2019年2月28日木曜日

エスノグラフィって何?

社会調査の方法には,量的調査と質的調査があります。

量的調査は,アンケートなどで得られたデータを分析していきます。

質的調査は,インタビューや観察で得られたデータを分析していきます。

今回も質的調査を取り上げます。

質的調査で得られたデータ(質的データ)の整理と分析には,様々な方法がありますが,社会福祉士の国家試験で取り上げられる中心をなしているのは「KJ法」と「グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)」です。

これをしっかり押さえておけば,多くの問題は正解できますが,ほかの手法も押さえておけば,正解にたどり着く確率は上がります。

今回は,今まで何度か出てきているエスノグラフィを取り上げたいと思います。

量的調査では,社会の動向を数値的に理解することができます。

数値は客観性を持ちますが,適切に取り扱うことでさらに説得力を持つでしょう。

質的調査は,量的調査ではつかむことができない個別の理解をしていくための手法といってもよいでしょう。

例えば,量的調査で,車の販売台数の中で,赤い車がよく売れていることがつかめたとします。

質的調査は,赤い車を購入する人を分析します。

エスノグラフィは,文化人類学の中から創出されたもので,直訳すると民族の記録で,「民族誌」と呼ばれるものです。

当初は,参与観察によって,民族を研究するところから始まりました。

現在は,文化人類学にとどまらず,観察から得られる質的データ全体を指します。

エスノグラフィによく似た言葉にエスノメソドロジーがあります。

エスノメソドロジーは,人の行為を理解するため人の行為を分析する方法です。
エスノメソドロジーの方法の一つに会話分析があります。

会話は,その内容だけではなく,出てくる頻度,相手との掛け合いなどに意味があります。

以前から気になっているのは,テレビなどの天気予報で「雨降りそうです」など,「が」が抜けることが多いことです。

普段の会話では抜けることはないのに,天気のことになると抜けることが多いようです。地域性も関連しているかもしれません。

こんなことも会話分析すれば,見えてくるのかなぁと思ったりもします。

それでは今日の問題です。


第30回・問題90 質的調査に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 エスノメソドロジーの会話分析は,民族の文化を描きだす方法である。

2 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,分析を進めた結果としてこれ以上新しい概念やカテゴリーが出てこなくなった状態を,理論的飽和と呼ぶ。

3 非構造化面接とは,インタビューの質問項目をある程度計画しておき,話の流れに応じて柔軟に聞き取りをしていく方法である。

4 トライアンギュレーションとは,調査者と調査対象者が協力して行う調査方法である。

5 フォーカスグループインタビューとは,無作為に選ばれた調査対象者を集め,グループで聞き取りを行う方法である。


ここ数日書いてきたことをしっかり覚えている人は,この問題を見た時,消去法ではなく答えがすぐわかることでしょう。

国試は難しく感じるかもしれませんが,多くの問題はしっかり覚えておけば解けるようになっています。

しかし,勉強が足りない人は,ちんぷんかんぷんなはずです。

資格試験は,それでよいと思います。

勉強した人が解けて,勉強が足りない人は解けない。

これが理想形です。

勉強した人が解けなくて,勉強が足りない人でも解ける。

難易度が高い問題は,往々にしてこのようなことが起きます。

それではだめなのです。

それでは解説です。


1 エスノメソドロジーの会話分析は,民族の文化を描きだす方法である。

これは間違いです。

この文章を読むと「エスノメソドロジーの会話分析」という手法があるように思われるかもしれませんが,そのようなものはありません。

正確にいうと,「会話分析によるエスノメソドロジー」,あるいは「エスノメソドロジーのうちの会話分析」といった方が適切でしょう。

エスノメソドロジーという言葉で,この問題から跳ね返されてしまった人は多かったと思いますが,民族の文化を描きだす方法は,エスノグラフィです。


2 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,分析を進めた結果としてこれ以上新しい概念やカテゴリーが出てこなくなった状態を,理論的飽和と呼ぶ。

これが正解です。

GTAは,データの収集と分析を繰り返していきます。

これ以上何も出てこない状態が理論的飽和です。GTAでは,この状態を目指していきます。

思いつくままにコード化する「オープン・コーディング」とともに「理論的飽和」はGTAを行うときに重要なものです。



3 非構造化面接とは,インタビューの質問項目をある程度計画しておき,話の流れに応じて柔軟に聞き取りをしていく方法である。

これは間違いです。

インタビューの質問項目をある程度計画しておき,話の流れに応じて柔軟に聞き取りをしていく方法は,半構造化面接です。

非構造化面接は,あらかじめ質問項目を決めないで,面接を進めていく方法です。

構造化面接は。あらかじめ決めておいた質問項目沿って面接を進めていく方法です。

選挙の後に行われる出口調査は,構造化面接で行われます。

半構造化面接は,その中間にあります。

半構造化面接は,言葉からイメージすることができないので,国試では間違い選択肢として出題されることが多い傾向にあります。


4 トライアンギュレーションとは,調査者と調査対象者が協力して行う調査方法である。
これも間違いです。

トライアンギュレーションは,調査の妥当性を高めるために,違う切り口で調査を行う方法です。

別な調査者が同じ調査を行う方法もあります。


5 フォーカスグループインタビューとは,無作為に選ばれた調査対象者を集め,グループで聞き取りを行う方法である。

これも間違いです。

フォーカスグループインタビューは,ある傾向をもったグループに対して行う面接法です。

フォーカスグループインタビューに限らず,グループインタビューは,多くの場合,有意抽出で行います。

量的調査の場合,母集団の様子を正しくとらえるために無作為抽出が必要です。

しかし,質的調査は,母集団の性質を探るための調査手法ではありません。

そのために,無作為抽出を行う意味がないからです。

フォーカスグループインタビューの場合は,例えば,クラスの中で,宿題を忘れてくる人たちに集まってもらって,面接をすすめます。

他の人が質問に答えるのを聞くことによって,新たな気づきが得られることが期待されます。

グループワークもグループインタビューも集団力学(グループダイナミクス)の効果を期待するものですが,合意形成を目指すものではないことを覚えておきたいです。


<今日の一言>

社会福祉士の国試は,決して簡単なものではありません。

しかし,一つひとつを分析するとそれほど難しくないことがわかります。

国試当日,大切なことは,ヒントや解説なしで問題が解ける力をもつことです。

それには,確かな知識が必要です。

先輩などのアドバイスでは,参考書は新しいものが良い,という人もいるでしょう。
しかし,最新の参考書でなくても,去年のものでも十分使えます。

もう少しすると,国試の合格発表があります。
その後に中古市場にたくさん出てくるでしょう。

6月まで待って勉強するか,今勉強を始めるか。

3か月の違いはとても大きいです。

確かな知識は,反復勉強を行うことで身につけられます。

2019年2月27日水曜日

KJ法の進め方例~グラウンデッド・セオリー・アプローチとの共通点と相違点

「質的データの整理と分析」では,グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)とKJ法が中心となって出題されています。

KJ法は,故・川喜田二郎先生のイニシャルから名づけられたものです。GTAと時を同じくして,1960年代後半に日本で産声を上げました。

GTAとKJ法の共通点は,最初に仮説や分析軸などを持たずに,分析を進める作業を通して新しい発見をすることです。


KJ法の手順(概略)

グループで行う場合は,ブレインストーミングなどの方法で意見やアイディアをカードや付箋に書き出します。

ブレインストーミングを行うときのルールは,人の意見を批判しない,質よりも量,などがあります。

似たような内容のカードをグループ化(小グループ)し,見出しをつけます。

グループ化できなかったカードがあっても,それは一つの島にしておきます。

この時点ではまだざっくりしたグループ化で良いです。

さらに中グループに再編成し,見出しをつけます。

中グループができたら,相互参照を行いながら,大グループに再編成し,見出しをつけます。大グループの段階でも,一枚だけの島が残っていても,それは残しておきます。

大グループが出来上がったところで,大グループの関連などを考えながら,模造紙やホワイトボードなどを使って,配置します。


KJ法では出てきたカードはすべて使わなければなりませんが,GTAではラベルを必ずしもすべて使わなくてもよいことになっています。

こんなところに日本生まれのKJ法の生真面目さ,川喜田二郎先生の生真面目さを感じますね,

KJ法もGTAのように厳密なルールがありますが,社会福祉士の国試に必要な知識はこの程度で良いと思います。

それでは今日の問題です。


第29回・問題90 Q市の社会福祉協議会では,住民座談会で地域の福祉ニーズを把握するため,参加者にブレインストーミング形式で話合いを行ってもらい,そこで得られた意見についてKJ法を用いて整理することにした。

次のうち,その際の参加者によるKJ法の進め方として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 KJ法に必要な器具として,話合いにおける発言を一字一句正確に記録するためのビデオカメラとICレコーダーを購入した。

2 意見を付箋紙に記録する際,ソーシャルワークの専門用語を用いて表現した。

3 意見が記録された付箋紙をグループ編成する際,Q市社協の重点目標に即して大まかにグループ分けした上で,徐々に小分けにしていった。

4 付箋紙をグループ編成する際,1枚だけで残るものがないように,まんべんなく全ての付箋紙をいずれかのグループに含めた。

5 付箋紙のグループ編成を何段階か行った後,話合いの内容に基づく複数のユニットができたので,それらを模造紙上に再配置していった。



KJ法は各種研修で実施されるので,一度でも行ったことがある人は,「ああ,こんなことをしたことがある」と思うことでしょう。

しかし,KJ法のルールが入っているので,慎重に考えなければ間違えます。

事例問題は,そんなところに落とし穴があるので,注意が必要です。

解説していきますね。


1 KJ法に必要な器具として,話合いにおける発言を一字一句正確に記録するためのビデオカメラとICレコーダーを購入した。

これは間違いです。

KJ法は,観察法や面接法と違い,一字一句正確に記録する必要はありません。
したがって,ビデオカメラとICレコーダーは必要ありません。

2 意見を付箋紙に記録する際,ソーシャルワークの専門用語を用いて表現した。

これも間違いです。

付箋紙に記録する時は,発言者が使った言葉をそのまま使います。

GTAのインビボ・コーディングによく似ていますね。

KJ法に限らず,一般住民に理解しやすい言葉を使うことが必要です。

一般の人や他職種に対して,ソーシャルワークの専門用語を使うのは極めて不適切だと言えるでしょう。

難しい言葉を使うと周りの人が「よく知っている」と思ってくれると思う人もいるみたいですが,十分理解しないで使うととても滑稽なものになってしまいます。

「それはどういうことですか?」と質問されて,わかりやすく説明できなければ,よくわかっていないことになります。


3 意見が記録された付箋紙をグループ編成する際,Q市社協の重点目標に即して大まかにグループ分けした上で,徐々に小分けにしていった。

これも間違いです。

ここが重要点です。

KJ法もGTAもあらかじめ分析軸をもたずに整理するのが特徴です。

この場合「Q市社協の重点目標」が分析軸となります。

こういった縛りがあると,自由な発想ができなくなることがよくわかることでしょう。

これが「あらかじめ分析軸をもたない」という理由です。

仮説ももたないのは同じ理由です。


4 付箋紙をグループ編成する際,1枚だけで残るものがないように,まんべんなく全ての付箋紙をいずれかのグループに含めた。


これも間違いです。

グループに入らない1枚だけの島があっても,それを残しておくのが,KJ法の特徴です。

GTAの場合は,グループ化できないラベルがあった場合は,必ずしも使わなくてもよいことになっています。


5 付箋紙のグループ編成を何段階か行った後,話合いの内容に基づく複数のユニットができたので,それらを模造紙上に再配置していった。


これが正解です。

大グループができたら,模造紙などを使って再配置します。

これとこれは関連している,これとこれは逆の概念である,などストーリーを考えながら,再配置とともに図式化します。



<今日の一言>

第22回に現行カリキュラムが始まって,第31回で10回を数えます。

この10回の国試の中で,どのようなものが重要なのか,一見さんで終わってしまうのか,といったものが整理できるくらいの回数です。

もし機会があったら,現行カリキュラムによる国試問題を見てみると良いです。

そこから今までの国試につながる内容が出題されていることに驚くことでしょう。

国試が終わると「今年の国試の傾向が変わった」「今までの中で最も難しい試験だった」という感想を持つ人はたくさんいます。

しかし,第22回国試と第31回国試を比べてみると,どこがどう違っているかわからないくらいに, 10年も違うのに同じように見えるでしょう。

第22回国試の出題(社会調査の基礎)
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/02/blog-post_24.html


しかし,実際に国試を受験すると,初めて見たような錯覚に襲われるのです。

これはとても重要なことです。

しっかり頭に焼き付けておいていただきたいと思います。

2019年2月26日火曜日

質的データの整理と分析で確実に得点する!!

「社会調査の基礎」が難しいと思っている人は多いと思います。

確かにこの科目が加わった初期には,難しい問題もありました。

しかし現在は回を重ねてきているので,繰り返し出題されるものも増えてきたこともあり,初期に比べると問題自体の難易度はかなり下がっていると言えます。

だからと言って,受験生が簡単に解けるとは限りません。

社会福祉士の国試は,この科目に限らず,多くの科目がそうなっています。

しかし,一つひとつを確実に覚えてきた人は,突破口を多く持っているので,正解にたどり着きやすくなります。

難しいものがあっても,消去法が使えるからです。

今日の問題もそんな問題です。


第26回・問題90 質的調査データの整理と分析に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 インタビュー記録やフィールドノーツを1行ずつ読み込みながら,思いつくままにコードを書き込んでいくことをプリコーディングという。

2 研究がある程度進展した段階で,比較的少数の概念的カテゴリーにコードを割り振っていくことをオープン・コーディングという。

3 インタビュー等において対象者が使っている言葉をそのままコードとして用いることをインビボ・コーディングという。

4 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおいてデータの分析を行う際には,事前に設定した仮説や既存の理論に沿って進めることが重要である。

5 量的調査データの分析とは異なり,質的調査データにはコンピューターを使った分析はなじまない。 



この問題の難易度はかなり高いです。

勉強が不十分で国試に臨んだ人は,まったく歯が立たない問題だと言えます。

しかし確実に覚えてきた人は,何とか正解にたどりつくことができることができるでしょう。


それでは解説です。


1 インタビュー記録やフィールドノーツを1行ずつ読み込みながら,思いつくままにコードを書き込んでいくことをプリコーディングという。

これは間違いです。

コーディングは,得られたデータの内容をコード化していくことです。

コーディングには,プリコーディングとアフターコーディングがあります。

プリコーディングの「プリ」は「前に」を意味し,あらかじめコード化しておくことを指します。

量的調査の場合では,「1.はい」「2.いいえ」「3.どちらでもない」といったものです。

アフターコーディングは,得られたデータをコード化するものです。

量的調査の場合では,自由記載に書かれた回答をカテゴリー化して,コード化します。

プリコーディングの意味はわからなくても「プリ」という意味から,インタビュー記録やフィールドノーツを1行ずつ読み込みながら,思いつくままにコードを書き込んでいくことはプリコーディングではないと見当がつけられそうです。

インタビュー記録やフィールドノーツを1行ずつ読み込みながら,思いつくままにコードを書き込んでいくのは,アフターコーディングの一つであるグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)のオープン・コーディングです。

オープン・コーディングの「オープン」は,「思いつくままに」という意味から名づけられています。

思いつくままにコード化することが大切です。

思いつくままに」が事前の分析軸をもつことなく,データの収集と分析の中から新しい発見(理論の生成)を目指すGTAの特徴です。

もし,思い込みや先入観があっても,何度も分析を繰り返すことで,新しい発見があるはずです。

勉強も同じです。

最初に参考書などにマーカーを引いてしまうと新しい発見を阻害してしまうこともあるので注意が必要です。


2 研究がある程度進展した段階で,比較的少数の概念的カテゴリーにコードを割り振っていくことをオープン・コーディングという。


これも間違いです。

研究がある程度進展した段階で,比較的少数の概念的カテゴリーにコードを割り振っていくことは,軸足コーディングといいます。

GTAは,グレイザーとストラウスによって開発された分析手法です。

軸足コーディングは,ストラウス派のみが使う手法です。

グレイザー派の流れをくむGTAを学んだ人は,軸足コーディングを使いません。

もちろん軸足コーディングも出題されているので覚えておかなければなりませんが,GTAで必ずしも使わないので,GTAをよく知っている人が出題する場合は,正解選択肢にしにくいと言えるでしょう。


3 インタビュー等において対象者が使っている言葉をそのままコードとして用いることをインビボ・コーディングという。

これが正解です。

この問題の難易度が高い理由は,初めて出題されたものが正解選択肢になったことです。

つまり,この国試を受験した人は,消去法でなければ正解にたどり着くことができないからです。


「インビボ」とは,「生体内で」を意味するラテン語です。反対の意味をもつのは「インビトロ」(試験管内で)です。

インビボは,「手をつけていない」「調整していない」といった意味から,インビボ・コーディングは,対象者が使った言葉をそのままコード化することをいいます。

対象者が「わくわくする」と言ったのを,調査者が「期待している」とコード化するのは,ソーシャルワークでは「言い換え」の技法ですが,言い換えることによって,対象者が言いたかったことが確実につかむことができまないかもしれません。

そのため,そのまま「わくわくする」とコード化するのが「インビボ・コーディング」です。


4 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおいてデータの分析を行う際には,事前に設定した仮説や既存の理論に沿って進めることが重要である。


これも間違いです。

GTAは,事前に設定した仮説や既存の理論はもたずに,データの収集と分析を通して新しい理論をつくります。

ここがKJ法やGTAの特徴です。


5 量的調査データの分析とは異なり,質的調査データにはコンピューターを使った分析はなじまない。


これも間違いです。

量的データは数値化されているので,エクセルなどを使って,容易に分析することができます。難しい統計の知識がなくても,関数を使えばエクセル操作で検定もできてしまいます。

質的データは,文字で構成されたものです。エクセルでは分析できませんが,質的データを分析するテキストマイニングという方法があります。

文字化されているデータを単語などで区切ることによって,その出現度合いなどほかの単語などとの相関などを分析するものです。

現時点では,単語や文節などに区切るのは,調査者が手作業で行わなければなりませんが,近い将来は,AI(人口知能)を使って,自動的に分析してくれるかもしれませんね。


<今日の一言>

「社会調査の基礎」を攻略するために重要なことは尻込みしてしまわないことです。

今日の問題もまたまたGTAの知識が問われています。

実際に行うには訓練が必要ですが,用語を覚えておけば,国試で得点するのはそれほど難しくないでしょう。

最初は難しく思っても,繰り返し勉強していくことで,用語になじんでいくことができます。

2019年2月25日月曜日

グラウンデッド・セオリー・アプローチの基本手順

質的データを整理・分析する方法は,数多くあります。

社会福祉士の国試で,特に覚えておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。

まずは,こちらで基本手順を確認しましょう。

https://fukufuku21.blogspot.com/2019/02/blog-post_24.html


日本生まれのKJ法とアメリカ生まれのGTAは,とても似た手法です。

専門家は,全然違うものだ,というかもしれません。

しかし,あらかじめ分析軸をもたずに新しい発見をするということは,同じです。

それでは,早速今日の問題です。


第23回・問題83質的データの分析に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 KJ法の目的は,集めた意見やデータの分類と集約を通して,新しい発想や仮説を創造することである。

2 会話分析は,発話者がいかにして相互行為を秩序立てて生み出すかを解明するために,会話の形式や構造ではなく,その内容に関心を向ける。

3 ソシオグラムでは,ある組織や集団の構成員同士の関係を,矢印のない無向グラフで表す。

4 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,データ収集とコーディングを繰り返した後,これ以上新しい概念やカテゴリーが出てこないと判断される状態を,現実的飽和という。

5 質的調査の信頼性と妥当性を高めるために,インタビュー,参与観察,質問紙調査など複数の調査法を組み合わせることを,エスノグラフィという。


聞いたことがないものが並んでいると思いますが,基本はKJ法とGTAです。

それでは解説です。


1 KJ法の目的は,集めた意見やデータの分類と集約を通して,新しい発想や仮説を創造することである。

これが正解です。

前回の問題では,GTAを正解にして,「これからこのように出題しますよ」と高らかに宣言しました。

今回は,KJ法を正解にしました。

この2回の出題で,質的データの整理と分析の基本が押さえられるようになりました。

KJ法はアイディアを発想するのにとても親和性があります。

具体的な進め方は,第29回で出題されていますが,付箋などを書き出したものを集約することで,新しいものを発見しようとするものです。


2 会話分析は,発話者がいかにして相互行為を秩序立てて生み出すかを解明するために,会話の形式や構造ではなく,その内容に関心を向ける。

これは間違いです。

会話分析は,内容ではなく,会話の文脈を分析するものです。
第30回にも会話分析が出題されていますが,その時も間違い選択肢です。

そこから,会話分析は,KJ法やGTAほど,優先的に覚えなければならないものではないことがわかります。

というか,絶対に覚えなければならないのは,KJ法とGTAです。

この文章は,注意深く読めば,正解にはなりなくい構造になっていることがわかります。

正解なら,

会話分析は,発話者がいかにして相互行為を秩序立てて生み出すかを解明するために,その内容に関心を向ける。

でよいはずです。

そうなっていないのは,間違い選択肢にするためです。

こういったところに気がつくセンスを養えば,得点力は確実に伸びます。
センスは,問題を解くことで養うことができます。


3 ソシオグラムでは,ある組織や集団の構成員同士の関係を,矢印のない無向グラフで表す。

これも間違いです。

ソシオグラムは,集団における人間関係を図式化したものです。

AさんとBさんという関係の中で説明すると・・・

AさんがBさんに好印象を持っているときは,AさんからBさんに向けた矢印でその関係を示します。

Bさんも好印象を抱いていれば,⇔ といった矢印が使われます。

関係が悪ければ, → に 「×」 をつけます。

刑事ドラマでは,被害者を中心として,被害者の周囲にいる人を関係をホワイトボードで示しているものを見たことがあるでしょう。

これがソシオグラムです。

矢印があることで関係性がわかります。

実際には,捜査本部に,そういったホワイトボードはないそうです。
視聴者にわかりやすく伝えるためのサービスらしいです。

捜査情報を捜査員が共有することもないそうです。

捜査員に先入観などを生じさせないためです。
あの捜査員が調べたから,自分は別なところを当たろう,といったことになれば,重要な事柄を見落とししまうことにもなりかねません。

それはさておき,「ソシオグラムは刑事ドラマのあれ」と覚えておけばよいと思います。


4 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,データ収集とコーディングを繰り返した後,これ以上新しい概念やカテゴリーが出てこないと判断される状態を,現実的飽和という。

これも間違いです。

前回既に紹介しましたが,これ以上何も出てこない状態は「理論的飽和」です。

データの収集と分析を繰り返して,ねずみも出てこないくらいになったら,「理論的飽和」といい,GTAではこの状態を目指します。

理論的飽和は,この時初めての出題でした。そのため,現在と違ってこの国試当時では,多くの参考書には載っていなかったと思われます。

しかし,これも注意深く考えると,消去できます。

「飽和」は,小学校の理科で習ったように,水の中の砂糖や,空気中の水分などかこれ以上,溶けない状態であることを指します。

そういったことを,思い出すことができれば,現実的飽和という用語は,GTAにはふさわしくないと思えるでしょう。

こういった想像力も得点力を高めることになります。


5 質的調査の信頼性と妥当性を高めるために,インタビュー,参与観察,質問紙調査など複数の調査法を組み合わせることを,エスノグラフィという。


これも間違いです。

知識が足りないと,何のことを言っているのかまったくわからないと思います。

エスノグラフィは,民族誌と訳されます。こういった言葉から,質的調査の原点が文化人類学にあることが感じられます。

エスノグラフィのエスノは,エスノチックやエスノ料理のエスノです。

一般的に,エスノチックやエスノ料理は,東南アジア系を指していうことが多いと思いますが,本来は「民族」を指す用語です。

観察法も原点は,文化人類学にあります。

現在のエスノグラフィは,文化人類学の意味から離れて,観察などで得られたデータを記述したものを指します。

トライアンギュレーションが,質的調査の信頼性と妥当性を高めるために,インタビュー,参与観察,質問紙調査など複数の調査法を組み合わせることです。

信頼性と妥当性は・・・

信頼性は,正しく測定できていること。
妥当性は,測定が安定していること。




<今日の一言>

社会福祉士の国試で出題される質的データの整理と分析は,KJ法とGTAが中心です。

繰り返しになりますが,この2つの理解は必須です。

これらを中心として,ほかの選択肢が配置されています。

軸をしっかり持っていれば,正解にたどり着く率はかなり高くなります。

別な言い方をするとあいまいにしか覚えていないと,今日の問題で出題されている「会話分析」「現実的飽和」なとが消去できないので,正解にたどり着くのは難しいです。

2019年2月24日日曜日

KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチの手順

今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。

特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。

どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。

KJ法

川喜多二郎(かわきた・じろう)先生が考案したもので,川喜多先生のイニシャルを取ってKJ法と名付けられました。

質的データの整理のほかにアイディアをまとめる時にも用いられます。

良く行われるのは,付箋に書き出して,それをまとめていく方法です。

その過程を通して,新しい発見がなされます。


グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)

グレイザーとストラウスによって開発されたものです。

GTAの手順は,インタビューや観察などで得られたものを文字化します。

そのポイントだと思われるものを書き出します。

似たようなものをまとめて,そのかたまりをコード化します。

それが「オープン・コーディング」です。

いくつかのかたまりをまたまとめていきます。そして,全体にタイトルをつけます。

それが一回目です。

もう一回,元のデータに戻って同じ作業を繰り返します。

そうすると,最初には気づかなかったものが見えてきます。

また繰り返します。

そうして,繰り返すうちに,これ以上新しいものが出てこなくなった状態を「理論的飽和」といいます。

グレイザーとストラウスは,共同してGTAを提唱しましたが,手法がちょっと違います。

ストラウス派は,まとまったものを再コード化する過程があり,それを軸足コーディングと呼びます。

グレイザー派は,軸足コーディングを用いないので,国試で軸足コーディングが出題されても,正解にはなりにくいと考えます。

作業の過程でもう少し深めてみたいところがあった場合は,新たにインタビューなどを行います。

GTAが,データの収集と分析を繰り返して,新しい理論を発見するものである,と言われるゆえんは,このようなプロセスを踏むからです。


GTAを使った例

あるスポーツの指導者にインタビューを行います。

その時の面接法は,構造化面接ではなく,多くの場合は,半構造化面接で行われます。

つまりいくつかの質問をした後に,自由に語ってもらいます。

それを録音して,後で書き起こします。

それを区切って書き出します。

それを似たようなものをまとめてコード化します。

例えば,「選手の調子が悪い時」といったようにタイトルをつける作業です。これがオープン・コーディングです。

KJ法は,書き出したものはすべて使うルールがありますが,GTAでは仲間に入れることができなかったものは,無理に使う必要はありません。
そしてまとめていきます。

一人の指導者ではデータが足りないので,他のスポーツの指導者にもインタビューを行います。

そして同じように作業を進めていきます。これ以上新しい概念が生まれてこないところまで何度も繰り返します。それが理論的飽和です。

さらに,別なスポーツの指導者にもインタビューを行います。

最終的なコンセプトとして,「指導者のあり方」というタイトルをつけます。

この作業を通して,指導者の指導方法という理論が生まれています。

やった~という感じですね。

GTAの手順が何となくでもわかっていただけましたか?

専門家から見ると,ちょっと違うよ,と思われるかもしれません。社会福祉士の国試のためには,この程度を理解しておけば十分です。


KJ法とGTAの共通点

KJ法もGTAも1960年代後半に開発されたものです。違う国で同じようなものを同時期に考案するというのは面白いですね。

あらかじめ分析軸を持たずに始めるところが共通点です。

データ収集と分析を通して,新しい発見をするのが,KJ法やGTAです。

仮説を証明するのは,量的調査です。


KJ法やGTAは,仮説(この場合は,思い込みや偏見など)を必要としません。というか,そういったものは,新しい発見をするにはじゃまです。

しかし,最初にデータを見た時には,思い込みや偏見などのために,ある一定の見方をしてしまいがちです。

先述の例では,「指導者はこうあるべきだ」という調査者の思い込みです。

GTAでは,理論的飽和の状態を目指すのは,仮に思い込みがあっても,2回目,3回目と手順を繰り返すことで,新しい発見ができるからです。


さて,それでは今日の問題です。


第22回・問題83 質的データの分析に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,データの収集と分析が一体となり,繰り返し実施されるのが,その特徴の一つである。

2 KJ法を利用して質的データを分類するには,理論的枠組みに基づいてあらかじめ設定された分類軸が必要である。

3 ドキュメント分析を行う際,公的機関の統計や文書あるいは新聞・雑誌などのメディア文書は分析の対象となるが,日記や手記などの個人的記録は分析の対象とはならない。

4 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおける軸足コーディングは,単一の事象に対して,複数のコードをはり付けていくことである。

5 KJ法は,質的データの分析において,主として仮説の検証を試みる際に活用される。


前説に書きましたので,答えはすぐわかるでしょう。


それでは内容を一応確認していきましょう。


1 グラウンデッド・セオリー・アプローチでは,データの収集と分析が一体となり,繰り返し実施されるのが,その特徴の一つである。

これが正解です。

グラウンデッド・セオリーは,データの収集と分析を繰り返して,新しい理論を生み出すのが特徴です。

オープン・コーディング,理論的飽和といった用語とともに手順を理解しておきましょう。

2 KJ法を利用して質的データを分類するには,理論的枠組みに基づいてあらかじめ設定された分類軸が必要である。

KJ法もGTAも最初は分析軸がありません。

「オープン・コーディング」のオープンとは,既成の概念にとらわれることなく,自由にコード化するといった意味合いです。

ということで,あらかじめ設定した分析軸はもちません。それだと新しい発見を行うことが難しいでしょう。既存にとらわれないで「オープン・コーディング」を行います。


3 ドキュメント分析を行う際,公的機関の統計や文書あるいは新聞・雑誌などのメディア文書は分析の対象となるが,日記や手記などの個人的記録は分析の対象とはならない。

これも間違いです。

今後何度も出てくるドキュメント分析です。

ドキュメントは,記録を意味し,ドキュメント分析は,記録を分析します。

分析対象のドキュメントは,公文書,私的な記録など,多岐にわたります。

家計簿でさえ,分析対象になります。

4 グラウンデッド・セオリー・アプローチにおける軸足コーディングは,単一の事象に対して,複数のコードをはり付けていくことである。

これも間違いです。

軸足コーディングは,まとまったものを再コード化することです。

軸足コーディングの意味がわからなくても,単一の事象に複数のコードをはり付けるというのは,違和感があると思いませんか?

たとえば,「選手を叱る」という事象に複数のコードをつけるのは,困難です。


5 KJ法は,質的データの分析において,主として仮説の検証を試みる際に活用される。

これも間違いです。

質的調査のデータを整理するための手法の中には,仮説の検証を行うことができるものもありますが,KJ法もグラウンデッド・セオリーも,分析を通して新しい発見を行うために行います。

一般的には,仮説の検証を行うのは,量的調査です。


<今日の一言>

グラウンデッド・セオリーと聞くととても難しく感じることでしょう。

実際に行うのは,訓練が必要ですが,国試ではそんな深い理解は必要ではありません。

目的と簡単な手順を覚えておくだけでよいです。

軸足コーディングは,出題されても正解になったことがないのは,グラウンデッド・セオリーの中でも,ストラウス派だけが用いるためだと考えています。


<おまけ~しかし重要>

国試の勉強をする時に,参考書にマーカーなどを使うことがあります。

見た目もきれいです。色分けなどするとさらにきれいでしょう。

国試会場では,そういった参考書を持ち込んで,ギリギリまで勉強している姿をよく見ます。とても勉強してきた人に見えるでしょう。

しかし,マーカーは,勉強にとって危険なのです。

最初は,どこがポイントなのかがわからないので,マーカーは大きく引きがちです。

マーカーを使うと,二度と消せません。

参考書などを2度,3度と繰り返して読むと,新しい気づきがあるはずです。

たとえば,KJ法とGTAでは,分析軸をあらかじめもたないから,新しい発見ができるのだ,といったことです。

そこが押さえるべき重要点になります。

さらに勉強をすすめると,新しい発見をする

というポイントまで,絞り込めるかもしれません。

最初に大きくマーカーを引くと,全体をボヤっとしか押さえられない危険性があります。

GTAでは,データを読むときには,マーカーを使うことは勧めません。

思い込みや偏見につながるからです。

必要な場合は,鉛筆でアンダーラインを引くだけにとどめます。


そうすると最初に

データ収集と分析を通して,新しい発見をするのが,KJ法やGTAです。


とアンダーラインを引いたとしても,

データ収集と分析を通して,新しい発見をするのが,KJ法やGTAです。


データ収集と分析を通して,新しい発見をするのが,KJ法やGTAです。


とどんどんアンダーラインの減らしていくことができます。


ここまで勉強が進んでいけば,

新しい発見

方法は,GTAなど

手順は,データ収集と分析を繰り返す


新しい発見というキーワードだけで,さまざまな思い起こすことができるでしょう。
国試では,大きな力を発揮することができます。

マーカーを引くと,勉強した気になるので,要注意です。
マーカーを引いてしまうと,元に戻らないので特に注意です。

最初は,よくわからないので,大きくマーカーしてしまうのです。

きれいにマーカーを引いた参考書をもっている人をみたら,この人はぼやっとしか覚えていない,と思いましょう。

ほとんどの行にマーカーが引かれている参考書は,理解を阻害することがあるからです。


模擬試験や過去問を解くと,覚えておくポイントが明らかになることがあります。

そういった気づきが記入されている参考書を持っている人こそが,本当の実力をもった受験者です。

1年後まで覚えていれば,試験会場で周りの受験生を見てみましょう。
2種類の参考書に分かれるはずです。

きれいにマーカーが引かれている参考書をもっている人は,勉強したつもりになっているだけです。

2019年2月23日土曜日

グループ・インタビューって何?

社会福祉調査の基礎は難しい


というイメージが一人歩きしていることもあり,受験生が尻込みすることが多いようです。

参考書には,統計学の知識が求められるものも掲載されているので,「こんな難しいことを覚えなければならないのか」と思ってしまうからです。

しかし,それは6問中,たった1問だけです。理解するのが難しければ捨ててもよい範囲だと言えます。

そのほかの部分で十二分にカバーできます。

社会福祉調査の基礎は難しくない


そう思って,勉強に取り掛かるととても気が楽になると思います。

試験センターは,「社会調査の基礎は難しい」というイメージを使って,うまく難易度を調整しているように思います。

すごいピッチャーは,すごい球を一球投げておいて,あとはバッターがいつその球が来るのかというイメージをもっているので,すごい球を投げなくても打ち取ることができます。

試験センターでは,受験者のデータは,受験者数,合格者数,年代別の合格者数,都道府県別の合格者数,そして合格基準点,合格率のみ発表しています。

平均点が発表されれば,この科目の平均点は確実に上がっていると考えられます。

しかし難しいイメージから勉強を敬遠した人は点数が取れないので,しっかり勉強した人との差が広がりやすいです。


さて,今日から質的調査に戻ります。

質的調査で用いられる主なものは

観察法,面接法,ドキュメント分析です。

そのうち面接法で出題される主なものは,

構造化面接法
非構造化面接法
半構造化面接法
フォーカス・グループインタビュー
ライフストーリー・インタビュー

本サイト内の過去記事を検索すると,たくさん出てきますので,まずは確認してみてください。

それは,今日の問題です。

第28回・問題88 グループインタビューに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 対象者の選定は,有意標本抽出によって行われる場合が多い。

2 参加者間の相互作用が起こらないように,司会者が気をつける。

3 記録係は,参加者の非言語的反応について記録をする必要はない。

4 一度に参加する人数は,多いほど良い。

5 質問は,参加者が明確に回答できるように選択式を基本とする。

インタビューは,個人に行うものとグループ(集団)に対して行うものがあります。
それぞれにはそれぞれの意義があります。

それでは,解説です。


1 対象者の選定は,有意標本抽出によって行われる場合が多い。

この問題を見た人は,アッと思った人もいたでしょう。

うまい作問だと思います。

無作為抽出が必要なのは,母集団の性質を調べる量的調査です。

質的調査では,無作為抽出をする必要はほとんどありません。

例えば,学校を考えた場合,宿題を忘れてくる生徒に対して,担任の先生がインタビューを行う場合,無作為抽出をすることはまずないでしょう。

グループインタビューは,グループ間での気づきも期待します。

他の人がインタビューに答えることで,他の人の考え方がわかるからです。

ということで,グループインタビューは有意抽出を行うことが多いので,正解です。


2 参加者間の相互作用が起こらないように,司会者が気をつける。

これも間違いです。

相互作用を期待して,グループインタビューは実施されます。


3 記録係は,参加者の非言語的反応について記録をする必要はない。

これも間違いです。

非言語的(ノンバーバル)反応は,多くの情報が含まれます。

記録しないともったいないでしょう。


4 一度に参加する人数は,多いほど良い。

これも間違いです。

多いほど良いのだったら,地球人約75億人みんながそろったインタビューが良いことになります。

宇宙人も含めたらもっと良いことになります。

そんなことはありません。

何事も適切な規模があります。時には極端な例を思い浮かべるのも正解にたどりつくためには必要なテクニックです。


5 質問は,参加者が明確に回答できるように選択式を基本とする。

これも間違いです。

グループインタビューは,お互いの気づきを期待します。

他の人が答えることで,新しい発想などができます。

選択式の質問に答えるなら,グループインタビューの意味はまったくないと言えます。


<今日の一言>

今日から,次回の国試に向けて本格スタートしました。

国試は,あいまいな知識では,正解にたどり着くことは難しいです。

確実に覚えるためには,参考書と過去問を合わせて勉強することが良いです。

2019年2月22日金曜日

社会福祉士国試で得点するための勉強法


記憶力が落ちて覚えられない


多くの社会人が国試勉強する時に感じることだと思います。

しかし,今までの人生で楽に覚えられたことはあったでしょうか。

小学生の時,漢字の勉強をしたときも,何度も何度も書いて覚えたでしょう。

「10回書きましょう」といった宿題も出されていたと思います。

基礎的なことを覚えるには反復練習は欠かせません。

しかし,社会福祉士の勉強を考えたとき,10回も繰り返すことはまずできません。

それほど勉強に時間がかけられないからです。書いて覚えるのは,選択肢から外す必要があります。


一般的な覚え方のコツは,専門家に任せるとして,

社会福祉士の勉強の場合,記憶力が落ちて覚えられない,というのは,勉強の工夫によって十分カバーできると思います。


勉強のコツ


科目によって覚え方を変える
国試には,理論系の問題と法制度系の問題があります。

法制度は,丸覚えでもよいでしょう。

しかし,できたら自分なりの覚え方ポイントを入れておくと良いです。
これから1年かけて具体的にお伝えしていきたいと思います。

理論系の問題は,丸覚えはだめです。
必ず自分なりに理解することが大切です。

これも具体的な例をお伝えしていきます。

いずれにしても,国試で最高のパフォーマンスを発揮するためには,それに合った覚え方が必要です。

覚えるポイントがずれると,努力は得点力につながらないので,注意が必要です。

次回からは,通常モードに戻ります。
楽しく学んでいきましょう。

2019年2月21日木曜日

基幹統計問題の国試への影響

この学習部屋では,時事ネタは取り扱わない方針です。
なぜなら,そういった情報はすぐ古くなり,使い物にならなくなるからです。

しかし,ここに来てどうしても看過できないことが生じてきてしまっています

それは,基幹統計問題です。

データに疑念が生じている以上,厚生労働省が行った調査データを使った問題は国試ではしばらく出題しないだろうと予測されます。


国試で出題された白書・報告書等(第22~31回)

第22回
「2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~」(平成15年,高齢者介護研究会)
「地域における新たな支え合い』を求めて―住民と行政の協働による新しい福祉―」(平成20年,これからの地域福祉のあり方に関する研究会)
「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画策定指針の在り方について(一人ひとりの地域住民への訴え)」
「地域ケア体制の整備に関する基本指針の策定について」
「福祉サービス第三者評価事業に関する指針について(平成16年5月7日)」
「成年後見関係事件の概況~平成19年4月から平成20年3月~」(最高裁判所事務総局家庭局)

第23回
国民の社会福祉に関する活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な指針」(平成5年厚生省告示)
「地域における『新たな支え合い』を求めて―住民と行政の協働による新しい福祉―」(平成20年,これからの地域福祉のあり方に関する研究会)
「地域包括ケア研究会報告書~今後の検討のための論点整理~」(平成21年5月22日厚生労働省公表)
「地方財政白書」(平成22年版)
「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画の策定について」(平成14年4月1日厚生労働省社会・援護局長通知)
「市町村地域福祉計画の策定について」(平成19年8月10日厚生労働省社会・援護局長通知)
「男女共同参画白書」(平成19年版)
「厚生労働白書」(平成20年版)
「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」(平成19年厚生労働省告示第289号)
「労働力調査(基本集計)(平成21年)」(総務省)
「高年齢者雇用実態調査(平成20年)」(厚生労働省)
「高年齢者就業実態調査(平成16年)」(厚生労働省)
平成8,13,18年の「身体障害児・者実態調査」
平成17年の「患者調査」
「平成19年度児童養護施設入所児童等調査結果」(厚生労働省・平成20年2月1日現在)
労働力調査(基本集計)
「労働経済白書」(平成22年版)
「パートタイム労働者総合実態調査(平成18年)」(厚生労働省)

第24回
「健康づくりのための運動指針2006〈エクササイズガイド2006〉」(平成18年7月,運動所要量・運動指針の策定検討会)
「国民生活基礎調査(平成21年)」
「平成21年度高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」(厚生労働省)
「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」(厚生省,2000年)
「社会生活基本調査(平成18年)」(総務省)
「全国母子世帯等調査(平成18年度)」(厚生労働省)
「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画策定指針の在り方について(一人ひとりの地域住民への訴え)」(社会保障審議会福祉部会)
「平成20年度国民生活選好度調査」(内閣府)
「国民生活白書」(平成19年版)
「地域における『新たな支え合い』を求めて―住民と行政の協働による新しい福祉―」(平成20年,これからの地域福祉のあり方に関する研究会)
「地方財政白書」(平成23年版)
福祉計画等の策定状況(平成22年4月1日現在)
「人口推計(平成23年6月報)」(総務省)
「高齢社会白書」(平成22年版)
「平成21年度福祉行政報告例」(厚生労働省)
「被保護者全国一斉調査(個別調査)」(厚生労働省)
財源別国民医療費(平成20年度)
「福祉関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン」(平成16年11月厚生労働省)
「成年後見関係事件の概況―平成22年1月~12月―」(最高裁判所事務総局家庭局)
「福祉関係事業者における個人情報の適正な取扱いのためのガイドライン」(厚生労働省)

第25回
「住民基本台帳人口移動報告(平成23年結果)」(総務省)
「平成22年度版『過疎対策の現況』について」(総務省)
「平成21年度市区町村社協活動実態調査」(全国社会福祉協議会)
「2015年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~」(平成15年,高齢者介護研究会)
「地方財政白書」(平成24年版)
「厚生労働白書」(平成23年版)
「労働力調査」(総務省)
「平成23年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)
「平成22年国民生活基礎調査」(厚生労働省)
「平成23年人口動態統計年報」(厚生労働省)

第26回
「平成23年度全国母子世帯等調査」(厚生労働省)
2012年(平成24年)に「社協・生活支援活動強化方針」
「日本の将来推計人口(平成24年1月中位推計)」
厚生労働省の人口動態統計
「平成23年簡易生命表」(厚生労働省)
「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)
2010年度(平成22年度)までの「国民医療費の概況」(厚生労動省)
「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」とは,「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」において平成24年3月15日に取りまとめられた提言のことである。
総務省の人口推計(平成24年10月1日現在)
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成24年1月中位推計)」
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計(平成25年1月推計)」
「平成23年国民生活基礎調査」(厚生労働省)
「労働力調査」(総務省)

第27回
「社会保障制度改革国民会議報告書」(2013年(平成25年))
「『福祉サービス第三者評価事業に関する指針について』の全部改正について」(平成26年4月1日厚生労働省雇用均等・児童家庭局長,社会・援護局長,老健局長通知)の(別添3)
「『絆』と社会サービスに関する調査結果の概要」(平成26年3月31日(内閣府))
「地域における「新たな支え合い」を求めて―住民と行政の協働による新しい福祉―」(平成20年,これからの地域福祉のあり方に関する研究会)
「社協・生活支援活動強化方針―地域における深刻な生活課題の解決や孤立防止に向けた社協活動の方向性―」(平成24年全国社会福祉協議会)
「地域包括ケア研究会報告書~今後の検討のための論点整理~」(平成21年5月22日厚生労働省公表)
「地域で認知症の人とその家族を支援し,見守る体制を強化するための効果的な支援に関する調査研究事業報告書」(平成26年3月特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク)
「平成25年版厚生労働白書」
「平成23年度社会保障費用統計」
「平成24年度障害者虐待対応状況調査」(厚生労働省)
「平成23年度国民医療費の概況」(厚生労働省)
「成年後見関係事件の概況(平成25年1月~12月)」(最高裁判所事務総局家庭)
「平成23年度全国母子世帯等調査」(厚生労働省)
「平成25年労働力調査」(総務省)
「平成24年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)

第28回
「平成22年国勢調査」(総務省)
「平成25年国民生活基礎調査」(厚生労働省)
「平成26年版厚生労働白書」
「平成26年版男女共同参画白書」(内閣府)
「平成27年版少子化社会対策白書」(内閣府)
「平成27年版地方財政白書」(総務省)
平成26年10月31日付け社援地発1031第3号「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画の策定状況等調査の結果について」(厚生労働省社会・援護局地域福祉課長通知)
「人口推計(平成26年10月1日現在)」
「平成24年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)
「平成24年ホームレスの実態に関する全国調査」(厚生労働省)
「ホームレス自立支援基本方針」(厚生労働省,国土交通省)
「平成24年度国民医療費の概況」(厚生労働省)
「成年後見関係事件の概況」(最高裁判所事務総局家庭局)
「平成27年版高齢社会白書」(内閣府)
「平成25年度福祉行政報告例」(厚生労働省)

第29回
「平成27年版高齢社会白書」(内閣府)
 「社会保障制度改革国民会議報告書~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋~」(2013年(平成25年)8月)
「平成27年版厚生労働白書」
「平成24年版働く女性の実情」(厚生労働省)
「平成25年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)
「平成25年度国民医療費の概況」(厚生労働省)
「平成28年版高齢社会白書」(内閣府)
「保育所等関連状況取りまとめ(平成27年4月1日)」(厚生労働省)

第30回
「平成28年国民生活基礎調査」(厚生労働省)
「平成28年における少年非行,児童虐待及び児童の性的搾取等の状況について」(警察庁)
「平成28年版厚生労働白書」
「平成26年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)
「生活保護の被保護者調査(平成27年度(月次調査確定値))」(厚生労働省)
「成年後見関係事件の概況(平成28年1月~12月)」(最高裁判所事務総局家庭局)
「平成28年版高齢社会白書」(内閣府)

第31回
「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(内閣府)
「世界幸福度報告書(World Happiness Report)」の2017年版
法務省の「性的指向及び性自認を理由とする偏見や差別をなくしましょう」という啓発活動
文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」(2017年(平成29年)改定)
「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」報告書(2008年(平成20年))
「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」(2015年(平成27年))
厚生労働省の「社会保障審議会福祉部会報告書~社会福祉法人制度改革について~」(2015年(平成27年))
中央共同募金会の「参加と協働による『新たなたすけあい』の創造」(2016年(平成28年))
厚生労働省の「地域力強化検討会最終とりまとめ」(2017年(平成29年))
全国社会福祉協議会の「社協・生活支援活動強化方針」(2018年(平成30年))
全国民生委員児童委員連合会の「これからの民生委員・児童委員制度と活動のあり方に関する検討委員会報告書」(2018年(平成30年))
「平成26年全国消費実態調査所得分布等に関する結果」(総務省)
「平成26年所得再分配調査報告書」(厚生労働省)
「平成28年度被保護者調査」(厚生労働省)
「生活困窮者自立支援制度における支援状況調査集計結果(平成29年度)」(厚生労働省)
「平成29年度扶助実態調査」(厚生労働省)
「平成27年度国民医療費の概況」(厚生労働省)
「成年後見関係事件の概況(平成29年1月~12月)」(最高裁判所事務総局家庭局)
「平成28年度福祉行政報告例」(厚生労働省)
「平成29年労働力調査年報」(総務省)
厚生労働省発表の平成29年分の一般職業紹介状況
「平成29年版厚生労働白書」
「平成28年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)
「平成29年労働組合基礎調査」(厚生労働省)


ざっと調べるとこれだけあります。

もしかすると,今の問題の影響で,厚生労働白書でさえ,出題されないかもしれません。

毎年出題されている「国民医療費の概況」でさえ,出題されないということになるのかもしれません。

だからといって,覚えないわけにはいかないのが辛いところです。

本当に出題されなかった場合,どのようなことが起きるのかシミュレーションしてみました。

①厚生労働省以外の統計データを出題する
②統計データ枠は,別の問題に置き換える

この2つが考えられます。

①厚生労働省以外の統計データを出題する

統計データの問題は,対策がほとんど取れないの

勉強した人でも得点しづらい
勉強が足りなくても,勘の良い人は得点しやすい

といった結果を招きます。

他の問題の難易度が今年度と同じだった場合,合格基準点は,この問題数の半分程度の点数が下がるでしょう。

差がつく問題が少なくなるので,凡ミスは命取りとなります。


②統計データ枠は,別の問題に置き換える

この場合は,2つのタイプが考えられます。

今まで出題されたことのある問題に置き換える

勉強した人は点数が取りやすくなるので,基本をしっかり押さえていけば,凡ミスが少々あっても得点は伸びます。

今まで出題されたことのない問題に置き換える

①と同じような結果になります。
厳しい試験になるでしょう。


<今日の一言>

しばらくは例年よりも対応が難しい問題になることが予測される中,合格に必要なことはただ一つ。

出題基準に示された範囲をひたすら確実に覚えていくことです。

少なくとも3か月の追い込み勉強ではありません。

国家試験は,上位25~30%に入らなければ合格できないサバイバルゲームです。

多くの人はそれに気がついていないはずです。

しかし受験者の半分程度は十分な勉強をせずに受験していることでしょう。

記憶力に勝る大学生でも平均の合格率よりも下回る大学が大半であることからそう言えると思います。

他の受験生と差がつくためには,一つひとつを確実に覚えていく地道な努力が欠かせません。

2019年2月20日水曜日

国試に合格する勉強のコツ

これから社会福祉士の国試勉強を始める人にとって,何を使ってどんな勉強をすれば合格できるのか,雲をつかむような気持ちでいるかもしれません。

インターネットの合格体験談などを参考にする人もいるでしょう。

自分に合った勉強法を一日も早く見つけ出してください。

道筋はいくつもありますが,到達点は「合格基準点以上の点数を取る」です。

どれだけ勉強するか

が問題ではありません。

どんな勉強をするか

が重要です。

社会福祉士の国試は知恵が求められています。
それは社会福祉士に求められるスキルだからです。

さて今回のテーマ「国試に合格できる勉強法」です。

重要ポイント

何度も繰り返すこと

しかも

短期間で繰り返すことが大切です。

一歩ずつ確実に理解しないと前に進めないという人もいるでしょう。

しかしそれでは時間がかかりすぎて,繰り返すことができません。

少し乱暴な言い方をすると,少々わからないことがあっても,先に進んでいく勇気も時には必要です。

何度も繰り返すことで,理解できるようになります。

19科目もあるので,一つひとつに時間をかけていくと,時間がなくなります。

社会福祉士の国試は出題範囲は広いですが,決して深掘りはしません。

国試が終わると

もっと深い理解が必要だった

という感想をもつ人が多いですが,決してそんなことはありません。

国試突破には,受験者のうちの上位25~30%に入らなければなりません。
しかし,多くの受験生は正しい勉強をせずに受験に臨むので,その範囲に入るのはそんなに難しくはないです。

19科目を通して勉強して,最初に戻って繰り返す

1科目ずつ繰り返して,次の科目に進む

後者の方が短期間に繰り返すことになるので,頭に残りやすくなります。

最初に覚えた科目はずっと前のことになって忘れてしまうと思うかもしれませんが,一度しっかり覚えたものは,もう一度繰り返せばしっかりした記憶になります。

早くから勉強したら忘れるから,ギリギリに追い込むのが良い,という人もいるかもしれません。それで合格した人もいるでしょう。

しかし,追い込みをしようと思った時に,インフルエンザなどにかかったり,仕事が急に忙しくなるなど,思ったような勉強ができなくなることもあります。

そういったことも想定して,学習計画を立ててみましょう。


<今日の一言>

社会福祉士の国試は,出題範囲が広いので,ノートに書き写す勉強はやめましょう
多くの人が時間がなくなり挫折しています。
また,ノートに書くことで覚えたつもりになるので危険です。

2019年2月19日火曜日

社会福祉士国試のボーダーライン(合格ライン)

第31回国家試験の合格発表はまだですが,第32回のボーダーラインを考えてみたいと思います。

合格基準は,60%程度だと示されています。

実際のボーダーラインは,上に振れたり,下に振れたりしています。

最も上に振れたのは,第30回の99点。
最も下に振れたのは,第25回の72点。

この違いは,問題の難易度によるものです。

試験センターは難易度の根拠を示していませんが,試験センターが持っているデータから難易度を割り出していることは想像できます。

チームfukufuku21が予測しているのは,受験者全体の正答率は60%を基準と考えているのではないかということです。

あらかじめ問題1問ごとにも予測正答率が想定されていて,平均正答率が60%になるように難しい問題と易しい問題,そして中くらいの問題を適度にちりばめて出題しているのではないかと考えています。

解ける人が誰もいない難易度が高い問題があっても,全員が解ける問題が同じ数だけあれば,それらは相殺されます。

なお,難易度のばらつきを測るには,分散や標準偏差が用いられます。

豊富なデータから,予測正答率を出していても,実際の観測値,つまり受験者の正答率にはずれが生じます。

そのずれを補正したものが実際のボーダーラインとなります。

実際には,合格率30%にもこだわりがあるようなので,もう少しボーダーラインを割り出す作業は複雑になっていることでしょう。

さて,第32回国試のボーダーラインを考えてみます。

試験センターが最も理想とする国試の難易度は,受験者の30%が90点以上,と考えられます。

今までと同じようなスタイルで出題すれば,おそらく想定した正解率とそれほど変わらないと思います。しかし現在のカリキュラムになった時に国試の出題スタイルは新しいものを混ぜていくことが決められていることもあり,同じようなスタイルばかりを出題することができません。

試験センターは,「受験者の30%が90点以上」を理想としながらも,ずれが生じてしまうのはそんなところに要因があるように思います。

第32回のボーダーラインに限らず,そして第32回以降もボーダーラインは90点ラインを基準とすることでしょう。

試験センターは問題ごとの正答率は発表していませんが,正答率60%程度の問題は,決して難易度が高い問題ではありません

しっかりした知識があれば解ける問題です。


<今日の一言>

国家試験問題には難しいものから簡単なものがあります。

分類すると以下のようになります。

①極めて難しい
②やや難しい
③普通
④比較的簡単
⑤簡単

④比較的簡単
⑤簡単

とはいうものの結果的にそうなっているだけで,実際に受験する人は簡単だとは思わないでしょう。

以下のようなバランスで出題されていたとします。

<例1>
①極めて難しい 5問
②やや難しい 20問
③普通 100問
④比較的簡単 20問
⑤簡単 5問

<例2>
①極めて難しい 10問
②やや難しい 15問
③普通 100問
④比較的簡単 15問
⑤簡単 10問

どちらも平均正答率が60%だとしても,受験者は<例2>の方が難しく感じるでしょう。
分散や標準偏差でも,<例2>の方が大きな数字となります。

しかし,<例1><例2>ともに普通の問題が大半です。

国試攻略には,このような問題を確実に得点できる基礎力と問題を読み解く力が必要です。

国試のボーダーラインは常に60%程度です。

誰も解くことができない問題を正解することよりも,国試の大部分を占める「しっかり勉強したら正解できる問題」でいかに点数を積み上げられるのかが大切です。

何度も受験している人は,「③普通」の問題を取りこぼしていないか,確認してみることが大切です。

2019年2月18日月曜日

社会福祉士の国家試験に合格するための勉強法

来年の国家試験を受ける予定の方で,今の時期に勉強を始めている人はほとんどいないでしょう。

しかし時間は過ぎていきます。

国試当日から逆算した学習計画を立てましょう。

中間地点の目安として,10月までにはある程度,基礎知識はつけておきたいです。

そうすれば,残り4か月で得点力を上げるための仕上げを行うことができます。
合格基準点を超えるためには,知識だけでは心もとないからです。

10月から勉強を始める人とは大きく差をつけることができます。

さて,問題を解く時の留意点です。

第30回国試ではみられなかった「かかわらず」が,第31回国試ではみられました。

こういったわかりやすい表現はもう使われないと思ったら,復活したのです。
文字数がちょっぴり増えたことで,このような言い回しができるようになったからでしょう。

国試問題に慣れることで,正解にたどり着く精度が上がります。
第31回で「かかわらず」が使われたのは,以下の問題です。

問題29 「育児・介護休業法」において定められた介護休業制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護休業を取得することができる対象家族には,配偶者と子は含まれない。
2 期間を定めて雇用される者は,雇用の期間にかかわらず介護休業を取得することができない。
3 介護休業は,2週間以上の常時介護を必要とする状態にある家族を介護するためのものである。
4 一人の対象家族についての介護休業の申出の回数には,制限がない。
5 一人の対象家族についての介護休業の合計は,150日までである。

問題70 日本の公的医療保険の給付内容に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 療養の給付に係る一部負担金割合は,被保険者が75歳以上で,かつ,現役並み所得の場合には2割となる。
2 高額療養費の自己負担限度額は,患者の年齢や所得にかかわらず,一律に同額である。
3 食事療養に要した費用については,入院時食事療養費が給付される。
4 出産育児一時金は,被保険者の出産費用の7割が給付される。
5 傷病手当金は,被保険者が業務上のケガで労務不能となった場合に給付される。

問題77 生存権に係るこれまでの最高裁判例の主旨に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 厚生労働大臣の裁量権の範囲を超えて設定された生活保護基準は,司法審査の対象となる。
2 公的年金給付の併給調整規定の創設に対して,立法府の裁量は認められない。
3 恒常的に生活が困窮している状態にある者を国民健康保険料減免の対象としない条例は,違憲である。
4 生活保護費の不服を争う訴訟係争中に,被保護者本人が死亡した場合は,相続人が訴訟を承継できる。
5 生活保護受給中に形成した預貯金は,原資や目的,金額にかかわらず収入認定しなければならない。 


第31回の出題では・・・

「かかわらず」が含まれる選択肢はすべて間違い

となっています。

必ず間違いになるかどうかは問題のつくり方によりますが,少なくとも「かかわらず」が含まれた選択肢は,気を付けなければならないものであることは間違いないです。


<今日の一言>

問題70では,「一律に」までが加わっています。

正解を見つけ出す勘は,問題を解くことで養われます。
過去問を解くことの意味はここにあります。

別な言い方をすると,こういったことを意識しないで,過去問を解くのはあまり意味のない勉強法です。注意が必要です。

正解にたどり着くには,基礎的な知識に加えて,問題を解く力があると盤石になります。
多くの問題では,消去法を使って答えを見つけ出すからです。

一つでも多く消去できることで,正解に大きく近づきます。

2019年2月17日日曜日

「あと数点の壁」を超える勉強法~次回必ず合格するために・・・

国試合格の前には「あと数点の壁」が大きく立ちふさがっています。

「あと数点の壁」とは,ボーダーラインから2・3点差で不合格になることを指します。

第30回は99点がボーダーライン(合格基準点)でした。第30回では,90点台後半での不合格が「あと数点の壁」です。

まずは大前提です。

合格基準は6割程度です。問題の難易度などによって調整されます。

そのため。点数で考えるとわかりにくくなるので注意です。

合格基準が6割であるならば,合格基準点もそれに合わせて補正してとらえる必要があります。

合格基準点が一番低かったのは「魔の第25回」の72点です。

90点の0.8です。

この係数が自分の自力を知るうえで大切です。

自分の点数を0.8で割ります。

75点だった人は,93.6点ということになります。

合格基準点が90点程度になる難易度の問題だった場合は,93・4点取れる実力があったという意味です。

「あなたは半分も得点できなかったのに合格したのでしょう」という批判は的外れであることがわかります。

合格基準点が一番高かったのは,第31回の99点です。

90点の1.1です。

自分の点数を1.1で割ります。

97点だった人は,88.2点ということになります。

合格基準点が90点程度になる難易度の問題だった場合は,88.2点の実力だったということです。

第31回国試が何点になるのかはわかりませんが,90点が合格基準点であると仮定します。
89点では不合格になります。

昨年は97点も取れたのに,今年は89点しか取れなかった。

なぜなのたろうと思うでしょう。

昨年の点数が今年取れていたら合格していた。

と思うこともあるでしょう。

国試の難易度は常に上下しています。

そのため合格基準点をもとに自分の点数も補正することが必要です。

何度も受験すると,自分の点数も上下します。

何度も受験された経験のある方は,先ほどの補正方法で自分の点数を計算してみましょう。

そうすると,常に88~89点あたりの点数になるのではないでしょうか。

不本意ながらも不合格になると「知識が足りなかった」と思うでしょう。

確かに合格に必要な知識量は必要です。
しかし,知識を増やして再受験されてきたと思います。
何度も受験されてきた人は,知識が不足していたとは思いません。


あと数点の壁を超える勉強法

多くの人は,後から落ち着いて見たら解けた問題があると思います。

それが国試会場で解けなかったことが,「あと数点の壁」の正体です。

後から落ち着いて問題をみても正解できる問題がないという人は,本当に知識不足です。
そのタイプの人は,知識をつける勉強が必要です。

後から落ち着いてみたら正解できた問題があって,それが正解できていれば合格できたという人は,絶対に知識不足ではありません。

自分がこのタイプに当てはまる人は要注意です。

今までと同じ勉強法では,次回も「あと数点の壁」に泣く可能性が高まります。
この「あと数点の壁」を自分なりに分析することが大切です。

多くの場合は「うっかりミス」でしょう。
うっかりミスは,知識不足でも起きます。

しかし国試は深い知識が求められるような出題はしません。

「わかったつもり」が危険です。

これから1年かけて,「わかったつもり」ではなく,得点できる知識にしていきましょう。

勉強法を見直すことで,必ず「あと数点の壁」は超えられます!!

私たちチームfukufuku21は,本気で資格取得を目指す方の応援団です。

2019年2月16日土曜日

取れる問題は確実に得点すること!~しかしそこにはトラップが・・・

社会福祉士の国家試験は,平成元年から実施されて,平成31年2月現在までに31回実施されています。

年度によって,若干の上下はありますが,合格率は25~30%の範囲です。

国家試験の実施機関である「公益財団法人社会福祉振興・試験センター」は,合格基準点の根拠を明らかにしていません。しかし合格率が合格基準点を決めるときのファクターになっていることは間違いありません。

そこで,今回は合格率の視点で合格できる勉強方法を考えてみたいと思います。

合格率を25%と考えてみると,受験者の4人に1人が合格する試験です。
倍率で言い換えれば,約4倍ということになります。

第31回国試は,第30回に比べて速報値では受験者数が2,000人ほど減少しています。第30回もその前年に比べると2,000人減少しています。

2年連続で2,000人ずつ減少していることになります。

福祉系大学の定員充足率がどうなっているのはわかりませんが,受験者の減少は充足率や社会情勢の変化によって,受験者数が減少したというよりも,第30回からの受験料値上げなどが影響しているように思います。

勉強しないで受験するいわゆる記念受験組が受験を避けている結果だと考えられます。

さらに,第30回国試では,第29回よりも2,000人合格者が増えていることから,例年の合格率なら不合格になって第31回に再受験することになっていた人がいなくなったと考えられます。

上位25%が合格するという構図が変わらなければ,問題の難易度が同じであれば,受験者数が減った分,間口は小さくなります。

そのため合格基準点も上がる可能性もあります。

しかし,合格が難しくなるかと言えば,そうでもありません。

なぜなら世の中には「10月から過去問を3回解けば合格できる」といった情報にあふれているからです。

「10月から過去問を3回解けば合格できる」と思っている人は,不合格組に入る確率が高いです。

なぜなら,第31回国試問題の文字数は若干多くなったといえども,日本語的な言い回しの不自然さで消去できる問題は少ないので,基礎力がないと高い得点が取れないのです。

さて,今日の問題です。

第31回・問題67 社会福祉法に定める福祉に関する事務所(福祉事務所)の組織と業務に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 福祉事務所の指導監督を行う所員及び現業を行う所員は,都道府県知事又は市町村長の事務の執行に協力する機関である。

2 現業を行う所員は,援護,育成又は更生の措置を要する者の家庭を訪問するなどして,生活指導を行う事務をつかさどる。

3 厚生労働大臣の定める試験に合格しなければ,社会福祉主事になることができない。

4 福祉事務所の長は,福祉事務所の指導監督を行う所員の経験を5年以上有した者でなければならない。

5 福祉事務所の指導監督を行う所員及び現業を行う所員は,社会福祉主事でなくてもよい。


正解は2です。

この問題の難易度はそんなに高くはないかもしれませんが,正解にたどり着くのはいわゆる消去法を使った人が多かったと思います。

つまり答えがすぐ分かりにくい問題であるということです。

国試問題150問のうち,7割程度がその手の問題です。

こういった問題は,試験委員が仕掛けたトラップにはまらないことが何よりも大切です。

試験委員が仕掛けるトラップとは,見間違い,勘違いを誘うことです。
人によっては「引っ掛け」と呼ぶ人もいるでしょう。

この問題にもトラップが仕掛けられています。

選択肢1は「協力」がトラップです。。
参考書には「協力機関」「補助機関」と書かれています。この問題では「機関」はついていません。

たった2文字がついていないだけで,うっかりミスを誘います。

何度も繰り返して勉強したはずなのに間違います。
どんなに勉強しても,国家試験の独特の緊張感の中では,うっかりミスは起きます。

もともと国家試験はそのように作られているので,当たり前だと言えます。


<今日の一言>

国家試験は,成績の上位25~30%が合格できる試験であるとするなら,今日の問題のようなタイプの問題でミスすることは致命的となりかねません。

日常生活でも,何かあるとあわててしまうような人は要注意です。

試験委員の仕掛けたトラップにはまらないように,慎重に慎重に問題を読むことが大切です。

2019年2月15日金曜日

国試問題から学ぶ社会福祉士に求められるスキル~第32回国試に備えて~

社会福祉士の国家試験は,平成29年度国試から2月第一週の日曜日に実施されています。

第31回国試は,2月に実施されるようになって2回目の試験でした。

現役受験組にとって一週間勉強期間が延びているのは,とても有利なことだと思います。


第31回国試の特徴は,特にないのが特徴だと言えます。
その中で,あえて特徴を見出すとすれば,

思考力が求められる試験だった

と言えます。

現在の試験委員長の坂田周一先生の1回である第26回国試と第31回国試の「現代社会と福祉」を比べてみると一目瞭然です。


第26回
問題22 社会的排除と社会的包摂
問題23 福祉国家
問題24 ニーズ(必要)
問題25 我が国における虐待及び暴力(ドメスティック・バイオレンス(DV)を含む)に関する法律
問題26 在留外国人
問題27 女性の地位
問題28 福祉サービスの提供の仕組み
問題29 福祉政策に関する社会福祉法の規定
問題30 福祉に関する住まい
問題31 我が国の雇用保険制度

福祉政策を中心として問題が展開されています。
坂田体制になった第26回以降では,これに近い構成が続いていました。

第31回
問題22 「人間の安全保障」
問題23  福祉社会づくり
問題24 イギリスにおける福祉政策の歴史
問題25 「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(内閣府)
問題26 ヘイトスピーチ解消法
問題27 世界幸福度報告書
問題28 日本における性同一性障害や性的指向・性自認
問題29 育児・介護休業法
問題30 社会福祉法
問題31 日本の最低賃金制度

第26~30回と違って,現代社会の問題を理解することが求められる問題で展開されています。

センター試験の「現代社会」に近づいてきているように思います。

これが特に特徴のない第31回国試の特徴と言えるでしょう。


ソーシャルワーク専門職のグローバル定義
ソーシャルワークは,社会変革と社会開発,社会的結束,および人々のエンパワメントと解放を促進する,実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義,人権,集団的責任,および多様性尊重の諸原理は,ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論,社会科学,人文学,および地域・民族固有の知を基盤として,ソーシャルワークは,生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける。
この定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい。

ソーシャルワークは,今までややもすると個別援助に偏りがちだったものを社会改革をも視野に入れたものとして位置づけたグローバル定義の意図に沿ったものであると言えます。
第31回国試は,他科目でもグローバル定義を念頭に置いた出題がなされています。
現代社会もその一環であると考えるのが自然でしょう。

第31回の1回だけを見て,今後も同様になるかはわかりません。

しかし,時折このような出題をすれば,社会福祉士を目指す人は,社会の動きに目を向けるようになることでしょう。


<今日の一言>

センター試験の「現代社会」の問題を見たことがありますか?

予備校などが発表する平均点では,受験生が苦労する様子がわかります。
本格的にこの科目を勉強した受験生よりも,もしかすると社会人の方が点数が取れるのではないかと思うほどです。

現代社会で発生していることの正しい理解が必要だからです。

第31回国試の「現代社会と福祉」の出題は,10問中6問が参考書等に書かれていないものの出題です。

このような出題をされると今までの勉強は何だったのだろうと思うでしょう。

しかしそれは他の受験生も同じです。

求められるは知恵です。知識の差は反映されにくいものと言えるでしょう。別の言い方をすれば「機転」とも言えると思います。

そのため,もしかすると勉強不足の人でも点数が取れるものだったかもしれません。

国試が終わった後の感想で「今年の問題は簡単だった」という人は,こういったタイプの受験生なのかもしれません。

勉強不足の人が点数が取れる試験というのは,寸暇を惜しんで勉強した人にとっては,許しがたいことかもしれません。

しかしそれはこの科目に限ったことです。勉強不足の人がほかの科目で高い得点をすることはできないでしょう。

国試の内容が少々変わっても,基礎力をつけることの大切は何ら変わるものではありません。

得点しにくい問題が多くなれば,合格基準点が下がるからです。

とはいうものの,何も手を打たないで手をこまねいているわけにはいきません。
社会問題に関連する新聞やニュースなどの報道には目を向けておくことも心がけましょう。情報が多い方が知恵を働かせることができます。しかしあくまでも「従」です。

まずは基礎知識をつけることが最優先です。知恵(機転)は,基礎力があってこそ活かされます。

2019年2月14日木曜日

国試であわてないためのコツ

国家試験問題は,同じような難易度のものでそろえられているわけではありません。

とても難しいものから,比較的簡単なものなどが程よく含まれています。

とても難しい問題があっても,比較的簡単な問題が同数あれば,難易度が相殺されます。
難しい問題,つまり正解者0の問題があっても,全員が正解する問題があればよいことになります。

難しい問題でペースを乱される実力通りの力を発揮することができないので注意が必要です。

合否を分けるのは,中間レベルの問題をいかに正解できるかにかかっていると言ってもよいでしょう。

第31回・問題5 高血圧に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 高血圧の診断基準は,収縮期(最高)血圧160 mmHg以上あるいは拡張期(最低)血圧90mmHg以上である。
2 本態性高血圧(一次性高血圧)は,高血圧全体の約50%を占める。
3 続発性高血圧(二次性高血圧)の原因の第1位は,内分泌性高血圧である。
4 高血圧の合併症に脳血管障害がある。
5 血液透析の導入の原因の第1位は,高血圧性腎硬化症である。

この問題が珍しいと思ったのは,今までの国試では,単に「収縮期血圧」「拡張期血圧」としか出題されてこなかったものが,(  )で,最高血圧,最低血圧と出題したことです。

ソーシャルワーカーにとって,難しい用語をわかりやすくクライエントに伝えるのは,とても重要な役割です。
そういったことを教えているように思いました。

さて,この問題の答えは,選択肢4です。

落ち着いて問題を読めば,答えはわかると思います。

しかしそう単純ではないのは,選択肢1があるからです。

「正常血圧をしっかり覚えていなかった」と思うと,試験委員の仕掛けたトラップにはまることになります。

今まで国試では,高血圧の診断基準は出題されたことはありません。

このような問題があると,「しっかり覚えていなかった」と思うかもしれません。

知識不足では合格をつかむことはできませんが,知識があってもこのような問題で正解するためには,落ち着いて問題を解くことが何よりも大切です。

そうしないと,試験委員の仕掛けたトラップに簡単にはまります。


<今日の一言>

国試問題はいつも

少しずつ同じで,少しずつ違う

このため5つの選択肢がすべてわかる問題は本当に少ないです。

簡単にわかってしまうと,合格基準点が大幅に上がってしまうので当然でしょう。

難しそうに見えても,一つひとつを見ていけば,実はそんなに正解するのに難しい難易度の問題は多くはありません。

このことから,強く実感するのは,確実に正解することの難しさです。

2019年2月13日水曜日

再受験で合格をつかむ:悪循環を断ち切ろ~

社会福祉士の国家試験の合格率は,20~30%です。
決して簡単な試験ではないことは明らかです。

介護支援専門員試験の方が合格率は低い,とおっしゃる方もいるでしょう。
しかし,合格率の比較では,試験の難易度を推しはかることはできません。

なぜなら,受験資格が違うからです。
介護支援専門員は,実務経験があれば受験できます。

社会福祉士は,大学などで受験資格を得るルートのほかに一定の実務経験を経た後に一般養成施設などで受験資格を得るルートがあります。

実務経験だけでは受験資格を得ることができません。

受験に挑む姿勢がまったく違うといっても良いでしょう。

介護支援専門員が行うケアマネジメントは,ソーシャルワークの一技法を取り出したものです。

別な言い方をすると,ソーシャルワークはケアマネジメントを包含するものです。

そのため,社会福祉士の方が広い知識と実践力が求められます。

試験も当然広範囲となります。

前置きはこの辺りにして,本題です。

何度もチャレンジしてもなかなか合格できないという人は多いと思います。

そういう方は,ぜひ勉強方法を変えてみませんか。

ずっと勉強を続けてきた努力はすごいことです。

努力は必ず結果に現われます。

しかし正しい努力ではないと,ほんとに欲しい国家試験合格という結果に到達するのは,難しいと思います。

まず「3か月間で,3年間の過去問を3回解けば合格できる」という幻想は捨てましょう。

アドバイスしてくれる人は,それで合格できたかもしれません。

しかし,それで合格できるなら,合格率が20~30%にはとどまらないでしょう。

結果が伴う正しい努力をすることが大切です。

努力の結果,不合格になるのは本当に辛いことです。

それを乗り越えた先には,国試合格があります。


得点につながる覚え方の例

間違った覚え方
1973年は福祉元年

正しい覚え方
福祉元年には,老人医療費無料化,高額療養費制度,物価スライド制などが導入された。

なお老人医療費無料は,第31回・問題126に出題されたように,70歳以上を対象としていました。

2019年2月12日火曜日

国試のメッセージ性を考える~第31回国試のアクション・リサーチの出題から

第31回国試は,平成31年2月3日に実施されました。

社会福祉士の国家試験は平成元年に始まったので,社会福祉士は平成時代とともに歩んできた国家資格だと言えるでしょう。

第31回国試では,問題84でアクション・リサーチが正解となりました。

第31回・問題84 社会調査に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 統計調査とは,社会事象を質的に捉えることを目的とした社会調査である。
2 市場調査とは,行政の意思決定に役立てることを目的として市場の客観的基礎資料を得るための社会調査である。
3 世論調査とは,自治体の首長の意見を集約するための社会調査である。
4 アクションリサーチとは,特定の状況における問題解決に向けて調査者が現場に関与する社会調査である。
5 センサスとは,企業の社会貢献活動を把握することを目的とした社会調査である。

正解は,選択肢4です。

アクションリサーチが今まで出題されていたのは,出題基準では「6.質的調査の方法」でした。

それが今回は,「1.社会調査の意義と目的」で出題されました。

ここに試験委員のメッセージ性があるように感じます。

「社会調査の基礎」を苦手にしている受験生は多いです。
現場実践になじみがないからでしょう。

「社会調査はソーシャルワークと親和性があることに気が付いてほしい」というメッセージ性があったのではないでしょうか。

国試で「1)社会調査の意義と目的」から出題されたのは,第29回と第31回の2回のみです。

第29回では,

社会踏査とは,社会的な問題を解決するために行われる調査である。

が正解となっています。

第29回と第31回の正解選択肢には共通するものがあるように感じます。


ソーシャルワークの一手法にはケースワーク(個別援助技術)があります。

ケースワークは,COS(慈善組織協会)の友愛訪問の活動から,リッチモンドが科学性を追求したところから発展してきたものです。
しかしソーシャルワークはケースワークだけではありません。

そのために,「ソーシャルワークのグローバル定義」では,マクロレベル(政策レベル)を重視しました。

そこにコミットするための手法が,アクション・リサーチや社会踏査などを通じたソーシャルアクションです。


<今日の一言>

国試には,メッセージ性が存在します。
メッセージ性があるのは,ズバリ「正解選択肢」です。

そういった視点で国試問題を眺めてみると別な一面が見えてくることがあります。

メッセージ性とは,その問題を出題する意義です。

社会福祉士の国家試験は,社会福祉士に必要な知識,能力を問います。

もちろん基礎的な知識は欠かせませんが,記憶力に優れた社会福祉士を養成しようとしているわけではありません。

柔軟な思考と豊かな発想力も必要です。

2019年2月11日月曜日

第31回に出題された歴史問題~歴史の覚え方のヒント

多くの受験生は,歴史問題を苦手とします。

しかし歴史問題はいつも問われるポイントはいつも同じ。

覚える最優先は法制度ですが,歴史問題も解けると得点の底上げとなります。

今はまだ国試まで時間がたっぷりあるので,歴史も確認しておきたいと思います。

第31回に出題された歴史にかかわる問題

人体の構造及び機能並びに疾病
問題4 オタワ憲章

現代社会と福祉
問題24 イギリスの福祉政策の歴史(エリザベス救貧法,労役場テスト法,ギルバート法,新救貧法,国民保険法)

地域福祉の理論と方法
問題30 社会福祉事業法の題名変更

社会保障
問題53 医療保障制度の歴史的展開(健康保険法,国民皆保険,高額療養費制度,老人保健施設の創設,後期高齢者医療制度)

障害者に対する支援と障害者自立支援制度
問題57 障害者福祉の発展過程(国際障害者年,そのほかのものは歴史と言えるほど古くない)

相談援助の基盤と専門職
問題94 日本のソーシャルワークの発展に寄与した人物(仲村優一,竹内愛二,永井三郎,小河滋次郎,三好豊太郎)

第31回はこの6問です。

第30回をざっと数えると12問だったので,第31回は半分になっています。
第29回は13問でした。第31回の6問はここ3年間では最も少ないものです。

歴史をしっかり勉強してきた人は,拍子抜けしたのではないでしょうか。

第32回は,第31回と同じように出題するのか,第30回以前に戻るのかはわかりません。しかし先に紹介したように,問われるポイントは決まっているので,しっかり押さえておきたいものであることは間違いありません。


<今日の一言>

歴史が苦手だと思うのは,年号を覚えなければならない,と思うからではないでしょうか。
しかし,社会福祉士の国試は歴史の試験ではないので,年号がわからなければ解けない問題はほとんどありません。

大体いつの時代なのかがわかっていれば十分です。

年号を覚えることを優先するのではなく,それはどういったことだったのか,を意識して覚えていきましょう。

歴史問題は,出題されるポイントは同じですが,過去3年間に出題されたものがすぐ再登場することは少ないです。

参考書で覚えていくことが欠かせません。

2019年2月10日日曜日

基本を押さえることの重要性

社会福祉士の国家試験の合格率は,約20~30%の間で推移しています。

合格ラインは,問題の難易度による調整だけではなく,合格率を上下させることで調整していることがわかります。

前回紹介したように,問題には難しいものから簡単なものがあります。

分類すると以下のようになります。

①極めて難しい
②やや難しい
③普通
④比較的簡単
⑤簡単


合格ラインを超えるためには,出題の大部分を占める

②やや難しい
③普通
④比較的簡単

を攻略が欠かせません。

社会福祉士の国試には,精神保健福祉士の国試でも出題される「共通科目」と社会福祉士だけに出題される「専門科目」があります。

大学によっては,介護福祉士,社会福祉士,精神保健福祉士の3つの受験資格が得られるところもあります。

3つの国試を受験する人のために,介護福祉士は別日程,精神保健福祉士の専門科目は土曜日の午後,社会福祉士と精神保健福祉士の共通科目は日曜日の午前,社会福祉士の専門科目は日曜日の午後に実施されています。

共通科目と専門科目の内容が重なって出題されることはほとんどみられません。
しかし第31回国試では,そのような出題が一問ありました。

今回は,ここから基本を押さえることの重要性を考えたいと思います。

第31回・問題42 福祉行政における都道府県の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 老人福祉法の規定により,特別養護老人ホームに入所させる権限を持つ。
2 介護保険法の規定により,介護保険の保険者とされている。
3 「障害者総合支援法」の規定により,介護給付の支給決定を行う。
4 児童福祉法の規定により,障害児入所施設に入所させる権限を持つ。
5 知的障害者福祉法の規定により,障害者支援施設に入所させる権限を持つ。


第31回・問題136 医療型障害児入所施設に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 医療法に規定する病院として必要な設備を設けることとなっている。
2 環境上の理由により社会生活への適応が困難になった児童が入所対象である。
3 児童の遊びを指導する者を配置しなければならない。
4 障害児入所給付費に関する事務は市町村が行っている。
5 虐待を受けた児童ではないことが入所の要件となっている。


問題42は「福祉行財政と福祉計画」,問題136は「児童と家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」で出題されたものです。

「②やや難しい」ものに分類されるのではないでしょうか。

問題42の正答は,選択肢4
問題136の正答は,選択肢1


障害児に関する役割は

入所支援 → 都道府県
通所支援 → 市町村

とても複雑で覚えにくいものなので,共通科目でも専門科目でも出題されたのでしょう。

理解がしっかりできていた人は2点ゲットできました。逆に理解できていないと2問とも落としてしまいます。

問題136は,医療型障害児入所施設の出題です。医療型障害児入所施設のサービス内容がわかっていないと正解できないように見えますが,選択肢4を消去できると,

1 医療法に規定する病院として必要な設備を設けることとなっている。

が残ります。

問題136を正解できるためには,選択肢4を消去することが必要です。

そうすれぱ,医療型障害児入所施設がわからなくても,正解選択肢が残ります。

障害児入所支援が都道府県の役割でなければならない理由があります。

通所は親と一緒にいることができます。入所は親と引き離されることを意味します。
そのため,通所に比べて,入所判定はより高い専門性が求められます。

専門性の高いものは,広域的自治体である都道府県の役割です。


<今日の一言>

都道府県の役割と市町村の役割は,法制度に関連する科目では,必ず出題されます。

こういったところを正確に押さえていくことで,得点力は上がります。

国試では,理解しにくいところがねらわれます。

国試合格に欠かせないのは,確実な知識です。

基礎力を備えることが合格の決め手になるのは,いつも同じです。

時事問題のようなものが出題されると何をどのように勉強したらよいかわからなくなるかもしれません。

もちろんそのような問題でも,正解できないよりも正解できるほうが良いです。
しかし,合格には,今日の問題のような問題で確実に得点できる基礎力をつけることが何よりも大切です。

国試の大部分を占めるのは,

②やや難しい
③普通
④比較的簡単

です。

これらの攻略が欠かせません。

2019年2月9日土曜日

直近の国試から学ぶべきもの

国家試験の問題は,すべて同じ難易度ではありません。

問題によって

①極めて難しい
②やや難しい
③普通
④比較的簡単
⑤簡単

に分類することができます。

これがアンケートによる調査の結果なら「順序尺度」となります。

傾向はみることはできます。

しかし,主観に基づくものなので,これによって国試の難易度自体を推測することはほとんどできません。

なぜなら,AさんとBさんとCさんでは,同じく「①極めて難しい」にチェックしても,それぞれ程度が違います。

試験後にSNSで飛び交う感想は,あくまでも個人の感想にすぎません。

試験センターが公表している情報は,受験者数(都道府県別),合格者数(都道府県別),合格率,合格基準点,年代別の合格者数だけです。

しかし試験センターは公表していない受験者に関する膨大な情報を蓄積しています。
その一つが国試の問題別正答率でしょう。

私たちが推測するのは,そのデータを参考にして,150問全体の平均正答率を60%程度になるように出題しているのではないかということです。

全員が正解できない問題があっても,全員が正解できる問題がそれと同数であれば,打ち消されます。

①を多く出題しても,⑤が同数あれば,良いということになります。

試験後の感想で言えば,

「今年は難しかった」という感想は,①に着目したもの
「今年は簡単だった」という感想は,⑤に着目したもの

とも言えるのではないでしょうか。

試験センターが今までの受験者のデータを分析した結果,①~⑤に振り分けて出題しても,それは試験センターの予測によるものなので,受験者の出来具合によって予測からずれます。想定と違う結果になることは,世の中ではよくある話です。

そのため,合格基準点を上下させることでバランスを取ることになります。

受験者側の視点から考えると,⑤が確実に正解できれば,①が正解できなくても問題はありません。

第31回国試で,「①極めて難しい」と受験者が感じた問題の一つには

以下の問題ではないでしょうか。

第31回・問題20 社会的行為の主観的意味を理解することを通して,その過程及び結果を説明しようとする考え方を表す用語として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 合理的選択理論
2 主意主義的行為
3 理解社会学
4 コミュニケーション的行為
5 社会システム論

ナニコレ?

という感じでしょう。

社会的行為は,今までの国試では,ウェーバーとハーバマスが出題されてきました。しっかり勉強した人はその内容を覚えたことでしょう。

しかしまったく違う内容が出題されたことで驚きとともに勉強不足を感じたのではないでしょうか。

実は,この問題は,ウェーバーの理解社会学を述べたものです。

社会学を学んだことのある人は,理解社会学の内容はわからなくてもその言葉は聞いたことがあるものです。

しかし,多くの受験者はそうではありません。

この問題が出題されたことで,これから出版される参考書の中には,

ウェーバーは,理解社会学を提唱した。
ジンメルは,形式社会学を提唱した。

といった内容を付け加えるものもあるでしょう。

第32回以降に受験する人は念のために勉強しておくのが無難です。

しかし,忘れてはいけないのは,「①極めて難しい」は,解けなくてもよいと思って出題しているものです。

受験者が覚えておかなければならない本筋の部分から外れているものとは違います。

国試合格のために必要なことは,「①極めて難しい」が得点できることではなく,「③普通」「④やや簡単」の問題を確実に正解する確実性です。


<今日の一言>

第31回国試を受験された方は,国試問題は見たくもないと思います。

もし不合格になったら,その時は問題をぜひ振り返ってみると良いと思います。

多くの人は,よくよく問題を見てみたら正解できる問題があると思います。しかもそれが正解できたら合格できていたということもよくある話です。

問題の難易度は,5つの選択肢の相互作用によって生まれます。

知識をつけるだけでは,また同じトラップにはまってしまう可能性は高いです。

同じ勉強法をしていると同じ結果になります。

学習部屋では,マイナスのスパイラルをプラスのスパイラルに変えられるように問題の目の付けどころを提案していきたいと思います。

必要以上に知識を広げようと思うとあいまいな知識が増えるおそれがあります。
数は少なくても,確実な知識が必要です。

2019年2月8日金曜日

第31回国試で出題された人物(外国編・日本編)

今回は,国試対策として,効率的に人名を学び,得点力を上げるポイントを考えたいと思います。

第31回国試で出題された人物

現代社会と福祉
問題23 ポランニー 初
    ブルデュー 第24回に出題
    ホネット 初
    デュルケム 第8・11・12・13・18・19・26回に出題
    バージェス 第3・13・18・19回に出題

相談援助の基盤と専門職
問題94 仲村優一 第12・14・20・25回に出題
    竹内愛二 第8・9・15・19・30回に出題
    永井三郎 初
    小河滋次郎 第3・5・10・15・17・26・29回に出題
    三好豊太郎 初

相談援助の理論と方法
問題98 ケンプ 初
問題100 ピンカス 第11・21・26・27・30回に出題
問題102 ホリス 第4・6・9・15・16・19・21・23・24・25・27・28回に出題 
問題105 ブラッドショウ(ブラッドショー) 第3・17・21・27回に出題

福祉サービスの組織と経営 
問題120 三隅二不二 第28回に出題
問題123 ドナベディアン 第18回に出題

常連さんであっても,第30回に続いて,2回続けて出題されていないことがわかると思います。

初めて見る名前が出題されるとドキドキが高まりますが,この中で名前と実績がわからないと解けないのは問題94だけです。

正解は,一見さんの三好豊太郎でした。三好豊太郎は,1924年の著書「『ケースウォーク』としての人事相談事業」(1924)でケースワークを紹介しています。

第31回国試では,リッチモンドは出題されませんでした。

これは「ソーシャルワークのグローバル定義」も影響しているように思います。
グローバル定義では,「地域・民族固有の知を基盤とする」とされています。

ソーシャルワークと言えば,COSを起源とするケースワーク,セツルメントを起源とするグループワークがあります。いずれも欧米が起源です。

リッチモンドが『ソーシャル・ケース・ワークとは何か』を発刊したのは,1922年のことです。
その2年後には三岸が前述の著書を発刊しています。ソーシャルワークは欧米生まれかもしれません。しかし草創期からわが国でも研究し,発展させてきた人がいることを知ってもらい,「地域・民族の固有の知」に目を向けてもらいたいという試験委員の思いが伝わるように思います。

なぜそう思うかと言えば,一見さんであるにもかかわらず,正解選択肢として出題したからです。

正解選択肢には,試験委員の強いメッセージが込められているのです。


<今日の一言>

相談援助の基盤と専門職では,旧カリキュラム時代の「社会福祉原論」で出題されてきたものが近年出題されるようになってきています。

第30回・問題93も同じタイプの問題です。「社会福祉原論」は,現在では「現代社会と福祉」と「福祉行財政と福祉計画」に受け継がれています。

しかし「現代社会と福祉」は福祉政策を中心に学ぶ科目になり,社会福祉原論で出題されていた「福祉理論」は,久しく出題されて来ませんでした。それを補完するように「相談援助の基盤と専門職」で福祉理論につながるような出題をするようになったのではないかと推測しています。

今後は,この科目は今まで以上に重要な位置づけになっていくでしょう。


この科目以外は,人名そのものを覚えておかなければならない問題はほとんどありません。

あえて言えば,人名を覚えておかなければならないのは,第31国試では出題されなかった,石井十次(岡山孤児院),石井亮一(滝乃川学園),留岡幸助(家庭学校),野口幽香(双葉幼稚園)くらいでしょう。

人名は多くの人が覚えるのに苦労しますが,本当に覚えたいのは,多くの場合,その実績内容です。

2019年2月7日木曜日

第31回国試を振り返る

毎年国試は,少しずつ形を変えて出題されます。

同じようには出題してくれません。

そこが難しいところです。

第31回の問題を紹介します。

第31回・問題23 福祉社会づくりに関わる次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ポランニー(Polanyi,K.)の互酬の議論では,社会統合の一つのパターンに相互扶助関係があるとされた。

2 ブルデュー(Bourdieu,P.)が論じた文化資本とは,地域社会が子育て支援に対して寄与する財のことをいう。

3 ホネット(Honneth,A.)が論じた社会的承認とは,地域社会における住民による福祉団体に対する信頼と認知に関わる概念である

4 デュルケム(Durkheim,E.)が論じた有機的連帯とは,教会を中心とした共助のことをいう。

5 バージェス(Burgess,E.)が論じた同心円地帯理論は,農村の村落共同体の共生空間をモデルにしている。

この問題でのいわゆる一見さんは,「ポランニーさん」と「ホネットさん」です。

常連さんであるデュルケムさんを出題してくれているので,そこを手掛かりにすると,第31回国試の特徴である「すべての選択肢の入れ替え問題」ではないことがわかります。

有機的連帯は,違った性質をもった個人の集まりです。時には共助もあるでしょう。

しかし「教会を中心とした」であれば,信者の集まりと考えられるので,どちらかと言えば「機械的連帯に違いのでは?」と見当をつけられます。

入れ替え問題ではないと考えられるので,人名を取って,問題を作り変えます。

1 互酬の議論では,社会統合の一つのパターンに相互扶助関係があるとされている。

2 文化資本とは,地域社会が子育て支援に対して寄与する財のことをいう。

3 社会的承認とは,地域社会における住民による福祉団体に対する信頼と認知に関わる概念である。

4 有機的連帯とは,教会を中心とした共助のことをいう。

5 同心円地帯理論は,農村の村落共同体の共生空間をモデルにしている。

このようにみると,選択肢1の答えはわからないので,▲。

文化資本は,過去に数回出題されているように,家が持っている文化的財,たとえば「親の知識」,「家にある本」,「優雅な所作」などをいいます。親から子,子から孫へと受け継がれていきます。

社会的承認の意味はわからなくても,福祉団体に対するものだけを指すとは思えません。

同心円地帯理論は,都市が発展していくときの様子です。都心を中心として,そこからの距離が大体同じ地帯では,同じような人たちが居住する,といったものです。

現行カリキュラムではほとんど出題されていませんが,旧カリキュラムの「社会学」では,同心円地帯理論,スプロール現象などシカゴ学派の理論がよく出題されたものです。

同心円地帯理論がわからなくても,アメリカ人が農村の村落共同体に興味をもつことはあまり考えられないと思います。

そんなことで,よくわからないけれど,選択肢1が残るのです。

改めて,選択肢1をよく見てみると,ソーシャルキャピタルの基盤である「互酬性」「信頼性」,そこから生まれる紐帯(ちゅうたい)を述べているのではないかと思います。


<今日の一言>

こんな問題は,小さなヒントを手かがりにして考えることの重要性を実感した問題です。

ただし,この問題のようなものは正解率が低いと考えられるので,正解できなくても気にすることはありません。

因みに理論系の問題で人名を出しているのは,人名を入れないと,問題の正確性が担保できないという理由もあります。

たとえば,限界集落の提唱者は出題されたことはありませんが,大野晃先生という方です。
限界集落は大野先生の定義で固まっているので名前がなくてもあってもそれほど問題はありません。

しかし,理論は言ったもの勝ち。様々な人が様々なことを言います。絶対に覚えておきたいのは,人名ではなくその内容です。つまりポランニーさんやホネットさんではなく,述べた内容を特に意識して勉強することが大切です。

ただし,この人たちが出題されるのは,第32回ではなく,近くても数年先でしょう。

第30回で出題された人物(外国人)
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/02/blog-post_18.html

一見さんが第31回で出題されていないことがわかります。


2019年2月6日水曜日

第32回国試に合格できる勉強法

第31回国試の出題傾向

国試問題の文字数は,第24回の約57,000字をピークとして,その後毎年どんどん減らしてきましたが,やっぱり無理があったのでしょう。第31回国試問題の文字数は,前回よりも約4,000字増えました。

問題を読むだけで精いっぱいだった,という感想が聞かれるのはこの理由もあるでしょう。

極端な増加ではないですが,言い回しの工夫ができるので,試験委員は問題を作りやすくなったのは間違いないでしょう。

文字数を制限された中で間違い選択肢をそれっぽくつくるのは極めて難しいことです。
実際に自分で問題をつくってみるとわかります。

文字数が長い問題は,慎重に読まなければ引っ掛けられる率が高くなります。

近年出題されていた「セット入れ替え作問法」はほとんど見られませんでした。

その反面,近年の社会福祉士の国試ではほとんど見られなかった,すべての選択肢を入れ替える問題が復活しています。

「セット入れ替え手法」よりもすべての選択肢を入れ替える問題の方が,問題の難易度が下がります。そして試験委員は問題をつくるのが楽です。

問題の文字数を増やして難易度を上げて,すべての選択肢を入れ替えることで難易度を下げる

という2つの戦略が取られています。

文字数だけに着目すると,第31回とほぼ同じ文字数だったのは,第28回です。

第28回は,2つ選ぶ問題が今までの中で最も多い20問でしたが,第31回ではほぼ同じ21問です。第30回は11問しかなかったので,実に10問も増えたことになります。

2つ選ぶ問題は1つ選ぶ問題より正解率は半分となります。

第28回問題と違う点は,第28回ではほとんど見られなかったすべての選択肢を入れ替える問題が多く見られることです。

このように,国試は意図的に様々な要素を取り入れて出題しています。

ボーダーラインの予測は決して単純なものではありません。そしてそこに試験センターの恣意が加わります。

果たして,第31回の合格基準点はどのようになるでしょうか。


さて,第32回に限らず,国試に合格するための基本です。

丸暗記法は国試では思うようなパフォーマンスが発揮できないので,要注意です。

丸暗記の勉強法とは,参考書の文章をノートに書き写すといったものです。

国家試験問題は,法制度の知識が求められる問題と理論の知識が求められる問題に大別されます。

法制度は,丸暗記でも対応可能ですが,書いて覚えるということができるほど覚える量は少なくないので,すべてを書いて覚えることはできません。おそらく途中で挫折します。
この辺りの勉強は,多くの方が語っているので,それを参考にしながら,早い時点で自分なりの勉強法を確立するようにしましょう。

理論系は,必ず自分の頭で理解することが必要です。

前回話題にした問題です。

第31回・問題98 ケンプ(Kemp,S.)らによる「人―環境のソーシャルワーク実践」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 環境を「知覚された環境」,「自然的・人工的・物理的環境」など5種に分類した。
2 ソーシャルネットワークの活用に対し,一定の制限を加えた。
3 クライエントが抱える欠損の修正による問題解決に主眼を置いた。
4 クライエントの環境よりもクライエント自身のアセスメントを強調した。
5 支援者とクライエントは,それぞれ異なる基盤に存在するものと捉えた。

こんなものは勉強したことがない,困った,と思った人もいるでしょう。

無力感にさいなまれるかもしれません。

ケンプは知らなくても,「人―環境のソーシャルワーク実践」という著書名(?)が明示されているので,システム理論のことを述べているものだと想像することが必要です。

システム理論は,クライエントは独立した存在ではなく,クライエントとクライエントを取り巻く環境との交互作用に着目するものです。

正解は,選択肢1ですが,これを正解にするのはとても難しいです。

しかし,システム理論を理解していれば,選択肢1以外の選択肢は消去できるでしょう。その結果として選択肢1が残ります。


<今日の一言>

初めて出題されるものは,深掘りしません。深掘りした問題を出題するなら,多くの人が解けない問題として計算したうえでの問題です。

第31回国試では,問題26「ヘイトスピーチ解消法」などがその例です。

このような問題があると「どんな勉強をしたら合格するのだろう」と不安になるかもしれません。しかし,基本をしっかり押さえていけば必ず合格基準点を超えます。

2019年2月5日火曜日

第32回国試のボーダーライン(合格ライン)を予測する

第31回国試が終わり,いよいよ第32回国試に向けてスタートを切りました。

第31回国試のボーダーラインは合格発表がなければわかりません。

SNSなどでは,難しかった,易しかったなど,様々な情報が飛び交います。

それはあくまで主観。主観と結果(得点)は異なります。

勉強をしてきた人は,解けなかった問題が頭に残るので,難しく感じます。
勉強が足りなかった人は,それでも解けた問題が印象づけられるので,簡単に感じます。

ネット情報は有難いものも多いですが,社会福祉士の国試の後の情報は気にしないことです。

さて,第32回国試のボーダーライン予測です。

第31回国試を解いた感じでは,基礎的知識が求められるのは今までと変わっていません。

問題を見ると,参考書などに書かれていないものも多くあり,何を勉強したらよいのかわからなくなる人もいるでしょう。

しかしそれは受験生みんな同じこと。

基礎的な力をもっていれば,合格基準点は超えられます。

試験センターは,受験生の解答の膨大なデータを持っています。

どんな問題なら,どのくらいの人が正解できるかも知り尽くしているでしょう。
ポーターラインが過去最低の第25回と過去最高の第30回はそのためのデータとなったはずです。

しかし想定外のこともあるでしょう。
その時は,ボーダーラインが上下します。

合格するために必要なことは,しっかり理解しながら勉強することです。

第31回国試の問題98は,ケンプの問題です。

ケンプに目が行くと難しいですが,「人と環境」,つまりシステム理論に着目すると,選択肢1以外はすべて消去できます。

こういった問題で得点を重ねられる人は,ボーダーラインを大きく超えるでしょう。

国試のボーダーラインはいつも同じ6割程度です。

第32回も試験センターは,6割ラインになるように意図した出題をします。
受験者の問題の出来具合によって上下するだけです。

それが試験後にドキドキさせることになりますが,基礎力を蓄えた人は必ずボーダーラインは超えられます。

確実に得点できる問題がいかに多くあるかが大切です。

1年かけて,これらを改めて追究していきたいと思います。

第32回国試を受験される方は,ぜひお付き合いください。

2019年2月4日月曜日

第32回国試へのカウントダウンが始まりました

第31回国試は,2/3(日)に行われました。

受験された方はお疲れさまでした。

見たこともない問題もあったことでしょう。

毎年のことですが,国試が終わるとさまざまな噂が飛び交います。
そういったものには耳を傾けることなく,3/15の合格発表を待ちましょう。

第32回国試を受験される方は,いよいよカウントダウンが始まりました。

今の時点では国試問題はネットに掲載されていませんが,2/4(月)中には,ソ教連のホームページ上で公開される予定です。

勉強があまり進んでいなくても,問題を解いてみるとよいと思います。

とても難しく感じると思います。
それが国試です。これから勉強していくとそれほど難しく感じないと思います。

過去問が発売されてから解説を読むと「なるほど」と思うことでしょう。

国試はいつも難しいのです。

その感覚を絶対に忘れないことが大切です。

秋以降には,模擬試験も受験するでしょう。

その時も同じ感覚(難しい)を持つと思います。
しかし模試と本試験の問題は違います。

本当の国試問題を初見で解く機会は,たった一回きりです。

その機会を大切にしましょう。

特に,注意すべきなのは,新しい年度の参考書が発売になってから,過去問を解く場合です。

新しい年度の参考書は,第31回国試で出題された内容を含んでいます。

それを勉強してから第31回国試を解くと,初見であっても本当の初見ではなくなっています。

そうなると,第31回を受験した人と同じ状況ではなくなっています。

国試はいつも難しいものです。どんなに勉強しても知らないものが出題されるからです。

しかしそれは本筋のものではないものも含まれています。

第32回国試へのカウントダウンの始まりです。

1年は本当にあっという間です!!

2019年2月3日日曜日

受験お疲れさまでした

第31回国試が終わりました。

お疲れさまでした。

今日はゆっくりお休みください。

第32回の国試を受験される方は,合格に向けての本格スタートです。

消去できる選択肢があると正解確率が上がる!!

例年の社会福祉士の国試は,正しいもの(適切なもの)を1つ(あるいは2つ)を2つ選ぶものです。

正しいものを1つ選ぶ問題の場合の期待値は,20%(5分の1)です。

部分点がない記述式の問題の場合,答えがわからない問題では絶対に正解できません。

しかし社会福祉士の国試の場合は,まったくわからない問題でも25%の確率で正解することができます。

消去できる選択肢が1つでも2つでも多くなれば,正解確率は上がります。

150問すべてが1つ選ぶ問題だった場合では

すべての問題で

1つ消去できた場合 37点(正解確率20%)
2つ消去できた場合 49点(正解確率33.3%)
3つ消去できた場合 75点(正解確率50%)

です。

3つ消去できたということは,2つ残った状態ですので,2つ選ぶ問題なら正解できています。

第25回に2つ選ぶ問題が突如現れましたが,最も多かったのは第27回の20問で,最も少なかったのは第30回の11問です。

少なくても10問程度は2つ選ぶ問題はあると考えられます。

3つ消去できれば,75点プラス10点=85点となります。

実際には,4つ消去できる問題もあると思いますので,そういう問題の数だけ得点が高くなっていきます。

限りなく6割ラインに近くなります。

これらからわかることは,

消去できる選択肢が1つでもあれば正解できる確率が上がることです。

いくら勉強しても,わからない問題は存在します。国試は同じ表現では出題されないので,難しさが高まります。

それでも,しっかり思考して,消去できる選択肢があれば,正解確率は期待値20%から測定値(実際の得点)は,どんどん上がります。

わからない問題でも,粘り強く考えて,消去することができる選択肢を探しましょう。

あきらめたらそれで終わります。

答えはわからなくても,消去できる選択肢はあるはずです。


答えはわからなくても,消去できる選択肢を見つけられたら「ラッキー」と思いましょう。


ちゃんと勉強した人なら,消去できる選択肢を見つけられるでしょう。

もし,まったくのお手上げの問題だとしても,20%の確率で正解できます。

ラッキーが一つでも多くなることを期待しています。

健闘をお祈りしています。

※今日の問題はお休みします。


<追伸>

第25回国試では予告なしに2つ選ぶ問題が登場しました。

先に受験した精神保健福祉士の方からは変わった問題があったとは聞いていませんが,突然何が起きるかわかりません。

問題はくれぐれも慎重に読むようにしてください。

2019年2月2日土曜日

アクション・リサーチの目的

社会福祉士の国試は,国が考える社会福祉士のあるべき姿に従って出題されます。
養成カリキュラムがそうなっているので,国試も当然そうなるでしょう。

そこが実は国試突破のために重要なポイントでもあります。

専門科目の「社会調査の基礎」や「福祉サービスの組織と経営」などは難しい科目ですが,どちらも現行カリキュラムで加わった科目です。

これらの科目は,社会福祉士として絶対に押さえておかなければならないものでしょう。
それでは今日もアクション・リサーチに関する問題を紹介します。


第28回・問題89 アクションリサーチに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 研究対象について,非参与的に観察し研究を行うものである。

2 質的調査が用いられ,質問紙調査のような量的調査は用いられない。

3 目的は,科学的な因果関係の検証である。

4 計画,実施,事実発見の循環が,基本プロセスとして提唱されている。

5 調査を通じて得られた知見を実践活動と結び付けてはならない。


この問題は第28回のものなので,過去3年間の過去問で勉強してきた人でも何度も解いたものでしょう。

アクション・リサーチは,問題を改善するために,改善策を立てて実践することです。
たったこれだけの理解で多くの問題は解けます。


それでは解説です。


1 研究対象について,非参与的に観察し研究を行うものである。

これは間違いです。

研究対象について,非参与的に観察し研究を行うものは,「非参与観察」です。


2 質的調査が用いられ,質問紙調査のような量的調査は用いられない。

これも間違いです。

前回紹介したように,アクション・リサーチでは問題点を明らかにすることが欠かせません。

そのためにアンケートなどを実施することもあります。

「用いられない」という言い切り表現になっていることにも着目しましょう。


3 目的は,科学的な因果関係の検証である。

これも間違いです。

因果関係とは,「こうするとこうなる」ということです。
因果関係を調べるなら量的調査の縦断調査です。

縦断調査は複数回調査します。そのため因果関係を見出しやすくなります。

同じ量的調査でも,横断調査は1回きりの調査なので,相関関係は見出すことはできますが,因果関係を見出すことには限界があります。しっかり覚えておきましょう。


4 計画,実施,事実発見の循環が,基本プロセスとして提唱されている。

これが正解です。

アクション・リサーチは改善策を立てて実践します。そのためPDCAサイクルを用います。

PDCAサイクルは「福祉サービスの組織と経営」で出題されるものです。


5 調査を通じて得られた知見を実践活動と結び付けてはならない。

これは間違いです。

実践に活かしてこそアクション・リサーチです。


<今日の一言>

今日の問題では,「計画,実施,事実発見の循環が,基本プロセスとして提唱されている」という一風変わったものが正解になっています。

これをすぐ正解にすることはとても難しいものです。

今なら,参考書などにも書かれているので,全然難しく感じないことでしょう。

しかし,それはとても危険なことです。国試は,難しいです。

答えがすぐわかる問題はほとんどないと思っても良いでしょう。


模擬試験を受けた方は,模擬試験を受けた時のことを思い出しましょう。

とても難しかったのではないでしょうか。

それでも一生懸命に考えたら解けた問題もあったと思います。

模擬試験よりも本試験の方が明らかに点数が取りやすいです。

それは,模擬試験の受験者の得点分布を発表している団体の模擬試験の点数を見ればあきらかです。

第30回の国試の合格率は約30%でした。

例えばソ教連模試の得点を上位30%で区切ると,なんと70点程度のところに30%ラインが引かれます。

前年度のデータは今は持ち合わせていませんが,前年も同程度だったように思います。

第30回の合格基準点は99点でした。30点近く開きがあります。

これでわかるように,本試験の方が模擬試験よりも点数が取れます。

しかしそうであっても国試は難しいです。それを覚えておきましょう。

「あれだけ勉強したのに」と思います。

それでも落ち着いて消去法で答えをあぶり出していけば,答えは見つけられます。


答えがすぐわかる問題が多くなれば,第30回国試のように合格基準点が上がってしまいます。

考えても解けない問題が多ければ,第25回国試のように合格基準点が下がります。

誰もがすぐ解ける問題が出題されないのは,こういった理由です。

今まで勉強してきた人は,国試問題に真摯に向き合えば,難しく見えた問題でも答えが見えてきます。

それが今の国試の姿です。

ソーシャルワーカーは,多くの場合は一人で活動します。誰かがそばにいてくれる場面は,ライブ・スーパービジョンのような場面でなければあまりないでしょう。

難しい問題にぶつかっても,自分で考えなければなりません。

現場で働く方はいつも行っていることです。

国試でもその力を発揮しましょう。

難しい問題だからといって,思考を止めてしまったらそれでおしまいです。


今まで勉強してきた人は,国試問題に真摯に向き合えば,難しく見えた問題でも答えが見えてきます。


大丈夫! あなたならきっとできます!!


2019年2月1日金曜日

アクション・リサーチって何?~問題の出題意図を考える

皆さんが受験しようとしているのは,社会福祉士の国家試験です。

社会福祉士のあるべき姿を示すのが国試です。

「自分はこう考える」ではなく,国が考える社会福祉士像に合致させなければなりません。

社会福祉士としての素養を問うわけですから,出題される問題にはすべて意図があります。

どの科目であっても,それは貫かれます。
国試が始まった当初は,「あるべき姿」は明確なものではなかったかもしれません。

しかし現在は回を重ねるたびに洗練されてきています。

中には「変な問題だ」と思うものもあるかもしれません。
しかし,そんな評論家のようなことを思っても,国試合格のためには意味がありません。

「社会調査の基礎」は,現行カリキュラムで加わった科目です。
社会調査の知識は新しい社会福祉士像として必要だったからにほかなりません。

はっきり言うと,この科目を苦手としている受験生は多いです。
0点を恐れる人も多いかもしれません。

量的調査の検定のような問題ばかりなら0点になってしまうかもしれませんが,決してそんな領域ではありません。

得点できる領域も存在しています。

それが質的調査です。

さて,今日のテーマは「アクション・リサーチって何?」です。

言葉からイメージしにくいかもしれませんが,ほかの調査手法と大きく違う点は,調査の過程を通して,問題解決を図ることを重視することです。

そのため,調査手法には,PDCAサイクルが用いられます。

アクション・リサーチの「アクション」とは,PDCAサイクルのA(実行)を指しています。

問題解決の実行があってこそ,アクション・リサーチと言えます。

社会福祉士像に重なるところがあると思いませんか?

国試では,第23回,第27回,第28回の3回の出題なので,出題確率は33.3%ということになります。

確率面で言えば,第31回に必ず出題されるかどうかわからないものと言えますが,社会福祉士として覚えておかなければならない領域であることは間違いありません。

それでは今日の問題です。

第22回・問題82 アクション・リサーチと参与観察に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 アクション・リサーチでは,量的調査の手法を適用することは望ましくない。

2 アクション・リサーチでは,研究者の質問に対する調査対象者の回答の本音が何であるかを,臨床心理学の方法に基づいて解釈する。

3 アクション・リサーチでは,調査を行う研究者が当事者と協働して,両者が関与する問題の解決も目指しつつ調査や実践を進める。

4 参与観察では,調査者が調査対象者となる個人とラポールを築くことができるので,他の調査手法よりも客観的な結果を導くことができる。

5 参与観察とアクション・リサーチの違いは,前者が実践的な問題解決を重視するのに対し,後者は観察に基づく理論的研究を重視することにある。


参与観察は,観察法で既に学びました。

参与観察と非参与観察の違いについて整理しておきましょう。

アクション・リサーチと参与観察をセットにした問題はこの時の1回だけですが。試験委員の出題意図(社会福祉士としてのあるべき姿)を考えたとき,正解にもっていきたいのは,アクション・リサーチだと思いませんか?

国試で正解を選ぶ時に迷った場合は,出題意図を考えると,正解を見つけやすいものです。

第32回国試以降を受験される方は,過去問を解く時は,ぜひその視点で問題を見ていただきたいと思います。問題を解く勘がつきます。


それでは解説です。


1 アクション・リサーチでは,量的調査の手法を適用することは望ましくない。

これは間違いです。

アクション・リサーチでは問題点を明らかにすることが欠かせません。

そのためにアンケートなどを実施することもあります。


2 アクション・リサーチでは,研究者の質問に対する調査対象者の回答の本音が何であるかを,臨床心理学の方法に基づいて解釈する。

これは間違いです。

これは,アクション・リサーチとは何かを理解していない受験生を引っ掛けるためのでたらめ選択肢です。

第30回国試は,このようなでたらめ選択肢はほとんど見られませんでしたが,第31回国試では一定程度のでたらめ選択肢を混ぜてくることが予測されます。

しかし知識がちゃんとある方は,このようなトラップはうまく避けることができるでしょう。恐れる必要は一切ありません。自信をもちましょう。


3 アクション・リサーチでは,調査を行う研究者が当事者と協働して,両者が関与する問題の解決も目指しつつ調査や実践を進める。

これが正解です。

アクション・リサーチそのものです。その過程には,PDCAサイクルが用いられます。


4 参与観察では,調査者が調査対象者となる個人とラポールを築くことができるので,他の調査手法よりも客観的な結果を導くことができる。

これは間違いです。

調査者が調査対象者となる個人とラポールを築くことができる

この部分は合っているでしょう。

しかし,親密になりすぎるいわゆる「オーバーラポール」といったこともあります。
そうなると客観的になることは難しくなります。

オーバーラポールでなくても,参与観察は調査対象者に主体的にかかわっていくので,単に客観的なものを求めるだけなら,非参与観察の方が適切です。


5 参与観察とアクション・リサーチの違いは,前者が実践的な問題解決を重視するのに対し,後者は観察に基づく理論的研究を重視することにある。

これも間違いです。

アクション・リサーチは問題解決を重視したものです。


<今日の一言>

国試で大きな成果を挙げるために必要なことは,自分に自信をもつことです。

国家試験は,正解を選び出す作業の繰り返しです。

間違い選択肢が存在しなければ,問題は成り立ちません。

現在の国試では,選択肢の内容を入れ替える手法はほとんど見られません。
この方法だと,これはこれ,これはこれ,と連鎖的に間違い選択肢を消去できます。

今は,「セット入れ替え作問法」が見られるだけです。

セット入れ替え作問法
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/blog-post_5.html


しっかり勉強してきた人が問題文を読んだとき「何,これ?」と思う問題の多くは,でたらめ選択肢です。

でたらめ選択肢を混ぜられると知識のない人はそこに引き寄せられます。
もっともらしく見えるからです。

そのトラップに決してはまらず,慎重に,そして大胆に答えを選んでいきましょう。

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