福祉サービスの特徴は,サービスの提供とサービスの消費が同時に行われることです。
そのため,他からはサービスは見えにくいこともあり,標準化や評価がしにくいものです。
個々の能力によって差が生じがちです。
一般社会では,質の良いサービスは高い付加価値を持ち,高い価格で提供されます。
そして,低品質のものは,低い価格で提供されます。
ところが,法に規定された福祉サービスは,公定価格で提供されます。
どんなサービスであってもサービス価格は変わりません。
そのため,福祉サービスの提供者には,常に高い倫理性をもち,質の向上を求めた取り組みが求められます。
さて,今回のテーマは,形式知です。
福祉サービスは標準化しにくいものですが,標準化に向けた取り組みの一つが形式知です。
例えば,職人の世界では,先輩の背中を見て学ぶ,といったことが言われます。
また,仕事をしながら,仕事を教えていくOJTが実施されます。
それらを言語化したマニュアルにしたり,映像化したりすることで,いわゆる「見える化」を行うことが「形式知」です。
つまり,形式知とは,経験で培ったものを目に見えるものに変えていく取り組みを指します。
職場は,不思議なもので,低い方に標準化される傾向があります。
10人の職員がいたとき,1人が10の力をもち,他の9人が1の力しか持たない場合,19の力にならず,限りなく10に近くなります。
一人が力を持っていてもだめなのです。
その人が経験で得た見える化されていない「暗黙知」を「形式知」に変えていくことで,チーム力は高まっていきます。
さて,それでは今日の問題です。
第30回・問題125 人材育成や研修に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 経験学習モデルは,能動的実験・具体的経験と内省的観察・抽象的概念化との間の循環を否定している。
2 暗黙知と形式知の,共同化,表出化,連結化,内面化からなる循環的な変換過程は,組織の知識を創発するのに有効である。
3 OJTでは,職員の職務遂行能力は対象外である。
4 OFF- JTは,作業遂行の過程で行う訓練方法のことである。
5 エルダー制度は,新入社員のセルフラーニングを通じた自己啓発の仕組みである。
第30回は,合格基準点が99点という過去最高点になった回ですが,こんなに難しい問題が出題されています。
国試では必ずこのタイプの問題は出題されます。
しかし,落ち着いて問題を読めば,正解できます。
国試は,すべての科目で得点がなければならないという足切りが設定されています。
受験される方は,とても恐怖を覚えることでしょう。
しかし,落ち着いて問題を読めば,正解できます。
さて,問題に戻ると,答えは,
2 暗黙知と形式知の,共同化,表出化,連結化,内面化からなる循環的な変換過程は,組織の知識を創発するのに有効である。
何を言っているのかがわからないくらいに難しい文章です。
しかし,内容が分からなくても,この文章のように,「可能性」を示唆するものは,正解になる傾向があります。
しかし,この時点ではよくわからないので,冷静に△をつけておきます。
それでは,他の選択肢も見てみましょう。
1 経験学習モデルは,能動的実験・具体的経験と内省的観察・抽象的概念化との間の循環を否定している。
本当に否定するようなものを出題することは,出題する価値がありません。
国試は,社会福祉士の質向上を担保するための機能があります。
つまり覚えることが,価値のあることを出題します。
ここに気がつくことができれば,得点力は飛躍的に上がることでしょう。
3 OJTでは,職員の職務遂行能力は対象外である。
OJTは,職務の中で教育訓練を行う職場内教育です。
職務遂行能力を高めるために実施されます。
4 OFF- JTは,作業遂行の過程で行う訓練方法のことである。
OFF-JTは,仕事を離れて行う職場外教育です。
作業遂行の過程で行う訓練方法は,OJTです。
5 エルダー制度は,新入社員のセルフラーニングを通じた自己啓発の仕組みである。
エルダー制度のエルダーとは年長者のことです。
エルダー制度は,先輩が新人の指導担当者となり,教育していく制度です。
<今日の一言>
今日の問題で,正解する決め手は,OJTとOFF-JTを正しく覚えていることです。
エルダー制度も消去しにくいものなので,この問題の難易度を高めることとなっています。
しかし,先に書いたように「可能性」を示唆するものは正解になりやすいので,エルダー制度と形式知を比較すると,形式知の方が正解になる可能性が高いという判断ができることでしょう。
2019年8月31日土曜日
2019年8月30日金曜日
人事考課の留意点~評価のエラー
人事考課とは,職員の能力評価をいいます。
目標管理と合わせて実施されます。
一般企業では,ボーナス支給の際の査定に用いられることもよくあります。
人事考課を行う役割を担う人のことは,考課者といいます。
人を適切に評価することは,かなり難しいものです。
人事考課を実施するうえで,考課者が留意しなければならないものとして,以下のようなものが挙げられます。
<人事考課の留意点>
ハロー効果
ある部分の評価が全体に影響すること。後光効果,光背効果ともいいます。「後光がさす」という表現もありますが,人が後ろから照らされると,その人は輝いて見えます。環のようなものを背負っている仏像があります。それが後光(光背)です。後光があると,仏像がより神秘的に見えて,より輝きを増します。昔の仏師が後光の効果を知っていたというのは驚きです。
対比誤差
考課者と反対の傾向を持つ人を評価する際,その人により高い評価をつけたり,逆により低い評価をつけることをいいます。例えば,期限厳守を信条としている人が評価すると,期限厳守の人をより高い評価をつけて,時間にルーズな人をより低い評価をつけることが対比誤差です。
寛大化
より高い評価をつけること。考課者が人を評価することに自信がない時に,寛大化が起きやすくなります。
厳罰化
より厳しい評価をつけること。管理者として「スタッフは●●でなければならない」という強い思いがあると,厳しい評価になりがちです。
中心化
評価スケールが1~5まであった場合,3を中心として,2や4に評価が集まることをいいます。本来は,グーンと高い評価や低い評価になるべきものが,平均的な傾向となることです。
先入観
考課者の色眼鏡で評価してしまうこと。この人はいつも●●だから今回も●●だろうと思ってしまうことがあります。
以上は,人事考課の際の留意点の一部です。これらに気を付けないと正しい評価にならない,いわゆる評価のエラーが発生します。
上記の中で,特にしっかり覚えておきたいのは,ハロー効果です。
それでは今日の問題です。
第27回・問題123 人材の確保・育成に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 採用計画の立案に当たっては,社員の数という量だけでなく,資格や経験などの職業能力の質についても考慮する。
2 ハロー効果とは,評価者自身と反対の特性を持つ者を過大又は過小に評価するエラーのことである。
3 人事考課などの評価の結果については,苦情が出やすいため,フィードバックの面接は行ってはならない。
4 目標管理制度では,個人の嗜好に合わせて自由に目標を設定させなければならない。
5 計画的な人事異動であるジョブ・ローテーションは,人材育成を目的としたものではない。
正解は,1
1 採用計画の立案に当たっては,社員の数という量だけでなく,資格や経験などの職業能力の質についても考慮する。
言われてみると,その通りだと思うでしょう。
しかし,国試では5つの選択肢がそれぞれ影響しあい,簡単に正解することを拒みます。
それでは,ほかの選択肢もみていきましょう。
2 ハロー効果とは,評価者自身と反対の特性を持つ者を過大又は過小に評価するエラーのことである。
ハロー効果は,一つの部分がほかの部分にも影響を与えるものです。
ある部分が好ましく思えば,ほかの部分は大したことがなくても,良い評価となります。
逆に,ある部分の評価が良ければ,ほかに優れている部分があっても,良い評価になりません。
評価者自身と反対の特性を持つ者を過大又は過小に評価するエラーのことは,対比誤差といいます。
3 人事考課などの評価の結果については,苦情が出やすいため,フィードバックの面接は行ってはならない。
人事考課の評価は,フィードバックの面接を行います。
評価の内容について,苦情が出るのであれば,その評価は適切ではないということになります。
人事考課は,能力開発の方法の一つです。
「あなたをこのように評価しました。こういったところに気を付けたらよりよいでしょう」ということを伝える必要があります。
評価するだけして,どのような評価がされたのかが分からなければ,能力開発につながりませんし,不満にもつながることでしょう。
4 目標管理制度では,個人の嗜好に合わせて自由に目標を設定させなければならない。
個人目標は,職場の目標に合わせて設定されます。
上記は,以前にご紹介した経営戦略の概念図です。
個人目標がどのような位置にあるのかを理解しておきましょう。
すべては,組織の使命(ミッション)から始まります。
それぞれは独立しているものではなく,上位にあるものを具現化していくのが,下位のものとなります。
たとえば,今年度の部門目標として,「接遇の強化」が掲げられていたとしたら,接遇の強化に関連した個人目標を立てなければなりません。
それが,個人目標は職場の目標に合わせて設定するという意味です。
5 計画的な人事異動であるジョブ・ローテーションは,人材育成を目的としたものではない。
ジョブ・ローテーションは,人材育成を目的としたものです。
<今日の一言>
今日の問題の難易度は,中の下くらいだと思います。
落ち着いて問題を解くことができれば,かなりの確率で正解できることでしょう。
国試問題の多くは,このくらいの難易度で作られます。
一つひとつを丁寧に分解すると,とてもシンプルな問題であることがわかることでしょう。
しかし,先述のように,選択肢は,それぞれが独立しているものではなく,5つの選択肢が影響し合っています。
勉強したことがない選択肢が含まれると,そこで混乱し,落ち着いて問題を読むことができなくなります。
一問一答式の参考書があります。一つひとつを確実に覚えるには良いものだと思います。
しかし,国試は一問一答式ではありません。5つの選択肢の中から答えを選び出すことが必要です。
一問一答式で勉強していても,最終的には,国試問題に合わせて問題を解く練習が必要となります。
目標管理と合わせて実施されます。
一般企業では,ボーナス支給の際の査定に用いられることもよくあります。
人事考課を行う役割を担う人のことは,考課者といいます。
人を適切に評価することは,かなり難しいものです。
人事考課を実施するうえで,考課者が留意しなければならないものとして,以下のようなものが挙げられます。
<人事考課の留意点>
ハロー効果
ある部分の評価が全体に影響すること。後光効果,光背効果ともいいます。「後光がさす」という表現もありますが,人が後ろから照らされると,その人は輝いて見えます。環のようなものを背負っている仏像があります。それが後光(光背)です。後光があると,仏像がより神秘的に見えて,より輝きを増します。昔の仏師が後光の効果を知っていたというのは驚きです。
対比誤差
考課者と反対の傾向を持つ人を評価する際,その人により高い評価をつけたり,逆により低い評価をつけることをいいます。例えば,期限厳守を信条としている人が評価すると,期限厳守の人をより高い評価をつけて,時間にルーズな人をより低い評価をつけることが対比誤差です。
寛大化
より高い評価をつけること。考課者が人を評価することに自信がない時に,寛大化が起きやすくなります。
厳罰化
より厳しい評価をつけること。管理者として「スタッフは●●でなければならない」という強い思いがあると,厳しい評価になりがちです。
中心化
評価スケールが1~5まであった場合,3を中心として,2や4に評価が集まることをいいます。本来は,グーンと高い評価や低い評価になるべきものが,平均的な傾向となることです。
先入観
考課者の色眼鏡で評価してしまうこと。この人はいつも●●だから今回も●●だろうと思ってしまうことがあります。
以上は,人事考課の際の留意点の一部です。これらに気を付けないと正しい評価にならない,いわゆる評価のエラーが発生します。
上記の中で,特にしっかり覚えておきたいのは,ハロー効果です。
それでは今日の問題です。
第27回・問題123 人材の確保・育成に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 採用計画の立案に当たっては,社員の数という量だけでなく,資格や経験などの職業能力の質についても考慮する。
2 ハロー効果とは,評価者自身と反対の特性を持つ者を過大又は過小に評価するエラーのことである。
3 人事考課などの評価の結果については,苦情が出やすいため,フィードバックの面接は行ってはならない。
4 目標管理制度では,個人の嗜好に合わせて自由に目標を設定させなければならない。
5 計画的な人事異動であるジョブ・ローテーションは,人材育成を目的としたものではない。
正解は,1
1 採用計画の立案に当たっては,社員の数という量だけでなく,資格や経験などの職業能力の質についても考慮する。
言われてみると,その通りだと思うでしょう。
しかし,国試では5つの選択肢がそれぞれ影響しあい,簡単に正解することを拒みます。
それでは,ほかの選択肢もみていきましょう。
2 ハロー効果とは,評価者自身と反対の特性を持つ者を過大又は過小に評価するエラーのことである。
ハロー効果は,一つの部分がほかの部分にも影響を与えるものです。
ある部分が好ましく思えば,ほかの部分は大したことがなくても,良い評価となります。
逆に,ある部分の評価が良ければ,ほかに優れている部分があっても,良い評価になりません。
評価者自身と反対の特性を持つ者を過大又は過小に評価するエラーのことは,対比誤差といいます。
3 人事考課などの評価の結果については,苦情が出やすいため,フィードバックの面接は行ってはならない。
人事考課の評価は,フィードバックの面接を行います。
評価の内容について,苦情が出るのであれば,その評価は適切ではないということになります。
人事考課は,能力開発の方法の一つです。
「あなたをこのように評価しました。こういったところに気を付けたらよりよいでしょう」ということを伝える必要があります。
評価するだけして,どのような評価がされたのかが分からなければ,能力開発につながりませんし,不満にもつながることでしょう。
4 目標管理制度では,個人の嗜好に合わせて自由に目標を設定させなければならない。
個人目標は,職場の目標に合わせて設定されます。
上記は,以前にご紹介した経営戦略の概念図です。
個人目標がどのような位置にあるのかを理解しておきましょう。
すべては,組織の使命(ミッション)から始まります。
それぞれは独立しているものではなく,上位にあるものを具現化していくのが,下位のものとなります。
たとえば,今年度の部門目標として,「接遇の強化」が掲げられていたとしたら,接遇の強化に関連した個人目標を立てなければなりません。
それが,個人目標は職場の目標に合わせて設定するという意味です。
5 計画的な人事異動であるジョブ・ローテーションは,人材育成を目的としたものではない。
ジョブ・ローテーションは,人材育成を目的としたものです。
<今日の一言>
今日の問題の難易度は,中の下くらいだと思います。
落ち着いて問題を解くことができれば,かなりの確率で正解できることでしょう。
国試問題の多くは,このくらいの難易度で作られます。
一つひとつを丁寧に分解すると,とてもシンプルな問題であることがわかることでしょう。
しかし,先述のように,選択肢は,それぞれが独立しているものではなく,5つの選択肢が影響し合っています。
勉強したことがない選択肢が含まれると,そこで混乱し,落ち着いて問題を読むことができなくなります。
一問一答式の参考書があります。一つひとつを確実に覚えるには良いものだと思います。
しかし,国試は一問一答式ではありません。5つの選択肢の中から答えを選び出すことが必要です。
一問一答式で勉強していても,最終的には,国試問題に合わせて問題を解く練習が必要となります。
2019年8月29日木曜日
OJTってなんだ?
今回から「福祉サービス提供組織における人材養成」を取り上げます。
専門用語やカタカナ語を覚えなければならないので,好き嫌いがはっきり分かれるところでしょう。
つまり,差が生まれるところです。
それだけにしっかりケアしておきたいです。
今回は,OJTとOFF-JTを学びましょう。
OJTは,仕事をしながら学ぶこと。
OFF-JTは,仕事を離れて学ぶこと。
OFF-JTは,勤務時間外に行うものと,職場を離れて行うものに分かれます。
職場で行っても,OJTとOFF-JTがあることに注意が必要です。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題115 福祉サービス提供組織における人材養成と確保に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 OJT(On-the-Job-Training)とは,教育訓練の方法の一つであり,職場を離れて行う職務教育訓練方法のことである。
2 OFF-JT(Off-the-Job-Training)とは,教育訓練の方法の一つであり,作業遂行の過程で中断・再開して行う訓練方法のことである。
3 教育訓練の方法の一つである自己啓発は,職場における上司などの直接の指導を受けながら行う能力開発の方法である。
4 人事考課における考課者の判断は,客観的な評価要素を定めて明確な定義づけを行っていれば,ハロー効果(halo effect)や寛大化の誤差(leniency error)などの影響を受けることはない。
5 ジョブ・ローテーション(job-rotadon)の目的の一つは,同じ仕事に長く従事することによって生じるマンネリズムを防止することである。
現在のカリキュラムで実施された国家試験の一回目の問題です。
第22回国試の問題は,これからこのような問題を出題していきますよ,といったことを示しているので,とても重要な問題に位置づけられます。
難しそうに見えますが,答えはジョブ・ローテーションです。
国試は,多くの人が思っているほど複雑にはつくられていません。
そして,何よりもおかしな引っ掛けはつくられません。
試験委員の方々は,本当に真摯に問題を作っていると思います。
ほかの選択肢も確認してみましょう。
1 OJT(On-the-Job-Training)とは,教育訓練の方法の一つであり,職場を離れて行う職務教育訓練方法のことである。
職場を離れて行うのは,OFF-JTです。
2 OFF-JT(Off-the-Job-Training)とは,教育訓練の方法の一つであり,作業遂行の過程で中断・再開して行う訓練方法のことである。
仕事中に行うのは,OJTです。
3 教育訓練の方法の一つである自己啓発は,職場における上司などの直接の指導を受けながら行う能力開発の方法である。
自己啓発は,自分自身で能力開発を行うことです。
あやしげな自己啓発セミナーもありますね。
4 人事考課における考課者の判断は,客観的な評価要素を定めて明確な定義づけを行っていれば,ハロー効果(halo effect)や寛大化の誤差(leniency error)などの影響を受けることはない。
ハロー効果は,一つの部分がほかの部分にも影響を与えるものです。
ある部分が好ましく思えば,ほかの部分は大したことがなくても,良い評価となります。
逆に,ある部分の評価が良ければ,ほかに優れている部分があっても,良い評価になりません。
寛大化の誤差は,高い評価をつけてしまうことをいいます。考課者に自信がないと,そのこの傾向が強まります。
これらでわかるように,評価基準が明確であっても,考課者によって評価が変わります。
そのために,人事考課を行う場合は,考課者に対する訓練は欠かせません。この訓練は考課者訓練といいます。
<今日の一言>
国試は,多くの人が思っているほど複雑にはつくられていません。
裏があるのではないかと変な勘繰りをすると,深みにはまります。
多くの場合は,裏はありません。
この傾向は,この時から今に至るまで変わりません。
素直な気持ちで問題に取り組むことが大切です。
専門用語やカタカナ語を覚えなければならないので,好き嫌いがはっきり分かれるところでしょう。
つまり,差が生まれるところです。
それだけにしっかりケアしておきたいです。
今回は,OJTとOFF-JTを学びましょう。
OJTは,仕事をしながら学ぶこと。
OFF-JTは,仕事を離れて学ぶこと。
OFF-JTは,勤務時間外に行うものと,職場を離れて行うものに分かれます。
職場で行っても,OJTとOFF-JTがあることに注意が必要です。
それでは,今日の問題です。
第22回・問題115 福祉サービス提供組織における人材養成と確保に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 OJT(On-the-Job-Training)とは,教育訓練の方法の一つであり,職場を離れて行う職務教育訓練方法のことである。
2 OFF-JT(Off-the-Job-Training)とは,教育訓練の方法の一つであり,作業遂行の過程で中断・再開して行う訓練方法のことである。
3 教育訓練の方法の一つである自己啓発は,職場における上司などの直接の指導を受けながら行う能力開発の方法である。
4 人事考課における考課者の判断は,客観的な評価要素を定めて明確な定義づけを行っていれば,ハロー効果(halo effect)や寛大化の誤差(leniency error)などの影響を受けることはない。
5 ジョブ・ローテーション(job-rotadon)の目的の一つは,同じ仕事に長く従事することによって生じるマンネリズムを防止することである。
現在のカリキュラムで実施された国家試験の一回目の問題です。
第22回国試の問題は,これからこのような問題を出題していきますよ,といったことを示しているので,とても重要な問題に位置づけられます。
難しそうに見えますが,答えはジョブ・ローテーションです。
国試は,多くの人が思っているほど複雑にはつくられていません。
そして,何よりもおかしな引っ掛けはつくられません。
試験委員の方々は,本当に真摯に問題を作っていると思います。
ほかの選択肢も確認してみましょう。
1 OJT(On-the-Job-Training)とは,教育訓練の方法の一つであり,職場を離れて行う職務教育訓練方法のことである。
職場を離れて行うのは,OFF-JTです。
2 OFF-JT(Off-the-Job-Training)とは,教育訓練の方法の一つであり,作業遂行の過程で中断・再開して行う訓練方法のことである。
仕事中に行うのは,OJTです。
3 教育訓練の方法の一つである自己啓発は,職場における上司などの直接の指導を受けながら行う能力開発の方法である。
自己啓発は,自分自身で能力開発を行うことです。
あやしげな自己啓発セミナーもありますね。
4 人事考課における考課者の判断は,客観的な評価要素を定めて明確な定義づけを行っていれば,ハロー効果(halo effect)や寛大化の誤差(leniency error)などの影響を受けることはない。
ハロー効果は,一つの部分がほかの部分にも影響を与えるものです。
ある部分が好ましく思えば,ほかの部分は大したことがなくても,良い評価となります。
逆に,ある部分の評価が良ければ,ほかに優れている部分があっても,良い評価になりません。
寛大化の誤差は,高い評価をつけてしまうことをいいます。考課者に自信がないと,そのこの傾向が強まります。
これらでわかるように,評価基準が明確であっても,考課者によって評価が変わります。
そのために,人事考課を行う場合は,考課者に対する訓練は欠かせません。この訓練は考課者訓練といいます。
<今日の一言>
国試は,多くの人が思っているほど複雑にはつくられていません。
裏があるのではないかと変な勘繰りをすると,深みにはまります。
多くの場合は,裏はありません。
この傾向は,この時から今に至るまで変わりません。
素直な気持ちで問題に取り組むことが大切です。
2019年8月28日水曜日
社会福祉法人の財務管理~まとめとして
社会福祉法人が作成しなければならない財務諸表は以下の3種類の計算書類です。
①貸借対照表
②事業活動計算書
③資金収支計算書
この3つの書類の区別は,理解できるようになりましたか?
左側は借方で,資産を記載します。
右側は借方で,負債と純資産を記載します。
左側(借方)の合計と右側(貸方)の合計は同額となります。
あと覚えておかなければならないのは
直接金融・・・間接金融
収益・・・・・利益 です。
説明できますか?
財務管理に対する苦手意識は払しょくできそうですか?
①貸借対照表
②事業活動計算書
③資金収支計算書
この3つの書類の区別は,理解できるようになりましたか?
計算書類
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目的
|
貸借対照表
|
当該会計年度末(ある時点)の財政状態を明らかにするもの。
|
事業活動計算書
|
当該会計年度(ある一定期間)の収益と費用を計算するもの。
「純資産」の増減を明らかにする。
|
資金収支計算書
|
当該会計年度(ある一定期間)の資金繰りを計算して,「支払資金」と呼ばれる運転資金(貸借対照表の流動資産と流動負債の差)の増減を明らかにするもの。
|
ここから,
当該会計年度末(あるいはある時点)
当該会計年度末(あるいはある時点)
当該会計年度(あるいはある一定期間)
を区別し,
当該会計年度末(あるいはある時点)なら,貸借対照表
当該会計年度(あるいはある一定期間)なら,事業活動計算書,又は資金収支計算書
と判断できます。
事業活動計算書と資金収支計算書の見分け方は
事業活動計算書は,純資産の増減
資金収支計算書は,支払資金の増減
最も多く出題されているのは,「貸借対照表」です。事業活動計算書は一回しか出題されたことはありません。
貸借対照表の復習です。
(自)●年●月●日(至)●年●月●日
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借方
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貸方
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資産の部
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負債の部
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資産
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負債
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流動資産
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流動負債
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固定資産
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固定負債
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負債の部合計
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純資産の部
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純資産
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基本金
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国庫補助金等特別積立金
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その他の積立金
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純資産の合計
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資産の部合計
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負債の部及び純資産の部合計
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左側は借方で,資産を記載します。
右側は借方で,負債と純資産を記載します。
左側(借方)の合計と右側(貸方)の合計は同額となります。
あと覚えておかなければならないのは
直接金融・・・間接金融
収益・・・・・利益 です。
説明できますか?
財務管理に対する苦手意識は払しょくできそうですか?
2019年8月27日火曜日
社会福祉法人の財務管理~資金調達
新しいカリキュラムは,第37回から実施されます。
カリキュラム改正に向けての検討会の報告が遅れに遅れ,当初の予定では最短で第33回国試から新しいものに移行することになっていましたが,結局第37回となりました。
新しいカリキュラムに移行するまでたっぷり過ぎる時間がありますが,できるため早めに合格したいです。
新しいカリキュラムの内容では,以下のような内容が示されています。
着目すべき点は,資金調達に関する内容が含まれていることです。
ファンドレイジングは,資金集めと訳されます。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題121 福祉サービス提供組織の財務管理と資金調達に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 純資産の具体的中身は,土地や建物等である。
2 貸借対照表の借方は,資金運用方法を示す。
3 非営利組織は株式発行による資金調達ができる。
4 金融機関からの借入れを直接金融という。
5 会計上,収益とは利益を指す。
もう気づいた方もいると思いますが,資金調達について出題されています。
今後は,ファンドレイジングも出題される可能性はあると思います。
一応言葉だけ覚えておきましょう。
なぜ言葉だけでよいというかと言えば,初めて出題されるときは,ほかの選択肢を消去できるようになっていることが多いからです。
さて,この問題の正解は,
2 貸借対照表の借方は,資金運用方法を示す。
これを正解にするのは,ちょっと難しいと思います。
ほかの選択肢を消去することで,結果的にこの選択肢が残るタイプの問題だと言えます。
借方は,資産を記載します。
資産には,固定資産と流動資産があります。
その中には,
現金預金
有価証券
などが計上され,資産がどのように運用されているかを表わします。
この問題が「資金運用方法」ではなく,資産の内容といったように出題されていれば,すぐ正解できたのではないかと思います。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 純資産の具体的中身は,土地や建物等である。
今まで,説明しませんでしたが,借方(左側),貸方(右側)の下の部分の合計は,同じ数字になります。
もし異なっていれば,どこか数字が間違っていることを意味します。
そうすると検算できますね。
借方と貸方の合計が同じなので,以下のような計算式ができます。
資産=負債+純資産
負債=資産-純資産
純資産=資産-負債
こんな計算式を知らなくても,純資産には,現金や有価証券等も含まれるだろうと想像することができます。
3 非営利組織は株式発行による資金調達ができる。
新カリで含まれる「資金調達」に関する出題です。
非営利組織の「非営利」とは,利益の分配ができないことを意味します。
株式発行は,営利組織である資金調達方法です。
株式を発行して,利益を配当します。
4 金融機関からの借入れを直接金融という。
またまたの出題です。
金融機関からの借り入れは,間接金融です。
5 会計上,収益とは利益を指す。
利益は,収益から費用を引いたものです。
<今日の一言>
気づいた人もいるかもしれませんが,第28回と今日の問題は似ています。
第28回
会計や経営に関する次の記述のうち正しいものを1つ選びなさい。
1 直接金融とは,銀行などの金融機関から直接借入れることを指す。
2 貸借対照表の借方とは,どこから資金を調達したかを示し,貸方とは,どのように資金を使用しているかを示す。
3 減価償却とは,固定資産(土地と建設仮勘定を除く)の取得原価を,その耐用年数にわたって費用化する手続である。
4 社会福祉法人のうち,収益が10億円未満の法人には財務諸表開示の義務がない。
5 会計用語上,収益と利益は同一である。
第31回
福祉サービス提供組織の財務管理と資金調達に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 純資産の具体的中身は,土地や建物等である。
2 貸借対照表の借方は,資金運用方法を示す。
3 非営利組織は株式発行による資金調達ができる。
4 金融機関からの借入れを直接金融という。
5 会計上,収益とは利益を指す。
しかし,完全に同じではありません。
少しずつ重なっていて,少しずつ違うのが国試です。
過去3年間の過去問では得点できる力がつかないことは一目瞭然です。
過去3年間の過去問を3回解いたら合格できるよ
なんて無責任なことを言う人が存在しますが,今の国試は絶対にそれでは合格できる知識も得点力もつきません。
そんな勉強で合格できるなら,合格率30%ということになるはずがありません。
それで合格できたと人がいたとしたら,それは極めてケアケースです。
カリキュラム改正に向けての検討会の報告が遅れに遅れ,当初の予定では最短で第33回国試から新しいものに移行することになっていましたが,結局第37回となりました。
新しいカリキュラムに移行するまでたっぷり過ぎる時間がありますが,できるため早めに合格したいです。
新しいカリキュラムの内容では,以下のような内容が示されています。
教育に含むべき事項
|
想定される教育内容の例
|
|
③福祉サービス提供組織の実際
|
5会計管理と財務管理
|
・財務諸表の理解,財務規律の強化
・自主財源,寄付金,各種制度に基づく報酬
・資金調達,ファンドレイジング
・資金運用,利益管理
|
着目すべき点は,資金調達に関する内容が含まれていることです。
ファンドレイジングは,資金集めと訳されます。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題121 福祉サービス提供組織の財務管理と資金調達に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 純資産の具体的中身は,土地や建物等である。
2 貸借対照表の借方は,資金運用方法を示す。
3 非営利組織は株式発行による資金調達ができる。
4 金融機関からの借入れを直接金融という。
5 会計上,収益とは利益を指す。
もう気づいた方もいると思いますが,資金調達について出題されています。
今後は,ファンドレイジングも出題される可能性はあると思います。
一応言葉だけ覚えておきましょう。
なぜ言葉だけでよいというかと言えば,初めて出題されるときは,ほかの選択肢を消去できるようになっていることが多いからです。
さて,この問題の正解は,
2 貸借対照表の借方は,資金運用方法を示す。
これを正解にするのは,ちょっと難しいと思います。
ほかの選択肢を消去することで,結果的にこの選択肢が残るタイプの問題だと言えます。
借方は,資産を記載します。
資産には,固定資産と流動資産があります。
その中には,
現金預金
有価証券
などが計上され,資産がどのように運用されているかを表わします。
この問題が「資金運用方法」ではなく,資産の内容といったように出題されていれば,すぐ正解できたのではないかと思います。
それでは,ほかの選択肢も確認します。
1 純資産の具体的中身は,土地や建物等である。
(自)●年●月●日(至)●年●月●日
|
|
借方
|
貸方
|
資産の部
|
負債の部
|
資産
|
負債
|
流動資産
|
流動負債
|
固定資産
|
固定負債
|
負債の部合計
|
|
純資産の部
|
|
純資産
|
|
基本金
|
|
国庫補助金等特別積立金
|
|
その他の積立金
|
|
純資産の合計
|
|
資産の部合計
|
負債の部及び純資産の部合計
|
今まで,説明しませんでしたが,借方(左側),貸方(右側)の下の部分の合計は,同じ数字になります。
もし異なっていれば,どこか数字が間違っていることを意味します。
そうすると検算できますね。
借方と貸方の合計が同じなので,以下のような計算式ができます。
資産=負債+純資産
負債=資産-純資産
純資産=資産-負債
こんな計算式を知らなくても,純資産には,現金や有価証券等も含まれるだろうと想像することができます。
3 非営利組織は株式発行による資金調達ができる。
新カリで含まれる「資金調達」に関する出題です。
非営利組織の「非営利」とは,利益の分配ができないことを意味します。
株式発行は,営利組織である資金調達方法です。
株式を発行して,利益を配当します。
4 金融機関からの借入れを直接金融という。
またまたの出題です。
金融機関からの借り入れは,間接金融です。
5 会計上,収益とは利益を指す。
利益は,収益から費用を引いたものです。
<今日の一言>
気づいた人もいるかもしれませんが,第28回と今日の問題は似ています。
第28回
会計や経営に関する次の記述のうち正しいものを1つ選びなさい。
1 直接金融とは,銀行などの金融機関から直接借入れることを指す。
2 貸借対照表の借方とは,どこから資金を調達したかを示し,貸方とは,どのように資金を使用しているかを示す。
3 減価償却とは,固定資産(土地と建設仮勘定を除く)の取得原価を,その耐用年数にわたって費用化する手続である。
4 社会福祉法人のうち,収益が10億円未満の法人には財務諸表開示の義務がない。
5 会計用語上,収益と利益は同一である。
第31回
福祉サービス提供組織の財務管理と資金調達に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 純資産の具体的中身は,土地や建物等である。
2 貸借対照表の借方は,資金運用方法を示す。
3 非営利組織は株式発行による資金調達ができる。
4 金融機関からの借入れを直接金融という。
5 会計上,収益とは利益を指す。
しかし,完全に同じではありません。
少しずつ重なっていて,少しずつ違うのが国試です。
過去3年間の過去問では得点できる力がつかないことは一目瞭然です。
過去3年間の過去問を3回解いたら合格できるよ
なんて無責任なことを言う人が存在しますが,今の国試は絶対にそれでは合格できる知識も得点力もつきません。
そんな勉強で合格できるなら,合格率30%ということになるはずがありません。
それで合格できたと人がいたとしたら,それは極めてケアケースです。
2019年8月26日月曜日
社会福祉法人の財務管理~社会福祉充実残額
2016年に改正された社会福祉法は,社会福祉法人の経営のガバナンスと透明性の強化を目指したものです。
社会福祉法人は,利益の配当が認められていないために,赤字経営ではない限り,過去の利益は蓄積していきます。これは以前に出題されていましたね。
そこで,この改革では,厚生労働省が定めた額以上の社会福祉充実残額がある社会福祉法人に対して,その使い道を定める社会福祉充実計画の作成を義務付けました。
それでは今日の問題です。
第30回・問題122 社会福祉法人の財務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 再投下可能な財産(社会福祉充実残額)を算定しなければならない。
2 土地は,減価償却の対象となる資産である。
3 財務会計は,組織内での使用を目的とする。
4 財務諸表に関する開示義務はない。
5 役員の報酬等の支給の基準を公表する義務はない。
社会福祉法人改革にかかわる出題です。
今見返してみると,過去最高の合格基準点となった第30回国試らしい問題だと思います。
具体的にいうと,簡単であるということです。
正解は,
1 再投下可能な財産(社会福祉充実残額)を算定しなければならない。
これを正解にする意図は正しいと思います。
しかし,ほかの選択肢があまりにも簡単すぎます。
それでは,ほかの問題も確認していきましょう。
2 土地は,減価償却の対象となる資産である。
この問題で注意しなければならないのは,この選択肢です。
土地は減価償却の対象にはなりません。
しかし,今までの出題に比べると格段にやさしくなっています。
第23回
減価償却とは,長期間にわたって使用される固定資産の取得に要した支出を,その資産が使用できる期間にわたって費用配分する会計上の手続きであり,福祉サービスのために利用する土地や建物もその対象となる。
第27回
財務諸表では,「土地」のように価値が上下する資産については,毎期一定の方法により償却計算を行わなくてはならない。
第29回
減価償却費はコストであるため,法人外部に資金流出する。
第30回
土地は,減価償却の対象となる資産である。
4回を並べてみると,第23回が最も長い文章で構成されていて,だんだん短くなっていることがわかります。
問題文が短くなればなるだけ,引っ掛けポイントが少なくなるので,勉強した人はわかりやすくなります。
3 財務会計は,組織内での使用を目的とする。
財務会計はもちろん内部での使用を目的としていますが,対外的な説明責任を果たすためにも用いられます。
4 財務諸表に関する開示義務はない。
以前は,財務諸表は事業所に備え付けていればよかったですが,法改正により,インターネットでの公表が義務付けられています。
そのため,ネットで検索すると,たくさんヒットすると思います。
それよりも,義務のないものをわざわざ出題する必要がありません。
5 役員の報酬等の支給の基準を公表する義務はない。
法改正によって,役員の報酬等の支給の基準の公表が義務づけられています。
これも選択肢4と同様に,義務のないものをわざわざ出題する必要がありません。
<今日の一言>
減価償却のところでも書きましたが,魔の第25回国試以降,年々問題の文字数が少なくなっていきました。
その傾向を改めるきっかけになったのが,第30回国試です。
過去最低の合格基準点となった第25回とは逆に,第30回国試は過去最高となりました。
90点を基準にすると
第25回は,マイナス18点
第30回は,プラス9点
現時点で直近の国試である第31回は,第28回国試問題レベルまで文字数が増えました。
そのことによって
合格基準点は89点となりました。
これだけ振れ幅が違うと,どんな勉強をすればよいかわからなくなる人も出てくることでしょう。
合格基準点が上下するのは,問題の難易度によるものです。
合格できるのは,上位30%のみです。
いかに上位30%に入るかが重要です。
しかし,今は第30回国試よりも文字数が長くなったとは言え,第25回国試と比べると短いです。
そのため,勉強した人は,点数が取れる問題となっています。
国試は,勉強した人が得点できて,勉強が足りない人は得点できない問題でなければなりません。
そういった意味で,今はバランスが取れている問題が出題される傾向にあります。
そこで重要なのは,取れる問題は確実に得点することです。
国試問題には,出題の癖があるので,解答テクニックでもある程度の点数が取れます。
過去問を解くときは,出題の癖を考えながら解くようにしましょう。
つまらないミスは命取りになります。
つまらないミスとは,今日の問題で言えば,選択肢4や5をしてしまうことをいいます。
社会福祉法人は,利益の配当が認められていないために,赤字経営ではない限り,過去の利益は蓄積していきます。これは以前に出題されていましたね。
そこで,この改革では,厚生労働省が定めた額以上の社会福祉充実残額がある社会福祉法人に対して,その使い道を定める社会福祉充実計画の作成を義務付けました。
それでは今日の問題です。
第30回・問題122 社会福祉法人の財務に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 再投下可能な財産(社会福祉充実残額)を算定しなければならない。
2 土地は,減価償却の対象となる資産である。
3 財務会計は,組織内での使用を目的とする。
4 財務諸表に関する開示義務はない。
5 役員の報酬等の支給の基準を公表する義務はない。
社会福祉法人改革にかかわる出題です。
今見返してみると,過去最高の合格基準点となった第30回国試らしい問題だと思います。
具体的にいうと,簡単であるということです。
正解は,
1 再投下可能な財産(社会福祉充実残額)を算定しなければならない。
これを正解にする意図は正しいと思います。
しかし,ほかの選択肢があまりにも簡単すぎます。
それでは,ほかの問題も確認していきましょう。
2 土地は,減価償却の対象となる資産である。
この問題で注意しなければならないのは,この選択肢です。
土地は減価償却の対象にはなりません。
しかし,今までの出題に比べると格段にやさしくなっています。
第23回
減価償却とは,長期間にわたって使用される固定資産の取得に要した支出を,その資産が使用できる期間にわたって費用配分する会計上の手続きであり,福祉サービスのために利用する土地や建物もその対象となる。
第27回
財務諸表では,「土地」のように価値が上下する資産については,毎期一定の方法により償却計算を行わなくてはならない。
第29回
減価償却費はコストであるため,法人外部に資金流出する。
第30回
土地は,減価償却の対象となる資産である。
4回を並べてみると,第23回が最も長い文章で構成されていて,だんだん短くなっていることがわかります。
問題文が短くなればなるだけ,引っ掛けポイントが少なくなるので,勉強した人はわかりやすくなります。
3 財務会計は,組織内での使用を目的とする。
財務会計はもちろん内部での使用を目的としていますが,対外的な説明責任を果たすためにも用いられます。
4 財務諸表に関する開示義務はない。
以前は,財務諸表は事業所に備え付けていればよかったですが,法改正により,インターネットでの公表が義務付けられています。
そのため,ネットで検索すると,たくさんヒットすると思います。
それよりも,義務のないものをわざわざ出題する必要がありません。
5 役員の報酬等の支給の基準を公表する義務はない。
法改正によって,役員の報酬等の支給の基準の公表が義務づけられています。
これも選択肢4と同様に,義務のないものをわざわざ出題する必要がありません。
<今日の一言>
減価償却のところでも書きましたが,魔の第25回国試以降,年々問題の文字数が少なくなっていきました。
その傾向を改めるきっかけになったのが,第30回国試です。
過去最低の合格基準点となった第25回とは逆に,第30回国試は過去最高となりました。
90点を基準にすると
第25回は,マイナス18点
第30回は,プラス9点
現時点で直近の国試である第31回は,第28回国試問題レベルまで文字数が増えました。
そのことによって
合格基準点は89点となりました。
これだけ振れ幅が違うと,どんな勉強をすればよいかわからなくなる人も出てくることでしょう。
合格基準点が上下するのは,問題の難易度によるものです。
合格できるのは,上位30%のみです。
いかに上位30%に入るかが重要です。
しかし,今は第30回国試よりも文字数が長くなったとは言え,第25回国試と比べると短いです。
そのため,勉強した人は,点数が取れる問題となっています。
国試は,勉強した人が得点できて,勉強が足りない人は得点できない問題でなければなりません。
そういった意味で,今はバランスが取れている問題が出題される傾向にあります。
そこで重要なのは,取れる問題は確実に得点することです。
国試問題には,出題の癖があるので,解答テクニックでもある程度の点数が取れます。
過去問を解くときは,出題の癖を考えながら解くようにしましょう。
つまらないミスは命取りになります。
つまらないミスとは,今日の問題で言えば,選択肢4や5をしてしまうことをいいます。
2019年8月25日日曜日
社会福祉法人の財務管理~財務諸表
社会福祉法人が作成しなければならない計算書類(財務諸表)は
①貸借対照表
②事業活動計算書
③資金収支計算書
の3種類です。
これらの書類は,
①法人全体
②事業別
③拠点別
④サービス別
のレベルで作成しなければなりません。
それでは今日の問題です。
第29回・問題124 社会福祉法人の経営・会計に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 法人全体の財務諸表を作成しなければならない。
2 貸借対照表の貸方(右側)には,固定資産が計上される。
3 減価償却費はコストであるため,法人外部に資金流出する。
4 アカウンタビリティとは,間接金融を指す。
5 借入金返済の財源として,外部寄附者による寄附金を用いてはならない。
この問題の難易度は,それほど難しくないと思います。
正解は,
1 法人全体の財務諸表を作成しなければならない。
それでは,ほかの選択肢もどこが間違っているのか,確認していきましょう。
2 貸借対照表の貸方(右側)には,固定資産が計上される。
固定資産が計上されるのは,借方(左側)です。
貸方(右側)に計上されるのは,「負債」と「純資産」です。
3 減価償却費はコストであるため,法人外部に資金流出する。
減価償却費は,長期にわたって使用する固定資産を費用化する会計上の処理です。
そのため,費用として計上しますが,外部には資金流出はせず,内部にその金額分が毎年蓄積されていきます。
4 アカウンタビリティとは,間接金融を指す。
アカウンタビリティは,説明責任です。
間接金融は,金融機関から資金を調達することです。
5 借入金返済の財源として,外部寄附者による寄附金を用いてはならない。
このような制限は設けられていません。
<今日の一言>
今日の問題は,それほど難易度は高くありません。
もしかすると,知識がなくても得点できるタイプの問題かもしれません。
ということは,ほかの受験生も解けることになります。
誰も解けない問題は,解けなくても合否にかかわることはありませんが,誰もが解ける問題をミスすることは,致命的です。
ミスを極力減らすためには,試験当日にいかに平常心でいられるかがとても重要です。
それも心掛けておきましょう。
①貸借対照表
②事業活動計算書
③資金収支計算書
の3種類です。
これらの書類は,
①法人全体
②事業別
③拠点別
④サービス別
のレベルで作成しなければなりません。
それでは今日の問題です。
第29回・問題124 社会福祉法人の経営・会計に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 法人全体の財務諸表を作成しなければならない。
2 貸借対照表の貸方(右側)には,固定資産が計上される。
3 減価償却費はコストであるため,法人外部に資金流出する。
4 アカウンタビリティとは,間接金融を指す。
5 借入金返済の財源として,外部寄附者による寄附金を用いてはならない。
この問題の難易度は,それほど難しくないと思います。
正解は,
1 法人全体の財務諸表を作成しなければならない。
それでは,ほかの選択肢もどこが間違っているのか,確認していきましょう。
2 貸借対照表の貸方(右側)には,固定資産が計上される。
固定資産が計上されるのは,借方(左側)です。
貸方(右側)に計上されるのは,「負債」と「純資産」です。
(自)●年●月●日(至)●年●月●日
|
|
借方
|
貸方
|
資産の部
|
負債の部
|
資産
|
負債
|
流動資産
|
流動負債
|
固定資産
|
固定負債
|
負債の部合計
|
|
純資産の部
|
|
純資産
|
|
基本金
|
|
国庫補助金等特別積立金
|
|
その他の積立金
|
|
純資産の合計
|
|
資産の部合計
|
負債の部及び純資産の部合計
|
3 減価償却費はコストであるため,法人外部に資金流出する。
減価償却費は,長期にわたって使用する固定資産を費用化する会計上の処理です。
そのため,費用として計上しますが,外部には資金流出はせず,内部にその金額分が毎年蓄積されていきます。
4 アカウンタビリティとは,間接金融を指す。
アカウンタビリティは,説明責任です。
間接金融は,金融機関から資金を調達することです。
5 借入金返済の財源として,外部寄附者による寄附金を用いてはならない。
このような制限は設けられていません。
<今日の一言>
今日の問題は,それほど難易度は高くありません。
もしかすると,知識がなくても得点できるタイプの問題かもしれません。
ということは,ほかの受験生も解けることになります。
誰も解けない問題は,解けなくても合否にかかわることはありませんが,誰もが解ける問題をミスすることは,致命的です。
ミスを極力減らすためには,試験当日にいかに平常心でいられるかがとても重要です。
それも心掛けておきましょう。
2019年8月24日土曜日
社会福祉法人の財務管理~直接金融
財務管理に関する出題は,第23回,第27回,第28回,第29回,第30回,第31回にあります。
つまり,第27回以降は,毎回出題されているということになります。
これだけの出題があれば,国試対策としてポイントは明確になりやすいので,しっかり勉強していけば,かなりの確率で得点できるようになるでしょう。
さて,今回も貸借対照表を続けます。
貸借対照表は,第30回以外はすべて出題されています。
そのうち,正解になったのはたった一回です。
6回も出題されているのに正解は一回だけです。
これが物語っているのは,財務諸表は理解しにくいので,間違い選択肢として出題されやすいということです。
貸借対照表を再び掲載します。
左型の借方には,資産が計上されて,資金運用方法を理解することができます。
2 貸借対照表の借方とは,どこから資金を調達したかを示し,貸方とは,どのように資金を使用しているかを示す。
つまり,第27回以降は,毎回出題されているということになります。
これだけの出題があれば,国試対策としてポイントは明確になりやすいので,しっかり勉強していけば,かなりの確率で得点できるようになるでしょう。
さて,今回も貸借対照表を続けます。
貸借対照表は,第30回以外はすべて出題されています。
そのうち,正解になったのはたった一回です。
6回も出題されているのに正解は一回だけです。
これが物語っているのは,財務諸表は理解しにくいので,間違い選択肢として出題されやすいということです。
貸借対照表を再び掲載します。
(自)●年●月●日(至)●年●月●日
|
|
借方
|
貸方
|
資産の部
|
負債の部
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資産
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負債
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流動資産
|
流動負債
|
固定資産
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固定負債
|
負債の部合計
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純資産の部
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純資産
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基本金
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国庫補助金等特別積立金
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|
その他の積立金
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純資産の合計
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|
資産の部合計
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負債の部及び純資産の部合計
|
左型の借方には,資産が計上されて,資金運用方法を理解することができます。
右側の貸方には,負債と純資産が計上されて,そのバランスを確認することができます。
さて,それでは今日の問題です。
【28-123】 会計や経営に関する次の記述のうち正しいものを1つ選びなさい。
1 直接金融とは,銀行などの金融機関から直接借入れることを指す。
2 貸借対照表の借方とは,どこから資金を調達したかを示し,貸方とは,どのように資金を使用しているかを示す。
3 減価償却とは,固定資産(土地と建設仮勘定を除く)の取得原価を,その耐用年数にわたって費用化する手続である。
4 社会福祉法人のうち,収益が10億円未満の法人には財務諸表開示の義務がない。
5 会計用語上,収益と利益は同一である。
勉強不足の人は,問題を見たら投げ出したくなるような問題かもしれませんね。
この問題の正解は,
3 減価償却とは,固定資産(土地と建設仮勘定を除く)の取得原価を,その耐用年数にわたって費用化する手続である。
財務管理の出題は,6回ありますが,その中に減価償却が出題されなかったのはたったの1回だけです。
ほとんどが減価償却を含めて出題されており,そしてほとんどが間違い選択肢として出題されています。正解になったのは,この回限りです。
それではほかの選択肢もどこが間違っているのか確認していきましょう。
1 直接金融とは,銀行などの金融機関から直接借入れることを指す。
おかしな問題だと思いませんか?
金融機関から直接借り入れるのが直接金融だとすれば,間接金融とはどんなものをいうのでしょうか?
金融機関から直接ではないということになると,金融機関の資金を闇金融ブローカーを通して調達するということになるのでしょうか?
2 貸借対照表の借方とは,どこから資金を調達したかを示し,貸方とは,どのように資金を使用しているかを示す。
借方と貸方の一般イメージと同じように出題してきましたね。
勉強不足の人は,こういったものに引っ掛けられます。
借方は,資産を記載して,資金運用方法を示します。
貸方は,負債,純資産を記載します。
4 社会福祉法人のうち,収益が10億円未満の法人には財務諸表開示の義務がない。
財務諸表の開示は,収益の規模にかかわらず,すべての社会福祉法人に開示義務があります。
5 会計用語上,収益と利益は同一である。
収益は,事業活動で得た収入です。
利益は,収益から費用を引いたものです。
意味が同じなら,2つの用語を存在させる意味がありません。
<今日の一言>
今日の問題では,
2 貸借対照表の借方とは,どこから資金を調達したかを示し,貸方とは,どのように資金を使用しているかを示す。
という特徴的なものが間違い選択肢として出題されています。
先に述べたように,言葉から受ける一般イメージは
借方 → 負債
貸方 → 資産
だと思います。
しかし,実際は,借りるという漢字が入っているにもかかわらず,資産を記載します。
正しくは
借方 → 資産
貸方 → 負債と純資産
となります。
こういった一般イメージと違うものは,間違いやすいので,注意深くしっかり覚えていきましょう。
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