社会福祉士の国家試験は出題範囲が広いですが,無限ではありません。
出題基準というものが提示されています。
もちろん毎年の出題の中には,出題基準に示されていないものも出題されますが,それらをまったく正解できなくてもそのほかの部分を確実に正解することができれば,余裕で合格することができます。
いわゆるボーダーラインが変わろうが,覚えるべき内容が変わることはありません。
出題基準で示されている法に関して,定義くらいは押さえておきたいです。
今日のテーマは,生活困窮者自立支援法です。
ほかの主だった法制度と異なり,30条しかない極めてこじんまりした法律です。
生活困窮者の定義
第三条 この法律において「生活困窮者」とは、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者をいう。 |
ポイントは,最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者
最低限度の生活を維持することができない者ではありません。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題36 地域福祉の対象に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 災害対策基本法における避難行動要支援者とは,本人が同意し,提供した情報に基づいて避難行動要支援者名簿に登載された者をいう。
2 「ホームレス自立支援法」におけるホームレスとは,都市公園,河川,道路,駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし,日常生活を営んでいる者をいう。
3 生活困窮者自立支援法における生活困窮者とは,最低限度の生活を維持できていない者をいう。
4 ひきこもり対策推進事業におけるひきこもりとは,様々な要因の結果として社会的参加を回避し,原則的には1年以上家庭にとどまり続けていることをいう。
5 「障害者虐待防止法」における,養護者による障害者虐待とは,身体的虐待,心理的虐待,放棄・放置,経済的虐待の四つのことをいう。
(注)1 「ホームレス自立支援法」とは,「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」のことである。
2 「障害者虐待防止法」とは,「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。
さまざまなものが出題されているので,混乱しがちです。
これが国家試験です。今なら,どれも参考書等に書いてあると思うので,それを覚えていれば何とか対応できそうですが,この試験があった時点で,参考書等に書かれていたのは,おそらく
ホームレス自立支援法
生活困窮者自立支援法
障害者虐待防止法
の3つだけだった思います。なぜなら参考書類は,基本的に過去問ベースで作成されているからです。
避難行動要支援者
ひきこもり
は初お目見えということになります。
すべての選択肢が勉強したもので構成されているものは,ほとんどありません。この問題のように,いくつか新しいものを混ぜながら出題します。
しかし,多くの場合,新しいものを正解にはしていません。新しいものが正解になるのは,ほかの選択肢を消去できる場合がほとんどです。
国家試験は多くの人が思うほど意地悪ではないようです。
それでは,解説です。
1 災害対策基本法における避難行動要支援者とは,本人が同意し,提供した情報に基づいて避難行動要支援者名簿に登載された者をいう。
避難行動要支援者
当該市町村に居住する要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの。
これらの者を避難行動要支援者名簿に記載します。
本人の同意があるかないか,ではなく,円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するものが名簿に記載されます。
2 「ホームレス自立支援法」におけるホームレスとは,都市公園,河川,道路,駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし,日常生活を営んでいる者をいう。
これが正解です。
故なく起居の場所とは,イメージのつきにくい言葉ですが,施設を本来の目的とは異なる利用方法である寝起きの場所にしているといった意味合いです。
この選択肢を選びにくいのは,「故なく」を「理由なく」と考えてしまいがちだからです。
3 生活困窮者自立支援法における生活困窮者とは,最低限度の生活を維持できていない者をいう。
前説のように,「できていない者」ではなく,「できなくなるおそれのある者」です。
4 ひきこもり対策推進事業におけるひきこもりとは,様々な要因の結果として社会的参加を回避し,原則的には1年以上家庭にとどまり続けていることをいう。
1年以上ではなく,6か月以上です。
5 「障害者虐待防止法」における,養護者による障害者虐待とは,身体的虐待,心理的虐待,放棄・放置,経済的虐待の四つのことをいう。
性的虐待が抜けています。
この選択肢を詳しく読まなくても,四つと書かれているので,正解ではないことはすぐわかります。
4つなのは,児童虐待防止法
高齢者虐待防止法と障害者虐待防止法はは,いずれも5つです。
違いは,経済的虐待のありなしです。