2019年10月29日火曜日

介護保険サービスと障害福祉サービスの関係性

介護保険の被保険者には,65歳以上の第一号被保険者と40~64歳の第二号被保険者があります。

第一号被保険者は,要介護状態であれば保険給付されますが,第二号被保険者は,特定疾病によって要介護状態になることで保険給付されます。

特定疾病の種類

 
疾病名
1
がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
2
関節リウマチ
3
筋萎縮性側索硬化症
4
後縦(ジン)帯骨化症
5
骨折を伴う骨粗(シヨウ)
6
初老期における認知症
7
進行性核上性麻()、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
8
脊髄小脳変性症
9
脊柱管狭(サク)
10
早老症
11
多系統萎縮症
12
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13
脳血管疾患
14
閉塞性動脈硬化症
15
慢性閉塞性肺疾患
16
両側の(シツ)関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

これらは,必ずしも覚える必要はありません。

大体どのようなものが,特定疾病になっているのか何となくでも分かっていれば,社会福祉士の国試では何とかなります。

40~64歳の場合は,特定疾病に限定している理由は,介護保険サービス以外に利用できるサービスがあるからです。

それは障害者総合支援法が規定する障害福祉サービスです。

特定疾病以外の障害者は,障害福祉サービスを利用しますが,65歳になると,障害福祉サービスと同様のサービスが介護保険サービスにある場合は,介護保険サービスを利用することになります。

ところが,障害者の場合は,コミュニケーション等の関係により,介護に慣れた人の方が適切な場合があります。

そのために,2018年に共生型サービスが創設されています。

また,65歳になると第一号被保険者となりますが,障害者支援施設,救護施設などに入所している場合は,第一号被保険者にはならないという規定がなされています。

そのために,保険料納付する必要がありません。

それでは今日の問題です。


第31回・問題127 事例を読んで,在宅サービスを利用して一人暮らしをしているAさんのケアプランに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事例〕
 弱視であるAさん(64歳,男性)は20年前に事故で頸権損傷を受傷し,四肢麻痺の状態になった。現在,障害支援区分6で居宅介護と同行援護を利用し,障害基礎年金を受けて生活している。間もなく65歳となり介護保険を利用することになると訪問介護の時間数が減少してしまうため,地域包括支援センターに行った。そこで,B介護支援専門員(社会福祉士)に今後も同等のサービスを利用できるかを相談した。

1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。

2 「障害者総合支援法」のサービスのまま,ケアプランを作成する。

3 介護保険法のサービス内でケアプランを作成する。

4 同行援護は,「障害者総合支援法」で引き続き対応する。

5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。


介護保険サービスと障害福祉サービスの関係を正しく押さえていないとあわててしまいそうな問題です。


正解は,選択1と選択肢4です。

1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。
4 同行援護は,「障害者総合支援法」で引き続き対応する。

訪問介護は,障害福祉サービスの居宅介護と同等のサービスです。
介護保険の保険給付で不足する分は,障害福祉サービスで補完します。

この時に重要なのが,「共生型サービス」です。介護保険サービスと障害福祉サービスを一体的に提供できるように,指定を受けやすくしたものです。

同行援護は,視覚障害者の外出支援のためのサービスです。介護保険サービスには同等のサービスがないために,障害福祉サービスを引き続き利用します。

それではほかの選択肢も見てみましょう。


2 「障害者総合支援法」のサービスのまま,ケアプランを作成する。

居宅介護は,介護保険サービスの訪問介護で,ケアプランを作成します。


3 介護保険法のサービス内でケアプランを作成する。

介護保険サービスで完結するなら,それでも良いですが,この事例のように同行援護は,介護保険サービスにはありません。


5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。

Aさんが利用する同行援護は,障害福祉サービスを利用しますが,支払うのは自己負担分のみです。


<今日の一言>

65歳になると障害福祉サービスから介護保険サービスに移行する必要があります,
それを「65歳問題」と言ったりします。

この問題に対応するために,2018年に「共生型サービス」が創設されています。

共生型サービスは,この科目以外に,「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」でも出題されることが予測されるので,しっかり覚えておきたいです。

なお,この問題には,問題としての自己矛盾を抱えたものです。

1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。
5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。

選択肢1は,介護保険サービス+障害福祉サービスは可能

選択肢5は,介護保険サービス+障害福祉サービスは不可能

となります。

こうなると,どちらかが正解で,どちらかが間違いになります。

※この記事は,前日にアップする予定だったものです。

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