勉強にはいろいろなやり方がありますが,枝葉だけを見ていると見えるものも見えなくなってしまうものもあります。
法制度は,必然性があって出来上がるものです。
法制度を勉強する時には,必ずそれを押さえておくようにしましょう。
そうすれば,試験当日,忘れたとしても手掛かりをつかむことができることでしょう。
今見ている「保健医療と福祉」の基本法は,医療法です。
一度は目を通しておくと良いです。
福祉分野の人にとって医療法はなじみが少ないものだからです。
さて,それでは今日の問題です。
第26回・問題73
我が国の医療提供施設に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 病院とは,医療法上,病床数10床以上を有する医業又は歯科医業を行う施設のことである。
2 病院施設の中の一般病院数の年次推移をみると,最近10年間の総数は増加し続けている。
3 臨床研修を修了した医師又は歯科医師が診療所を開設するときは,都道府県知事に開設の許可を得なければならない。
4 地域医療支援病院の承認要件には,救急医療を提供する能力を有することが含まれる。
5 病床種別の中で病院病床数を比較すると,療養病床の方が一般病床よりも多い。
医療法は,戦後にできたものです。
医療法ができて,病院,診療所が明確になりましたが,医療法ができるまでは現在の診療所も病院と呼んでいた時代が続きます。
診療所で診療を受けても「病院に行ってきた」という人が今でも多いのはそのためです。
さて,それでは詳しく見ていきましょう。
1 病院とは,医療法上,病床数10床以上を有する医業又は歯科医業を行う施設のことである。
医療法では,病院は20床以上。
診療所は,入院設備がない,あるいは19床以下。
と分けられています。
よって×。
2 病院施設の中の一般病院数の年次推移をみると,最近10年間の総数は増加し続けている。
医療法の第1次改正では,都道府県の医療計画策定によって,病院数の総量規制が行われました。
総量規制が導入される前に,駆け込み増床で多くの病院ができました。
今では,どこかの病院がベッドを返上しないとベッド数は増やすことができません。
つまり,病院数は増えることはあり得ないのです。
もし病院数が増えることがあるとすると,今の病院を分割することになります。
そんなことは意味がありません。
病院数は平成2年の約1万病院をピークとして減少し,現在は8千病院ほどとなっています。
ということで増加し続けているではなく,減少し続けています。
よって×。
3 臨床研修を修了した医師又は歯科医師が診療所を開設するときは,都道府県知事に開設の許可を得なければならない。
臨床研修は,昭和43年に創設されて,平成16年の改正で義務化されています。
研修は義務化されていますが,研修を受けたことを登録することは義務化されていません。
しかし,登録しておかないと,開設する時に都道府県知事の許可が必要となります。
つまり研修修了者であって登録者であると許可がいらないということになります。
よって×。
難しいですね。
4 地域医療支援病院の承認要件には,救急医療を提供する能力を有することが含まれる。
地域医療支援病院は,平成9年の第3次改正で新設されたものです。
国試では,第2次改正の時に創設された特定機能病院と混同させるように出題されてきますので,注意です。
地域医療支援病院は,都道府県知事の承認を受けます。
地域の中核病院です。
救急医療の提供も承認の条件です。
それに対して,特定機能病院は厚生労働大臣の承認を受けます。
高度医療の提供能力が求められます。
承認されているのは大学病院であることが多いことからもよくわかることでしょう。
さて,問題に戻ります。
救急医療を提供する能力を有することが含まれるのは,地域医療支援病院です。よって正解です。
5 病床種別の中で病院病床数を比較すると,療養病床の方が一般病床よりも多い。
これからどんどん機能分化されていくことになりますが,
現在は,一般病床約90万床に対して,療養病床は約30万床です。
よって×。
入試などと違い,社会福祉士国試は,人よりも多く点数を取らなければならないという試験ではありません。
簡単に得点できるものではないかもしれません。しかし確実に知識を積み重ねることで,合格基準点を超えることができます。
今の時期は,とにかく基礎力を蓄える時です。