今回から4回にわたり,「経営に関する基礎理論」に取り組んでいきます。
出題基準では,ここも小項目(例示)が示されていません。
第1回は,CSR(Corporate Social Responsibility)を取り上げたいと思います。
CSRは,「企業の社会的責任」と訳されます。
企業は利益を追求することが目的です。企業は利益を上げて,納税することで社会的貢献をしています。
しかし,今日的にはそれだけはなく,温暖化にかかわる環境問題,子育て支援や介護などにかかわる働き方改革,など社会全体に関係する貢献も求められてくるようになってきています。
それでは早速今日の問題です。
第31回・問題119 福祉サービスの経営に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 CSR(Corporate Social Responsibility)は,福祉サービス事業者には求められない。
2 CSV(Creating Shared Value)とは,企業や法人の価値を共有するために情報開示を進める概念である。
3 バランス・スコアカードとは,財務面の評価手法である。
4 コンプライアンスを達成するには,ガバナンスが重要である。
5 福祉サービスの改善活動であるPDCAには,現場職員が関わらないことが望ましい。
勉強不足の人は,お手上げ問題かもしれません。
CSR,CSV,バランス・スコア・シートと聞き慣れないものが並んでいます。
しかし落ち着いて読めば,正解は
4 コンプライアンスを達成するには,ガバナンスが重要である。
だとわかります。
この問題は,消去法で正解を導くのはかなり厳しい問題なので,この選択肢を答えだと思わなければ,正解は難しいかもしれません。
コンプライアンスは「法令遵守」,ガバナンスは「企業統治」あるいは「内部統制」と訳されます。
組織も人と同じように意思決定して活動します。その意思決定が適正であるためには,ガバナンスがあることが必要です。
ガバナンスが効いていない組織は,でたらめな方法に向かって意思決定してしまうからです。ガバナンスは急に出来上がるものではなく,毎日の意識の積み上げによって作り上げられます。
あるコンサルタントの話です。
その方は,企業に出向くときはお客様用の玄関は使わず,必ず従業員用の玄関から入るそうです。お客様には目につかないところであっても,整理整頓がなされているところはガバナンスが効いている事業所,整理整頓されていない事業所は,何か問題を抱えている,つまりガバナンスが効いていないかもしれない,と判断するとのことです。
ガバナンスが効いている組織は,法令も遵守するようになることでしょう。
逆にガバナンスが効いていない組織は,法令遵守の意識は低くなる傾向があると考えられます。
それではほかの選択肢も確認しましょう。
1 CSR(Corporate Social Responsibility)は,福祉サービス事業者には求められない。
CSRは,先述のように,企業の社会的責任のことをいいます。
もちろん福祉サービス事業者にも求められます。
2 CSV(Creating Shared Value)とは,企業や法人の価値を共有するために情報開示を進める概念である。
CSVは,共通価値の創造と訳されます。情報開示のことではなく,企業が社会問題の解決する活動のことです。
CSRとCSVの違いは,CSVは,企業の経済活動の中で社会問題にコミットする活動を行うところです。CSRはむしろ企業の経済活動の周辺での活動です。
3 バランス・スコアカードとは,財務面の評価手法である。
バランス・スコア・シートは,「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」の評価を行います。そのために「バランス」という用語が使われています。
5 福祉サービスの改善活動であるPDCAには,現場職員が関わらないことが望ましい。
PDCAは別の機会に詳しく紹介しますが,PLAN → DO → CHECK → ACTIONというプロセスで,品質向上を目指すものです。
改善には,現場職員の気づきは欠かせません。
<今日の一言>
国試問題の多くは,消去法で正解を導き出します。
しっかり消去しないと正解するのは難しいと言えます。
それとは別に,明らかな正解がある中,ほかの選択肢は正解か間違いなのか見当をつけることができないという問題も存在します。
今日の問題は,後者にあたる問題です。
勉強した人は正解できますが,勉強が足りない人は,勉強した人でもよくわからないものに混乱して間違えます。
いずれのタイプだとしても,地道に勉強した人は正解できて,勉強不足の人は正解できない問題となります。
覚えることは辛い作業ですが,それでも勉強を積み重ねることができた人には,合格が待ってています。
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