日本の医療保障の中心は,社会保険制度ですが,障害者医療は,社会保険ではなく,社会福祉制度で構成されます。
今日,取り上げる問題は,障害者総合支援法の自立支援医療です。
第26回・問題74
「障害者総合支援法」の保健医療サービスに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 自立支援医療には,療育医療,更生医療,育成医療の3種類の公費負担医療がある。
2 療養介護医療とは,在宅で医療と常時介護を必要とする人に,機能訓練,療養上の管理,看護・介護及び日常生活の世話を行うことのうち,医療にかかるものをいう。
3 自立支援医療費の給付を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,都道府県の窓口に申請をしなければならない。
4 自立支援医療の利用者は,当該医療費の3割を負担する。ただし,世帯の所得に応じて月額の負担上限額が設定される。
5 入院時の食事療養費と生活療養費(いずれも標準負担額相当)については原則自己負担となる。
障害者総合支援法は,障害者自立支援法が改正されたものです。
自立支援法が成立した当時のこと知っている人ならわかるかと思いますが,その時に以下の3つをまとめて自立支援医療が出来ました。
障害児に対する育成医療(児童福祉法) → 市町村の役割
身体障害者に対する更生医療(身体障害者福祉法) → 市町村の役割
精神障害者に対する精神通院医療(精神保健福祉法) → 都道府県の役割
精神通院医療のみ都道府県となっていますが,ただし,申請窓口は市町村です。
因みに更生という意味はリハビリテーションを指しています。
更生施設,更生相談所などがあります。
リハビリの施設やリハビリについての相談をするところだというイメージがわきますね。
それでは,詳しく見ていきましょう。
1 自立支援医療には,療育医療,更生医療,育成医療の3種類の公費負担医療がある。
療育医療というのはないです。
正しくは精神通院医療です。
よって×。
2 療養介護医療とは,在宅で医療と常時介護を必要とする人に,機能訓練,療養上の管理,看護・介護及び日常生活の世話を行うことのうち,医療にかかるものをいう。
療養介護医療と言われると混乱してしまいそうですが,療養介護のうちの医療の部分のことを指しています。
療養介護は,医療と常時介護が必要な人を入院させて,医療機関での機能訓練,療養上の管理,看護・介護及び日常生活の世話を行うものです。
つまり,医療機関で提供されるサービスです。
在宅ではありません。
よって×。
3 自立支援医療費の給付を受けようとする障害者又は障害児の保護者は,都道府県の窓口に申請をしなければならない。
自宅支援医療の事務を行っているのは,育成医療と更生医療が市町村,精神通院医療が都道府県です。
このように役割が分かれています。しかしそれでは利用したい人は混乱してしまいます。
そこで先述のように精神通院医療の申請窓口も市町村です。
市町村を経由して都道府県に送られます。都道府県の窓口では住民にとっては遠すぎます。
窓口はすべて市町村ということになりますので×です。
4 自立支援医療の利用者は,当該医療費の3割を負担する。ただし,世帯の所得に応じて月額の負担上限額が設定される。
一般の医療費の自己負担は3割が基本なのでこのような問題を作ったのだと思います。
しかし障害児・者に対して3割負担は上限額があったとしてもハードルが高いです。
正しくは1割です。よって×。
5 入院時の食事療養費と生活療養費(いずれも標準負担額相当)については原則自己負担となる。
これが正解です。
消去法でもこれしかないと思いますが,ちょっとびっくりですね。
自立支援法は介護保険を参考にして作られたので,ホテルコスト分は自己負担ということになったのでしょう。
在宅と病院との生活費の整合性のためには必要だったのかもしれません。