ソーシャルワーカーにとって,クライエントの経済的な問題の解決は重要です。診療報酬の出題は,比較的込み入ったものも出題されています。
診療報酬は,医療機関の収入であるのと同時に,クライエントの自己負担に直結するからです。
今日は,その診療報酬制度についての問題です。
第26回・問題72
我が国の診療報酬制度に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 診療報酬の改定は,中央社会保険医療協議会の答申を経て行われる。
2 診療報酬の審査・支払権限は,健康保険組合等の保険者にある。
3 外来診療報酬については,1日当たり包括払い制度がとられている。
4 診療報酬は,健康保険と国民健康保険では異なった内容となっている。
5 診療報酬点数表において,1点単価は1円とされている。
この問題自体は,そんなに難しくないものでしょう。
しかし注意なのは2つ選択なければならないことです。
2つ選択しなければならない問題が突然出題されるようになったのは,第25回からです。
2つ選択する問題は,組み合わせが10通り(5×4÷2=10)もあります。
そのため五者択一よりも正解率が下がります。
ミスも起きます。
第36回から2つというように注意を促すようになりましたが,それでも1つしか選ばなかったというミスは起きます。
試験センターが目指している国試の姿は,
さて,それでは詳しく見ていきますね。
1 診療報酬の改定は,中央社会保険医療協議会の答申を経て行われる。
診療報酬改定は,2年ごとに行われています。
診療報酬改定は,中央社会保険医療協議会(中医協)の答申を経て,厚生労働大臣が決定します。
よって〇。
2 診療報酬の審査・支払権限は,健康保険組合等の保険者にある。
これにひっかけられた人は結構いたのではないかと思います。
なぜなら,診療報酬の審査等は,社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険組合団体連合会(国保連)が行っているからです。
しかし,それは保険者が委託しているからであり,審査・支払権限自体は保険者にあります。
よって正解。
3 外来診療報酬については,1日当たり包括払い制度がとられている。
診療報酬の支払い方法には,出来高払い制度と包括払い制度があります。
外来は基本的に出来高払い制度です。包括払いだと,必要な検査などがある時とない時の整合性がとれないことになってしまいます。
出来高払い制度は,過剰診療を生み出すことにつながります。そのため,包括払い制度は日本では高齢者医療で始まりましたが,現在では急性期病院でも採用されています。
しかし,外来が包括払い制度をとると,本来行わなければならない必要な検査はお金がかかり,それが病院の持ち出しになるとすれば,そういうものはどんどんカットしなければなりません。
そんなことがあっては隠れた病気を見落としてしまうことになります。
4 診療報酬は,健康保険と国民健康保険では異なった内容となっている。
日本の医療保険制度は,全国どこでどんな医療機関で診療を受けても同じ金額であることが特徴です。
イギリスには,国民保健サービス(NHS)という税財源で行われている医療制度があります。これは日本と違い,どこでも自由に診療が受けられるわけではないかかりつけ医であるGPというシステムを取っています。
そのため,GPの診療を受けるために長期間待たなければならないこともよくあるようです。それを嫌ってお金がある人は民間の保険に加入します。GPが使える薬と民間保険で使える薬にも違いがあります。
話は戻りますが,日本は国民皆保険制度をとっています。診療報酬は全国一律1点10円で,これは健康保険制度でも国民健康保険制度でも一緒です。
よって×。
5 診療報酬点数表において,1点単価は1円とされている。
介護報酬は地域によって少し違いますが,診療報酬は全国一律1点10円です。
よって×。
基本的にそれほど難しくない問題だったと思いますが,それでも緊張感漂う試験会場では正しく答えを導きだすのは簡単なことではないです。
だからこそ模試受験が大切なのです。試験に慣れるのは本当に容易なことではありません。
なぜそうなっているのだろうとしっかり考えながら,勉強することが国試突破には極めて重要です。
これを心がければ,少々わからない問題が出題されても,想像力で正解できる確率が高まります。