1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。
1929年に,会議のまとめとして「ミルフォード会議報告書」(正式名:ソーシャル・ケースワーク―ジェネリックとスペシフィック)が出されました。
この報告書では,ケースワークは領域が違っても,基本的に必要な知識・技術は共通であること~「ジェネリック・ソーシャル・ケースワークの重要性」が述べられています。
スペシフィックは専門領域の意味です。
それでは,今日の問題です。
第23回・問題85 ソーシャルワークの発展に重要な役割を果たしたミルフォード会議報告書に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。
1 社会システム理論を基盤とするソーシャルワークの統合化の概念が提示された。
2 ジェネリック・ソーシャル・ケースワークの重要性の認識のもとに,その特性が提示された。
3 ソーシャル・ケースワークをめぐって診断主義学派と機能主義学派との論争が提示された。
4 ソーシャル・ケースワークの精神医学への過度の傾斜を反省し,「リッチモンド(Richmond,M.)に帰れ」という指針が提示された。
5 領域や分野ごとの実践の専門性にソーシャル・ケースワークの本質があることが提示された。
知識がなければ,まったくわからないものでしょう。
ミルフォード会議報告書と言えば
ジェネリック・ソーシャル・ケースワークの重要性が強調された
この知識で十分対応可能です。
それでは解説です。
1 社会システム理論を基盤とするソーシャルワークの統合化の概念が提示された。
これは間違いです。
前回の問題と同じですね。
システム理論は,統合化に影響を与えていますが,その視座(パースペクティブ)で議論されたものではありません。
2 ジェネリック・ソーシャル・ケースワークの重要性の認識のもとに,その特性が提示された。
これが正解です。
このまま覚えて良いです。
3 ソーシャル・ケースワークをめぐって診断主義学派と機能主義学派との論争が提示された。
これも間違いです。
診断主義学派と機能主義学派との論争は,機会があれば詳しく紹介したいと思いますが,機能主義ケースワークは1930年代に登場してきたものです。まだこの時代には登場していません。
4 ソーシャル・ケースワークの精神医学への過度の傾斜を反省し,「リッチモンド(Richmond,M.)に帰れ」という指針が提示された。
これも間違いです。
「リッチモンドへ帰れ」は,1950年代にマイルズが述べたものです。
ミルフォード会議が行われていた当時は,まだリッチモンドは生きています。ただし報告書が出される前の1928年に亡くなりました。
5 領域や分野ごとの実践の専門性にソーシャル・ケースワークの本質があることが提示された。
これも間違いです。
スペシフィックは,以前からあるものです。この報告書では,ジェネリック・ソーシャル・ケースワークの重要性が提示されています。
<今日の一言>
歴史が嫌いな人は,今日の問題は面白くないかもしれません。
今は,昔の出来事かもしれませんが,その人が生きていた時代は「今,ここ」なのです。
そう考えるとその時代がいきいきよみがえってくるような感じがしませんか?
そして,過去は過去のものではなく,現在にも脈々と流れているのです。