日本は,明治以来,官僚たちが100年の計をもって国づくりを進めてきました。
これは令和になった現在も同じです。
国づくりで一番大切なことは,お金をどのように集め,どのように使うかです。
国家予算の3分の1を社会保障関係費に使っています。
社会保障財源をどのように確保するかは喫緊の問題です。
社会福祉士としては,必ず押さえておかなければなりません。
細かい法制度(ミクロ)も大切ですが,社会保障体系(マクロ)を押さえる視点がないと,目の前の制度改正に振り回されることになります。
マクロの視点を常に持って学習を進めていくことが効率的かつ効果的な学びになります。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題44
「社会保障・税一体改革」の内容に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 生活保護費の国庫負担率を,4分の3から2分の1に変更するという内容が含まれている。
2 介護保険制度の財政基盤を強化するために,保険者を市町村から都道府県に移行させるという内容が含まれている。
3 安定財源を確保することにより,基礎年金の国庫負担2分の1を恒久化するという内容が含まれている。
4 消費税率の引上げによって得られた財源は,社会保障のほか,教育及び防災関係の政策に充てられることになっている。
5 子ども・子育て支援を含めて,「全世代対応型」の社会保障制度の構築を目指している。
社会保障・税一体改革は,社会保障の充実と財源の安定確保を図るために,平成24年に関連8法を成立させて,平成26年から31年にかけて,改革が進められました。
現在も持続可能な社会保障制度をつくるための改革が行われています。
国では,いろいろな資料を公開しています。ぜひネットで調べて押さえておきましょう。
国試勉強だけの意味ではなく,福祉がどのように変化していくのかを知っておくためにも大切なことです。
それでは,選択肢を見て行きましょう。
1 生活保護費の国庫負担率を,4分の3から2分の1に変更するという内容が含まれている。
これはちょっと難しいかもしれません。
そこで考えたいのは,必然性の有無です。生活保護費は全額が税負担です。
現・生活保護制度が始まった時は,国家責任ということで国庫負担率は10分の8でした。
一時期10分の7になったことがあり,現在は4分の3となっています。
残りの4分の1は都道府県と市,福祉事務所のある町村が負担しています。
つまり国庫負担が2分の1になれば,都道府県の負担が増えることになります。
財源を移譲することはあっても,負担を移譲することはないです。国家責任という大原則が崩れてしまいます。
よって×。こんなことは言うはずがありません。
2 介護保険制度の財政基盤を強化するために,保険者を市町村から都道府県に移行させるという内容が含まれている。
国保ではこのような方向性が打ち出されているので,それに引っ掛けで出されたものなのかなぁ,と思います。
しかし今までの国試問題を見ても,明確になっていないものは,まず出題されませんし,ましてや正解の選択肢に配置されることはありません。
結論を言うと間違いです。
3 安定財源を確保することにより,基礎年金の国庫負担2分の1を恒久化するという内容が含まれている。
これは1つめの正解です。基礎年金の国庫負担を2分の1にするというのは,平成16年の制度改正で決まっていたことですが,ずっと実現しませんでした。
平成21年に引き上げられたのですが,恒久化を明記したのは,この改革においてです。
正解です。
4 消費税率の引上げによって得られた財源は,社会保障のほか,教育及び防災関係の政策に充てられることになっている。
消費税の5%から8%になった増税分はすべて社会保障に使われています。
教育にも防災にも使われませんので☓です。
5 子ども・子育て支援を含めて,「全世代対応型」の社会保障制度の構築を目指している。
全世代対応型の社会保障制度を構築するのがこの改革の大きな柱です。
これがもう一つの正解です。
因みに,全世代対応型とは,医療,年金,介護,子育て支援の4本柱のことです。
子育て支援は,大きく変化しています。
<今日の一言>
マクロの視点で勉強すると理解が進む