2019年8月9日金曜日

組織に関する基礎理論~マクレガーのXY理論

今回は,モチベーション理論の2回目です。

今回メインに取り上げたいのは,マクレガーのXY理論です。

一般には,「XY理論」と呼びますが,「X理論」と「Y理論」を合わせたものです。

X理論は,人は生来怠け者で,賞罰によって動機付けられる,と考える理論です。

Y理論は,人は生自己実現を目指して来自ら進んで働こうとする存在である,と考える理論です。

Y理論に従えば,人は生来働き者で,そのやる気を奪ってしまうのは,リーダーや管理者の責任である,ということになります。

それでは,今日の問題です。

第28回・問題121 動機づけに関する理論についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 マグレガー(McGregor,D.)のY理論では,従業員の働く意欲が低いのは,組織の管理者側に原因があるとされる。

2 ハーズバーグ(Herzberg,F.)の動機づけ理論では,労働条件への不満を改善することで,職務に対する満足感を高められるとされる。

3 マクレランド(McClelland,D.)の欲求理論では,権力欲求を持つ人に対しては適度なリスクのある仕事を与えることが,高い業績につながるとされる。

4 ブルーム(Vroom,V.)の期待理論では,管理者が従業員に対して大きな期待をしていることを示すことが,従業員の動機づけを高めるとされる。

5 ロック(Lock,E.)の目標設定理論では,「頑張れ」や「前よりも上回る成績を」といった情動的刺激を与えることで,高い意欲を生み出すとされる。


人の名前のオンパレードです。難しすぎですね。

しかし,突破口はあります。動機付けは,自分にもあるので,自分に重ね合わせて考えてみることです。


さて,この問題の正解は,選択肢1です。

1 マグレガー(McGregor,D.)のY理論では,従業員の働く意欲が低いのは,組織の管理者側に原因があるとされる。

人はもともとやる気にあふれている存在です。就職する時に,怠けてやろうとは思わず,高い理想と希望を抱いて職場に入ってくるのばないでしょうか。

マクレガーのY理論に基づくと,やる気はなくなるものではなく,やる気は奪われるものだ,ということになります。

そして,そのやる気を奪っているのは,管理者側だということになるのです。

それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。


2 ハーズバーグ(Herzberg,F.)の動機づけ理論では,労働条件への不満を改善することで,職務に対する満足感を高められるとされる。

ハーズバーグがまたまた登場してきました。

職務に対する満足感を高めるのは,達成,承認,責任などの「動機付け要因」です。
労働条件や職場の人間関係など「衛生要因」を解消しても,不満が解消されるだけで,職務に対する満足感は高められません。


3 マクレランド(McClelland,D.)の欲求理論では,権力欲求を持つ人に対しては適度なリスクのある仕事を与えることが,高い業績につながるとされる。

マクレランドの欲求理論は,人は「達成欲求」「権力欲求」「親和欲求」「回避欲求」によって行動するという理論ですが,難しすぎです。

しかし,ここであきらめずに,日本語的な解釈,あるいは自分に重ね合わせてみましょう。

権力欲求とは,威張ってみたい,あるいは,人を使ってみたい,権力を行使したい,といったイメージを持つことができます。そういった人は,適度なリスクを与えるよりも,適度なポストを与えた方がいきいきして働くように思います。

適度なリスクを与えるとよいのは「達成欲求」を持つ人に対する処遇だと言えます。


4 ブルーム(Vroom,V.)の期待理論では,管理者が従業員に対して大きな期待をしていることを示すことが,従業員の動機づけを高めるとされる。

ブルームも前回に引き続いての登場です。

ブルームの期待理論は,モチベーションの過程理論に分類されます。

ブルームらの期待理論は,どのくらい頑張れば,どのような結果が得られるのか,そしてそれはどのくらいの価値があるものなのかを明らかにするものです。

過程理論はプロセスが大切です。

期待理論は,管理者の期待ではなく,従業員が目標達成に向けての期待です。従業員が期待を持てるように,道筋を示すことが極めて重要です。

ブルームらの期待理論は,リーダーシップのコンティンジェンシー理論である「パス・ゴール理論」に影響を与えています。

パス・ゴール理論
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/08/blog-post_21.html


5 ロック(Lock,E.)の目標設定理論では,「頑張れ」や「前よりも上回る成績を」といった情動的刺激を与えることで,高い意欲を生み出すとされる。

ロックの目標設定理論は,明確な目標を設定することが,高い意欲を生み出すと考える理論です。

「頑張れ」「前よりも上回る成績を」といったことでは,具体的にどのように頑張るのかわかりません。同じようなことを言うのだったら,「今度受ける模擬試験は,前回よりも5点アップさせよう」「一日必ず10問解こう」といった具体的な目標を示す方が努力しやすくなると思いませんか?

「24時間戦えますか」というコマーシャルがあったのは,昭和から平成にかけてのバブル経済の時です。今の時代に「頑張れ」で人が動くわけがありません。


<今日の一言>

今日の問題は,たくさんの理論が出てきましたが,マズローを中心として主な理論と重ね合わせると,以下のようになります。


マズロー
マクレランド
ハーズバーグ
マクレガー
デシ
衛生要因
X理論
外発的動機付け
安全・安定の欲求
回避欲求
衛生要因
所属・愛の欲求
親和欲求
衛生要因
自尊・承認の欲求
権力欲求
動機付け要因
自己実現欲求
達成欲求
動機付け要因
Y理論
内発的動機付け


人によって分類の仕方が異なりますが,マズローで言えば,自己実現欲求(成長動機)とそれ以外(欠乏欲求)に整理することができます。

こういった視点で理解するとよいでしょう。

国試ではおそらく,欠乏欲求よりも自己実現欲求を中心として展開してくることでしよう。

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