2017年9月30日土曜日

自立の助長とは,経済的自立にとどまらない!!

現・生活保護法の目的は「最低限度の生活保障」と「自立の助長」です。

最低限度の生活保障は日本国憲法第25条の生存権規定に基づくものなので,比較的新しいものと言えます。


もう一方の自立の助長は,救護法に「生業扶助」が組み込まれています。

救護法は単に生活困窮者の救護だけではなく,自立の助長も目的にしていたのはとても興味深いものです。


日本では,自立の助長は江戸時代に既に始まっています。


近年は,国試に出題されたのを見たことがないですか,参考書には記載されている「石川島人足寄場」がそれです。


これを提案したのは,岩波正太郎の歴史小説「鬼平犯科帳」の鬼平こと,長谷川平蔵です。

軽犯罪人に対して,大工や建具などの技能を修得させたものです。

軽犯罪人に関して,懲罰を科すことが効果的ではないことをよく知っていたのでしょう。

しかし,残念ながら明治になって廃止されました。

自立の助長は,1929年(にくい年)の救護法まで待たなければなりません。


さて,それでは今日の問題です。


25回・問題66

生活保護における各種の扶助に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 生活扶助には,基準生活費に当たる第1類費や第2類費のほか,各種の加算があり,うち,母子加算は,母子世帯のほか父子世帯も対象としている。



2 生活扶助は,個々人に必要な生活費としての側面もあるため,世帯員が複数の場合,個人に対して金銭が給付されるのが原則である。



3 教育扶助は,高校や大学での修学にも対応できるよう,義務教育終了後においても支給される。



4 医療扶助は,医療保険制度による指定医療機関に委託して行われ,現物給付を原則としている。



5 生業扶助は,現に就いている生業の維持を目的とするため,生業に就くために必要な技能の修得はその範囲に含まれない。



現在の扶助の種類は,8つあります。


救護法では先述の生業扶助も含めて4種類。


旧・生活保護法ではそれに葬祭扶助を加えた5種類。


現・生活保護法ができた時点では,それに住宅扶助と教育扶助を加えた7種類。


2000年の介護保険に伴い,介護扶助が加わり,現在は8種類です。


それでは詳しく見て行きましょう。


1 生活扶助には,基準生活費に当たる第1類費や第2類費のほか,各種の加算があり,うち,母子加算は,母子世帯のほか父子世帯も対象としている。


今はもう忘れてしまった人も多いかもしれません。

自民党政権が民主党政権に変わる前,一度母子加算は廃止されました。

その後民主党政権の時に,母子加算を復活させましたが,その時に父子も対象としています。

よって正解です。


2 生活扶助は,個々人に必要な生活費としての側面もあるため,世帯員が複数の場合,個人に対して金銭が給付されるのが原則である。


生活保護は原則は世帯単位です。これにより難い時は,個人を単位とする世帯分離を行います。


よって×。


3 教育扶助は,高校や大学での修学にも対応できるよう,義務教育終了後においても支給される。


教育扶助は,日本国憲法の「教育を受ける権利」を保障するために,現・生活保護法で加わったものです。


教育扶助は,小中学校の義務教育期間を対象としています。義務教育後は支給されません。

よって×。


ただし,現在の高校進学率は97%となり,高校を卒業しないと仕事を見つけることはかなり厳しい状況です。

そのため,高校分は生業扶助の高等学校等就学費が支給されます。


4 医療扶助は,医療保険制度による指定医療機関に委託して行われ,現物給付を原則としている。


医療扶助は,医療保護施設又は生活保護法の指定医療機関で原則行われます。

よって×。


5 生業扶助は,現に就いている生業の維持を目的とするため,生業に就くために必要な技能の修得はその範囲に含まれない。


生業に就くために必要な技能の修得は,経済的自立の助長のためには極めて重要です。

もちろん範囲に含まれるので☓。


現在の自立の考え方は,単に経済的自立だけではなく,社会自立,日常生活自立も含むことを覚えておきましょう。



2017年9月29日金曜日

保護施設の覚え方

生活保護は,基本的には居宅保護ですが,保護施設もあります。

たった5つしかないので,しっかり覚えましょう

さて,今日のテーマは,保護施設の覚え方です。

急行は,伊豆にとまる(きゅうこうは,いじゅにとまる)



きゅう ・・・救護施設(生活扶助)

こう・・・・・更生施設(生活扶助)

(は)

い・・・・・・医療保護施設(医療扶助)

じゅ・・・・・・授産施設(生業扶助)

(に)

とまる・・・・宿所提供施設(住宅扶助)


現在は,5種類ですが,以前は養老施設もありました。

救護法で養老院として創設され,生活保護法で養老施設,老人福祉法が出来た時に,同法に基づく養護老人ホームに移行しています。


保護施設を設置できるのは,


都道府県

市町村

地方独立行政法人

社会福祉法人

日本赤十字社 
 
のみです。


たいてい「のみ」という出題があると間違い選択肢になることが多いですが,保護施設は,この5つに限定されていますので,「のみ」がついていても珍しく正解になります。


日赤はイメージしにくいためなのか,日赤部分を医療法人など変えて間違い選択肢にすることがあります。


急行は伊豆に停まる

のところの保護施設のうしろの(  )は,どの扶助を目的としているかを示しています。

重なっているのは,「急行」の部分の救護施設&更生施設の生活扶助だけです。

過去問では,ここに宿所提供施設も絡めて,

生活扶助を目的とする保護施設は,救護施設,更生施設,宿所提供施設である


という出題がなされているので要注意です。

宿所提供施設は住宅扶助です。

間違わないようにしっかり覚えておきましょう。


保護施設は実は意外と数が少ないのです。

全国でも約300施設しかありません。

そのうち約200施設は救護施設が占めています。

その他の施設は,更生施設(約20施設),医療保護施設(約60施設),授産施設(約20施設),宿所提供施設(約20施設)となっています。


圧倒的に救護施設が多いのが分かることでしょう。


救護施設の数が多いためか,大きな期待が寄せられ,退所者に向けた「保護施設通所事業」を実施することで,退所促進を図っています。

この事業は更生施設でも行っています。



それでは今日の問題です。


25回・問題65

生活保護法第38条における保護施設について,次の記述のうち,正しいものを1つ選びさい。


1 保護施設には,救護施設,更生施設・医療保護施設・授産施設,宿所提供施設,養老施設の6種類がある。


2 救護施設は,自立支援の観点から,保護施設退所者を対象に,通所による生活指導・生活訓練等と居宅等への訪問による生活指導等の事業も行うものとされている。


3 更生施設は,就業能力の限られている要保護者の就労又は技能の修得のために必要な機会及び便宜を与えて,その自立を助長することを目的とする施設である。


4 保護施設のうち,2010(平成22)年度現在で設置数が最も多いのは宿所提供施設である。


5 保護施設を設置できるのは,都道府県,市町村,社会福祉法人及び特定非営利活動法人に限定されている。 



先のヒントで答えはもう分かったと思います。


それでは詳しく見て行きましょう。


1 保護施設には,救護施設,更生施設・医療保護施設・授産施設,宿所提供施設,養老施設の6種類がある。


養老施設は,現在は老人福祉法に基づく養護老人ホームになっています。

保護施設は「急行は,いじゅに停まる」の5つです。

よって×。


2 救護施設は,自立支援の観点から,保護施設退所者を対象に,通所による生活指導・生活訓練等と居宅等への訪問による生活指導等の事業も行うものとされている。


先にヒントを出したので,これが正解だと分かることでしょう。

しかし国試時点では分からなかったと思うので,冷静に▲をつけます。

もちろん正解です。


厚労省は,実施している施策でよく知られていないものを周知したいという欲望をいつも抱いています。

救護施設&更生施設(生活扶助)は,退所したら「バイバイ」ではなく,保護施設通所事業を行っていることを知っている人はそれほど多くはないはずです。


しかし,一度出題したら,「広く知ってもらう」という目的は達成されているので,もう出題されることはないです。

このようにして「一見さん」が増えていきます。

参考書には記載されていくので,受験生は覚えるものが増えるように思いますが,実際には多くの「一見さん」は二度と出題されることはないのです。だから一見さんです。


3 更生施設は,就業能力の限られている要保護者の就労又は技能の修得のために必要な機会及び便宜を与えて,その自立を助長することを目的とする施設である。


更生施設の「更生」とは,リハビリテーションのことです。

そこから,「身体上又は精神上の理由により養護及び生活指導を必要とする要保護者を入所させて,生活扶助を行うことを目的とする施設」であることを連想すると良いです。


さて,問題に戻ります。

「就労及び技能の修得」というところから,生業扶助を目的とする授産施設であることが分かると思います。

よって×。


4 保護施設のうち,2010(平成22)年度現在で設置数が最も多いのは宿所提供施設である。


「最も少ないのは何?」と聞かれると分かりませんが,最も多いのは,救護施設であることは分かります。

圧倒的に多いです。

よって×。


5 保護施設を設置できるのは,都道府県,市町村,社会福祉法人及び特定非営利活動法人に限定されている。


NPO法人は,保護施設を設置できませんよね。

よって×。

ここではNPO法人となっていますが,先述のように医療法人といったように間違い選択肢が作られます。

正しくは「日本赤十字社」です。

日赤は「日本赤十字社法」に基づく特殊法人で,「この法律では,日本赤十字社は社会福祉法人とみなす」といった規定がされることが多いです。


<今日の一言>


国家試験における一見さんの取り扱い


いわゆる「一見さん」が正解選択肢として出題されるのは,他の選択肢が消去できる場合が多いです。


今日の問題でも,その他の選択肢は明確に間違いであることが分かるものでした。



これが分かってくると,もっと難易度が高い「はじめまして問題」であっても,正解できる率が高まります。

2017年9月28日木曜日

今年は,厚労省のルーツが出来て100年の節目の年!!

低所得者に出てくる歴史問題は,出るポイントが限られています。


恤救規則

救護法

旧・生活保護法

現・生活保護法


たった4つしか問われません。

現行カリキュラムで出題された歴史問題は以下のとおり。


我が国の現行生活保護法が成立する経過に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。 (第22回・問題58
1 生活困窮者緊急生活援護要綱(昭和20)は,生活援護を要する者のうち失業者は除外した。
2 旧生活保護法(昭和21)は制定時,民生委員を市町村が行う保護事務の協力機関と定めていた。
3 旧生活保護法(昭和21)は,その目的を生活の保護を要する状態にある者の生活を国が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護して,社会の福祉を増進するとしていた。
4 連合国軍総司令部(GHQ)は,覚書「社会救済」(昭和21)によって,日本政府に生活保護の算定基準に関するガイドラインを示した。
5 社会保障制度審議会の「生活保護制度の改善強化に関する件」(昭和24)では,生活保護制度を社会保険制度へ転換すべきであると提言した。



我が国の公的扶助制度の沿革に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。(第23回・問題56
1 恤救規則(明治7年)では,生活に困窮する「無告の窮民」に対し米の現物給付を行った。
2 救護法(昭和4年)では,救護を受ける者は施設に収容することを原則とした。
3 救護法(昭和4年)では,救護の対象となる者について,扶養義務者が扶養できる場合には,急迫した場合を除き救護しないとされた。
4 旧生活保護法(昭和21)では,能力があるにもかかわらず勤労の意思のない者は,急迫した場合を除き保護の対象から除外された。
5 旧生活保護法(昭和21)では,日本国憲法に基づく健康で文化的な最低生活保障の考え方を導入した。


旧生活保護法(昭和21)の内容に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。 (第24回・問題56
1 第1条の保護の目的は,最低生活の保障と無差別平等であった。
2 保護を行う責任は,都道府県知事によることとされていた。
3 教育及び住宅に関する保護は,生活扶助に含まれていた。
4 国家責任を明確にする目的から,保護費のすべてを国が負担していた。
5 数次の基準改訂を行い,エンゲル方式による最低生活費の算定方式の導入を行った。



我が国における戦前の低所得・貧困者救済の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 (第25回・問題64
1 恤救規則では,生活困窮者が生活に必要な食料を現物で給付していた。
2 方面委員制度は,救護法を実施するために創設されたものであり,これを契機にして全国に方面委員が配置された。
3 防貧的な経済保護事業においては,公設市場,公益質屋,公営浴場などの施設が設置され,更に,職業紹介などの失業保護事業が展開された。
4 救護法の成立に伴い,法の運営を行うために内務省に救護課が設置された。
5 軍事救護法は,戦時体制において一般の生活困窮者及び軍人やその家族を救済の対象としていた。


現在の生活保護法成立前の公的扶助制度に関する記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 (第28回・問題63
1 恤救規則(1874(明治7))は,高齢者については65歳以上の就労できない者を救済の対象とした。
2 救護法(1929(昭和4))は,救護を目的とする施設への収容を原則とした。
3 救護法(1929(昭和4))における扶助の種類は,生活扶助,生業扶助,助産の3種類であった。
4 旧生活保護法(1946(昭和21))は,勤労を怠る者は保護の対象としなかった。
5 旧生活保護法(1946(昭和21))は,不服申立ての制度を規定していた。


何度も同じことが問われているのがよく分かることでしょう。

それでは,今日の問題は,上記のうちの第25回の問題です。


25回・問題64

我が国における戦前の低所得・貧困者救済の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 恤救規則では,生活困窮者が生活に必要な食料を現物で給付していた。


2 方面委員制度は,救護法を実施するために創設されたものであり,これを契機にして全国に方面委員が配置された。


3 防貧的な経済保護事業においては,公設市場,公益質屋,公営浴場などの施設が設置され,更に,職業紹介などの失業保護事業が展開された。


4 救護法の成立に伴い,法の運営を行うために内務省に救護課が設置された。


5 軍事救護法は,戦時体制において一般の生活困窮者及び軍人やその家族を救済の対象としていた。


この科目の歴史問題はいつも簡単ですが,さすがは第25回の問題です。

見たことのないものが並んでいますね。


このような問題は,問題の中に手掛かりを見つけて消去する慎重さが求められます。


さてそれでは,詳しく見て行きましょう。


1 恤救規則では,生活困窮者が生活に必要な食料を現物で給付していた。


江戸時代ならともかく恤救規則は明治時代の法律です。

食料の現物給付は考えられません。

米代の現金給付が正しいです。

よって×。


<余談>

江戸時代,年貢は物納でした。

明治政府になって,1873年に地租改正を行います。

これによって物納なら金納に変わりました。

地租改正は明治政府にとっては大事業です。

恤救規則は地租改正の次年の1874年に成立しています

地租改正は農民の大反発を受けながらも断行しました。

そんな時代背景にあって,食料の現物給付は絶対に行わないはずです。



2 方面委員制度は,救護法を実施するために創設されたものであり,これを契機にして全国に方面委員が配置された。


今年は,済世顧問制度ができて100年の節目の年です。

つまり1917年に出来ています。方面委員制度は次年の1918年にできています。

救護法は,世界大恐慌が起きた年,1929年(にくい年と覚えます)に成立しました。


29回国試では,

戦前の方面委員による救護法制定・実施の運動は,ソーシャルアクションの事例とされる。(第29回・問題35・選択肢2

正解選択肢です。

これから分かるように,方面委員の活動が救護法制定につながっていきます。

救護法の生みの親は方面委員であり,救護法を実施するために創設されたものでは決してありません。

よって×。


3 防貧的な経済保護事業においては,公設市場,公益質屋,公営浴場などの施設が設置され,更に,職業紹介などの失業保護事業が展開された。


これはよく分かりません。

こんな時は冷静に▲をつけます。

答えを言うと,これが正解です。


4 救護法の成立に伴い,法の運営を行うために内務省に救護課が設置された。


厚生省設置までの歴史を確認しましょう。


1917(大正6)年 内務省に救護課設置。

1919(大正8)年救護課を社会課に改称。

1920(大正9)年に社会課を社会局に昇格させる。

1938(昭和13)年に内務省から独立して,厚生省を設置する。


初代内務卿は,大久保利通です。
以来ずっと内務省はエリート官庁です。

内務省から独立して厚生省になってもエリート官庁であるのは今も変わりません。

国家予算の30%も預かる官庁です。

当然ですね。


さて,問題に戻ります。


内務省救護課設置は,1917年。

今年はちょうど100年の節目の年です。どこかに絡めて出題して来そうですね。

救護法制定は,にくい年の1929年です。


救護法の運営を行うために,内務省に救護課を設置したわけではありません。

よって×。


5 軍事救護法は,戦時体制において一般の生活困窮者及び軍人やその家族を救済の対象としていた。


軍事救護法も1917年に制定されています。

100年前の1917年はずいぶんいろいろな年だったみたいです。

軍事救護法は,その名の通り,傷ついた兵士,兵士の遺族のうち,貧困に陥った者を対象としていました。

よって×。


一般の生活困窮者は明治初期に制定された恤救規則がその対象としていた時代です。

軍事救護法が一般の生活困窮者を対象とするなら,その後に出来た救護法は必要ないでしょう。

この選択肢は難しいものだと思いますが,軍事救護法が一般の生活困窮者を対象とするなら,救護法の存在価値は何? といった疑問が持てたなら消去できます。

選択肢5を消去出来た人だけが,おそらくこの問題で正解できたのではないでしょうか。


<今日の一言>
 知らないものが出題されても,ヒントは必ずどこかにある!!


そういった面では,国家試験は,試験委員との知恵比べと言えるのではないでしょうか。


知らない,分からない,と思考を止めてしまわないようにしましょう。

足りないピースは,知恵で穴埋め出来ます。

経験豊富な社会人が最も得意とする領域ではないでしょうか。

2017年9月27日水曜日

日本の社会保障制度の仕組み

日本の社会保障制度は,1922年にできた炭鉱労働者などのいわゆるブルーカラーを対象とした健康保険法から始まりました。

日本の社会保障制度の施策を整理すると・・・

1962年 社会保障制度審議会による

社会保険 → 一般所得階層に対する施策社会福祉 → 低所得階層に対する施策公的扶助 → 貧困階層に対する施策

人口割合でみると

一般所得階層 > 低所得階層 > 公的扶助

となります。

ベンサムによる功利主義「最大多数の最大幸福」で考えると,最大多数なのは一般所得階層なので,社会保険制度を充実させることが,国家全体で見た時,最も幸福度が大きくなります。

そういう面で言えば,子育て支援制度は,社会福祉で行われていますが,若手国会議員のワーキングチームが検討している子どもを対象とした社会保険制度があって不自然ではないかもしれません。


さて,今日から科目は,「低所得者に対する支援と生活保護制度」に移ります。

1962年勧告に沿うと公的扶助(生活保護)は低所得者に対する施策ではなく,貧困層に対するものなので,科目に矛盾はありますが,さすがにカリキュラムを検討した時に,「貧困者に対する支援~」では感じが悪かったので避けたのではないでしょうか。


さて,今日のテーマは「日本の社会保障制度の仕組み」です。

社会保障制度は,財源によって,社会保険と社会扶助に分けられます。

社会保険は,日本には5つの制度があります。財源には公費も使われていますが,社会保険料が基本です。

そのため,財源割合で言えば,公費が社会保険料を上回ることは絶対にありえません。
公費負担分は社会保険を支えるためのものです。

社会扶助は,児童手当などの各種手当や公的扶助(生活保護)などです。
社会扶助は,公費で行われ,事前の拠出は必要とされていません。

それでは特徴を整理してみましょう。


<社会保険> 

防貧的に作用する。

保険料の拠出を前提とする。

保険事故が発生した場合に給付される。

基本的には給付に所得制限はない(基本的という条件をつけているのは,20歳前に初診日がある場合は,20歳になると障害年金が給付されるが,所得が多いと給付されないため)。


<社会扶助> 

救貧的に作用する。

事前に納税していなければならないなどの条件はない。

所得制限があるものが多い。


さて,これらを元に今日の問題です。

25回・問題63

我が国における社会保険と公的扶助の性質・機能の違いに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会保険は原則として金銭給付により行われ,公的扶助は原則として現物給付により行われる。


2 社会保険は保険料の拠出を給付の前提とし,公的扶助は事前の納税を給付の前提としている。


3 社会保険では個別の事情に応じた給付が行われるのに対し,公的扶助では最低限度の生活を保障するために定型的に一律の給付が行われる。


4 社会保険は貧困に陥った後に給付が開始され,公的扶助は貧困に陥らないように事前に支給される。


5 社会保険では保有する資産に関係なく給付が行われるが,公的扶助では資産調査を経て給付が行われる。



社会保険と公的扶助の違いに関する問題です。

「社会保障」の科目では,社会保険と社会扶助の違いが出題されます。


2つの科目にまたがるのでしっかり覚えておきたいです。


それでは詳しく見て行きましょう。


1 社会保険は原則として金銭給付により行われ,公的扶助は原則として現物給付により行われる。


どちらも原則は,金銭給付です。

よって×。

公的扶助のうち,原則現物給付なのは,医療扶助と介護扶助の2つでけです。


2 社会保険は保険料の拠出を給付の前提とし,公的扶助は事前の納税を給付の前提としている。


公的扶助は,貧困層を対象としています。

生活保護は,憲法第25条の生存権保障,つまりは「健康で文化的な最低限度の生活保障」のための法律です。

事前の納税を前提としていたら,セーフティネットとしての機能は果たさなくなってしまいます。

もちろんこんな規定はありません。

よって×。


3 社会保険では個別の事情に応じた給付が行われるのに対し,公的扶助では最低限度の生活を保障するために定型的に一律の給付が行われる。


社会保険は,その保険が設定した保険事故が発生した場合に給付されます。

個別の事情は考慮されません。

公的扶助は,最低限度の生活を維持できない不足分を給付するものです。

社会保険の記述も公的扶助の記述もどちらも間違いです。

よって×。



4 社会保険は貧困に陥った後に給付が開始され,公的扶助は貧困に陥らないように事前に支給される。



社会保険は,貧困に陥らないように防貧的に機能します。

公的扶助は貧困に陥った人を救うために機能します。

よって×。



5 社会保険では保有する資産に関係なく給付が行われるが,公的扶助では資産調査を経て給付が行われる。



これは正解です。資産調査(ミーンズテスト)が行われるのは,公的扶助です。



「低所得者に対する支援と生活保護制度」は,覚えるアイテムが少ないので,法制度系の科目の中では最も点数が取りやすい科目です。



出題範囲は狭いので,3年間の過去問をしっかり押さえておけば得点できる数少ない科目の一つです。ぜひ得意科目にしてくださいね。


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