2022年3月3日木曜日

ポランニーが論じた社会統合のパターン

ポランニー(PolanyiK.)は,現在のところ(第34回まで)では,まだ1回しか出題されたことはありません。

 

しかし新しい「社会福祉の原理と政策」では,科目名が示す通り,「原理」を学ぶので,頻出ではなくても,こういった原理に関するものは,押さえておくのが賢明です。

 

経済学者であるポランニーは,経済システムに秩序もたらす社会統合のパターンとして「互酬」「再分配」「交換」があることを示しました。

 

ポランニーによる社会統合のパターン

互酬

相互扶助関係など

再分配

税の徴収による財の分配

交換

市場による財の移動(売買のこと)

 

福祉政策的に見ると,互酬は「互助」,再分配は「共助」及び「公助」にあたります。

 

それでは,今日の問題です。

 

31回・問題23 福祉社会づくりに関わる次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ポランニー(PolanyiK.)の互酬の議論では,社会統合の一つのパターンに相互扶助関係があるとされた。

2 ブルデュー(BourdieuP.)が論じた文化資本とは,地域社会が子育て支援に対して寄与する財のことをいう。

3 ホネット(HonnethA.)が論じた社会的承認とは,地域社会における住民による福祉団体に対する信頼と認知に関わる概念である。

4 デュルケム(DurkheimE.)が論じた有機的連帯とは,教会を中心とした共助のことをいう。

5 バージェス(BurgessE.)が論じた同心円地帯理論は,農村の村落共同体の共生空間をモデルにしている。

 

この中で,過去に出題されたことがあるものは,「文化資本」「有機的連帯」「同心円地帯理論」です。

 

同心円地帯理論がその前に出題されたのは,第18回国家試験です。

 

シカゴ学派の理論まだ出すことがあるのだと思ったら,第33回国家試験にも再び出題されていました。時々原点回帰があるものです。

 

それでは,解説です。

 

1 ポランニー(PolanyiK.)の互酬の議論では,社会統合の一つのパターンに相互扶助関係があるとされた。

 

前説でわかるようにこれが正解です。

 

ポランニーの互酬の理論を知らずとも,ソーシャルキャピタル(社会関係資本)を理解していれば,これを選べそうです。

 

2 ブルデュー(BourdieuP.)が論じた文化資本とは,地域社会が子育て支援に対して寄与する財のことをいう。

 

文化資本は,これまで何度か出題されていますが,今まで一度も正解になったことはありません。

 

文化資本は,文化的な要素が代々継承されていくことを指しています。

 

本好きの親がいれば,その本を売却しない限り,その本は子に受け継がれます。

学者が多い家系は,こういったことが蓄積されて学者が多くなっていきます。

 

家元などもそうかもしれません。文化資本をもつ者ともたない者は明確に分かれると言えます。誰もがもつものではありません。

 

3 ホネット(HonnethA.)が論じた社会的承認とは,地域社会における住民による福祉団体に対する信頼と認知に関わる概念である。

 

社会的承認とは,社会が認めること,社会から認められることをいいます。

定義は分からずとも,この選択肢は消去できるでしょう。

 

4 デュルケム(DurkheimE.)が論じた有機的連帯とは,教会を中心とした共助のことをいう。

 

デュルケムは,社会の分業について,「機械的連帯」と「有機的連帯」に分けて論じています。

 

機械的連帯は,同質の成員によるつながりです。社会発展すると異質の成員による有機的連帯となります。

 

毛織物を例に考えてみます。

 

産業革命の前だと,羊を飼って,羊毛を刈って,毛糸にして,編んで,売る,という一連の流れは,一人が担います。つながっているのは,同業者です。これが機械的連帯です。

 

産業革命によって,大量生産が可能となります。

 

羊を飼う人。毛糸を作る人。編む人。売る人。というように分業が進みます。この人たちの連帯が有機的連帯です。

 

さらに分業が進めば,編む過程もいくつかに分かれるかもしれません。販売方法も変わるかもしれません。

 

このように必要に応じて連帯の形が変化していくので,「有機的連帯」と呼ばれます。

 

社会は,「機械的連帯」から「有機的連帯」への変化・発展していきます。

 

5 バージェス(BurgessE.)が論じた同心円地帯理論は,農村の村落共同体の共生空間をモデルにしている。

 

バージェスはシカゴ学派の一人です。

 

シカゴは,移民を中心として街が発展していきます。その発展に着目したのが,ぱーしぇすの「同心円地帯理論」です。

 

街の中心部からの距離によって,住む人が異なることを明らかにしたものです。

 

日本だと土地が狭いので,本当の同心円を描く都市はないと思います。しかし,家を建てるなら中心部では難しいので,比較的遠いところに建てるでしょう。

 

これが同心円地帯のできるメカニズムの一つです。

 

〈おまけ〉

 

シカゴ学派ではもう一人覚えておいてほしいのが,ワースによる「アーバニズム論」です。都市的生活様式と訳されます。

 

アーバニズムの特徴としては,近隣への無関心などがあります。

 

アーバニズムは,都市に特有のものではなく,地方都市でも起きます。今なら,通信販売などによって,どこに住んでいようと,同じものを手に入れることができます。

 

コンサートだって,コンサート会場まで出かけなくてもネット配信によるものもあります。

 

このように,アーバニズムが進展していくと,街の様子も均質化していきます。リアル店舗が映っている道の映像を見ても,説明がないとどこの街なのかわからないことが多いのではないでしょうか。

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