2019年10月31日木曜日

模擬試験の難易度比較及び国試との関係(ソ教連・中央法規・社会福祉士会・日総研)

模擬試験を受験するとその場で解答をもらえることが多いので,すぐ自己採点する人も多いことと思います。

しかし,ここで気を付けなければならないのは,模擬試験は,実際の国家試験よりも点数が取りにくい傾向にあることです。

そこを押さえておかないと「あれだけ勉強したのに点数が取れない」と落ち込むことになるので注意が必要です。


そこで主要な模擬試験(ソ教連・中央法規・社会福祉士会・日総研)を比較しました。


関連記事
https://fukufuku21.blogspot.com/2020/11/blog-post_11.html

ただし,どの模擬試験が最も良いかは,受けるタイミングによります。これについては後述します。

なお,日本社会福祉士会の模擬試験は,福祉教育カレッジ(テコム)が実施するものと同じです。

まずは平均点の比較です。

平均点の比較(2017~2019)
年度
社会福祉士会
ソ教連
中央法規
日総研
2017
69.8
66.2
65.6
74.3
2018
74.0
64.7
68.3
75.7
2019
70.7
70.4
70.7
81.9
平均
71.5
67.1
68.2
77.3

平均で比較すると,最も高い点数の日総研と最も低いソ教連では,約10点の開きがあります。

ソ教連以外のデータは,追加しての採点受付があるので,その時期によって変化していきます。上記のデータは,入手したものを更新しているので,初期データであるソ教連とは単純比較はできません。

次に合格基準点の比較です。

中央法規は,得点分布を公表していないので,社会福祉士会,ソ教連,日総研を比較します。

合格基準の目安(いわゆるボーダーライン)は,第30回と第31回国試の合格率を参考にして,上位から30%に位置する点数を計算したものです。


「合格基準の目安」の比較(上位から30%)
年度
社会福祉士会
ソ教連
日総研
2017
76
70
79
2018
80
75
83
2019
77点
76
90点
平均
77.6
73.7
84.0点

※社会福祉士会とソ教連は,5点刻みにカテゴライズされているので,若干の誤差あり。

最も高い点数の日総研の84.0点と最も低いソ教連の73.7点では,10.3点も差があります。

これらの比較でわかるように,模試によって点数に違いが生じます。この差が模試の難易度の違いです。

つまり問題の難易度によって得点が変わることを示しています。

自己採点の点数が低くても,必要以上に落ち込むことはありません。

2018年度の国試(つまり第31回国試)の合格基準点は,89点でした。

2018年の模擬試験でこの点数に最も近いのは日総研(合格基準の目安は85点)ですが,それでも国試の合格基準点とは6点の差が開いています。

模擬試験の難易度の差は,実力が伸びたとしても,模擬試験を受ける順番によって,点数が下がるということがあり得ます。

逆に実力は一緒でも,模試を受ける順番によって,点数が上がるということもあります。

ソ教連が最も国家試験に近い難易度であるというイメージがあるかもしれませんが,実際には,かなりかけ離れたものです(そんなイメージはないですか)。

ここを知らないと,模擬試験を受けたあと,思ったように点数が取れずに落ち込むことになってしまいます。

そうならないように,以下のように点数を補正してみる方法をおすすめします。


模擬試験の点数の難易度による補正の方法

各団体の模試の基本設計は毎年それほど変化しないということを前提すると,以下の考え方ができます。

2018年模擬試験と第31回国家試験の点数の差の分をプラスして計算する方法です。中央法規は得点分布がわかりませんが,便宜上ソ教連と同様に扱います。
(第32回国家試験が終了したら,比較データを修正します)

しかし,チームfukufuku21メンバーの経験から言えば,ソ教連と中央法規では,中央法規よりもソ教連のほうが難しいです。

平均点だけではわからない部分です。


社会福祉士会
ソ教連
中央法規
日総研
国試との点数差
-9点
14
14
-6点

各団体の模擬試験を受験した時,この差をプラスすると国試での得点に近くなります。


難易度補正
社会福祉士会
ソ教連
中央法規
日総研
難易度補正
+9点
14
14
+6点

最も点数が取りにくいと思われるソ教連で75点だったとしても,プラス14点すると,合格圏内だと言えるのです。

実際には国家試験までには時間があるので,平均点辺りになっていれば順調だと言えると思います。ただし,点数はあくまでも目安にすぎません。

2019年データで今後修正しますが,近年の模擬試験の難易度と比較すると
国家試験に近い難易度の模擬試験は以下のように言えると思います。

①日総研
②社会福祉士会
③中央法規
④ソ教連

易しい,難しいといった主観と客観的なデータが異なることに注目したいです。



模擬試験の成績表の読み取り方

中央法規社会福祉士会の成績表は,A・B・Cランクで評価されています。

中央法規は点数分けです。
 A 150~90
 B 89~70
 C 69~50
 D 49~30
 E 29~0

社会福祉士会は,偏差値分けです。
 A 63.0以上
 B 55.0~62.9
 C 45.0~54.9
 D 37.0~44.9
 E 36.9以下

点数分けと偏差値分けでは,実力がわかりやすいのは,偏差値分けです。点数は問題の難易度によって変化するからです。

日総研は,得点分布表がついてきます。
余談ですが,日総研は模擬試験に毎年さまざまな付録があるのが特徴です。
付録だけでもお得感があるように思います。
国家試験をよく知っているメンバーで作っていると思われる付録は,なぜ有料で販売しないのかと思われるほど完成度が高いように感じます。

ソ教連の成績表には,評価も偏差値もついていません。
そのため,目安にしたいのは,順位です(国試近くなるとソ教連ホームページで概況が発表されます)。

問題が難しければ,得点は下がります。
問題が易しければ,得点は上がります。

順位は,難易度に左右されにくいと考えられます。

上位から30%の順位が合格圏内であるととらえることができます。
この算出方法はすべての模試に共通して使えます。


<今日の一言>

模擬試験は,どの団体のものであっても,国試よりも点数が取りにくいものです。
そのため,模試を受けたあとに自己採点してみて,ショックを受ける人が後を絶ちません。

しかし点数はあくまでも目安です。
模試で90点以上取るのは至難の業です。

最も点数が取りにくいと思われるソ教連では,90点以上は1.5%,80点以上でも7.6%しかいません(2018年データ)。

最も点数が取りやすいと思われる日総研でさえ,90点以上は15.3%,80点以上でも35.8%しかいません(2018年データ)。

模試は,点数が取りにくいものであることを覚えておきたいです。

実力がなくて点数が取れないのではなく,点数が取れない問題だから点数が取れないと思うのが適切です。

それぞれの模試を受験して自己採点したとき,ぜひ点数補正してみてください。

自己採点で落ち込んでいる時間があったら,模試の振り返りをしましょう。

国家試験の難易度に近い問題で構成されている模擬試験は,日総研のものだと言えます。
そのため,これからの時期に解くには良いと思います。

受験する順番によっては,実力をつけても得点が下がることがあります。
模擬試験によって難易度に違いがあるからです。

一般的な模擬試験は,国家試験よりも難易度が高いことは明らかです。

模擬試験の結果が良ければ,それはもちろん素晴らしいことです。
今までの努力の結果です。

模擬試練の結果,思ったような点数が取れなかったとしても,学習方法にミスマッチがなかったかを見直す機会になります。その後が重要です。

2019年10月30日水曜日

介護保険サービスの内容が問われる問題は少ない

介護保険法に規定されるサービスは,数が多くて覚えるのが大変だと思うでしょう。

国試では,第24・25・26・27・29回に一問ずつ出題されていて,近年の出題は少なくなっています。

それに代わって出題頻度が高くなっているのが,地域支援事業です。

さて,出題内容を確認すると以下のようになります。

第24回 介護予防サービス
第25回 介護予防サービス
第26回 地域密着型サービス
第27回 介護給付ほかのサービス
第29回 福祉用具貸与・販売

かなり偏りがあるのがわかります。

さて,今日の問題です。


第27回・問題131 介護保険から給付されるサービスに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 複合型サービスとは,居宅要介護者に対して訪問介護と通所介護や短期入所生活介護など3種類以上組み合わせて提供されるサービスをいう。

2 短期入所生活介護とは,居宅要介護者を介護老人保健施設又は介護療養型医療施設に短期間入所させて,医学的管理下で行う介護をいう。

3 特定施設入居者生活介護では,認知症要介護者に対して共同生活を営むことのできる住居において入浴,排泄,食事等の介護,その他の日常生活上の世話を行う。

4 居宅療養管理指導とは,居宅要介護者に対して心身機能の回復及び日常生活上の自立を図るために居宅において診療に基づき実施される理学療法や作業療法をいう。

5 介護老人福祉施設は,老人福祉法に規定する特別養護老人ホーム(定員30名以上)のうち都道府県知事の指定を受けたものであって,入所する要介護者に対し日常生活上の世話などを行う。


現行カリキュラムで,居宅サービスと介護保険施設が一問丸ごと出題されたのは,この問題が唯一です。

しかし,一度とは言え,出題されているので,ざっくりでも覚えておきたいです。


さて,この問題の正解は


5 介護老人福祉施設は,老人福祉法に規定する特別養護老人ホーム(定員30名以上)のうち都道府県知事の指定を受けたものであって,入所する要介護者に対し日常生活上の世話などを行う。

結局答えは,地域密着型サービスに関連するものとなっています。

介護老人福祉施設の定員が,30名以上と規定されているのは,29名以下では,地域密着型サービスの「地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」 となるからです。

それでは,ほかの選択肢も見てみましよう。


1 複合型サービスとは,居宅要介護者に対して訪問介護と通所介護や短期入所生活介護など3種類以上組み合わせて提供されるサービスをいう。

複合型サービスは,2種類以上を組み合わせて提供します。

この選択肢のように,数字が明記されているのは,怪しいので注意が必要です。


2 短期入所生活介護とは,居宅要介護者を介護老人保健施設又は介護療養型医療施設に短期間入所させて,医学的管理下で行う介護をいう。

介護療養型医療施設は,介護保険法の根拠が,2018年度末でなくなっていますが,現在は経過措置として,存続されています。

その代わりに新しい介護保険施設として誕生したのが,「介護医療院」です。

さてこの選択肢に戻るとショートステイには,

短期入所生活介護
短期入所療養介護

の2つがあります。このうち,介護老人福祉施設や介護医療院で医療を提供するのは「短期入所療養介護」です。


3 特定施設入居者生活介護では,認知症要介護者に対して共同生活を営むことのできる住居において入浴,排泄,食事等の介護,その他の日常生活上の世話を行う。

認知症要介護者に対しての介護を行うのは,認知症対応型共同生活介護,いわゆるグループホームです。


4 居宅療養管理指導とは,居宅要介護者に対して心身機能の回復及び日常生活上の自立を図るために居宅において診療に基づき実施される理学療法や作業療法をいう。

居宅療養管理指導は,病院,診療所又は薬局(以下「病院等」という。)の医師,歯科医師,薬剤師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の管理及び指導をいいます。



<今日の一言>

地域密着型サービスは,また改めて紹介しますが,2015年の介護保険法で創設されたものです。

この改正以前は,市町村が指定する事業者はありませんでした。

介護保険に関して,現在,市町村が指定するのは

地域密着型サービス事業者
介護予防支援事業者
居宅介護支援事業者

の3種類の事業者の指定です。

2019年10月29日火曜日

介護保険サービスと障害福祉サービスの関係性

介護保険の被保険者には,65歳以上の第一号被保険者と40~64歳の第二号被保険者があります。

第一号被保険者は,要介護状態であれば保険給付されますが,第二号被保険者は,特定疾病によって要介護状態になることで保険給付されます。

特定疾病の種類

 
疾病名
1
がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
2
関節リウマチ
3
筋萎縮性側索硬化症
4
後縦(ジン)帯骨化症
5
骨折を伴う骨粗(シヨウ)
6
初老期における認知症
7
進行性核上性麻()、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
8
脊髄小脳変性症
9
脊柱管狭(サク)
10
早老症
11
多系統萎縮症
12
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13
脳血管疾患
14
閉塞性動脈硬化症
15
慢性閉塞性肺疾患
16
両側の(シツ)関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

これらは,必ずしも覚える必要はありません。

大体どのようなものが,特定疾病になっているのか何となくでも分かっていれば,社会福祉士の国試では何とかなります。

40~64歳の場合は,特定疾病に限定している理由は,介護保険サービス以外に利用できるサービスがあるからです。

それは障害者総合支援法が規定する障害福祉サービスです。

特定疾病以外の障害者は,障害福祉サービスを利用しますが,65歳になると,障害福祉サービスと同様のサービスが介護保険サービスにある場合は,介護保険サービスを利用することになります。

ところが,障害者の場合は,コミュニケーション等の関係により,介護に慣れた人の方が適切な場合があります。

そのために,2018年に共生型サービスが創設されています。

また,65歳になると第一号被保険者となりますが,障害者支援施設,救護施設などに入所している場合は,第一号被保険者にはならないという規定がなされています。

そのために,保険料納付する必要がありません。

それでは今日の問題です。


第31回・問題127 事例を読んで,在宅サービスを利用して一人暮らしをしているAさんのケアプランに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事例〕
 弱視であるAさん(64歳,男性)は20年前に事故で頸権損傷を受傷し,四肢麻痺の状態になった。現在,障害支援区分6で居宅介護と同行援護を利用し,障害基礎年金を受けて生活している。間もなく65歳となり介護保険を利用することになると訪問介護の時間数が減少してしまうため,地域包括支援センターに行った。そこで,B介護支援専門員(社会福祉士)に今後も同等のサービスを利用できるかを相談した。

1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。

2 「障害者総合支援法」のサービスのまま,ケアプランを作成する。

3 介護保険法のサービス内でケアプランを作成する。

4 同行援護は,「障害者総合支援法」で引き続き対応する。

5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。


介護保険サービスと障害福祉サービスの関係を正しく押さえていないとあわててしまいそうな問題です。


正解は,選択1と選択肢4です。

1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。
4 同行援護は,「障害者総合支援法」で引き続き対応する。

訪問介護は,障害福祉サービスの居宅介護と同等のサービスです。
介護保険の保険給付で不足する分は,障害福祉サービスで補完します。

この時に重要なのが,「共生型サービス」です。介護保険サービスと障害福祉サービスを一体的に提供できるように,指定を受けやすくしたものです。

同行援護は,視覚障害者の外出支援のためのサービスです。介護保険サービスには同等のサービスがないために,障害福祉サービスを引き続き利用します。

それではほかの選択肢も見てみましょう。


2 「障害者総合支援法」のサービスのまま,ケアプランを作成する。

居宅介護は,介護保険サービスの訪問介護で,ケアプランを作成します。


3 介護保険法のサービス内でケアプランを作成する。

介護保険サービスで完結するなら,それでも良いですが,この事例のように同行援護は,介護保険サービスにはありません。


5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。

Aさんが利用する同行援護は,障害福祉サービスを利用しますが,支払うのは自己負担分のみです。


<今日の一言>

65歳になると障害福祉サービスから介護保険サービスに移行する必要があります,
それを「65歳問題」と言ったりします。

この問題に対応するために,2018年に「共生型サービス」が創設されています。

共生型サービスは,この科目以外に,「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」でも出題されることが予測されるので,しっかり覚えておきたいです。

なお,この問題には,問題としての自己矛盾を抱えたものです。

1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。
5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。

選択肢1は,介護保険サービス+障害福祉サービスは可能

選択肢5は,介護保険サービス+障害福祉サービスは不可能

となります。

こうなると,どちらかが正解で,どちらかが間違いになります。

※この記事は,前日にアップする予定だったものです。

事例問題は実は難しい

社会福祉士の国家試験には,事例問題があります。

法制度の知識が問われる事例問題は,法制度の知識がないと正解できません。

事例問題のスタイルをとっていますが,普通の一問一答式の問題と何ら変わりません。

今日の問題は,前回と同じく,介護保険サービスと障害福祉サービスとの関連の正しい知識が問われています。

第27回・問題130 事例を読んで,Gさんに対する介護保険の適用に関して,正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕
 一人暮らしをしているGさん(65歳,男性)は,交通事故により身体障害者となり,2012年4月から障害者自立支援法(当時)に基づく自立支援給付としてホームヘルプサービスを利用してきた。その後,65歳の誕生日を迎えたので,介護保険の第1号被保険者となり,要介護認定を受けたところ,要介護1と判定された。障害基礎年金2級による年間約78万円と預金の取り崩しで生活している。

1 Gさんは,障害基礎年金を受給しているので,介護保険料は,特別徴収(年金天引き)の対象外である。

2 Gさんの自立支援給付に伴う自己負担は応能負担であり,介護保険においても同様である。

3 Gさんは,障害認定を受けてから65歳になるまでの期間は,介護保険の被保険者ではなかった。

4 Gさんの居宅サービス計画は,地域包括支援センターで作成する。

5 Gさんの65歳以降のホームヘルプサービスは,「障害者総合支援法」に基づく自立支援給付よりも,介護保険法に基づく給付が優先される。


とても上手な出題だと思います。

数ある問題の中には,日本語的に消去できてしまうものもあります。
そういった問題は,勉強が足りない受験生にとってはありがたいものとありますが,勉強した人と差がつかないので,国試には適切ではないと思います。

国試は,勉強した人は解けて,勉強しない人は解けないものでなければなりません。

さて,この問題の正解は,選択肢5です。

5 Gさんの65歳以降のホームヘルプサービスは,「障害者総合支援法」に基づく自立支援給付よりも,介護保険法に基づく給付が優先される。

障害者総合支援法の居宅介護は,介護保険法の訪問介護と同等のサービスです。

障害者総合支援法よりも介護保険法が優先されるので,65歳になったGさんは,介護保険法の訪問介護のサービスを利用します。

これは,65歳になったら,障害福祉サービスを利用できなくなることを意味するものではありません。
介護保険サービスにないものは,引き続き障害福祉サービスを利用することができます。

それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。


1 Gさんは,障害基礎年金を受給しているので,介護保険料は,特別徴収(年金天引き)の対象外である。

特別徴収は,年18万円以上の年金のある場合,年金から天引きするものです。
対象となる年金は,老齢基礎年金のみではなく,障害基礎年金も対象となります。

老齢基礎年金と違って,障害基礎年金は定額制です。
そのため,年18万円以下になることは絶対にありません。1級は2級の1.25倍です。



2 Gさんの自立支援給付に伴う自己負担は応能負担であり,介護保険においても同様である。

自立支援給付は応能負担ですが,介護保険は応益負担です。


3 Gさんは,障害認定を受けてから65歳になるまでの期間は,介護保険の被保険者ではなかった。

40~64歳は,第2号被保険者です。



4 Gさんの居宅サービス計画は,地域包括支援センターで作成する。

地域包括支援センターで作成するのは,介護予防の場合です。
Gさんは,要介護1なので,居宅介護支援事業所が作成します。


<今日の一言>

今日の問題は,一問のうち,たくさんの要素が詰まった問題です。
問題のレベルはかなり高いと言えます。

しかし,おかしな引っ掛けはありません。

知識のみが問われます。

おかしな引っ掛けがある問題は,知識のある人でも間違えます。
近年の国試は,そういった問題はほとんどありません。

その意味で,適切な国試が実施されてきていると言えるでしょう。
社会福祉士の国試は,国語の問題ではありません。

国語力は必要条件ですが,国語力は基礎力があって初めて発揮されます。

2019年10月27日日曜日

要介護認定のポイント

介護問題を社会問題だととらえて,成立したのが介護保険です。
要介護認定は,福祉政策のポイントの一つである,ニーズ判定です。

さて,私たちが目指しているのは,社会福祉士です。
介護支援専門員ではありません。

社会福祉士が求められているのは,関係機関との連携です。
現場レベルの制度に精通していなければ正解できないような問題はほとんどありません。
それは各専門職が知っていれば良いからなのでしょう。

ここを押さえておけば,難易度が高いと思われる問題でも正解できる可能性が高まります。

模擬試験問題は,国試問題よりも難易度が高い問題がありますが,そのような問題で正解できなくても気にすることはありません。

解けなかったものは,その後の振り返りで押さえておけば,それで重要です。

それでは,今日の問題です。

第27回・問題127 要介護認定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 認定調査に使用する認定調査票の「基本調査」の調査項目は,身体機能・起居動作,生活機能,認知機能,精神・行動障害の4群から構成されている。

2 二次判定では,一次判定を基礎として,主治医の意見書や特記事項に基づき,どの区分に該当するかの審査・判定が行われる。

3 二次判定では,一次判定よりも要介護度を下げてはならない。

4 第1号被保険者の認定に当たっては,要介護状態などの原因である障害が特定疾病に起因するものであるかを確認する上で,主治医の意見書が必要となる。

5 認定結果に対して不服がある場合は,認定調査を行った市町村の介護認定審査会に対して申立てを行う。

第31回国試問題は,第30回よりも多い文字数で構成されていましたが,「魔の第25回国試」から比べると格段に少なくなっています。

そのために,問題の自由度はかなり限定されています。
文字をたくさん使って問題が作れないという制約です。

それはさておき,この問題の正解は,選択肢2です。

2 二次判定では,一次判定を基礎として,主治医の意見書や特記事項に基づき,どの区分に該当するかの審査・判定が行われる。

要介護認定は,市町村が行う認定調査をもとに,まずコンピュータで一次判定を行います。

そこに,主治医の意見書や特記事項に基づいて,介護認定審査会が二次判定を行います。
その結果に基づいて,市町村が要介護認定を行います。

なお,要介護認定の基準は,厚生労働大臣が定めます。

それでは,ほかの選択肢も見ていきましょう。


1 認定調査に使用する認定調査票の「基本調査」の調査項目は,身体機能・起居動作,生活機能,認知機能,精神・行動障害の4群から構成されている。

基本調査の調査項目は,以下の5群で構成されます。



基本調査の調査項目
身体機能・起居動作
生活機能
認知機能
精神・行動障害
社会生活への適応

国試では,まずこのレベルまでの知識は求められません。
つまり出題されても正解にはならないということです。

この選択肢で着目してほしいのは,正しくは「5群」であるのに,「4群」にして,間違い選択肢を生成しているという点です。

このように,「数」を明記している選択肢には気を付けたいです。

特に先述のように,現在の国試問題は,文字数に制限がかかっているので,長い文章では出題できません。

そのために,長い文章になるものは,端折る処理がなされます。
その結果として,正解にはならないものが多くなります。

このことを覚えておくと,難しいものが出題されたときの判断に役立つでしょう。


3 二次判定では,一次判定よりも要介護度を下げてはならない。

要介護認定は,ニーズ判定です。

コンピュータで行う一次判定の結果に緻密さを加えるために二次判定が行われます。
それによって適切なニーズ判定,つまり要介護認定を行うことができます。

二次判定を行う介護認定審査会は,専門家集団です。
一次判定の結果に色眼鏡をかけることなく,二次判定が行われます。

そのため,一次判定よりも低くなることもあります。


4 第1号被保険者の認定に当たっては,要介護状態などの原因である障害が特定疾病に起因するものであるかを確認する上で,主治医の意見書が必要となる。

要介護状態などの原因である障害が特定疾病に起因するものであることが介護保険サービスを利用するための要件であるのは,第二号被保険者です。


5 認定結果に対して不服がある場合は,認定調査を行った市町村の介護認定審査会に対して申立てを行う。

今まで述べてきたように,介護認定審査会は,要介護認定の二次判定を行う機関です。
要介護認定に対する不服申立て機関は,都道府県に設置される介護保険審査会です。



<今日の一言>

社会福祉士の国試を突破するために,絶対に必要な知識は制度の根幹です。

それから考えると,認定調査の基本調査の調査項目の内容は,枝葉の先の先の話です。
枝葉は,変化が大きいものです。

そういったものは,出題されない傾向にあり,また出題されたとしても,今日の問題のように正解にはならない傾向にあります。

社会福祉士の国試は,介護支援専門員の試験ではありません。

ほかの科目も同様です。

現場レベルでしかわかり得ないものは,出題されないし,また出題されても今日の問題のように,正解になりにくいものです。

2019年10月26日土曜日

要介護認定と不服申立て

要介護認定は,市町村が行う行政処分です。

国民には,行政処分に不服がある場合,不服申立てする権利が認められています。

個別法によって,不服申立制度が規定されているものと,個別法には規定されず,行政不服審査法によって不服申立てするものがあります。

福祉に関して,個別法で規定されているものには

生活保護法
介護保険法
障害者総合支援法

などがあります。

それぞれの審査請求先

法律名
生活保護法
介護保険法
障害者総合支援法
審査請求先
都道府県
介護保険審査会
都道府県

これらは,審査請求を行って,その採決が行われた後でなければ,処分の取消しを求める裁判を提起することができません。

生活保護法には,再審査請求という制度が設けられており,都道府県の採決の後に,裁判を提起するか,厚生労働省に対して再審査請求を行うかを選択することができます。

それでは,今日の問題です。

第23回・問題124 事例を読んで,介護保険法の要介護等認定制度に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事 例〕
 Eさん(85歳,男性)と妻Fさん(82歳,女性)は,二人暮らしの高齢者世帯である。Fさんは5年前に脳梗塞が原因で左半身麻痺と認知症による要介護状態となり,要介護3の認定を受け,訪問介護と通所介護を限度額近くまで利用して暮らしてきた。しかし,Fさんはこの半年は著しく心身機能が低下し,ほとんど寝たきりに近い状態となっている。Eさんも,妻の介護が体力的にきついと感じ始めている。そうした中で要介護の更新申請をしたところ,要介護2の認定通知が届いた。Eさんは,Fさんの症状は悪化しているのになぜ認定が軽くなったのか,納得できないでいる。

1 Fさんの心身機能が低下していることから,Eさんが直接,主治医に主治医意見書を書き変えてもらう。

2 老老介護を前提にした認定にするために,訂正を申し出れば修正される可能性がある。

3 通知を受領した日以後は,要介護2の限度額を超過したサービス分は保険給付されない。

4 Eさんは,認定が軽くなったことを,介護相談員に対し不服申立てすることができる。

5 Fさんがこの処分の取消を裁判で争うには,先に審査請求し裁決を経る必要がある。

第31回国試では,一問使って介護相談員が出題されています。

介護相談員は,介護保険制度とともに導入されたものですが,実施している市町村が少ないため,介護保険サービス事業にかかわっている人でさえ,あまり知られていない制度です。

この問題は,<今日の一言>で紹介します。



さて,この問題の正解は,選択肢5

5 Fさんがこの処分の取消を裁判で争うには,先に審査請求し裁決を経る必要がある。


介護保険に関する審査請求は,都道府県に設置される介護保険審査会に対して行います。

それでは,ほかの選択肢も見ていきましょう。


1 Fさんの心身機能が低下していることから,Eさんが直接,主治医に主治医意見書を書き変えてもらう。

主治医意見書が必要な場合,利用者が直接主治医に依頼することはありません。
そのような場合は,まず介護支援専門員に相談してみます。


2 老老介護を前提にした認定にするために,訂正を申し出れば修正される可能性がある。

老老介護は,高齢者が家族の高齢者に対して介護を行うことをいいます。

要介護認定は,本人の身体状態に対して行うものであり,老老介護の場合であっても,要介護認定が変更されることはありません。


3 通知を受領した日以後は,要介護2の限度額を超過したサービス分は保険給付されない。

要介護認定は有効期間があります。通知を受領した日ではなく,その期間内は有効です。


4 Eさんは,認定が軽くなったことを,介護相談員に対し不服申立てすることができる。

介護相談員は,介護サービス提供の場を訪ねて,サービス利用者等の話を聴き,相談に応じる者で,利用者の疑問や不満の解消やサービスの質の向上を図るボランティアです。

都道府県が行う研修を受けて,市町村に登録して,事業所に派遣されます。

不服申立ては,都道府県に設置される介護保険審査会に対して行います。


<今日の一言>

介護相談員の問題

第31回・問題132 介護相談員に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護相談員派遣等事業の実施主体は,都道府県である。
2 介護相談員派遣等事業は,苦情に至る事態を防止すること及び利用者の日常的な不平・不満又は疑問に対応して改善の途を探ることを目指すものである。
3 介護相談員の登録は,保健・医療・福祉分野の実務経験者であって,その資格を得るための試験に合格した者について行われる。
4 介護相談員派遣等事業は,介護保険制度における地域支援事業として実施が義務づけられている。
5 介護相談員が必要と判断した場合,相談者の同意がなくても,その相談者に関する情報を市町村等に提供することができる。

正解は選択肢2です。

介護相談員は要注意です。

2019年10月25日金曜日

介護保険における審査請求先

介護保険における要介護認定は,市町村が行う行政処分です。

不服がある場合は,都道府県に設置される介護保険審査会に審査請求します。

事業者が提供するサービスに不服がある場合は,都道府県国民健康保険団体連合会に苦情を申立てします。

介護保険審査会と似た名称のものに「介護認定審査会」があります。
こちらは,要介護認定の際の二次判定を行う合議体で,市町村に設置されます。

今一度整理してみましょう。


介護保険審査会
国保連
運営適正化委員会
受付内容
不服申立て
苦情申立て
苦情申立て
不満対象
行政処分
提供されたサービス
提供されたサービス
業務内容
審査請求に対する
審理及び裁決
助言及び指導
解決に向けたあっせん


それでは,今日の問題です。

第23回・問題127 介護保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 要介護等認定を受けようとする者は,その申請に関する手続きを地域包括支援センターに代行させることはできない。

2 居宅介護支援には,作成した居宅サービス計画に基づくサービスの提供に関し,サービス事業者等との連絡調整を行うことも含まれる。

3 介護保険によるサービスの提供が,特定の種類又は特定の事業者若しくは施設に不当に偏ることのないよう調整することも介護認定審査会の業務である。

4 介護老人保健施設については,医療法にいう医療施設ではないため,診察室を設ける必要はなく,他の連携医療機関を定めておけばよい。

5 要介護等認定の処分に不服がある者は,都道府県の社会福祉審議会に審査請求をすることができる。


問題の難易度は,それほど高くないものだと思われます。

この問題は,消去法を使わなくても答えがわかる問題ではないでしょうか。
このような問題は確実に正解しなければなりません。

正解は,選択肢2

2 居宅介護支援には,作成した居宅サービス計画に基づくサービスの提供に関し,サービス事業者等との連絡調整を行うことも含まれる。

ほかの選択肢も確認しましょう。


1 要介護等認定を受けようとする者は,その申請に関する手続きを地域包括支援センターに代行させることはできない。

地域包括支援センターも代行することができます。


3 介護保険によるサービスの提供が,特定の種類又は特定の事業者若しくは施設に不当に偏ることのないよう調整することも介護認定審査会の業務である。

介護認定審査会は,要介護認定の二次判定を行う期間です。
サービスの調整を行うのは,介護支援専門員です。


4 介護老人保健施設については,医療法にいう医療施設ではないため,診察室を設ける必要はなく,他の連携医療機関を定めておけばよい。

介護老人保健施設は,医療法に定められる医療提供施設です。
診察室は必要です。


5 要介護等認定の処分に不服がある者は,都道府県の社会福祉審議会に審査請求をすることができる。

要介護認定に対する審査請求先は,都道府県に設置される介護保険審査会です。

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