2022年3月31日木曜日

プラットフォーム型の連携

今日のテーマは,プラットフォーム型の連携です。


プラットフォームは,駅のいわゆるホームと同じ言葉です。ホームと言いますが,正式にはプラットフォームといいます。


それでは,「プラットフォーム型の連携」とは何でしょうか。


国家試験では,勉強したことがない用語を散りばめて出題してきます。


勉強の過程では,知らないことは調べることができますが,国家試験の会場では自分で推測しながら問題を解かなければなりません。


合格する人とそうでない人の差は,これができるかどうかの差であるように思います。


ただし,国家試験は,すべての選択肢の意味を正しく理解できていなくても解ける問題がほとんどです。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題39 地域福祉における連携に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 地域福祉の推進には,個人支援レベル,機関・団体の活動者や実務者レベル,それらの代表者レベルの各種の重層的な連携が想定される。

2 NPOなどのアソシエーション型組織と自治会のような地域コミュニティ型組織は,それぞれ目的や活動圏域等が異なるため連携することなく活動している。

3 民生委員児童委員協議会は,その職務の遂行に当たって,当該市町村の自治会連合会と連携することが法定化されている。

4 プラットフォーム型の連携とは,地域生活課題への対応を協議するため,固定化された代表者が行う会議のことである。

5 小地域ネットワーク活動は,要支援者を専門機関が発見し,地域住民が見守るという,双方の責任分担を明確にした見守りのための連携の仕組みである。


地域福祉の科目は,苦手だと思う人は意外と多いようです。


勉強したことがないものが出題されることが多いからでしょう。


しかし,落ち着いてみてください。


答えが何となく見えてきませんか。


それは,「プラットフォーム型の連携」を含む選択肢でしょうか。


国家試験とはこういったものです。


それでは,解説です。


1 地域福祉の推進には,個人支援レベル,機関・団体の活動者や実務者レベル,それらの代表者レベルの各種の重層的な連携が想定される。


これが正解です。


現在,この選択肢を見れば,社会福祉法に規定される重層的支援体制整備事業を想定した出題なのだろうと思えますが,これが規定されたのは2020年改正の時です。


この問題が出題されたのは2019年です。


しかし,地域福祉の推進について,重層的な連携を知らずとも,この選択肢を誤りにする理由を見つけるのは困難です。国家試験とはこんなものです。


2 NPOなどのアソシエーション型組織と自治会のような地域コミュニティ型組織は,それぞれ目的や活動圏域等が異なるため連携することなく活動している。


これを正解だと思う人はまずいないと思いますが,もちろん連携することはあります。


3 民生委員児童委員協議会は,その職務の遂行に当たって,当該市町村の自治会連合会と連携することが法定化されている。


こんな規定はありませんが,自治会連合会のないような小さな規模の村では,そもそも連携することができません。


4 プラットフォーム型の連携とは,地域生活課題への対応を協議するため,固定化された代表者が行う会議のことである。


ようやく今日のテーマである「プラットフォーム型の連携」が出てきました。


プラットフォーム型とは,地域生活課題への対応を協議する自発的に参加できる場のことです。

プラットフォーム型の連携とは,その場を活用して地域福祉課題に柔軟に連携して取り組む活動です。


プラットフォームは,誰もが乗ることのできる台といった意味合いで使われています。


固定化された代表者が集う場ではありません。


ここで駅のホームとつながりませんか。


5 小地域ネットワーク活動は,要支援者を専門機関が発見し,地域住民が見守るという,双方の責任分担を明確にした見守りのための連携の仕組みである。


地域共生社会は,「我が事・丸ごと」がテーマです。地域を住民がともに作っていくのが地域共生社会です。


ある時は,支援者となり,ある時は,受け手になる,といった境界線があいまいな社会だと言えます。


そんな中,小地域ネットワーク活動が役割分担を明確にした活動であるわけがありません。

2022年3月30日水曜日

地域福祉の事例問題を確実に正解するコツ~かなり重要

事例問題は,解釈によって答えが分かれるようなものだと不適切問題になる可能性があるので,より慎重に作られます。

 

特に地域福祉の事例問題の場合,社会福祉士及び介護福祉法による社会福祉士の社会福祉士の定義を正解の根拠とするものが多いように思います。

 

(定義)

第二条 この法律において「社会福祉士」とは、第二十八条の登録を受け、社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者(第四十七条において「福祉サービス関係者等」という。)との連絡及び調整その他の援助を行うこと(第七条及び第四十七条の二において「相談援助」という。)を業とする者をいう。

 

地域福祉の事例問題では,まずは,相談援助のうち,福祉サービス関係者等との連絡および調整を手がかりに答えを考えると良いです。それに類するものが選択肢にない場合,別のことを考えます。

 

なお,社会福祉士及び介護福祉士の第47条とは,以下のような規定です。

 

(連携)

第四十七条 社会福祉士は、その業務を行うに当たつては、その担当する者に、福祉サービス及びこれに関連する保健医療サービスその他のサービス(次項において「福祉サービス等」という。)が総合的かつ適切に提供されるよう、地域に即した創意と工夫を行いつつ、福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない 


 

福祉サービス関係者等との連携が,地域福祉の事例問題を解くときのカギとなります。

 

それでは,今日の問題です。

 

31回・問題38 事例を読んで,地域包括支援センターのA相談員(社会福祉士)による今後のBさんへの支援や近隣との関わりとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 一人暮らしのBさん(89歳,女性)は,認知機能の低下は見られないが,日常的な買物や家事が難しくなってきている。そこで,地域包括支援センターに相談をしたところ,A相談員は要介護認定を受けることを勧め,要支援1の認定を受けた。

 Bさんは週1回,近隣で開催されている高齢者サロンに参加することを楽しみにしており,ちょっとした買物やゴミ出しについては,近隣の住民が声を掛けて随時手助けを行っている。

1 Bさんに高齢者サロンの利用をやめて,デイサービスを利用するよう促す。

2 近隣の手助けが行われているので,A相談員は当面関わらないようにする。

3 近隣の住民に対し,専門職が関わるので,手助けは不要であると伝える。

4 公的な制度の利用は検討せず,近隣の住民に支援の中心になるよう依頼する。

5 現在の近隣関係を基に,今後の支援の在り方を他の専門職と一緒に検討する。

 

この問題のつくり方は下手なので,地域福祉の事例問題を解くときのカギを使わなくても答えは見つけられます。

 

正解は,選択肢5です。

 

5 現在の近隣関係を基に,今後の支援の在り方を他の専門職と一緒に検討する。

 

これ以外に,福祉サービス関係者等との連携となっているものはありません。


 

〈今日のまとめ〉

 

地域福祉の事例問題では,まずは,相談援助のうち,福祉サービス関係者等との連絡および調整を手がかりに答えを考えます。

 

それに類するものが選択肢にない場合,別のことを考えます。

 

こういった問題を解くときの基準を持つことで,解ける問題をミスするという失敗をかなり防ぐことができます。

2022年3月29日火曜日

社会福祉法人制度の改革にかかわるあれこれ

社会福祉法は,かなりの頻度で改正されています。

 

平成28年改正のテーマは以下の2つです。

 

1.社会福祉法人制度の改革

2.福祉人材の確保の促進

 

このうち,今日のテーマは,「1.社会福祉法人制度の改革」です。

 

(1)経営組織のガバナンスの強化

○ 議決機関としての評議員会を必置(小規模法人について評議員定数の経過措置)、一定規模以上の法人への会計監査人の導入 等

(2)事業運営の透明性の向上

○ 財務諸表・現況報告書・役員報酬基準等の公表に係る規定の整備 等

(3)財務規律の強化(適正かつ公正な支出管理・いわゆる内部留保の明確化・社会福祉充実残額の社会福祉事業等への計画的な再投資)

○ 役員報酬基準の作成と公表、役員等関係者への特別の利益供与の禁止 等

○ 「社会福祉充実残額(再投下財産額)」(純資産の額から事業の継続に必要な財産額()を控除等した額)の明確化

※①事業に活用する土地、建物等建物の建替、修繕に要する資金必要な運転資金基本金及び国庫補助等特別積立金

○ 「社会福祉充実残額」を保有する法人に対して、社会福祉事業又は公益事業の新規実施・拡充に係る計画の作成を義務付け 等

(4)地域における公益的な取組を実施する責務

○ 社会福祉事業及び公益事業を行うに当たって、無料又は低額な料金で福祉サービスを提供することを責務として規定

(5)行政の関与の在り方

○ 所轄庁による指導監督の機能強化、国・都道府県・市の連携 等

 

この改正のもとになったのは,厚生労働省の「社会保障審議会福祉部会報告書~社会福祉法人制度改革について~」(2015(平成27))です。

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12004000-Shakaiengokyoku-Shakai-Fukushikibanka/0000050269_1.pdf

 

国家試験では,さまざまな報告書が出題されます。しかし,それらを必ずしも知らなくても多くの問題は正解できます。なぜなら,それらの多くは時代を反映したものだからです。そして,それがもとになり,法制度が改正されます。

 

古い報告書が出題され,その内容が現在につながっていないとすれば,正しくない内容かもしれないと判断することができます。

 

それでは,今日の問題です。

 

31回・問題37 地域福祉の担い手や組織に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 厚生労働省の「社会保障審議会福祉部会報告書~社会福祉法人制度改革について~」(2015(平成27))では,社会福祉法人の今日的意義は,他の事業主体ではできない様々な福祉ニーズを充足することにより,地域社会に貢献していくことにあるとした。

2 中央共同募金会の「参加と協働による『新たなたすけあい』の創造」(2016(平成28))では,共同募金を災害時の要援護者支援に特化していくこととした。

3 厚生労働省の「地域力強化検討会最終とりまとめ」(2017(平成29))では,介護保険法を改正し,多機関協働による支援の中核機関を地域ケア会議で決めることとした。

4 全国社会福祉協議会の「社協・生活支援活動強化方針」(2018(平成30))では,市町村社会福祉協議会が生活困窮者の自立支援を中心に活動を展開していくこととした。

5 全国民生委員児童委員連合会の「これからの民生委員・児童委員制度と活動のあり方に関する検討委員会報告書」(2018(平成30))では,民生委員・児童委員に対して給与を支給することとした。

 

正解はわかりますか?

 

この問題が出題された時点で,ここに出題されている報告書のうち,聞いたことも見たこともないものがあったはずです。

 

しかし,内容を読めば答えられます。これが国家試験です。決して恐れることはありません。

 

それでは,解説です。

 

1 厚生労働省の「社会保障審議会福祉部会報告書~社会福祉法人制度改革について~」(2015(平成27))では,社会福祉法人の今日的意義は,他の事業主体ではできない様々な福祉ニーズを充足することにより,地域社会に貢献していくことにあるとした。

 

これが正解です。この提言をもとに平成28年改正の「公益的な取り組み」につながっていることは推測できることでしょう。

 

もし,最悪,平成28年改正を知らなくても,ほかの選択肢は消去できるので,結局は正解できます。

 

 

2 中央共同募金会の「参加と協働による『新たなたすけあい』の創造」(2016(平成28))では,共同募金を災害時の要援護者支援に特化していくこととした。

 

災害時の要援護者支援は重要です。

 

だからといって,共同募金をそれだけに特化することはあり得ません。

 

なぜなら,社会福祉法では,共同募金について,以下のように定められているからです。

 

(共同募金)

第百十二条 この法律において「共同募金」とは、都道府県の区域を単位として、毎年一回、厚生労働大臣の定める期間内に限つてあまねく行う寄附金の募集であつて、その区域内における地域福祉の推進を図るため、その寄附金をその区域内において社会福祉事業、更生保護事業その他の社会福祉を目的とする事業を経営する者(国及び地方公共団体を除く。以下この節において同じ。)に配分することを目的とするものをいう。

 

災害時の要援護者支援は,共同募金の本来の目的と異なります。

 

そのために,2000年(平成12年)の社会福祉事業法が社会福祉法に変わったときに,災害等の発生に備えた準備金の創設を認め,共同募金の区域外の災害発生時に共同募金を拠出することができるようにしたのです。

 

 

3 厚生労働省の「地域力強化検討会最終とりまとめ」(2017(平成29))では,介護保険法を改正し,多機関協働による支援の中核機関を地域ケア会議で決めることとした。

 

当時の受験者も学校によっては,この報告書を紹介してくれた先生もいることでしょう。

 

しかし,この選択肢も消去できそうです。

 

多機関協働による支援の中核機関を地域ケア会議で決めることの重要性を見出すことができないからです。

 

地域力強化検討会最終とりまとめ(平成29年9月12日)の概要~地域共生社会の実現に向けた新たなステージへ~

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000177416.pdf

 

このタイトルからわかるように,テーマは,地域共生社会の実現です。これが社会福祉法の平成30年改正につながります。

 

 

4 全国社会福祉協議会の「社協・生活支援活動強化方針」(2018(平成30))では,市町村社会福祉協議会が生活困窮者の自立支援を中心に活動を展開していくこととした。

 

生活困窮者の自立支援も重要でしょう。しかし,地域の福祉ニーズはそれだけではありません。

 

この選択肢の出典となった「社協・生活支援活動強化方針」というタイトルから「生活支援活動」がテーマであることがわかります。

 

生活困窮者の自立支援がメインテーマであれば,タイトルにもそれが入ると考えられます。

 

 

5 全国民生委員児童委員連合会の「これからの民生委員・児童委員制度と活動のあり方に関する検討委員会報告書」(2018(平成30))では,民生委員・児童委員に対して給与を支給することとした。

 

民生委員・児童委員には,給与が支給されていません。

 

だからといって「給与を支給せよ」と要求する報告書はないと考えられます。もしこの選択肢にあるような提言が本当になされていたとしても,国はその後動いていないわけですから,国家試験でわざわざ取り上げる内容ではないこととなります。

 

それにもかかわらず出題されているのは,嘘だと判断できます。

2022年3月28日月曜日

生活困窮者自立支援法

社会福祉士の国家試験は出題範囲が広いですが,無限ではありません。

 

出題基準というものが提示されています。

 

もちろん毎年の出題の中には,出題基準に示されていないものも出題されますが,それらをまったく正解できなくてもそのほかの部分を確実に正解することができれば,余裕で合格することができます。

 

いわゆるボーダーラインが変わろうが,覚えるべき内容が変わることはありません。

 

出題基準で示されている法に関して,定義くらいは押さえておきたいです。

 

今日のテーマは,生活困窮者自立支援法です。

 

ほかの主だった法制度と異なり,30条しかない極めてこじんまりした法律です。

 

生活困窮者の定義

第三条 この法律において「生活困窮者」とは、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者をいう。

 

ポイントは,最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者

 

最低限度の生活を維持することができない者ではありません。

 

それでは,今日の問題です。

 

31回・問題36 地域福祉の対象に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 災害対策基本法における避難行動要支援者とは,本人が同意し,提供した情報に基づいて避難行動要支援者名簿に登載された者をいう。

2 「ホームレス自立支援法」におけるホームレスとは,都市公園,河川,道路,駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし,日常生活を営んでいる者をいう。

3 生活困窮者自立支援法における生活困窮者とは,最低限度の生活を維持できていない者をいう。

4 ひきこもり対策推進事業におけるひきこもりとは,様々な要因の結果として社会的参加を回避し,原則的には1年以上家庭にとどまり続けていることをいう。

5 「障害者虐待防止法」における,養護者による障害者虐待とは,身体的虐待,心理的虐待,放棄・放置,経済的虐待の四つのことをいう。

()1 「ホームレス自立支援法」とは,「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」のことである。

2 「障害者虐待防止法」とは,「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。

 

さまざまなものが出題されているので,混乱しがちです。

 

これが国家試験です。今なら,どれも参考書等に書いてあると思うので,それを覚えていれば何とか対応できそうですが,この試験があった時点で,参考書等に書かれていたのは,おそらく

ホームレス自立支援法

生活困窮者自立支援法

障害者虐待防止法

の3つだけだった思います。なぜなら参考書類は,基本的に過去問ベースで作成されているからです。

 

避難行動要支援者

ひきこもり

は初お目見えということになります。

 

すべての選択肢が勉強したもので構成されているものは,ほとんどありません。この問題のように,いくつか新しいものを混ぜながら出題します。

 

しかし,多くの場合,新しいものを正解にはしていません。新しいものが正解になるのは,ほかの選択肢を消去できる場合がほとんどです。

国家試験は多くの人が思うほど意地悪ではないようです。

 

それでは,解説です。

 

1 災害対策基本法における避難行動要支援者とは,本人が同意し,提供した情報に基づいて避難行動要支援者名簿に登載された者をいう。

 

避難行動要支援者

当該市町村に居住する要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの。

 

これらの者を避難行動要支援者名簿に記載します。

 

本人の同意があるかないか,ではなく,円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するものが名簿に記載されます。

 

2 「ホームレス自立支援法」におけるホームレスとは,都市公園,河川,道路,駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし,日常生活を営んでいる者をいう。

 

これが正解です。

 

故なく起居の場所とは,イメージのつきにくい言葉ですが,施設を本来の目的とは異なる利用方法である寝起きの場所にしているといった意味合いです。

 

この選択肢を選びにくいのは,「故なく」を「理由なく」と考えてしまいがちだからです。

 

3 生活困窮者自立支援法における生活困窮者とは,最低限度の生活を維持できていない者をいう。

 

前説のように,「できていない者」ではなく,「できなくなるおそれのある者」です。

 

4 ひきこもり対策推進事業におけるひきこもりとは,様々な要因の結果として社会的参加を回避し,原則的には1年以上家庭にとどまり続けていることをいう。

 

1年以上ではなく,6か月以上です。

 

5 「障害者虐待防止法」における,養護者による障害者虐待とは,身体的虐待,心理的虐待,放棄・放置,経済的虐待の四つのことをいう。

 

性的虐待が抜けています。

 

この選択肢を詳しく読まなくても,四つと書かれているので,正解ではないことはすぐわかります。

 

4つなのは,児童虐待防止法

高齢者虐待防止法と障害者虐待防止法はは,いずれも5つです。

 

違いは,経済的虐待のありなしです。

2022年3月27日日曜日

地域福祉活動計画

地域福祉活動計画を知っていますか?

 

地域福祉計画の間違い?

 

いいえ,間違いではなく,今日のテーマは地域福祉活動計画です。

 

地域福祉活動計画は,市町村社会福祉協議会が策定している民間計画です。

 

地域福祉活動計画は,社会福祉法で地域福祉計画が規定される前から存在し,地域福祉計画と呼ばれていたこともあります。

 

現在では,親和性の高い市町村地域福祉計画と一体的に策定している市町村もありますが,そのような法規定はありません。

 

地域福祉活動計画は行政計画ではなく,よく知られていないこともあり,国家試験では引っ掛けとして出題されることがほとんどです。

 

それでは今日の問題です。

 

31回・問題35 社会福祉法に規定されている社会福祉協議会の活動などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 市町村社会福祉協議会は,市町村地域福祉計画と一体となった地域福祉活動計画を策定するとされている。

2 市町村社会福祉協議会は,区域内における社会福祉事業又は社会福祉に関する活動を行う者の過半数が参加するものとされている。

3 市町村社会福祉協議会は,主要な財源確保として共同募金事業を行っている。

4 市町村社会福祉協議会は,「社会福祉事業」よりも広い範囲の事業である社会福祉を目的とする事業に関する企画及び実施を行う。

5 都道府県社会福祉協議会は,広域的見地から市町村社会福祉協議会を監督する。

 

この問題はなかなかうまい出題です。

 

消去法で答えるタイプです。一つでも消去できないと正解することができません。

 

しかも慎重が求められています。社会福祉法に規定されているものでなければなりません。

 

それでは解説です。

 

1 市町村社会福祉協議会は,市町村地域福祉計画と一体となった地域福祉活動計画を策定するとされている。

 

前説のように,このような規定はありません。

 

2 市町村社会福祉協議会は,区域内における社会福祉事業又は社会福祉に関する活動を行う者の過半数が参加するものとされている。

 

慎重さが求められるのは,この選択肢です。

 

法に規定されているのは,

 

区域内における社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者の過半数が参加するもの

 

社会福祉に関する活動を行う者は,地域福祉の推進主体の一つです。

 

ボランティアも地域福祉に関する活動を行う者に含まれます。

 

これがイメージできれば,社会福祉に関する活動を行う者が市町村社会福祉協議会の構成で過半数が参加するということは規定されないと覚えられます。

 

この選択肢は,引っ掛けでよく用いられるものです。


 

〈引っ掛けポイント〉

 

社会福祉事業又は更生保護事業を経営する者

 

この問題のように更生保護事業を経営する者の部分を変えて出題されます

 

過半数

 

過半数の部分を3分の1,3分の2といったように変えて出題されます。

 

3 市町村社会福祉協議会は,主要な財源確保として共同募金事業を行っている。

 

共同募金を行っているのは,共同募金会です。

 

共同募金は,共同募金会以外が実施することはできません。

 

4 市町村社会福祉協議会は,「社会福祉事業」よりも広い範囲の事業である社会福祉を目的とする事業に関する企画及び実施を行う。

 

これが正解ですが,これを正解だと判別することは容易ではありません。

 

法では,以下のように規定されています。


市町村社会福祉協議会 

一 社会福祉を目的とする事業の企画及び実施

二 社会福祉に関する活動への住民の参加のための援助

三 社会福祉を目的とする事業に関する調査、普及、宣伝、連絡、調整及び助成

四 前三号に掲げる事業のほか、社会福祉を目的とする事業の健全な発達を図るために必要な事業

 

このうちの「一」の規定を知っていなくても,社協は,社会福祉事業も実施している事業型社協もありますが,社会福祉事業以外の事業を行っていることは知っているでしょう。

 

5 都道府県社会福祉協議会は,広域的見地から市町村社会福祉協議会を監督する。

 

これも一見すると正解に見えるかもしれません。

法では,以下のように規定されています。


都道府県社会福祉協議会 

一 前条第一項各号に掲げる事業であつて各市町村を通ずる広域的な見地から行うことが適切なもの

二 社会福祉を目的とする事業に従事する者の養成及び研修

三 社会福祉を目的とする事業の経営に関する指導及び助言

四 市町村社会福祉協議会の相互の連絡及び事業の調整

 

この規定を知らずとも,都道府県社協は市町村社協の上部組織ではないことを考えると監督するようなことはないだろうと推測できそうです。

2022年3月26日土曜日

ミスしない事例問題の解き方

 対応法を問う事例問題は,知識がなくても正解できることが多いので簡単だと思う人も多いと思います。

しかし,そういったものだからこそミスすることは不合格につながります。


それでは今日の問題です。


第31回・問題34 社会福祉協議会に配置された生活支援相談員による仮設住宅の入居者等の被災者を支援するための取組に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 震災後に設営されたN町の仮設住宅では,社会福祉協議会を通して,ボランティアを受け入れ,入居者へイベントや会食会などによる支援を行ってきた。1年がたった頃から,ボランティアが主催する行事への参加者も少なくなってきた。そこで,生活支援相談員が入居者に尋ねたところ,一部の入居者から自分たちが集うアイディアを持ち掛けられた。

1 入居者のアイディアをボランティアに伝えて,生活支援相談員とボランティアとで行事を企画した。

2 アイディアを出した入居者とボランティアとの懇談会を開き,行事などの企画を一緒に考えた。

3 住民懇談会を開催し,入居者が自立して自ら交流すべきであると訴えた。

4 入居者同士の日頃の交流状況を把握するため,聞き取り調査を入居者有志と実施した。

5 アイディアを出した入居者に交流は任せて,安否確認の個別訪問活動に専念することにした。


まず注意したいのは,正解を2つ選ぶ問題であることを忘れないことです。


忘れた頃に現われることもあり,ミスしがちです。


問題を読む前に,「●つ選びなさい」の「●つ」の部分に大きな〇をつけておきます。


後で見直すときの手がかりとなります。


さて,この問題では,


3 住民懇談会を開催し,入居者が自立して自ら交流すべきであると訴えた。

5 アイディアを出した入居者に交流は任せて,安否確認の個別訪問活動に専念することにした。


は消去できるのではないかと思います。いかがですか?


選択肢3を正解だと思う人は,ちょっと注意が必要です。


「あるべき論」は,人の心を動かすことができません。煙たがられるだけです。


学校でもそういった優等生タイプの人はいませんでしたか? 先生には受けが良くても,クラスメイトからはよく思われていないといったタイプの人です。


自分の思いは大切ですが,人を動かすのは,工夫が必要です。


この問題で迷うのは,


1 入居者のアイディアをボランティアに伝えて,生活支援相談員とボランティアとで行事を企画した。

2 アイディアを出した入居者とボランティアとの懇談会を開き,行事などの企画を一緒に考えた。

4 入居者同士の日頃の交流状況を把握するため,聞き取り調査を入居者有志と実施した。


の3つです。


この問題が出題された当時,解答速報でも答えが割れていました。


一般的な事例問題の場合,優先されるのは状況確認です。


一般的ではない事例問題,特に虐待がうかがわれる事例の場合は,状況確認は優先されません。


最も優先されるのは,通告あるいは通報です。


正解を2つ選ぶ問題の場合は,もう1つの答えとして,状況確認やその後の対応などが正解となります。


この問題は,一般的な問題なので,優先されるのは状況確認です。


1つめの正解は,選択肢4です。


4 入居者同士の日頃の交流状況を把握するため,聞き取り調査を入居者有志と実施した。


しかし,もう1つの正解を選ぶのが意外とやっかいです。


1 入居者のアイディアをボランティアに伝えて,生活支援相談員とボランティアとで行事を企画した。

2 アイディアを出した入居者とボランティアとの懇談会を開き,行事などの企画を一緒に考えた。


選択肢1も一読すると正解になりそうですが,答えは選択肢2です。


解答速報では,選択肢1を答えだとする会社がありました。


しかし,選択肢1が正解にならないのは,入居者を巻き込んでいないからです。


また,入居者のアイディアは尊重しなければなりませんが,それが適切なものでなかったアイディアだったらどうするのでしょうか。


この選択肢を正解だと思う人は,入居者のアイディアは適切なものであるという思い込みがあるように思います。


思い込みは,判断を曇らせてしまうので注意が必要です。


特にこの問題では,どのようなアイディアが寄せられたのかの情報がありません。


適切なのかどうかを確かめることが必要です。


そういったこともあり,もう1つの正解は,


2 アイディアを出した入居者とボランティアとの懇談会を開き,行事などの企画を一緒に考えた。


だということになります。これだと入居者主体となります。


〈今日の一言〉


ワーカーが良かれと思ってクライエントに変わって判断したり,行動したりすることは,パターナリズムといいます。


これまで,パターナリズムの要素が含まれる選択肢が正解になったことは一度もありません。


バイステックの「ケースワークの原則」を事例問題の答えの根拠にしているからでしょう。


ここまで書けばわかりますね。自己決定の原則です。


ただし,原則は原理と異なり,例外があります。例えば,自己決定の結果,生命に危険がある場合などです。


また,危機介入では,危機に陥ったクライエントを落ち着かせて安心させるためにあえてパターナリズム的に支援することもあります。


原理は例外がないものです。例えば,「人権尊重の原理」といった場合は,人権はどんな場面でも尊重しなければならない,ということになります。


原則を原理的に出題されることもあるので,注意が必要です。原則といった場合は,例外はあるのだということを覚えておきたいです。

2022年3月25日金曜日

ストレスフリーの勉強法

国家試験に合格するために必要なことは,覚えるべきものを確実に覚え切ることが欠かせません。

 

丸暗記するよりも,意味をつかむことが覚えるコツです。

 

丸暗記は,ストレスが多いわりに,覚えにくく,しかも国家試験で効果の出にくい勉強法です。

 

なぜなら言い回しを変えられたら,対応できないことがあるからです。

 

穴埋めして覚える教材もありますが,私たちチームfukufuku21はあまりおすすめできないものだと考えています。国家試験が筆記式なら良い学習だと思いますが,社会福祉士はマークシートです。

 

おおよその意味をつかんでいく学習ができれば,対応可能です。

 

これなら,ストレスを感じにくく,得点力を上げることができます。

 

それでは,今日の問題です。

 

31回・問題33 地域福祉に関する理念や概念に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 ソーシャルキャピタルとは,地域における公共的建築物や公共交通といった物的資本の整備状況を示すことをいう。

2 住民主体の原則とは,行政の指導の下で地域住民が主体となって行う地域活動の原則のことをいう。

3 ノーマライゼーションとは,障害のある人に,障害のない人と同じような暮らしが可能となる生活条件を作り出していく考え方のことをいう。

4 地域移行支援とは,住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供することで,在宅の限界点を高めることをいう。

5 ソーシャルインクルージョンとは,全ての人々を孤独や孤立,排除や摩擦から援護し,社会の構成員として包み支え合う社会を目指すことをいう。

 

カタカナの言葉が入っていると,正解するのが極端に難しくなることがわかってきています。

 

その理由は,日本語と異なり,勉強していないと意味を推測することができないことにあります。

 

この問題の場合は,

ソーシャルキャピタル

ノーマライゼーション

ソーシャルインクルージョン

 

と3つも含まれることと正解を2つ選ぶことのダブルパンチで受験者を悩ませます。

 

それでは解説です。

 

1 ソーシャルキャピタルとは,地域における公共的建築物や公共交通といった物的資本の整備状況を示すことをいう。

 

ソーシャルキャピタルは,社会関係資本と訳され,「互酬性」「信頼性」「ネットワーク」による人と人のつながりのことです。

ソーシャルキャピタルは,古典的な集団ではなく,人と人の弱いつながり(紐帯=紐帯)でつながっています。 

この紐帯こそが,「互酬性」「信頼性」「ネットワーク」そのものです。

 互酬性は,人に何かをしてもらったら,何かをして返すといったものです。「こうしてくれる」ということが信頼性につながります。「してくれない」と思えば,互酬性は崩れます。

 「互酬性」と「信頼性」は,11の関係性ですが,それが多くの人に広がれば「ネットワーク」となります。

ソーシャルキャピタルは,本来はこのような自主的な結びつきです。

しかし,国は,地域活性化の切り札として,ソーシャルキャピタルの活用を考えています。

だから国家試験でポイントとなっているのです。

  

2 住民主体の原則とは,行政の指導の下で地域住民が主体となって行う地域活動の原則のことをいう。

 

住民主体の原則は,1962年(昭和37)年の全国社会福祉協議会による「社会福祉協議会基本要項」で打ち出されたものです。

 

 その中では,以下のように述べられています。

 

「住民主体」とは,地域住民のニードに即した活動をすすめることをねらいとし,それに必要な組織構成を充実するということである。したがって公私の関係者は,住民の立場を理解して社会福祉協議会に参加,協力するのが本旨である。しかしこのことは,これら関係者の立場を弱めるものではなく,むしろその役割と態度を明確にしたものである。

 

社会福祉協議会は,住民の福祉ニーズを充足するための活動するものなのだ,ということに述べています。

行政は,住民の立場を理解して協力するものです。

 

 

3 ノーマライゼーションとは,障害のある人に,障害のない人と同じような暮らしが可能となる生活条件を作り出していく考え方のことをいう。

 

これが1つめの正解です。

 

4 地域移行支援とは,住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供することで,在宅の限界点を高めることをいう。

 

地域移行支援は,病院や施設から出て,地域で生活することを支援するものです。

 

住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供することは,地域包括ケアシステムです。

 

5 ソーシャルインクルージョンとは,全ての人々を孤独や孤立,排除や摩擦から援護し,社会の構成員として包み支え合う社会を目指すことをいう。

 

これがもう1つの正解です。

 

〈今日の留意点〉

 

改めて,正解を抜き出すと

 

ノーマライゼーションとは,障害のある人に,障害のない人と同じような暮らしが可能となる生活条件を作り出していく考え方のことをいう。

 

ソーシャルインクルージョンとは,全ての人々を孤独や孤立,排除や摩擦から援護し,社会の構成員として包み支え合う社会を目指すことをいう。

 

何の変哲もない文章で,これが正解だとわかれば,これ以外に正解は見えてこないでしょう。

 

しかし,国家試験会場では,そんなに簡単には正解させてくれません。同じ文章では出題されないからです。

 

たとえば,

 

ノーマライゼーションとは,障害のある人に,障害のない人と同じような暮らしが可能となる生活条件を作り出していく考え方のことをいう。

 

を正解にできない人は,この中に何かの引っ掛けがあるのかと疑います。

 

しかし,「住民主体の原則とは,行政の指導の下で地域住民が主体となって行う地域活動の原則のことをいう」と比べてみてください。

 

この選択肢では「行政の指導の下で」という明らかにあやしいものが含まれているのに対し,ノーマライゼーションは,そんな表現はありません。

 

法の条文は,定型文があるので,それに従って出題すればよいのですが,概念的なものは,通常では定型文は存在しません。

そのため,誤りの文章にするのは,難しい作問技術を要します。確実な誤りポイントを挿入することで,誤りの文章を作り上げます。

 

丸暗記学習は,本来は定型文がないものを定型文として覚える学習法です。

 

言い回しを変えられると対応できない,という感想を言う人がいますが,定型文がないのですから,言い回しを変えてするのは当然のことです。

 

「おおよその意味を押さえておけばOK」という意味を何となくでも理解してもらえたでしょうか。

2022年3月24日木曜日

知識が足りなかったという振り返り

国家試験に不合格になると,「知識が足りなかった」「勉強が足りなかった」という気持ちが生まれます。


それは,とても重要なことです。


能力不足だった


と思うと,達成動機の低い人になってしまうからです。


しかし,単に「知識が足りなかった」「勉強が足りなかった」では,ちょっと弱いように思います。


第34回国家試験では,よくわからない問題は,権利擁護にみられたくらいで,それ以外の科目は,落ち着いて問題を解くことができれば,ある程度正解できた問題で構成されていたように思います。


そのために,知識を広げなければならない,と思う人は少ないかもしれません。


ボーダーラインを超えないのは,私たちチームfukufuku21が思うに,知識不足というよりも,知識が定着していないことが原因ではないかと思います。


第34回・問題71 「平成30年度国民医療費の概況」(厚生労働省)に基づく,2018年度(平成30年度)の国民医療費に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 国民医療費は,50兆円を超えている。

2 国民医療費の国民所得に対する比率は3%に満たない。

3 国民医療費の財源の内訳は,保険料の割合よりも公費の割合の方が大きい。

4 国民医療費は,診療種類別にみると,薬局調剤医療費の占める割合が最も大きい。

5 人口一人当たり国民医療費は,75歳以上の人口一人当たり国民医療費よりも低い。


「国民医療費の概況」は,おそらくある程度勉強した人なら必ず1回は目を通したはずです。


それでも正解するのは,そんなに簡単ではありません。


それが国家試験の怖いところです。


確実な知識がなければ,日本語的には正誤を判別することができないのです。


国家試験は,日本語の問題だ,という人がいますが,問題の文字数が絞られてきている昨今,日本語的に解ける問題は,かなり少ないと言えます。


この問題の場合,いわゆる日本語的に判別することができるのは,選択肢2だけです。


この選択肢が正解にならない理由は,対国民所得比が3%に満たないのであれば,国民医療費が多くなってきているという報道はあまり意味をなさないと考えることができるからです。


知識があいまいだと,ひっかかるのは,選択肢3でしょう。

3 国民医療費の財源の内訳は,保険料の割合よりも公費の割合の方が大きい。


日本の医療保障制度は,社会保険制度を採用しているので,公費が社会保険料を超えるような制度設計はなされません。


こういった覚え方が最後に大きな力となります。

正解は

5 人口一人当たり国民医療費は,75歳以上の人口一人当たり国民医療費よりも低い。


落ち着いて読めば,それほど難しいものではなりません。高齢者が医療を受ける機会が多いのは,誰でも知っていることでしょう。

それでもミスするのが国家試験の怖いところです。知識があることは合格に必要ですが,それを正しくアウトプットすることができなければ,点数の上乗せは期待できません。

今後,スタンダードな問題が多くなるとしたら,ミスを極力少なくすることがこれまで以上に重要になるでしょう。

2022年3月23日水曜日

第34国試に関するソ教連会長談話について

 この学習部屋では時事ネタは極力取り扱わないことにしていますが,3/22に「一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟」(ソ教連)の会長談話が発表されたので,それに触れておきたいと思います。

 

(会長談話)

http://www.jaswe.jp/seimei/20220322_danwa_34th_shakaikokushi.pdf

 

以下は談話の一部です。

○本連盟で毎年実施している全国統一模擬試験(受験者約1万人)においては、模擬試験問題作問にあたり、基本的な知識を問うこととともに問題の内容については、いわゆるダブルバーレル等による弁別性の低下などに留意しつつ作問している。この試験問題の弁別性は、過去の模擬試験結果の回答傾向を分析し、設問ごとの弁別率を比較することによって問題としての質(いわゆる良問)が把握できるものである。

 

会長談話によると良問とは,「特定分野に限らず必要不可欠な基本的な知識を問う試験問題」のことらしいです。

 

談話の中で重要なことは,以下の部分です。

また、試験問題の作成にあたっては今後、各回の出題で試験問題の質の面で大きくブレが生じないよう、過去の国家試験結果を精緻に分析し、「特定分野に限らず必要不可欠な基本的な知識を問う、いわゆる良問」が出題されるよう留意するべきである。

 

社会福祉振興・試験センターは,第1回国家試験からの受験者の回答の膨大なデータをもっています。

それらを活用すれば,年度間の格差が生じない安定した問題づくりは必ずできるはずです。それを切に願います。


基本的な知識を問う問題が多くなれば,知識があっても知恵はないタイプのワーカーが多く出てしまいます。そんなワーカーは現場では必要としません。


新しいカリキュラムでは,国家試験の在り方検討会が示している単純な知識では解けない問題の類型「タクソノミーⅡ型」「タクソノミーⅢ型」が多く出題されると考えられます。

これらの問題は,知識があることを前提として,そのうえで考えることで答えられるものです。

第35・36回国試では,お披露目のように大勢に影響が出ない範囲で混ぜて出題するように思います。

基礎的な内容でありながらも簡単には解けない問題をどのように作るのか,かなり楽しみです。

2022年3月22日火曜日

ボーダーラインを超える勉強法~必ず確認して!

合格基準点(いわゆるボーダーライン)は,問題の難易度によって毎年変わります。


ボーダーラインが示されるようになったのは第15回以降ですが,現時点(2022年3月)までの間で

最も低かったのは,第25回の72点(90点からマイナス18点)

最も高かったのは,第34回の105点(90点からプラス15点)


といったようなばらつきが生じています。


本当は,「90点以上の得点があったら合格」とすればシンプルでよいのですが,これだけのばらつきが生じているという事実は,問題の質(解きやすさの面に)が均質ではないことを示すものです。


令和元年カリキュラム改正の国家試験の在り方検討会では,試験委員に対して研修を行うことを提言していますが,それだけ試験問題を作成するのは難しいということなのでしょう。


試験委員は,その分野の専門家であっても国家試験を作る専門家ではありません。


第34回国家試験の合格発表が終わってから


どんな勉強をすればよいかわからなくなった


という声が聞かれているようです。


一見すると国家試験のハードルが高くなったように感じるかもしれませんが,ハードルは一切変わっていません。


上位30%の人が90点以上の点数を取れる試験にするためにいろいろ試していると考えてもよいのかもしれません。


それにもかかわらず,ハードルが高くなったと考えて,学習戦略を間違えると大変なこととなります。


ボーダーラインを超える勉強法


今は,平成19年改正のカリキュラムで実施される国家試験の末期です。


これまでの国家試験でどんなものが出題されるのか明確になってきています。


だからと言って3~5年間の過去問を完ぺきに覚えてもおそらく合格することはできないでしょう。参考書などで確実な知識をつけることが欠かせません。


つまり勉強する内容は何も変わるわけではありません。


ただし,変える必要があるがあるのは,勉強法です。


同じ勉強法を続けていたら同じ結果になります。特に何度か受験している人は要注意です。


第34回・問題60 知的障害者福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 

1 知的障害者に対する入院形態として,医療保護入院が規定されている。

2 市町村は,知的障害者更生相談所を設けなければならないと規定されている。

3 市町村は,その設置する福祉事務所に知的障害者福祉司を置くことができると規定されている。

4 1998年(平成10年)に,精神衛生法から知的障害者福祉法に名称が変更された。

5 知的障害者に対して交付される「療育手帳」について規定されている。


この問題の元になっている問題があります。


第31回・問題62 身体障害者福祉法,知的障害者福祉法及び「精神保健福祉法」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 身体障害者福祉法では,身体障害者更生相談所の業務として,必要に応じて「障害者総合支援法」に規定する補装具の処方を行うことが規定されている。

2 身体障害者福祉法において,身体障害者手帳の有効期限は2年間と規定されている。

3 知的障害者福祉法において,療育手帳の交付が規定されている。

4 知的障害者福祉法において,知的障害者更生相談所には,社会福祉主事を置かなければならないと規定されている。

5 「精神保健福祉法」において,発達障害者支援センターの運営について規定されている。

(注) 「精神保健福祉法」とは,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。


第34回の問題の正解は,選択肢3です。

3 市町村は,その設置する福祉事務所に知的障害者福祉司を置くことができると規定されている。


第31回の問題の正解は,選択肢1です。

1 身体障害者福祉法では,身体障害者更生相談所の業務として,必要に応じて「障害者総合支援法」に規定する補装具の処方を行うことが規定されている。


正解は重なっていません。


しかし,共通のものがあります。

5 知的障害者に対して交付される「療育手帳」について規定されている。

3 知的障害者福祉法において,療育手帳の交付が規定されている。


こういったものを確実に消去できると得点力が上がります。


〔重要なこと〕


過去問を解くときは,必ずすべての選択肢を覚えること


何度も出題されるものは,ある時は正解になったり,ある時は誤りになったり,といったことを繰り返しています。

過去問を解くとき,正解することだけを主眼に置いた勉強なら,せっかく過去問を解いても正解できる実力がつきません。

知識を広げる勉強よりも確実に得点力が上がる勉強法は,実はこういった極めてスタンダードなことを地道に行っていく努力です。

出るか出ないかわからないものに時間をかけるよりも出る確率が高いものを確実に覚えていくことが効率よい勉強です。

2022年3月21日月曜日

第36回までには合格したい

現時点(2022年3月)までに,国家試験は34回実施されています。

 

それぞれの回には,受験した人それぞれのドラマがあります。

その思いが歴史となり,今があります。

 

34回国家試験は,合格基準点が105点となりました。

 

平成19年カリキュラム改正後の国家試験結果 

合格率

ボーダー

22

27.5%

84

23

28.1%

81

24

26.3%

81

25

18.8%

72

26

27.5%

84

27

27.0%

88

28

26.2%

88

29

25.8%

86

30

30.2%

99

31

29.9%

89

32

29.3%

88

33

29.3%

93

34

31.1%

105

平均

27.5%

87.5


合格基準点を取り上げると第34回国家試験が最も合格するのが難しい国家試験のように見えます。

 

しかし,合格率を見ると,第34回国家試験は,最も間口の広いものとなっています。

 

上位30%の人を合格させる国家試験であるという方向性は,ずっと前から見えます。

 

国家試験は,7割が不合格となることについての主な過去記事

 

生活保護の実施の徹底理解~その2

https://fukufuku21.blogspot.com/2018/10/2.html

国試勉強は早めのスタートがおすすめです!!

https://fukufuku21.blogspot.com/2019/04/blog-post_15.html

国家試験は,7割が不合格になります

https://fukufuku21.blogspot.com/2020/04/blog-post_4.html

 

改めてこのように並べてみると,この時期に同じことを書いていることがわかります。


今までのどこかの記事で書いていますが,社会福祉振興・試験センターが国家試験の理想だと考えているのは,

合格基準点 90

合格率 30

 

魔の第25回国試以降,その理想に向けて改革を進めているように見えます。

 現在のカリキュラムでは,その方針を貫き続けることでしょう。

 

さて,第37回からは,令和元年改正のカリキュラムによって実施されます。

 

それまでは,第35回と第36回の2回は,平成19年改正のカリキュラムの内容で実施されます。できれば,この2回で合格をつかみ取りたいところです。

 

というのは,今が最も勉強しやすいからです。

 

今まで13回も実施されてきたことで,どんな内容のものがよく出るのかが明らかになっています。

先に紹介した表を見てみると,第25回の前と後では明らかに合格基準点の傾向が異なります。

 

これは,初期にはまだどのような問題を出題したらよいのかが固まっていなかったことがあるように思います。今は,確実に覚えるとかなり高得点となります。

 

34回国試ではそれがよくわかりましたが,明らかになっていないだけで,第30回以降は,120点を超える得点の人は,それ以前よりも確実に増えています。

 

今が合格のチャンス。

 

あとは,再始動を早くして,ほかの受験生と一歩差をつけることが大切です。

2022年3月20日日曜日

確実に覚えるということ~リベンジするために

第34回国家試験は,波乱の結果となりました。


合格基準点(いわゆるボーダーライン)が,とうとう100点を超えました(105点)。


こういった結果になると,どんな勉強をすると合格するのか,という気持ちになるはずです。


結論を言えば,学習戦略は何も変わることはありません。


ただし,その学習戦略が間違っていたとしたら,変えなければなりません。


その前に,重要なことは,


国家試験に合格できなかったのは,知識不足だった


と単純に片づけてしまわないことです。


これだとちょっと弱いです。


知識を上乗せしただけでは点数は伸びないからです。

同じ勉強法をすると同じ結果しか出ません。


これらについて,今後考えていきたいと思います。


バロメーターになる問題です。


第34回・問題45 「令和3年版地方財政白書」(総務省)における2019年度(令和元年度)の民生費に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 地方公共団体の目的別歳出純計決算額の構成比は,高い方から,教育費,公債費,民生費の順となっている。

2 民生費の目的別歳出の割合は,市町村では児童福祉費よりも社会福祉費の方が高い。

3 民生費の目的別歳出の割合は,都道府県では生活保護費よりも老人福祉費の方が高い。

4 民生費の性質別歳出の割合は,市町村では扶助費よりも人件費の方が高い。

5 民生費の性質別歳出の割合は,都道府県では補助費等よりも扶助費の方が高い。 


この問題は象徴的な問題です。これを正解できましたか?

正解できなかった人は,知識不足ではなく,知識が得点できる力に変わっていなかったことを示しています。

こういったタイプの問題を正解できたり,正解できなかったり,と安定していないことこそが不合格になる原因です。

知識を積み上げたところで,こういった問題を確実に正解できないと点数は積み上がりません。

2022年3月19日土曜日

第35回国家試験で合格する~ボーダー105点を踏まえて

 社会福祉士の国家試験は,厚生労働大臣から指定を受けた「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」が実施しています。


同センターは,合格基準を以下のように示しています。(2022/03/18時点)

 

1 問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者。

 

2 1を満たした者のうち、18科目群すべてにおいて得点があった者。

 

令和元年カリキュラム改正による新しい国家試験は,第37回から実施されるので,第35回,第36回は,平成19年カリキュラム改正のままで実施されます。


新しいカリキュラムに変わったからといって,それまでに得た受験資格がなくなったり,新しい研修を受けなおすことが必要であったり,といったことはないので,まずは安心してください。


とは言っても,できればそれまでには資格取得したいものです。


試験センターの意図として,平成19年カリキュラムで勉強した人は,その間に資格取得してもらいたいというものがあるのではないかと推測しています。


国家試験は,社会福祉士としての必要な知識,素養をもった人を合格させるためのものです。


チームfukufuku21が考える国家試験問題の類型


①最も良いもの

・しっかり勉強した人は解ける

・勉強不足の人は解けない


②良くないもの

・しっかり勉強した人でも解けない

・勉強不足の人でも解ける


③最も良くないもの

・しっかり勉強した人も勉強不足の人も解ける


④どうでもよいもの

・みんなが解けない


しかししっかり勉強した人でもイージーミスはつきものなので,「①最も良いもの」だけで構成されると,多くの人が総得点の60%を超えない可能性も出てきてしまいます。


そこで,①~④をバランスよく出題して,多くの受験者が90点プラスマイナス10点あたりに分布するような問題構成を考えます。


④が多いと「難問」「奇問」と騒がれたりしますが,それと同じ数だけ③があれば,④の存在は帳消しとなり,多くの受験者が90点プラスマイナス10点あたりに分布する国家試験となります。


①~④をバランスよく出題したつもりでも,さまざまな要因によって,結果がずれることがあります。


その時に,合格基準点が補正されます。


これをしないと,実施回によって,合格しやすかったり,合格しにくかったり,といった不公平が生じます。


さて,前置きが長くなりましたが,ここからが結論です。


国家試験に合格するために必要な勉強は,何ら変わるものではありません。


必要な知識を一つひとつ確実に積み重ねていくことです。


〈今日のまとめ〉


不合格になると悔しいでしょう。

しかし,その悔しさ,無念さは,しっかり勉強してきたからの思いです。


すぐには気持ちが整理できないかもしれませんが,次に進むことを決して忘れないでいてほしいと思います。

勉強を再開するのが,秋になってしまったというのは,最悪のシナリオです。


しっかり勉強した人なら,よくよく問題を読んだら正解できたというものもあるはずです。

このイージーミスをなくすことができれば,国家試験は必ず合格できます。


なぜなら,国家試験はしっかり勉強した人が合格できるように作られているからです。

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