2019年3月17日日曜日

第31回国試の振り返りポイント

社会福祉士の国家試験の合格発表が終わりました。

合格された方はおめでとうございます。

残念ながら合格をつかむことができなかった方は,来年の合格を目指して頑張っていきましょう。

「学習部屋」は,再受験を目指す仲間を応援するために始めたものです。

原点回帰したいと思います。

合格基準点に達することができなった人には,2つのタイプがあります。

①そもそも知識が足りなかった
②後から見たら解ける問題があり,その点数を加えると合格基準点を超えていた。

「①そもそも知識が足りなかった」

のパターンの方は,知識をつけると合格できます。

対応策が単純ではないのは,

「②後から見たら解ける問題があり,その点数を加えると合格基準点を超えていた」

のパターンの方です。

知識をつけるだけでは,壁を乗り越えることができないからです。


自分のタイプを見分ける問題


第31回・問題42 福祉行政における都道府県の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 老人福祉法の規定により,特別養護老人ホームに入所させる権限を持つ。
2 介護保険法の規定により,介護保険の保険者とされている。
3 「障害者総合支援法」の規定により,介護給付の支給決定を行う。
4 児童福祉法の規定により,障害児入所施設に入所させる権限を持つ。
5 知的障害者福祉法の規定により,障害者支援施設に入所させる権限を持つ。
(注)「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。

第31回の社会福祉士の国家試験の中でも,最も重要で,基本的で,しかも複雑な問題です。

とても優れた問題です。

試験当時に戻って思い出してみてください。

答えは分かりましたか?

その時は,分からなくてもその後は答えが分かりましたか?

余談です。
社会福祉士の国試は,正しい(適切な)ものを1つ,あるいは2つ選ぶ問題で構成されています。

正しい(適切な)もの以外は,当然ながら正しくないものです。

ところが試験委員にとっては,正しくない選択肢を作るのは難しい作業です。
そこで多用されるのが,市町村と都道府県の役割を入れ替える手法です。

先ほどの問題は,知識がなければ解けない,知識があってもあいまいだと解けないというタイプの問題です。

さて,正解は,選択肢4です。

児童福祉法による障害児支援には,入所支援と通所支援があります。

入所は都道府県の役割
通所は市町村の役割

実に覚えにくいですね。

これを聞いて「?」となった人は「①そもそも知識が足りなかった」のタイプです。

これを聞いて「そうだったのよね。ど忘れしちゃった」という人は「②後から見たら解ける問題があり,その点数を加えると合格基準点を超えていた」のタイプです。

②のタイプの人は,注意して勉強を進めていかないと同じことを次回も繰り返す恐れがあります。

第31回国試に向けて,ある程度の分量がある参考書で勉強してきた人は,知識量はあったと思います。
それ以上の知識は必要ありません。

第31回国試で合格基準点を超えるために必要なのは

理解社会学
ポランニー
ヘイトスピーチ解消法
世界幸福度報告書
特定最低賃金

などの知識ではありません。

合格した人でも,これらを知っていた人はほとんどいないと思います,

知識不足だと思うと深みに入ります。
中途半端な知識では得点力は伸びません。

必要なのは,参考書に書かれたものを確実に覚えることです


例として・・・

都道府県と市町村の役割は,法制度にかかわるほとんどの科目で出題されます。
これを確実な知識にした方が,出るか出ないかわからないものを追っかけるよりも確実に得点力が高まります。

地方自治法に都道府県と市町村の役割分担の基本が規定されています。

第二条 地方公共団体は、法人とする。
○2 普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する。

○3 市町村は、基礎的な地方公共団体として、第五項において都道府県が処理するものとされているものを除き、一般的に、前項の事務を処理するものとする。

○4 市町村は、前項の規定にかかわらず、次項に規定する事務のうち、その規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものについては、当該市町村の規模及び能力に応じて、これを処理することができる。

○5 都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、第二項の事務で、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するものとする。


これでわかることは,

市町村は
基礎的な地方公共団体として事務を行う。

都道府県は
市町村の連絡調整,市町村が処理することが適当でないと認められる事務を行う。

さて,ここからが重要なところです。

規模又は性質で,市町村が適当ではないと認められるものとはどんな事務なのでしょうか。

まずは性質です。

障害児支援は,なぜ,市町村と都道府県に分かれているのでしょうか。

障害児の入所は,子どもが親と離れて生活することを意味します。
その判断は,極めて難しいものです。

そのため,都道府県が担います。

ここで得られる法則は,難しい判断が求められる事務は,都道府県の役割だということです。

介護保険法の要介護認定と障害者総合支援法の障害支援区分認定などは,難しい判断が求められますが,市町村が行う例外事例です。

次は規模です。

原発事故で非難している村や島嶼部ではない村のうち,最も規模が小さいのは,高知県の大川村です。人口は400人未満です。

この規模でできることには限界があります。

例えば,現場職員の実務者研修を実施しようと思っても,対象はたった一人しかいないかもしれません。非効率的です。

そのため,専門職の人材確保や人材育成は,都道府県が担います。

これから勉強をすすめていくときは,「規模又は性質」を意識すると良いです。

理解度は何倍にもなるでしょう。


<今日の一言>

やみくもに覚えようとしても,なかなか覚えられるものではないです。

覚え方には工夫が必要です。

特に②のタイプの方は,特に意識してみてください。

同じ勉強だと同じ失敗をする恐れがあります。

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