2020年12月31日木曜日

現役並み所得者の医療費の自己負担割合

 社会保障費が増えている

 

多くの人が知っていることでしょう。

 

限られた資源です。必要な適切に配分することは極めて重要なことです。

 

さて,今回から「保健医療サービス」です。

 

国民医療費も増大しています。

 

高齢者の医療保険では,以前は1割負担でしたが,一定以上の所得がある者は2割負担となり,現在ではさらに現役並み所得者は3割負担となっています。

 

この負担割合は,介護保険サービスを利用した場合の自己負担も同様です。

 

つまり,医療保険制度も介護保険制度も,いずれも現役並み所得者は,3割負担です。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題70 高齢者に対する医療保険制度における給付と負担に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 65歳以上の加入者の療養病床での食事・室料は,入院時生活療養費として全額支給対象である。

2 70歳以上の加入者の埋葬料・埋葬費は,家族療養費として支給される。

3 70歳から74歳までの加入者の一部負担金は,加入者が現役並み所得者である場合には,療養の給付に要した費用の2割の額である。

4 75歳以上の加入者の一部負担金は,加入者が現役並み所得者である場合には,療養の給付に要した費用の3割の額である。

5 75歳以上の加入者が選定した特別の病室の室料は保険外併用療養費として全額支給対象である。

 

この問題は,もしかすると解答テクニックで解けるものかもしれません。

 

ただし,「気が付けば」というものですが・・・

 

「気が付けば」というポイントは,以下の通りです。

 

1 65歳以上の加入者の療養病床での食事・室料は,入院時生活療養費として全額支給対象である。

5 75歳以上の加入者が選定した特別の病室の室料は保険外併用療養費として全額支給対象である。

 

全額支給対象となっています。

「全額」は,すべてと同じタイプです。

消去できそうです。

 

3 70歳から74歳までの加入者の一部負担金は,加入者が現役並み所得者である場合には,療養の給付に要した費用の2割の額である。

4 75歳以上の加入者の一部負担金は,加入者が現役並み所得者である場合には,療養の給付に要した費用の3割の額である。

 

どちらも現役並み所得者に関するものです。

選択肢3が2割

選択肢4が3割

 

となっています。

 

これらがそろっていれば,どちらも消去できそうですが,別々になっているので,どちらかが正解になりそうです。

 

それでは,解説です。

 

1 65歳以上の加入者の療養病床での食事・室料は,入院時生活療養費として全額支給対象である。

 

療養病床での食事・室料には,自己負担があります。それ以外が入院時生活療養費として保険給付されます。

 

2 70歳以上の加入者の埋葬料・埋葬費は,家族療養費として支給される。

 

家族療養費は,療養にかかる費用を現物給付するものです。

家族療養費の給付内容は,被保険者本人に対する「療養の給付」(現物給付)と同じです。

 

医療保険には,現物給付のほかに,現金給付されるものもあります。

 

健康保険法が規定する現金給付の種類(被保険者本人に対するもの)

・傷病手当金(療養のため労務に服することができないとき,連続した休業4日目以降に給付される所得補償)

・埋葬料(埋葬費を給付するもの)

・出産育児一時金(出産費用を給付するもの)

・出産手当金(被保険者が出産のために出産の前後労務に服さなかったときに給付される所得補償)

 

このうち,家族に対しては,家族埋葬料,家族出産育児一時金が給付されます。

傷病手当金と出産手当金は所得保障なので,家族には給付されません。

被保険者が出産した場合は,出産育児一時金と出産手当金が併給されます。

これらは,別の目的の給付だからです。

 

3 70歳から74歳までの加入者の一部負担金は,加入者が現役並み所得者である場合には,療養の給付に要した費用の2割の額である。

4 75歳以上の加入者の一部負担金は,加入者が現役並み所得者である場合には,療養の給付に要した費用の3割の額である。

 

自己負担割合は,以下のようになっています。

 

年齢区分

自己負担割合

現役並み所得者

小学校入学前

2割

70歳未満

3割

7074

2割

3割

75歳以上

1割

 

気を付けなければならないのは,自治体により医療費補助が行われる場合があるので,自分が住んでいる自治体がそうだからと言って,それが全国的な制度だと思わないことです。

 

特に,児童の医療費への補助は行っていない自治体もある一方,15歳未満の医療費の自己負担分はすべて補助している自治体もあります。

正しく制度を理解しておきたいです。

自治体によって施策に差がある理由は,それらの施策に対する国庫補助がないということもありそうです。 

 

70歳以上の人のうち,現役並み所得者の自己負担割合は,3割です。

 

ということで,選択肢4が正解だということになります。

75歳以上の現役並み所得者が占める割合は,全体の1割に近いらしいです。

結構多いのが驚きですね。現役並み所得者の自己負担割合を3割にしたのはかなり効果があったのではないでしょうか。

 

5 75歳以上の加入者が選定した特別の病室の室料は保険外併用療養費として全額支給対象である。

 

保険外併用療養費は,保険療養と保険外療養を合わせたものです。

 

日本では混合診療が認められていないので,これらを合わせて受けると,全額自己負担になります。

 

そのために,一部認めたものが保険外併用療養費です。

 

現在は,

・評価療養(先進医療など)

・選定療養(差額ベッド代など)

・患者申出療養(評価療養の対象となっていないものを患者の申出によって行う医療)

 

の3種類があります。

基礎部分が保険給付され,それ以外の部分が全額自己負担となります。

 

この仕組みは,74歳以下も75歳以上も同じです。

 

<今日の一言>

 

今日の問題は,知識なしで正解するのはかなり難しいものですが,2割と3割が混ざって出題されているので,どちらかが正解ではないだろうか,と推測ができる問題でした。

 

そうであっても,正解できる確率は2分の1ですが,見当がつかない場合の5分の1の確率よりもかなりの確率で正解できます。

 

ムダなミスをしないためにも,こういったところにも気を配って問題を読みたいです。こういったセンスは,最後の最後に助けてくれることでしょう。

2020年12月30日水曜日

生活保護制度における被保護者の権利&義務

生活保護法では,被保護者に対する権利とともに義務が規定されています。

 

被保護者の権利

(不利益変更の禁止)

被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を,不利益に変更されることがない。

(公課禁止)

被保護者は,保護金品及び進学準備給付金を標準として租税その他の公課を課せられることがない。

(差押禁止)

被保護者は,既に給与を受けた保護金品及び進学準備給付金又はこれらを受ける権利を差し押さえられることがない。

(譲渡禁止)

保護又は就労自立給付金若しくは進学準備給付金の支給を受ける権利は,譲り渡すことができない。

被保護者の義務

(生活上の義務)

被保護者は,常に,能力に応じて勤労に励み,自ら,健康の保持及び増進に努め,収入,支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り,その他生活の維持及び向上に努めなければならない。

(届出の義務)

被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があつたとき,又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

(指示等に従う義務)

被保護者は,保護の実施機関が,被保護者を救護施設,更生施設,日常生活支援住居施設若しくはその他の適当な施設に入所させ,若しくはこれらの施設に入所を委託し,若しくは私人の家庭に養護を委託して保護を行うことを決定したとき,被保護者に対し,必要な指導又は指示をしたときは,これに従わなければならない。

2 保護施設を利用する被保護者は,保護施設の管理規程に従わなければならない。

3 保護の実施機関は,被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。

4 保護の実施機関は,前項の規定により保護の変更,停止又は廃止の処分をする場合には,当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては,あらかじめ,当該処分をしようとする理由,弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。

(費用返還義務)

被保護者が,急迫の場合等において資力があるにもかかわらず,保護を受けたときは,保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して,すみやかに,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

 

これらを丸覚えしようとは思わないことです。

国試ではおおよそのことが理解できていれば,正解できます。

 

丸覚えする必要はありません。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題68 生活保護法における被保護者の権利及び義務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 被保護者は,保護を受ける権利を相続させることができる。

2 被保護者が急迫の場合等で資力があるにもかかわらず保護を受けたときであっても,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内の金額を返還する義務はない。

3 国民健康保険料(税)の滞納を理由とする保護金品の差押えは許されている。

4 保護の実施機関は,保護施設に入所中の被保護者が,保護施設の管理規程に従わない場合には,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。

5 被保護世帯の高校生のアルバイト収入は,届出の義務はない。

 

それほど難しくはないでしょう。

 

正解は,選択肢4です。

 

4 保護の実施機関は,保護施設に入所中の被保護者が,保護施設の管理規程に従わない場合には,保護の変更,停止又は廃止をすることができる。

 

ただし,すぐにこれらの措置が取られるわけではありません。

 

以下のような規定があります。

 

保護の実施機関は,前項の規定により保護の変更,停止又は廃止の処分をする場合には,当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては,あらかじめ,当該処分をしようとする理由,弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。

 

あなたは,管理規定に従いませんでした。保護を廃止します。

 

といった一方的な通告がなされるわけではないことも合わせて覚えておきたいです。

 

それでは,ほかの選択肢も解説します。

 

1 被保護者は,保護を受ける権利を相続させることができる。

 

譲渡の禁止です。

 

2 被保護者が急迫の場合等で資力があるにもかかわらず保護を受けたときであっても,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内の金額を返還する義務はない。

 

費用返還義務があります。


3 国民健康保険料(税)の滞納を理由とする保護金品の差押えは許されている。

 

差押禁止です。

差押えはどのような理由があっても認められていません。

保護は最低限度の生活保障なので,差押えすると,最低限度を下回ってしまうからです。


5 被保護世帯の高校生のアルバイト収入は,届出の義務はない。

 

届出の義務があります。

 

<今日の一言>

 

社会福祉士の国家試験は,おおよそ6割が正解できれば合格できます。

 

国家試験の配点は,すべて1問1点です。

 

難しい問題を1問正解できても,比較的難易度が低い問題を2問正解できないと合格するのは厳しいです。

 

いろいろ気になることが多いと思いますが,手を広げることなく,基礎の基礎をひたすら積み重ねていくことが重要です。

 

難しい問題の配点が高ければ,それらも拾っていく戦略が求められますが,社会福祉士の国試はそうではありません。

 

正解できそうな問題を確実に正解できる知識を高めたほうが得点力は確実にアップします。


今日の問題のようなレベルの問題を確実に正解することが何よりも大切です。

2020年12月29日火曜日

居住地がないか,又は明らかでない要保護者の保護の実施機関

保護の実施機関は,以下の要保護者を保護します。

 

・その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者

・居住地がないか,又は明らかでない要保護者の場合は,その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有する要保護者

 

現在地とは,例えば,要保護者が倒れていた場所を指します。

 

事例問題の場合は,要保護者が倒れていた場所をひたすら探しましょう。

そこが,保護の実施機関となります。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題66 事例を読んで,Gさんの保護を行う実施機関として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事例〕

単身のGさんは,非正規雇用でP市の会社で働いていたが雇用期間が満了しそれまで住んでいたQ市のアパートを退去した。1か月後,野宿をしていたR市にある河川敷で体調をくずし倒れた。通報によりS市の医療機関に救急搬送され入院した。Gさんは,T市に住民登録をしているが,医療費と生活費の捻出が困難な状況にある。

1 P市の実施機関である。

2 Q市の実施機関である。

3 R市の実施機関である。

4 S市の実施機関である。

5 T市の実施機関である。

 

たくさんの市が登場しています。

 

Gさんは,ホームレス状態です。居住地がないか,又は明らかでない要保護者だと考えられます。

 

居住地がないか,又は明らかでない要保護者の保護に関する事例問題が出題されたら,倒れていた場所をひたすら探します。

 

倒れた場所は,R市です。

 

正解は,選択肢3となります。

 

コツをつかめば,ものすごく簡単です。

 

しかし,勉強不足の人は5分の1の確率以上では,正解できないでしょう。

 

こういった問題は,国家試験にふさわしいものだと思います。

2020年12月28日月曜日

生活保護法における扶養義務

生活保護には,原理,原則があります。


その一つには「補足性の原理」があります。


<保護の補足性>

第四条 保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。

2 民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

3 前二項の規定は,急迫した事由がある場合に,必要な保護を行うことを妨げるものではない。


民法が定める扶養義務者は,直系血族及び兄弟姉妹です。

それ以外の三親等以内の親族は,家庭裁判所の審判により,扶養義務を負います。


扶養義務者による扶養が保護に優先されますが,扶養義務者の扶養を受けられないからと言って,保護を受けられないということではありません。


平成26年の生活保護法改正では,保護の開始をしようする時,扶養義務者が民法の規定による扶養義務を果たしていないと認められる時は,扶養義務者に書面で通知することが規定されています。


ただし,これによって扶養義務が強化されたわけではなく,通知されるのは,扶養義務者が高額な収入を得ていることが明らかになっている場合などに限定されています。


生活保護の扶助の種類は8種類ありますが,そのうち,最も費用がかかっているのは,医療扶助で,生活保護費約4兆円のうち,半分を占めます。


生活保護にかかる費用を削減するなら,生活扶助費を削減するより,医療扶助費を削減したほうが確実です。


不正受給は根絶しなければなりませんが,必要な人には資源を適切に分配しなければなりません。



それでは,今日の問題です。


第28回・問題65 生活保護法における扶養義務者に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 近年の法改正により,保護の開始の決定をしようとするときは,一定の扶養義務者に対する書面による通知を行う仕組みが導入された。

2 保護の実施機関は,家庭裁判所の審判を経ずに,直系血族及び兄弟姉妹以外の者に扶養義務を負わせることができる。

3 保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の親族の申請に基づいて開始される。

4 夫婦間と子の老親に対する関係は,生活保護法の規定に基づき,その他の範囲に比べて強い扶養義務が課せられている。

5 被保護者に対して扶養義務者が扶養の義務を履行しないとき,国は,その費用の全部又は一部をその扶養義務者から徴収することができる。


この問題の正解は,選択肢1です。


1 近年の法改正により,保護の開始の決定をしようとするときは,一定の扶養義務者に対する書面による通知を行う仕組みが導入された。


この時の改正は,人気タレントの親が生活保護を受給していたことに世の中の批判が集まったことによるものです。


しかし,この規定ができたことで,生活保護を申請すると親族に通知がいくと思い,申請をためらう人もいるようです。


保護を受けられる状況にある人のうち,実際に保護を受けている人の割合は,捕捉率(テイクアップレート)といいます。

捕捉率はわずか10%程度であるという報告もあります。

保護が必要なときは,保護を受けて,そして体勢を整えた後に,元の位置に戻す制度や支援が求められるところです。


それでは,ほかの選択肢を確認します。


2 保護の実施機関は,家庭裁判所の審判を経ずに,直系血族及び兄弟姉妹以外の者に扶養義務を負わせることができる。


直系血族及び兄弟姉妹以外の三親等以内の親族が扶養義務を負うのは,家庭裁判所の審判があった場合です。


3 保護は,要保護者,その扶養義務者又はその他の親族の申請に基づいて開始される。


これはものすごくいやらしいものです。

これに引っ掛かった人は多いのではないでしょうか。


正しくは「その他の親族」ではなく「同居の親族」です。


4 夫婦間と子の老親に対する関係は,生活保護法の規定に基づき,その他の範囲に比べて強い扶養義務が課せられている。


これもうっかりすると引っ掛けられてしまいます。


夫婦間と子の老親に対する関係は,その他の親族に比べると強い扶養義務が課せられているのは正しいです。


どこが間違っているかと言えば,規定されているのは生活保護法ではなく,民法だからです。


しかし,慎重に読めば,この文章は間違いでありそうだ,と気づくことができます。


というのは,生活保護法が正しければ,


夫婦間と子の老親に対する関係は,その他の範囲に比べて強い扶養義務が課せられている。


で良いはずです。


こういったところに気づくことができるセンスが身につけば,得点力は必ず上がります。


5 被保護者に対して扶養義務者が扶養の義務を履行しないとき,国は,その費用の全部又は一部をその扶養義務者から徴収することができる。


最も強い扶養義務があるのは,夫婦間と未成年の子に対する扶養です。


生活に余裕があるとかないとかにかかわらず,パンが一個しかなければそれを分け合って食べるという生活保持義務を負っているのです。


それ以外の扶養義務者は,自分の生活を犠牲にしない程度の扶養の義務があります。これを生活扶助義務といいます。


同じ扶養義務者であっても扶養義務の強さは異なります。


その費用の全部又は一部をその扶養義務者から徴収するのは,扶養義務の範囲内ということになります。

この額は,保護の実施機関と扶養義務者との協議で定めます。協議ができない場合,協議が整わない場合は,保護の実施機関の申立てによって家庭裁判所が定めます。

2020年12月27日日曜日

生活保護法が規定する基本原理,原則

「低所得者に対する支援と生活保護制度」は,旧カリキュラム時代は,「公的扶助論」という科目でした。


科目名は変わっても,内容はほとんど変わっていません。


古い過去問題集を購入しても,そのまま使えるような問題も多いのがこの科目の特徴と言えるかもしれません。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題64 生活保護法が規定する基本原理,原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 すべて国民は,この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り,この法律による保護を受けることができる。

2 この法律による保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行われる。

3 この法律は,地方公共団体が生活に困窮するすべての住民に対し,必要な保護を行い,その自立を助長することを目的としている。

4 生活保護の基準は,最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,且つ,これをこえるものでなければならない。

5 この法律は,生活困窮に陥った原因によって,保護するかしないかを定めている。


この科目が苦手な人は,おそらく生活保護の原理・原則を覚えるのが面倒なのだと思います。


この問題には,原理・原則の名前が出題されていませんが,それらを含んで出題されるのと,難易度がぐーっと上がるでしょう。


しかし,かなり高い確率で出題されているので,覚えるのが面倒だと思うことなく,きっちり押さえていくようにしたいです。


さて,この問題の正解は,選択肢2です。


2 この法律による保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効且つ適切に行われる。


これは,「必要即応性の原則」を述べたものです。

ただし,注意しなければならないのは,現在では,生活扶助の基準生活費の第一類には,男女差がなくなっていることです。


第一類は,個人単位で消費する経費に関して給付するもので年齢別に分かれていますが,男女の体格差が小さくなっていることを反映して,男女の給付金額は同額となっています。


それでは,ほかの選択肢も確認します。


1 すべて国民は,この法律及び地方公共団体の条例の定める要件を満たす限り,この法律による保護を受けることができる。


「及び地方公共団体の条例」が余計です。保護は国家責任で実施されます。


3 この法律は,地方公共団体が生活に困窮するすべての住民に対し,必要な保護を行い,その自立を助長することを目的としている。


保護を行うのは,国です。国家責任は,生活保護の原理の一つです。


4 生活保護の基準は,最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,且つ,これをこえるものでなければならない。


一見すると正しそうに見えますが,大きな間違いがあります。


<基準及び程度の原則>

生活保護の基準は,最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,且つ,これをこえないものでなければならない。


生活保護は国家による最低限の生活保障ですから,基準を上回っても下回っても不適切なものとなります。


5 この法律は,生活困窮に陥った原因によって,保護するかしないかを定めている。


保護は,困窮に陥った理由にかかわらず,困窮の事実に基づいて実施されます。

「無差別平等の原理」は保護の重要ポイントです。

国試では,「無差別平等の原理があっても,〇〇の場合は保護しない」といった出題がありますが,それらはすべて間違いです。保護しない場合があれば,それは無差別平等ではありません。


2020年12月26日土曜日

恤救規則&救護法&旧生活保護法

明治以降の主な公的扶助制度は,

・恤救規則

・救護法

・旧生活保護法

・現生活保護法


というように発展していきます。

障害者や高齢者と異なり,極めてシンプルであり,覚えるポイントは少ないのが特徴です。


主に覚えるポイントは

・扶助の対象

・扶助の方法


恤救規則では

・扶助の対象 → 無告の窮民(高齢者は70歳以上,児童は13歳以下)

・扶助の方法 → 米代の金銭給付


といった感じです。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題63 現在の生活保護法成立前の公的扶助制度に関する記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 恤救規則(1874年(明治7年))は,高齢者については65歳以上の就労できない者を救済の対象とした。

2 救護法(1929年(昭和4年))は,救護を目的とする施設への収容を原則とした。

3 救護法(1929年(昭和4年))における扶助の種類は,生活扶助,生業扶助,助産の3種類であった。

4 旧生活保護法(1946年(昭和21年))は,勤労を怠る者は保護の対象としなかった。

5 旧生活保護法(1946年(昭和21年))は,不服申立ての制度を規定していた。


勉強不足の人が正解するのは困難な問題です。


どのように発展してきたのかが,一目瞭然となる実に良い問題です。


それでは,解説しながら,発展過程を整理していきます。


1 恤救規則(1874年(明治7年))は,高齢者については65歳以上の就労できない者を救済の対象とした。


恤救規則が救済の対象とした高齢者は,70歳以上です。

救護法で,65歳以上に対象が広がっています。


児童は,どちらも13歳以下です。


2 救護法(1929年(昭和4年))は,救護を目的とする施設への収容を原則とした。


恤救規則では,救済の対象は極めて限定され,施設も規定されませんでした。

そのため,慈善事業(現在の社会福祉事業などにあたるもの)の多くは,民間の篤志家が担いました。


絶対に覚えておきたいものとしては,

・岡山孤児院

・滝乃川学園

・家庭学校

・双葉幼稚園

があります。


救護法では,救護施設として,養老院,孤児院,病院等が規定されました。

しかし,原則はあくまで居宅救護です。


なぜなら,貧困の多くは,金銭を給付されることで,福祉ニーズが充足するからです。

施設を必要とするのは,特別なニーズがある場合です。


「施設収容を原則とした」と出題しているのは,イギリスの救貧制度と混同させるためでしょう。勉強不足の人は「聞いたことがある」と思って引っ掛けられます。過去に何度か使われている手法です。


救護施設の一つとして創設された養老院は,旧生活保護法で養老施設となり,老人福祉法で養護老人ホームとなり,現在に至ります。


老人福祉法が出題されるとき,養護老人ホームを絡めることが多い傾向があります。生活に困窮した人の措置施設として重要だからでしょう。


3 救護法(1929年(昭和4年))における扶助の種類は,生活扶助,生業扶助,助産の3種類であった。


大切なものが一つ抜けています。

医療扶助です。


扶助の種類を覚えるときの基本は,救護法の4つの扶助を確実に覚えるところから始まります。


旧生活保護法では,それに「葬祭扶助」が加わる。

現生活保護法では,それに加えて「教育扶助」「住宅扶助」が加わる。


現在は,さらに介護扶助を加えて8種類となります。


4 旧生活保護法(1946年(昭和21年))は,勤労を怠る者は保護の対象としなかった。


これが正解です。

旧生活保護法では,救護法に引き続き,勤労を怠る者を救済対象としないという欠格条項が設けられていました。


旧生活保護法は,GHQによるSCAPIN775を応える形で成立し,無差別平等を原則としながら,欠格条項を設けています。


SCAPIN775は,保護は国家責任であることを提示していますが,同指令書で国家責任を含めた理由は,それ以前の日本の姿勢は,保護は民間に任せたいといった及び腰であったものを,「いい加減にしなさい」と灸をすえるものであったからです。これはあまり知られていない事実でしょう。


現生活保護法は,無差別平等は,生活保護の原理です。困窮に至った経緯は問わず,困窮の事実をもって,保護が行われます。


旧法と新法でこれだけ変わったのは,その間に成立した日本国憲法によるものです。


現生活保護法は,日本国憲法第25条で規定されている生存権を保障するために改めて作られました。


5 旧生活保護法(1946年(昭和21年))は,不服申立ての制度を規定していた。


不服申立ての制度を規定したのは,現生活保護法です。


それ以前は,職権保護によって行われていました。


保護を受けることを国民の権利とみなしたのは,現生活保護法です。この時に,申請保護が認められることとなりました。

2020年12月25日金曜日

障害者基本法

今回は,障害者基本法を取り上げます。

 

同法は,1970年・昭和45年に心身障害者対策基本法として成立したものを1993年・平成5年に改正したときに,現在の名前に変わりました。

 

今まで何度か改正されてきていますが,特に重要な改正は,以下の2つです。

 

2004年・平成16年改正】

・「自立への努力」の削除(心身障害者は,その有する能力を活用することにより,進んで社会経済活動に参与するように努めなければならない)

・「差別の禁止」を規定(何人も,障害者に対して,障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない)

 

2011年・平成23年】

・障害者の定義の変更(身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう)

・「合理的配慮」を規定(社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって差別禁止の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない)

 

2011年改正は,障害者権利条約を批准するためのものです。

 

同法は,医療福祉,教育,雇用,住宅,バリアフリー,消費者保護など多岐にわたる施策の理念(方向性)を定めています。

 

そのため,同法は内閣府が所管しています。

 

そして,その理念にしたがって,具体的な施策は,障害者総合支援法などの各法が定めます。

この関係性は,しっかり頭に入れておきましょう。

 

障害者基本法が定める「障害者計画」は,障害者のための施策に関する基本的な計画です。

障害者総合支援法が定める「障害福祉計画」は,障害福祉サービスの提供体制の確保その他に関する計画です。

 

名称が似ていますが,その違いを確実に押さえるためには,障害者基本法の性格(障害者施策の基本法)を押さえておくことが大切です。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題62 現行の障害者基本法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさし。

1 社会的障壁の除去について規定されている。

2 中央心身障害者対策協議会を置くことが規定されている。

3 市町村の行う地域生活支援事業について規定されている。

4 心身障害者本人に対する自立への努力について規定されている。

5 市町村障害者計画の策定は,市町村の判断に委ねると規定されている。

 

「現行の」と加えているのが,特徴の問題です。

 

現在の規定に加えてどのように発展してきたのかを同時に学べるとてもよい問題だと思います。

 

同じような問題は,老人福祉法でも使われたことがあります。

 

この問題の正解は,選択肢1です。

1 社会的障壁の除去について規定されている。

 

これは2011年改正で規定されたものです。この改正は極めて重要です。障害者権利条約を批准するための改正だからです。

 

それでは,ほかの選択肢も確認します。

 

2 中央心身障害者対策協議会を置くことが規定されている。

 

中央心身障害者対策協議会は,以前のものです。

 

現在は,「障害者政策委員会」となっています。

この委員会は,障害者基本計画の実施状況を監視しています。

 

3 市町村の行う地域生活支援事業について規定されている。

 

地域生活支援事業を規定するのは,障害者総合支援法です。

 

4 心身障害者本人に対する自立への努力について規定されている。

 

自立への努力は,当初はありましたが,2004年改正で削除されています。

 

5 市町村障害者計画の策定は,市町村の判断に委ねると規定されている。

 

障害者計画の策定は,当初は任意でしたが,現在は,都道府県障害者計画とともに策定は義務となっています。

2020年12月23日水曜日

基幹相談支援センター

今回は,基幹相談支援センターを取り上げます。


基幹相談支援センターは,障害者総合支援法に規定され,市町村が設置することができます。

設置義務はないところが注意ポイントです。

介護保険法に規定される地域包括支援センターも同じく設置は任意です。

合わせて覚えておきたいです。


業務として,地域における相談支援の中核的な役割を担っています。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題61 「障害者総合支援法」における基幹相談支援センターに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会福祉士を置くことが義務づけられている。

2 総合的・専門的な相談支援を行う。

3 障害者支援施設の整備に関して都道府県と協議を行う。

4 包括的・継続的ケアマネジメント業務を行う。

5 介護予防ケアマネジメント業務を行う。


介護保険法が規定する地域包括支援センターと混同させるように出題されています。


地域包括支援センターに関するものは,以下の3つです。

1 社会福祉士を置くことが義務づけられている。

4 包括的・継続的ケアマネジメント業務を行う。

5 介護予防ケアマネジメント業務を行う。


正解は,選択肢2です。

2 総合的・専門的な相談支援を行う。


ものすごくシンプルな問題ですね。


障害福祉サービス

今回は,障害者総合支援法が規定する障害福祉サービスに関する問題を取り上げます。


まずは,問題です。


第28回・問題59 事例を読んで,F君が利用できる「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事例〕

 F君(9歳,男児)は,自閉症を伴う知的障害があり,特別支援学校小学部第3学年に在学中である。以前,障害福祉サービスの利用を申請し障害支援区分3(行動関連項目の合計点は10点)の認定を受けていたが,現在,サービスは利用していない。最近になって,時々激しい自傷行為や物を壊す行動がみられるようになり,両親は,F君が日常生活を安全に過ごす方法として障害福祉サービスの利用を検討している。

1 生活介護

2 重度訪問介護

3 療養介護

4 同行援護

5 行動援護


障害者総合支援法は,18歳以上の障害者を対象としていますが,障害児も利用できる障害福祉サービスがあります。


利用できるのは,

・居宅介護

・行動援護

・同行援護

・重度障害者等包括支援


利用できないのは,

介護給付のうち

・重度訪問介護

・施設入所支援

・生活介護

・療養介護


それと訓練等給付です。


ただし,重度訪問介護は,15歳以上なら利用できます。


この問題では,

 生活介護

2 重度訪問介護

3 療養介護


が消去できます。


残るは,

4 同行援護

5 行動援護


の2つです。


この2つは,ことばが似ているのでしっかり覚えましょう。


同行援護は,視覚に障害のある人が対象です。


F君は,視覚には障害がありません。


残るは,5 行動援護 です。


これが正解です。


行動援護は,判断能力の制限がある人を対象としています。F君に適したサービスだと言えるでしょう。


2020年12月22日火曜日

障害者福祉の歴史的発展

今回は,わが国の障害者福祉の歴史を取り上げます。


わが国の障害者福祉の始まりは,1949(昭和24)年の身体障害者福祉法だと言えるでしょう。


それ以前は,救貧制度の対象でした。


障害者の入所施設の始まりは,1960(昭和35)年の精神薄弱者福祉法(現在の知的障害者福祉法)です。


その後,1960年代に重度障害児・者の入所施設ができていきます。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題58 障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 身体障害者福祉法(1949年(昭和24年))では,国に身体障害者更生援護施設の設置が義務づけられた。

2 東京パラリンピック(1964年(昭和39年))の開催を契機に,知的障害者を対象としたスペシャルオリンピックスが法制化された。

3 社会福祉基礎構造改革の理念に基づき,大規模コロニー計画が進められた。

4 障害者基本法の改正(2004年(平成16年))で,同法による障害者の範囲に難病等の者も含まれるようになった。

5 「障害者総合支援法」の施行により,重度訪問介護の対象者が障害児にも拡大された。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。


勉強不足の人は,勘で正解できるような問題ではありません。

勉強している人も正解はそんなに簡単ではないでしょう。


なぜなら,正解はびっくりのものだからです。


1 身体障害者福祉法(1949年(昭和24年))では,国に身体障害者更生援護施設の設置が義務づけられた。


身体障害者更生援護施設という聞いたことのないものが出題されています。


聞いたことがないのは,当然だと言えるかもしれません。

なぜなら,現在は,「身体障害者社会参加支援施設」と名称が変わっているからです。


1950年当時,身体障害者更生援護施設として,以下の施設が規定されました。

①身体障害者更生指導施設

②中途失明者更生施設

③身体障害者収容授産施設

④義肢装具製作施設

⑤点字図書館

⑥点字出版施設


これらは覚える必要はありません。


このあと,1951年に社会福祉法人ができたことで,民間の身体障害者更生援護施設が設立されていくことになります。


それではほかの選択肢も見てみましょう。


2 東京パラリンピック(1964年(昭和39年))の開催を契機に,知的障害者を対象としたスペシャルオリンピックスが法制化された。


スペシャルオリンピックスが法制化されているなら,もっと有名なはずです。

必ず勉強の過程で出てきたはずです。

しかし,そうではありません。

なぜなら,法制化されていないからです。


3 社会福祉基礎構造改革の理念に基づき,大規模コロニー計画が進められた。


社会福祉基礎構造改革は,1990年代に行われたものです。


大規模コロニーは,1960年代から始まり,「社会福祉施設整備緊急5カ年計画」(1971~1950年)で広がっていきます。


4 障害者基本法の改正(2004年(平成16年))で,同法による障害者の範囲に難病等の者も含まれるようになった。


障害者基本法には,難病等は今でも入っていません。

なぜなら,障害者基本法は,施策の方向性を定めるものなので,サービスを規定するものではないからです。

障害者総合支援法で難病等が含まれた理由は,難病患者は,制度のはざまにあり,障害福祉制度を利用するのは困難だったためです。


5 「障害者総合支援法」の施行により,重度訪問介護の対象者が障害児にも拡大された。


障害児は今も対象には含まれません。

重度訪問介護の対象に加わったのは,重度の知的障害者と精神障害者です。

2020年12月21日月曜日

ICF(国際生活機能分類)

今回は,ICF(国際生活機能分類)を取り上げます。


 ICFに用いられている用語 

心身機能

身体系の生理的機能(心理的機能を含む)

身体構造

身体の解剖学的部分

機能障害

心身機能または身体構造上の問題

活動

課題や行為の個人による遂行のこと

参加

生活・人生場面への関わりのこと

活動制限

個人が活動を行うときに生じる難しさのこと

参加制約

個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと

環境因子

人々が生活し,人生を送っている物的な環境や社会的環境,人々の社会的な態度による環境を構成する因子のこと


背景因子には,環境因子のほかに個人因子がありますが,ICFでは,社会的・文化的に差があるため,定義づけしていません。しかし,それまでの人生の経験など個人的なものであることには間違いありません。

 

それでは,今日の問題です。

 

28回・問題57 事例を読んで,国際生活機能分類(ICF)の「参加制約」に該当するものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事例〕

 Eさん(49歳,男性)は,脳性麻痺で足が不自由なため,車いすを利用している。25年暮らした障害者支援施設を退所し1年がたつ。本日,どうしても必要な買物があるが,支援の調整が間に合わない。その場での支援が得られることを期待して,一人で出掛けた。店まで来たが,階段の前で動けずにいる。

1 脳性麻痺で足が不自由なこと

2 階段があること

3 支援なしで外出できること

4 店で買物ができないこと

5 障害者支援施設を退所したこと

 

「参加制約」を「個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと」とたように言葉だけで覚えていると,とても難しいと思うでしょう。

 

単純に「参加するのが難しいこと」と考えるとどうでしょう?

 

「参加」とはどのようなことを指すのか,正確にはわからなくても,何かに参加するということは推測できそうです。

 

この問題の正解は,選択肢4です。

 

4 店で買物ができないこと

 

「参加」は,「活動」とセットで覚えるべきものです。

 

たとえば「活動」は,店まで行くことです。

 そこに「買い物をする」という要素が加われば「参加」となります。


ただし,「活動」と「参加」は,明確に分けることができないので,「活動と参加」という一つのカテゴリーとなっています。


それでは,ほかの選択肢もみてみましょう。

 

1 脳性麻痺で足が不自由なこと

 

これはわかりやすいですね。機能障害です。

 

2 階段があること

 

階段があることは,環境因子です。

 

3 支援なしで外出できること

 

支援なしで外出できることは,活動と参加です。

 「できる」ということばから,「制約」は結び付かないでしょう。

 

5 障害者支援施設を退所したこと

 

これは,何だかわかりにくいですが,これが「個人因子」です。

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