2022年3月26日土曜日

ミスしない事例問題の解き方

 対応法を問う事例問題は,知識がなくても正解できることが多いので簡単だと思う人も多いと思います。

しかし,そういったものだからこそミスすることは不合格につながります。


それでは今日の問題です。


第31回・問題34 社会福祉協議会に配置された生活支援相談員による仮設住宅の入居者等の被災者を支援するための取組に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 震災後に設営されたN町の仮設住宅では,社会福祉協議会を通して,ボランティアを受け入れ,入居者へイベントや会食会などによる支援を行ってきた。1年がたった頃から,ボランティアが主催する行事への参加者も少なくなってきた。そこで,生活支援相談員が入居者に尋ねたところ,一部の入居者から自分たちが集うアイディアを持ち掛けられた。

1 入居者のアイディアをボランティアに伝えて,生活支援相談員とボランティアとで行事を企画した。

2 アイディアを出した入居者とボランティアとの懇談会を開き,行事などの企画を一緒に考えた。

3 住民懇談会を開催し,入居者が自立して自ら交流すべきであると訴えた。

4 入居者同士の日頃の交流状況を把握するため,聞き取り調査を入居者有志と実施した。

5 アイディアを出した入居者に交流は任せて,安否確認の個別訪問活動に専念することにした。


まず注意したいのは,正解を2つ選ぶ問題であることを忘れないことです。


忘れた頃に現われることもあり,ミスしがちです。


問題を読む前に,「●つ選びなさい」の「●つ」の部分に大きな〇をつけておきます。


後で見直すときの手がかりとなります。


さて,この問題では,


3 住民懇談会を開催し,入居者が自立して自ら交流すべきであると訴えた。

5 アイディアを出した入居者に交流は任せて,安否確認の個別訪問活動に専念することにした。


は消去できるのではないかと思います。いかがですか?


選択肢3を正解だと思う人は,ちょっと注意が必要です。


「あるべき論」は,人の心を動かすことができません。煙たがられるだけです。


学校でもそういった優等生タイプの人はいませんでしたか? 先生には受けが良くても,クラスメイトからはよく思われていないといったタイプの人です。


自分の思いは大切ですが,人を動かすのは,工夫が必要です。


この問題で迷うのは,


1 入居者のアイディアをボランティアに伝えて,生活支援相談員とボランティアとで行事を企画した。

2 アイディアを出した入居者とボランティアとの懇談会を開き,行事などの企画を一緒に考えた。

4 入居者同士の日頃の交流状況を把握するため,聞き取り調査を入居者有志と実施した。


の3つです。


この問題が出題された当時,解答速報でも答えが割れていました。


一般的な事例問題の場合,優先されるのは状況確認です。


一般的ではない事例問題,特に虐待がうかがわれる事例の場合は,状況確認は優先されません。


最も優先されるのは,通告あるいは通報です。


正解を2つ選ぶ問題の場合は,もう1つの答えとして,状況確認やその後の対応などが正解となります。


この問題は,一般的な問題なので,優先されるのは状況確認です。


1つめの正解は,選択肢4です。


4 入居者同士の日頃の交流状況を把握するため,聞き取り調査を入居者有志と実施した。


しかし,もう1つの正解を選ぶのが意外とやっかいです。


1 入居者のアイディアをボランティアに伝えて,生活支援相談員とボランティアとで行事を企画した。

2 アイディアを出した入居者とボランティアとの懇談会を開き,行事などの企画を一緒に考えた。


選択肢1も一読すると正解になりそうですが,答えは選択肢2です。


解答速報では,選択肢1を答えだとする会社がありました。


しかし,選択肢1が正解にならないのは,入居者を巻き込んでいないからです。


また,入居者のアイディアは尊重しなければなりませんが,それが適切なものでなかったアイディアだったらどうするのでしょうか。


この選択肢を正解だと思う人は,入居者のアイディアは適切なものであるという思い込みがあるように思います。


思い込みは,判断を曇らせてしまうので注意が必要です。


特にこの問題では,どのようなアイディアが寄せられたのかの情報がありません。


適切なのかどうかを確かめることが必要です。


そういったこともあり,もう1つの正解は,


2 アイディアを出した入居者とボランティアとの懇談会を開き,行事などの企画を一緒に考えた。


だということになります。これだと入居者主体となります。


〈今日の一言〉


ワーカーが良かれと思ってクライエントに変わって判断したり,行動したりすることは,パターナリズムといいます。


これまで,パターナリズムの要素が含まれる選択肢が正解になったことは一度もありません。


バイステックの「ケースワークの原則」を事例問題の答えの根拠にしているからでしょう。


ここまで書けばわかりますね。自己決定の原則です。


ただし,原則は原理と異なり,例外があります。例えば,自己決定の結果,生命に危険がある場合などです。


また,危機介入では,危機に陥ったクライエントを落ち着かせて安心させるためにあえてパターナリズム的に支援することもあります。


原理は例外がないものです。例えば,「人権尊重の原理」といった場合は,人権はどんな場面でも尊重しなければならない,ということになります。


原則を原理的に出題されることもあるので,注意が必要です。原則といった場合は,例外はあるのだということを覚えておきたいです。

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