今回も介護保険制度を取り上げていきたいと思います。
介護保険制度は,制度が激しく変わっています。
このようなことを言うと,対応がとても難しく感じるかもしれません。
しかし,社会福祉士はケアマネではありません。
問題数がほかの科目よりも多い分,若干深掘りすることがあるかもしれませんが,基本的な問題へのアプローチは,ほかの科目と一切変わりません。
それは当然のこと,特定の領域の人が有利になるような出題されるわけがありません。
そういった面で,国試問題はみんなに平等です。
それはさておき,今日の問題です。
第23回・問題127 介護保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 要介護等認定を受けようとする者は,その申請に関する手続きを地域包括支援センターに代行させることはできない。
2 居宅介護支援には,作成した居宅サービス計画に基づくサービスの提供に関し,サービス事業者等との連絡調整を行うことも含まれる。
3 介護保険によるサービスの提供が,特定の種類又は特定の事業者若しくは施設に不当に偏ることのないよう調整することも介護認定審査会の業務である。
4 介護老人保健施設については,医療法にいう医療施設ではないため,診察室を設ける必要はなく,他の連携医療機関を定めておけばよい。
5 要介護等認定の処分に不服がある者は,都道府県の社会福祉審議会に審査請求をすることができる。
制度系の問題は,かっちり覚えないと正しく答えるのは難しいと言えます。
多くの人は,歴史や人名を苦手にする傾向にありますが,何度も何度も受験に失敗している人に共通するのは,歴史や人名でつまずいているのではなく,制度系問題であるという事実です。
制度系問題は,先に述べたようにかっちり覚えなければ,正解するのが難しいですが,ちょっとしたコツをつかむと正解する確率が上がります。
さて,今日の問題のコツはわかりましたか?
はい,そうです。
「含まれる」は,正解になりやすいという傾向があるのでしたね。
答えは,選択肢2
2 居宅介護支援には,作成した居宅サービス計画に基づくサービスの提供に関し,サービス事業者等との連絡調整を行うことも含まれる。
一生懸命勉強した人は,拍子抜けするようなものかもしれません。
しかし,国試には一定数こういった問題が含まれます。
私たちチームfukufuku21が強いのは,ちょっとした気づきを形式知にすることができることです。
おそらく多くの人も同じような気づきはあると思いますが,私たちは実際に検証するすべがあることが強みだと言えます。ぜひご期待ください。
それでは,ほかの選択肢も見ていきましょう。
1 要介護等認定を受けようとする者は,その申請に関する手続きを地域包括支援センターに代行させることはできない。
地域包括支援センターも代行することができます。
3 介護保険によるサービスの提供が,特定の種類又は特定の事業者若しくは施設に不当に偏ることのないよう調整することも介護認定審査会の業務である。
介護認定審査会は,要介護認定の二次判定を行う機関です。
調整までは行いません。
こういったことを行うのは,保険者である市町村の役割です。
4 介護老人保健施設については,医療法にいう医療施設ではないため,診察室を設ける必要はなく,他の連携医療機関を定めておけばよい。
これはまたまた登場の「人は嘘をつくとき,饒舌になる」です。
この文章の内容が正しければ,
介護老人保健施設の医療の提供は,他の連携医療機関が行う。
といったものでよいはずです。
介護老人保健施設は,現在も医療法に規定される医療提供施設です。
5 要介護等認定の処分に不服がある者は,都道府県の社会福祉審議会に審査請求をすることができる。
介護保険制度は,審査請求先として,都道府県に「介護保険審査会」の設置を義務づけています。
これは,社会福祉制度よりも強い権利性をもつ社会保険制度だからではないかと考えられます。
<今日の一言>
介護保険制度は,わが国5つめの社会保険制度です。
高齢者に対する施策は,
救貧制度から始まり(救護法),低所得者対策となり(老人福祉法),一般の国民を対象とする施策(介護保険法)となりました。
社会福祉制度のように社会扶助制度は,サービス利用するのに事前の拠出を要件としません。
それに比べると社会保険制度は,保険料納付といったサービス利用には事前の拠出を原則とします。
そのため,社会保険制度は,強い権利性をもつ傾向となります。
今日の問題を見てもらってもわかると思いますが,決して奇をてらったような出題ではありません。
ケアマネの試験ではなく,社会福祉士の国試だからです。
求められているものが異なります。
そこに気が付けば,正解できる確率はかなり上がります。
最新の記事
キャプランによる予防の概念
人名は覚える必要はありませんが,危機理論を提唱したキャプランは,予防の概念である予防モデルを提唱しています。 今日では,広くさまざまな分野で用いられています。 予 防モデル 一次予防 問題を発生させないこと。 ...
過去一週間でよく読まれている記事
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
前回まで, ①役割期待 ②役割距離 を紹介してきました。 そのうちの②役割距離は,ちょっと難しい概念でしたが,理解できましたでしょうか。 役割距離とは, 人は役割期待に対して,ちょっと距離を置いた行動をとること。 理解しきれていない人は,もう一度前回を確...
-
今日から新年度です。 気持ちを新たにスタートです。 当学習部屋を開設以来,ほぼ毎日新しい情報を出して来ました。 ずっとご覧になっていた方は,間が空いたことが不思議に思ったでしょう。 実は,今年の国家試験が終わったところから,ペースを変えて,2日に1回にしようと計画していました。 ...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
ICFで用いられる用語の定義 健康状態 疾病,変調,傷害など 心身機能 身体系の生理的機能(心理的機能を含む) 身体構造 身体の解剖学的部分 ...
-
前回に引き続き,今回もヴェーバーの社会的行為です。 目的合理的行為 価値合理的行為 伝統的行為 感情的行為 目的を達成するために行う行為。 行動そのものに意味がある行為。結果は重視されない。 慣習や習慣によって行う行為。 感情によって行う行為。 それでは,今日の問...