 

課題中心アプローチは,短期処遇が特徴です。

 

4 クライエント自らが解決困難と考える問題を,支援対象とする。

 

課題中心アプローチは,クライエントとともに課題を明らかにして,期限を決めてその課題を解決していきます。

 

クライエントが解決困難だと考えると,課題中心アプローチは使えません。この点は,問題解決アプローチも同じです。

 

 5 精神分析的な方法を用いて,クライエントのアセスメントをする。

 

精神分析を直接的に使うのは,心理社会的アプローチです。

 

心理社会的アプローチは,クライエントとワーカーのコミュニケーションを通して,クライエントのパーソナリティの変容を目指していきます。

 

そのため,課題中心アプローチの短期処遇とは逆に,時間をじっくりかけてかかわっていきます。

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