2017年9月20日水曜日

国際比較の覚え方

わが国の社会保障の費用は,国立社会保障・人口問題研究所が「社会保障費用統計」として毎年発表しています。

この費用統計は,国際基準で作成されているので,国際比較が容易にできるのが特徴です。


それでは,早速今日の問題です。


第25回・問題51 


我が国における社会保障の給付と負担に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 国民負担率は,国民所得に対する社会保障負担の割合で示される。



2 2012(平成24)年度における我が国の社会保障給付費(予算)の規模は,国の一般会計当初予算の規模を上回っている。



3 2009(平成21)年度の社会保障給付費を「年金」「医療」「福祉その他」とに分類した場合,最も多いのは「医療」である。



4 2001(平成13)年度から2011(平成23)年度までの期間において,我が国では,租税負担率は増加したが,社会保障負担率は減少した。



5 日本,フランス,スウェーデン,ドイツ,イギリス,アメリカの中で,2009(平成21)年度の国民負担率が2番目に高いのは日本である。



社会保障の数字は,金額が大きいだけに,毎年の傾向はまったく変わらないのが特徴です。


5年前の統計でも傾向自体は今でもほとんど同じです。


社会保障給付費は,100兆円を超える規模です。


さて,それでは詳しく見て行きましょう。


1 国民負担率は,国民所得に対する社会保障負担の割合で示される。


国民負担率は,社会保障に関する負担と税金分を足したものを国民所得で割ったものです。

よって×。

日本は約40%です。

国民所得と個人の所得は別物ですが,分かりやすく言うと,20万円の収入があっても,手元に残る可処分所得は12万円ということになります。

ものすごい負担ですね。

日本の国民負担率は,国際的に見た場合,どの位置にいるのでしょう?



2 2012(平成24)年度における我が国の社会保障給付費(予算)の規模は,国の一般会計当初予算の規模を上回っている。



この年の数字は,どうなっていたのかは分かりませんが,数年前までは,国家予算額よりもちょっと社会保障給付費の方が大きい規模でした。


国家予算の伸び率よりも社会保障給付費の伸び率の方が大きくなっています。


現在では,国家予算額は95兆円。

会保障給付費は115兆円ほどです。

よって正解です。


3 2009(平成21)年度の社会保障給付費を「年金」「医療」「福祉その他」とに分類した場合,最も多いのは「医療」である。


1980年代の初めまでは,最も多いのは医療でした。

現在は,「年金」「医療」「福祉その他」の割合は,ほぼ,5:3:2に近くなっています。


つまり一番多いのは「年金」です。

よって×。


4 2001(平成13)年度から2011(平成23)年度までの期間において,我が国では,租税負担率は増加したが,社会保障負担率は減少した。


この選択肢自体は,かなり難しいです。

答えとしては,社会保障負担率は増加し,租税負担率は減少しているので,間違いです。

社会保障の問題の特徴は,難しい選択肢が含まれていても,「答えはこれだ!」と分かることが多いのです。

しっかり基礎を押さえた人は,選択肢2以外は選ばないはずです。


5 日本,フランス,スウェーデン,ドイツ,イギリス,アメリカの中で,2009(平成21)年度の国民負担率が2番目に高いのは日本である。


さて,今日のテーマの国際比較です。


日本の国民負担率の40%が国際的にどのようになっているのかが分からないと解けないと思われるかもしれません。


社会保障の国際比較で使うのは,エスピン-アンデルセンの福祉レジームです。


現在は,フランスがとても高くなっていて,

フランス>スウェーデン>ドイツ>イギリス>日本>アメリカの順です。


しかし,基本的には


社会民主主義レジーム>保守主義レジーム>自由主義レジーム


となります。


社会民主主義レジームは,スウェーデン

保守主義レジームは,フランス,ドイツ

自由主義レジームは,イギリス,アメリカ

日本は,イギリスとアメリカのちょうど中間に位置します。


国試では,フランスとドイツを比べる問題は出題されたことがないです。


このルールにのっとると,日本は上から2番目ということは,有り得ません。

逆に下から2番目です。

よって×。



ちなみに日本は,エスピン-アンデルセンの分類にはどこにも属しません。


今日の問題は,国民負担率でしたが,社会支出でもこの傾向はほとんど一緒です。



日本が社会保障に使っている金額は,国際的にみると決して高くはないのです。


実は,あまり社会保障制度が発達しているとは言えないアメリカを少し上回るレベルなのです。


勉強があまり十分でない人は,実感と実際のキャップを知らないので,勉強した人なら,かなり楽だと言える問題でも得点できないということになります。



合格する人と合格できない人の差は,決して難易度の高い問題が解けることで差がついているのではなく,確実に得点しなければならない問題でミスするかしないかが大きいです。



難しい問題は誰もが難しいものです。


そんな問題を見て頭の中が真っ白になってしまうのは,試験委員の思うつぼです。

気を付けましょう!!

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