社会福祉士の国試は,平成元年に第1回国試が実施されました。
第1回と第2回国試は,問題用紙の持ち帰りは許されず,試験回収後に回収されました,
そのため,試験対策本を作成するために,受験者に協力を求めて,受験後にその人たちから情報を集めて問題を復元したのです。
そして,出来上がったのが,中央法規出版の「受験ワークブック」,筒井書房の「必携 社会福祉士」という参考書です。
ご存じのように,受験ワークブックは現在も存続しています。
筒井書房は,数年前に倒産しました。
「受験ワークブック」も「必携 社会福祉士」も受験生を支えてきましたが,老舗だった「必携」がだめになってしまったのは,国試の出題の変化に対応できなかったことがあるように思います。
「必携」は,最初に受験した人たちのグループの「みずきの会」によるもので,受験生のノートレベルの内容だったからです。
国試問題が公開されたのは,第3回からです。
もちろん当時は,介護保険がない時代です。
老人福祉法が中心となります。
それでは,第3回で出題された問題を見てみましょう。
第3回・問題13 老人福祉施設に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 養護老人ホームと特別養護老人ホームの入所要件には,経済的条件がある。
2 軽費老人ホームは,A型,B型の2種類だけである。
3 特別養護老人ホームにおけるリハビリテーションの実施率は極めて高く,殆どの施設には理学療法士が配置されている。
4 措置施設での扶養義務者からの費用徴収の範囲は,入所時における同居・別居にかかわらず,配偶者及び子を原則としている。
5 措置施設の入所者については,実施機関によって年1回入所継続の要否が見直され,必要に応じて措置が変更されることがある。
30年も前の出題にもかかわらず,今の問題とそれほど違わない内容であることに驚きを感じるのではないでしょうか。
老人福祉制度が現在どのように変化しているのかよくわかりませんが,この当時の制度で,この問題の正解は,選択肢5です。
5 措置施設の入所者については,実施機関によって年1回入所継続の要否が見直され,必要に応じて措置が変更されることがある。
まさしく,「ことがある」には正解多し,の記述です。
試験委員が変わっても,結局作問方法はほとんど変化しないことの現われでしょう。
ほかの選択肢も見てみましょう。
1 養護老人ホームと特別養護老人ホームの入所要件には,経済的条件がある。
この時も「経済的条件」が出題されています。
老人福祉法の中では,とても重要な意味合いがあることを感じていただけるのではないでしょうか。
入所要件に経済的条件があるのは,養護老人ホームです。
特別養護老人ホームにはありません。
2 軽費老人ホームは,A型,B型の2種類だけである。
軽費老人ホームは,現行カリキュラムでは第23回及び第29回に出題されています。
旧カリ自体も含めて,軽費老人ホームの種類が出題されたのはこの時だけです。
種類には,A型,B型,ケアハウス(C型)があります。
しかしこの内容の違いは,一度も出題されたことがありません。
老人福祉法にこの違いは規定されていないからなのかもしれません。
法では以下のように規定されます。
軽費老人ホームは、無料又は低額な料金で、老人を入所させ、食事の提供その他日常生活上必要な便宜を供与することを目的とする施設(第二十条の二の二から前条までに定める施設を除く。)とする。
今の国試では「だけである」といった間違いだとわかりやすい表現はほぼされません。
3 特別養護老人ホームにおけるリハビリテーションの実施率は極めて高く,殆どの施設には理学療法士が配置されている。
これは,解答テクニックでは言えば
人は嘘をつくとき,饒舌になる
正解なら
特別養護老人ホームの殆どの施設には理学療法士が配置されている。
でよいはずです。
特別養護老人ホームには,機能訓練指導員が配置されますが,資格要件は理学療法士だけではないので,実際に理学療法士が配置されているのは少ないと考えられます。
4 措置施設での扶養義務者からの費用徴収の範囲は,入所時における同居・別居にかかわらず,配偶者及び子を原則としている。
今の制度がどのようになっているのかはよくわかりません。
しかし,これも「人は嘘をつくとき,饒舌になる」です。
これが正解なら,
措置施設での扶養義務者からの費用徴収の範囲は,配偶者及び子を原則としている。
で良いはずです。
<今日の一言>
今日の問題が出題された当時は,どのような問題が出題されるのかがよくわからない中での受験だったので,本当に大変だったと思います。
しかし,問題自体はそれほど高度な問題ではないです。
日本語的に読めば,答えに近づくことができます。
今はこれだけわかりやすい問題が出題されることは少ないと言えます。
3か月の勉強で合格できるような試験ではありません。
それはさておき,養護老人ホームの入所要件には「経済的理由」であることが極めて重要であることを物語る問題です。
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