国試問題は,基本的にその基準によって作成され,参考書などもその内容に沿って作成されます。
国試が近くなってきたら,内容の絞り込みも必要になってくると思いますが,基本はその範囲をひたすら覚えることです。
とは言うものの,多くの受験者が苦手とするのは,人名と歴史です。
社会福祉士が学ばなければならないのは,社会福祉及びソーシャルワークの歴史です。
内容は極めて限定されています。
制度は変わっていくので,知識はアップデートしなければなりませんが,歴史はそういったものを必要としません。
出題されるポイントは,ほぼ決まっているので,勉強すると得点できます。
しかも,勉強しない人は経験や勘では解けないので,他の受験者と差をつけやすいものだと言えるでしょう。
覚えなければならない事項もそれほど多くはありません。
今日の問題に入る前に,ちょっと間が空いてしまったので,まずは前回の問題を復習しておきましょう。
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/03/blog-post_13.html
それでは今日の問題です。
第25回・問題92 ソーシャルワークのアメリカにおける専門職化に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 全米慈善矯正会議(1897年)において,リッチモンド(Richmond,M.)は応用博愛学校の必要性を提唱し,慈善活動の効果的な実践のための夏期養成講座が開設された。
2 アダムス(Addarns,J.)はシカゴにハル・ハウスを開設(1889年)し,「慈善でもなく,友情でもなく,専門的サービスを」の標語を掲げてセツルメント活動を展開した。
3 全米慈善矯正会議(1915年)において,フレックスナー(Flexner,A.)は,ソーシャルワークには科学的効果が認められないとし,「ケースワークは死んだ」と論じた。
4 全米慈善組織協会は全米ソーシャルワーカー協会に名称変更(1917年)し,慈善から精神分析理論に基づく友愛訪問活動の組織化を推進した。
5 ミルフォード会議(1923年)では,「ジェネラリスト・ソーシャルワークとは何か」をテーマに,システム論的視座から方法論の統合化の必要性が議論された。
前回の問題を復習した人にとっては,答えがすぐわかるでしょう。
しかし,勉強していない人にとっては,答えの見当をまったくつけられないものです。
これが国試の理想です。
この問題の難易度はかなり高いです。
それもそのはず。合格基準点が72点と過去最低となった「魔の第25回国試」の問題です。
それでは解説です。
1 全米慈善矯正会議(1897年)において,リッチモンド(Richmond,M.)は応用博愛学校の必要性を提唱し,慈善活動の効果的な実践のための夏期養成講座が開設された。
これが正解です。
第22回国試で出題されたときの正解と同じ内容のものがここでも正解になっています。
極めて珍しいパターンです。
難易度が高い選択肢で構成された問題でありながらも,正解できる可能性が高いのはそのパターンのためです。
2 アダムス(Addarns,J.)はシカゴにハル・ハウスを開設(1889年)し,「慈善でもなく,友情でもなく,専門的サービスを」の標語を掲げてセツルメント活動を展開した。
これは間違いです。
よく知られていませんが,アダムスは,標語として「人々とともに」を掲げて活動しました。
ケースワークを体系化したリッチモンドとアダムスは,同じ時代に活動しています。
リッチモンドは,ケースワークの科学化を目指しました。その功績で「ケースワークの母」と呼ばれます。
アダムスは,セツルメントの「ハル・ハウス」を創設した人物です
セツルメントは,グループワークの源流となります。
アダムスの「人々とともに」は,リッチモンドを意識したものだと思われます。なぜなら,リッチモンドは「人々のために」という標語を掲げていたからです。
「人々とともに」は,セツルメントをよく言い表していると思いませんか?
3 全米慈善矯正会議(1915年)において,フレックスナー(Flexner,A.)は,ソーシャルワークには科学的効果が認められないとし,「ケースワークは死んだ」と論じた。
これも間違いです。
「ケースワークは死んだ」と論じたのはパールマンです。
この経緯は,また別の機会に紹介したいと思います。
フレックスナーは「ソーシャルワーカーはいまだ専門職ではない」と論じました。
その後,グリーンウッドは「ソーシャルワークは専門職である」と論じています。
フレックスナーとグリーンウッドを混同しないように工夫して覚えることが大切です。
4 全米慈善組織協会は全米ソーシャルワーカー協会に名称変更(1917年)し,慈善から精神分析理論に基づく友愛訪問活動の組織化を推進した。
これも間違いです。
というかまったくのでたらめです。
5 ミルフォード会議(1923年)では,「ジェネラリスト・ソーシャルワークとは何か」をテーマに,システム論的視座から方法論の統合化の必要性が議論された。
これも間違いです。
この問題で最も難しいものです。
統合化とは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークに共通するものを明らかにしてとらえることを言います。
システム理論は,統合化に影響を与えていますが,その視座(パースペクティブ)で議論されたものではありません。
この会議で重要なポイントは,すべてに共通するものとして「ジェネリック」という概念が登場して議論されたことです。
これによって,「ジェネリック」と「スペシフィック」の関係性が明らかとなりました。
<今日の一言>
今日の問題は,前回の問題とよく似ています。
この2つは,正解が同じものとなっています。
しかし,多くの問題は,そのようには作られていません。
間違いになったり,正解になったりしています。
しかも5つの選択肢が勉強したもので構成されているとは限りません。
いくつかは,知らないものを混ぜます。
そこで,勉強不足の人は,ほとんど正解できなくなります。
しかし,落ち着いて読めば,消去法で答えをあぶり出すことができます。
このようにして,合格基準点を超える人と超えない人の点数の差が開いていきます。
国試は,30%程度の人しか合格させないつもりのようです。
合格をつかむ30%に入るためには,ひたすら覚えていくことです。
ヤマを張って合格できる試験ではありません。
ただし,勉強法にはコツがあります。それを意識しながら勉強することで,得点力は飛躍的に伸びます。