覚えられなくて焦る
勉強は本当に辛いものですね。
勉強していると,覚えられなくて焦ることはよくあります。
焦れば焦るほど,焦りはもっと強くなってきます。
国試突破の極意は,ここに隠されています。
覚えられない
を考えてみましょう。
参考書に書いてあることを完璧に覚えようという気持ちはありませんか。
完璧(広辞苑による)
欠陥がなく,すぐれてよいこと。完全無欠。
完璧は,欠陥がないということらしいです。
人間は欠陥があるもの。
完璧は目指したいところですが,完全無欠の人間はありません。
そこに無理があると思いませんか。
完璧=丸暗記
そこに無理があると思いませんか。
完璧に覚えようとするのはもうやめませんか。
参考書に書いてあることを丸覚えしても,国試では言い回しを変えて出題してきます。
国試で得点するためには,言い回しが変わっても対応できることです。
勉強しているときに,わからない言葉が出てきたとき,すぐ調べようとするのは悪いことではありません。
わからない ⇒ 調べる
わからない ⇒ 調べる
わからない ⇒ 調べる
これを続けていくと・・・
わからないことが気持ち悪くなります。
わからないことがわかると気持ちが良いです。
ここで注意したいのは,国試では調べられないことです。
わからない ⇒ わからない
わからない ⇒ わからない
どうしよう,どうしよう
国試では落ち着かなければならないのに,普段と違う状況に陥ってしまいます。
ここで少し勉強法を変えてみませんか。
わからない ⇒ 考えてみる
考えてみる ⇒ 調べる
そして
わからない ⇒ 考えてみる考
えてみる ⇒ 調べる
自分の考えたこととそれほど違わないことが何度かあれば,もうそれ以上調べないようにします。
それはとても怖いことですね。
しかし,国試ではどんなに勉強してもわからないものは出題されます。
文章を完璧に読み取ろうと思っても調べるすべはありません。
完璧さを求める怖さがここにあります。
国試は日本語
わからない用語があった場合,その用語の前後の文章から類推することができることもあります。
それらは,日常から「考えてみる」をしていることが大切です。
調べる ⇒ わかった
基礎的な勉強をしているときは,これは重要です。
国試問題を解く練習をするときには,
わからない ⇒ 考えてみる
は絶対に必要です。
過去問を解く意味はここにあります。
国試はマーク式。
問題の中に必ず答えがあります。
意味は完璧にわからなくても,答えを導き出せれば何とかなります。
国試勉強は・・・
引き算ではなく,足し算
考えてみて,その推測がちょっとでもかすったら,喜びを感じましょう。
かすり方が多くなったら大きな前進です。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題50 社会保障制度の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 ドイツでは,18世紀終盤に,宰相ビスマルクにより,法律上の制度として世界で初めて社会保険制度が整備された。
2 アメリカでは,世界恐慌の中,ニューディール政策が実施され,その一環として低所得者向けの公的医療扶助制度であるメディケイドが創設された。
3 フランスでは,連帯思想が社会保険制度の段階的な充実につながり,1930年には,ラロック・プランに基づく社会保険法が成立した。
4 イギリスでは,1990年代に,サッチャー政権が効率と公正の両立を目指す「第三の道」を標榜し,就労支援を重視した施策を展開した。
5 日本では,1960年代に国民皆保険・皆年金制度が実現し,その他の諸制度とあいまって社会保障制度が構築されてきた。
社会保障の歴史問題です。
言い回しを変えられて出題されるのは,法制度の問題よりも理論系の問題です。
法制度は言い回しを変えるということがないので,知識は直結しやすいです。
しかし,その分,陥りやすいのは,
わからない ⇒ わからない
どうしよう,どうしよう
となることです。
知っていることを最大限に使って推測することを普段から心がけましょう。
社会福祉士は,自分で考えて行動することが求められる職種です。
国試は,それを具現化するための試金石として出題されます。
難しい問題でも必ずヒントはあります。
ただし,それは
AからCの結論を導き出すためには,Bという知識があることが前提です。
社会福祉士が自分で考えて行動することが求められる職種だとすれば,考えることなくCの結論が出せるような問題ばかりではいけないわけです。
今勉強していることは,AからCという答えを引き出すために必要な「B」という知識をつけるためだと言えます。
それでは,詳しく見てみましょう。
1 ドイツでは,18世紀終盤に,宰相ビスマルクにより,法律上の制度として世界で初めて社会保険制度が整備された。
多くの人は,この問題を正解にした人は多かったと思います。
世界初めての社会保険制度はドイツ
この知識は絶対に必要です。これからもこの知識をもつことは必要です。
ただ18世紀は,1700年代です。歴史の弱い人は引っ掛けられたのではないでしょうか。
正しくは19世紀終盤です。
よって×。 ちょっといやらしい問題ですね。
2 アメリカでは,世界恐慌の中,ニューディール政策が実施され,その一環として低所得者向けの公的医療扶助制度であるメディケイドが創設された。
メディケア,メディケイドは制度としては知っていても,いつ創設されたものであるかは知らない人は多いです。
とても難しいものだと思います。しかしもちろんここにもヒントがあります。
アメリカは,自己責任の精神を強く貫く国です。
古典的な自由主義は,いろいろな弊害をもたらします。1929年に起きた世界大恐慌は今までに経験したことがないものでした。アメリカはそのためにニューティール政策を実施します。
自由主義国家の社会保障は労働政策です。そこで実施したのは,老齢保険,失業保険,公的扶助です。医療保険はありません。
医療関係を強化したのが「貧困戦争」宣言をした1960年代のジョンソン大統領です。その時にメディケア,メディケイドが創設されました。
よって×。
3 フランスでは,連帯思想が社会保険制度の段階的な充実につながり,1930年には,ラロック・プランに基づく社会保険法が成立した。
フランスは近年出題されることが多くなってきています。
フランスはイギリスの陰に隠れて地味な存在かもしれません。しかし実はスウェーデン以上に社会支出が多い国です。
イギリスの社会保障制度の基礎になったものが1942年のべヴァリッジ報告であるように,フランスでは1945年のラロック・プランが基礎になっています。
ラロック・プランがベヴァリッジ報告よりも早い段階の1930年だとすると有名でもよいはずです。
そうではないのは,この選択肢が間違いだろうと推測したいです。
もちろんそのとおり。
間違いです。
先述のAからCという結果(ここでは×であるとする判断)には,イギリスのべヴァリッジ報告がBの知識となります。
4 イギリスでは,1990年代に,サッチャー政権が効率と公正の両立を目指す「第三の道」を標榜し,就労支援を重視した施策を展開した。
歴史が苦手な人でも,イギリスの社会保障は絶対に覚えておきたいです。
覚えなければならないものはそんなに多くはありません。
先ほどのラロック・プランと同じようにイギリスを中心に添えて考えることが多いからです。
第三の道を標榜したのは,サッチャーではなくブレア首相です。
イギリスは保守党と労働党の二大政党となっています。
現在のメイ首相は保守党。サッチャーも同じく保守党です。
保守党は資本家・企業側が支持基盤になっている政党です。自由主義を保持し社会保障制度はできるだけ縮小したいのが基本路線です。
一方労働党は,労働者が支持基盤とする政党です。労働党の政策が第二次世界大戦後のイギリスの社会保障制度を作り上げてきました。
社会保障は資本主義で得た利益を使って行われます。社会保障に多く配分されると経済活動に再投資する分が減ります。
サッチャーは,手厚い社会保障が国を疲弊させていると考え制度改革を断行し,「鉄の女」と呼ばれました。
もし彼女の改革がなければ,ギリシャのように経済破綻を起こしていたかもしれません。
ブレア首相は労働党ですが,以前のような社会民主主義のような政策は行うほど国の勢いはありません。
そこで実施したのが,「第三の道」と呼ばれる政策です。「福祉から就労へ」が基本です。今までは税を使っていたものを就労することで税金を払ってもらう,そこまではいかなくても税の投入が少しでも減らせれば成功です。
そのように第三の道は,ブレアの政策です。
よって×。
5 日本では,1960年代に国民皆保険・皆年金制度が実現し,その他の諸制度とあいまって社会保障制度が構築されてきた。
文章としては,ちょっと変な表現になっていますが,結論を言うとこれが正解です。国民皆保険・皆年金は日本の社会保障制度の特徴です。
変な表現というのは,「実現し」「構築されてきた」というつながりです。これで間違いだということはありませんが,「実現し」はある時点のこと,「構築されてきた」は進行形です。それを一文に入れ込んでいるので,その関係性が厳密ではないので,解釈があいまいになってしまいます。
不適切問題ではないですが,3のフランスに×をつけられなかった人は,この選択肢を×にして2を正解にした人が多かったものと思われます。
試験委員はかなり反省したのではないでしょうか。
<今日の一言>
完璧を目指すのは危険です。