2021年5月31日月曜日

意思決定支援ガイドライン

厚生労働省では,障害者等の意思決定支援の基本を示したガイドラインを作成しています。

 

障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000159854.pdf

 

認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000212396.pdf

 

現場では,すでに活用している事業所もあるのではないでしょうか。

 

この2つのガイドラインに共通するものは,「意思決定支援会議」の開催です。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題61 事例を読んで,Fサービス管理責任者(社会福祉士)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Gさん(40歳,男性)は,重度の知的障害があり,20年間W施設に入所している。Gさんは,自分だけでは意思決定することが困難な状態であるため,成年後見人が選任されている。W施設のFサービス管理責任者は,入所を継続したいか地域移行したいかのGさんの意向が分からない状態であったが,個別支援計画の見直しを行う時期となっている。

1 入所継続を前提に,日中活動の充実を図る。

2 家族の意向に沿って方針を立てる。

3 成年後見人の意向に沿って方針を立てる。

4 グループホームへの入居を調整する。

5 本人,関係者の参加による意思決定支援会議を開催する。

 

「障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドライン」を知らなくても,おそらく正解できるのではないかと思います。

 

正解は,選択肢5です。

 

5 本人,関係者の参加による意思決定支援会議を開催する。

 

「障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドライン」では,意思決定支援会議ついて,以下のように記述しています。

 

意思決定支援会議の開催

意思決定支援会議は、本人参加の下で、アセスメントで得られた意思決定が必要な事項に関する情報や意思決定支援会議の参加者が得ている情報を持ち寄り、本人の意思を確認したり、意思及び選好を推定したり、最善の利益を検討する仕組みである。

意思決定支援会議は、本人の意思を事業者だけで検討するのではなく、家族や、成年後見人等の他、必要に応じて関係者等の参加を得ることが望ましい。


この選択肢以外

1 入所継続を前提に,日中活動の充実を図る。

2 家族の意向に沿って方針を立てる。

3 成年後見人の意向に沿って方針を立てる。

4 グループホームへの入居を調整する。

 

これらは,内容は違えど,Gさん意向は分からない状態であるにもかかわらず,すべて結論が出ている内容です。

 

あり得ません。

2021年5月30日日曜日

障害者総合支援法が規定している介護給付

今回は,障害者総合支援法が規定している介護給付を取り上げます。

 

介護給付

居宅介護

1以上

居宅において入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。

重度訪問介護

4以上(入所等の場合は6)

重度の肢体不自由者その他の障害者であって常時介護を要するものとして厚生労働省令で定めるものにつき、居宅又はこれに相当する場所として厚生労働省令で定める場所における入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜及び外出時における移動中の介護を総合的に供与する。

同行援護

3以上

視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する

行動援護

視覚障害であり,同行援護アセスメント表に該当すれば利用可

知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を要するものにつき、当該障害者等が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護、外出時における移動中の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。

療養介護

6ALSで気管切開で人工呼吸器利用している場合),筋ジスの場合は5以上

医療を要する障害者であって常時介護を要するものとして厚生労働省令で定めるものにつき、主として昼間において、病院その他の厚生労働省令で定める施設において行われる機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び日常生活上の世話の供与。

生活介護

3以上(施設入所する場合は4以上) ※50歳以上の場合は,2以上(施設入所する場合は3以上)

常時介護を要する障害者として厚生労働省令で定める者につき、主として昼間において、障害者支援施設その他の厚生労働省令で定める施設において行われる入浴、排せつ又は食事の介護、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。

短期入所

1以上

居宅においてその介護を行う者の疾病その他の理由により、障害者支援施設その他の厚生労働省令で定める施設への短期間の入所を必要とする障害者等につき、当該施設に短期間の入所をさせ、入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。

重度障害者等包括支援

常時介護を要する障害者等であって、その介護の必要の程度が著しく高いものとして厚生労働省令で定めるものにつき、居宅介護その他の厚生労働省令で定める障害福祉サービスを包括的に提供する。

施設入所支援

生活介護利用者は4以上(50歳以上の場合は,3以上

その施設に入所する障害者につき、主として夜間において、入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。

 

サービス名の下に書いてあるのは,障害支援区分です。この数字以上だと利用できます。

 

介護給付を希望する場合,障害支援区分認定を受ける必要があるのは,このようにサービスを利用する際の基準になるからです。

 

訓練等給付を利用する場合,共同生活援助(グループホーム)で介護が必要な場合以外は,障害支援区分認定を受ける必要がありません。

 

共同生活援助だけがちょっと複雑になっている理由は,障害者自立支援法の時代に介護給付に「共同生活介護(ケアホーム)」というものがあった名残りです。

 

障害者総合支援法になった際に,ケアホームはグループホームに統合されました。

 

もう一つ整理しておきたいことがあります。

 

障害者総合支援法は,18歳以上の障害者等を対象としています。

 

18歳未満の障害児は,児童福祉法の対象です。

 

しかし,児童福祉法では対応できないものがあるので,障害者総合支援法の介護給付でも利用できるものがあります。

 

利用できるのは,居宅系サービスのうち

 

・居宅介護

・行動援護

・同行援護

・重度障害者等包括支援

 

重度訪問介護は,15歳以上なら利用できます。

 

利用できないのは,入所系サービスと訓練等給付です。

入所系サービスは,児童福祉法で規定される「障害児入所支援」が対応しています。

訓練等給付は就労支援なので,児童には必要とされません。

 

それでは今日の問題です。

 

30回・問題60 事例を読んで,この段階における相談支援事業所の相談支援専門員(社会福祉士)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断されたEさん(30歳,女性)は,現在,病院に入院中であり退院を控えている。家族は夫と娘(8歳)で,近くに頼れる親戚はいない。Eさんの障害支援区分は現在のところ5であり,障害状況は四肢の運動麻痺があるが,徐々に全身に進行し,将来的には人工呼吸器装着の選択を迫られるとのことである。退院後は,在宅生活を強く希望している。

1 地域定着支援のサービスを利用し,退院支援を行う。

2 将来に備え,入院の継続を勧める。

3 夫に,仕事を辞め在宅介護に備えることを勧める。

4 喀痰吸引等が可能な事業所等の社会資源を把握する。

5 行動援護の利用を勧める。

 

 

この問題は,実に興味深いものです。

 

余計なことを考えなければ,正解はすぐ選べるはずですが,考え込むとサービス名がわからなくなり答えられなくなります。

 

正解は,選択肢4です。

 

4 喀痰吸引等が可能な事業所等の社会資源を把握する。

 

喀痰吸引等の医療的ケアは,居宅介護等で対応できますが,実施することができるのは,研修を受けて,認定特定行為業務従事者登録をしている者,あるいは,平成27年以降のカリキュラムで介護福祉士養成施設を卒業して介護福祉士になった者です。

 

Aさんには,今後人工呼吸器を装着することが迫られるとのことなどで,医療的ケアが必要となります。そのために医療的ケアに対応できる事業所を押さえておくことは重要です。

 

それでは,ほかの選択肢も確認します。

 

1 地域定着支援のサービスを利用し,退院支援を行う。

 

Aさんは現在病院に入院中です。退院支援を行うなら地域移行支援です。

 

地域定着支援は,地域に移行した後に利用するサービスです。

 

2 将来に備え,入院の継続を勧める。

 

Aさんは,在宅生活を強く希望しています。入院の継続を勧めるのは,Aさんの意向に反します。

 

3 夫に,仕事を辞め在宅介護に備えることを勧める。

 

夫が仕事を辞めずにサービスを調整するのが,相談支援専門員の役割です。

 

5 行動援護の利用を勧める。

 

行動援護の対象は,知的障害者又は精神障害者です。

 

Aさんの外出支援は,重度訪問介護で対応します。

2021年5月29日土曜日

障害者総合支援法に規定される就労支援

今回は,障害者総合支援法に基づく就労支援を学んでいきたいと思います。

 

障害者総合支援法の自立支援給付は,大きく分けると「介護給付」と「訓練等給付」があります。

 

就労支援は,この中の訓練等給付に含まれます。

 

訓練等給付の種類

サービス名

内容

自立訓練

障害者につき、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、厚生労働省令で定める期間にわたり、身体機能又は生活能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう。

就労移行支援

労を希望する障害者につき、厚生労働省令で定める期間にわたり、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう。

就労継続支援

通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう。

就労定着支援

就労に向けた支援として厚生労働省令で定めるものを受けて通常の事業所に新たに雇用された障害者につき、厚生労働省令で定める期間にわたり、当該事業所での就労の継続を図るために必要な当該事業所の事業主、障害福祉サービス事業を行う者、医療機関その他の者との連絡調整その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう。

自立生活援助

施設入所支援又は共同生活援助を受けていた障害者その他の厚生労働省令で定める障害者が居宅における自立した日常生活を営む上での各般の問題につき、厚生労働省令で定める期間にわたり、定期的な巡回訪問により、又は随時通報を受け、当該障害者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言その他の厚生労働省令で定める援助を行うことをいう。

共同生活援助

(グループホーム)

障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において相談、入浴、排せつ又は食事の介護その他の日常生活上の援助を行うことをいう。

 

就労継続支援には,原則,雇用継続を結んで利用するA型と雇用継続を結ばないで利用するB型があります。

 

訓練等給付には,訓練等給付すべてのサービスではないですが,暫定支給というものがあるのが特徴です。

暫定支給で,とりあえず利用してみて,それで合うかどうかをアセスメントして,本支給を決定します。

暫定支給は,介護給付にはない仕組みです。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題59 「障害者総合支援法」に基づく就労継続支援A型のサービスの利用に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 障害支援区分の認定が必要である。

2 暫定支給決定の仕組みがある。

3 サービスの利用者負担は不要である。

4 利用者は,通常の事業所に雇用されることが可能な障害者でなければならない。

5 利用期間について法令上の定めがある。

 

就労支援でも,就労継続支援A型に限定した内容の問題です。

 

きっちり覚えていないと正解するのは難しいかもしれません。

 

答えは,前説からわかると思いますが,一応解説します。

 

1 障害支援区分の認定が必要である。

 

障害支援区分認定が必要なのは,介護給付です。

 

訓練等給付を利用するときは必要とされません。

 

ただし,共同生活援助を利用する場合で,介護が必要な場合は,障害支援認定が必要です。

 

2 暫定支給決定の仕組みがある。

 

これが正解です。

 

3 サービスの利用者負担は不要である。

 

利用者負担はもちろんあります。現在は応能負担となっていますが,障害者自立支援法ができた時は,応益負担でした。

 

同じ就労支援でも,障害者雇用促進法に基づくサービスを利用する場合は,利用料は必要とされません。

 

4 利用者は,通常の事業所に雇用されることが可能な障害者でなければならない。

 

通常の事業所に雇用されることが可能な障害者であれば,就労継続支援を利用する必要はないでしょう。

 

就労継続支援

通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供する

 

5 利用期間について法令上の定めがある。

 

A型,B型ともに利用期間について法令上の定めはありません。

 

利用期間の定めがあるのは就労移行支援です。

 

就労移行支援に利用期間の定めがある理由は,一般就労するための職業能力を判断するためのアセスメント期間だからです。期間を区切って利用します。

 

一般就労に移行できれば,その後,就労定着支援を利用して,定着支援を図ります。

一般就労に移行できなければ,就労継続支援を利用します。

2021年5月28日金曜日

地域活動支援センター

2005(平成17)年の障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)は,それまでの障害種別ごとだった施設・サービスを一元化し,日中系サービスと居住系サービス(生活空間)に分けたことが特徴です。


理解すればそれほど難しくはないので,一度体系化された図などで確認すると良いと思います。


さて,今日のテーマは「地域活動支援センター」です。


地域活動支援センターは,障害者総合支援法の市町村地域生活支援事業に規定されています。

事業内容は,「障害者等を通わせ,創作的活動又は生産活動の機会の提供,社会との交流の促進その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する施設」となっています。

実際には,Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型に分かれていますが,社会福祉士の国試ではそこの違いまでは問われたことはありません。


基本的事業である「創作的活動又は生産活動の機会の提供」と「社会との交流の促進」を押さえておくだけでよいと思います。基本的事業は,Ⅰ~Ⅲ型まで共通しています。


複数のスタイルがあるのは,複数あった旧制度を整理した名残りです。


創作的活動又は生産活動の機会の提供」は,地域活動支援センターの特徴なので,これは確実に覚えておきたいです。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題58 「障害者総合支援法」で位置づけられている施設として,正しいものを1つ選びなさい。

1 地域活動支援センター

2 身体障害者福祉センター

3 児童発達支援センター

4 地域障害者職業センター

5 市町村保健センター


この問題を見たとき,多くの人は悩むだろうなぁ,と思いました。


なぜなら多くの受験者は,根拠法を意識して学ぶことはしないからです。


特に,障害者総合支援法は「介護給付」と「訓練等給付」が中心に出題されることもあり,地域生活支援事業はほとんど出題されてこなかったからです。


正解は,選択肢1の「地域活動支援センター」です。


知っていれば何も難しくない問題です。


一応,ほかの選択肢も確認します。


2 身体障害者福祉センター  → 身体障害者福祉法

3 児童発達支援センター → 児童福祉法

4 地域障害者職業センター → 障害者雇用促進法

5 市町村保健センター → 地域保健法



この中で注意が必要なのは,障害者雇用促進法です。


障害者総合支援法にも就労支援に関するサービスがあるので,混乱しがちです。


基本的に押さえておきたいのは,以下のとおりです。


障害者総合支援法 → 就労移行支援,就労継続支援


障害者雇用促進法 → 地域障害者職業センター,障害者就業・生活支援センター


2021年5月27日木曜日

障害者福祉の歴史

歴史は苦手という人は多いみたいですが,出題されるのはたった数十年の話です。


大した分量ではないとは言っても,苦手な人は苦手です。


しかし,「今」だって,あっと言う間に過去になります。


歴史は過去だと思うと,遠い世界かもしれませんが,その時代を熱く生きた人たちに思いを寄せることができれば,「過去」は「今」に感じられるような気がします。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題57 障害者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 児童福祉施設入所中に18歳以上となる肢体不自由者が増加する問題に対応するため,身体障害者福祉法が制定された。

2 学生や主婦で任意加入期間中に国民年金制度に加入していなかったために無年金になった障害者を対象に,障害基礎年金制度が創設された。

3 支援費制度の実施により,身体障害者,知的障害者,障害児のサービスについて,利用契約制度が導入された。

4 障害者の権利に関する条約を批准するため,同条約の医学モデルの考え方を踏まえて,障害者基本法等の障害者の定義が見直された。

5 「障害者総合支援法」の施行により,同法による障害者の範囲に発達障害者が新たに含まれた。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。



なかなか良いポイントを押さえた問題だと思います。


年金制度,医学モデルなど,ほかの科目で学ぶ内容をちりばめています。


その分,難易度はかなり高くなっています。


それでは,解説です。


1 児童福祉施設入所中に18歳以上となる肢体不自由者が増加する問題に対応するため,身体障害者福祉法が制定された。


これは,現在の知的障害者福祉法の成立経緯を変えて出題したものです。


身体障害者福祉法の成立は,かなりの難産でした。


本当は,戦争で傷ついた人のために戦後すぐに作りたかった制度ですが,当時の日本は独立国家ではなく,GHQの支配下にありました。


そのため,身体障害者を対象とする法制度は作りにくかったのです。

福祉三法では,最後にできた理由がなんとなくわかっていただけそうですか?


そんな折,ヘレンケラーさんが日本に訪問したことが法成立を加速させました。


身体障害者福祉法が規定する身体障害には,肢体不自由だけではなく,聴覚障害,視覚障害,言語障害も含まれるのは,ヘレンケラーさんの影響は大きいです。


ここまでが,身体障害者福祉法の成立背景です。


もう一つは,現在の知的障害者福祉法の設立背景です。


児童福祉法の児童は満18歳に満たないものです。


そのため,児童福祉施設は,18歳未満のものを対象とします。

施設入所していた知的障害児は退所しなければなりません。


親が引き取るとしても,親はだんだん歳をとります。

親亡き後,障害を抱えた子どもはどうなるのだろうと思っても不思議はありません。


そこで,知的障害者福祉法(当時の名称は「精神薄弱者福祉法」)を作り,知的障害者の入所施設を規定(精神薄弱者援護施設)したのです。


2 学生や主婦で任意加入期間中に国民年金制度に加入していなかったために無年金になった障害者を対象に,障害基礎年金制度が創設された。


無年金者の救済を目的に創設されたのは,特別障害給付金です。


3 支援費制度の実施により,身体障害者,知的障害者,障害児のサービスについて,利用契約制度が導入された。


これが正解です。


支援費制度は,今となってはずいぶん昔の話となりました。

2003~2005年とたった3年間しかなかった制度です。


これによって,障害者の分野でも契約制度が始まったのです。


4 障害者の権利に関する条約を批准するため,同条約の医学モデルの考え方を踏まえて,障害者基本法等の障害者の定義が見直された。


医学モデルは,障害に焦点を当てるものです。


障害者の権利に関する条約のポイントは,社会的障壁の排除です。

これは「社会モデル」です。


5 「障害者総合支援法」の施行により,同法による障害者の範囲に発達障害者が新たに含まれた。


障害者総合支援法でさえ,過去の出来事になりました。


同法では,制度のはざまにあって,どの制度も利用することができなかった難病等を加えたところが特徴でした。

2021年5月26日水曜日

出題意図を考えること

社会福祉士の国家試験に合格することは簡単なことではありません。

 

合格率30%という事実を正しく認識する必要があります。

 

受験者の70%が不合格になる試験です。

 

受験資格を考えた時,誰もが受験できるわけではなく,かなりハードルが高い資格です。

 

合格率を下げているのは,一般養成施設だと思っている人も多いようですが,それは間違いです。

 

2933回国試の合格率の比較 

福祉系大学

一般養成施設

33

28.7

33.6

32

29.1

33.0

31

29.4

34.0

30

29.2

35.0

29

23.9

32.3

平均

28.1

33.6

 

合格率を下げているのは福祉系大学であることは明らかです。

 

この事実を知らない人が多いようですが,データがすべてを語ります。

 

福祉系大学と一般養成施設の合格率

https://fukufuku21.blogspot.com/2021/03/blog-post_25.html

 

社会福祉士の国家試験は,マーク式です。

 

答えは,必ず問題の中にあります。

 

知恵を働かせれば,正解できる問題もあります。

 

一般養成施設のうち,多くを占める通信課程で学ぶ人は社会人でしょう。

 

社会人には社会人の強みがあります。

最も大きな強みは,人生の中で培われた「知恵」があることでしょう。

 

年齢とともに高まることが知られている結晶性知能がそのことを物語ります。

 

さて,今日のテーマは「出題意図を考えること」です。

これができるようになれば,確実に得点力が上がります。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題56 障害者スポーツに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 スペシャルオリンピックスは,オリンピックの直後に当該開催地で行われる。

2 パラリンピックは,イギリスの病院での脊髄損傷者が参加する競技会の開催がきっかけとなった。

3 デフリンピックは,知的障害者による国際スポーツ大会として誕生した。

4 ゆうあいピックは,全国障害者スポーツ大会から独立して誕生した。

5 フェスピック競技大会は,発達障害者を対象に展開された。

 

30回国試は,2018年に実施されたものです。

 

次のオリンピック・パラリンピックは,2020東京大会です。

わずか2年後に起きることを予測できた人は果たしてどのくらいいたことでしょうか。

 

正解は,試験委員にとって,極めて重要な意味を持ちます。

きっちりと設計される問題は,正解を先に作ってからそれ以外の選択肢をつくります。

これを意識すると,正解できる確率が上がります。

 

ここまで言えば,正解は想像できることでしょう。

 

2 パラリンピックは,イギリスの病院での脊髄損傷者が参加する競技会の開催がきっかけとなった。

 

これが正解です。

 

このほかの選択肢がもし今後出題されることがあったとしても,正解にはなりにくいものだと言えます。

 

本当に伝えたいものではなかったからです。

2021年5月25日火曜日

児童に関する社会手当

児童に関する社会手当には,


・児童手当

・児童扶養手当

・特別児童扶養手当


などがあります。


このうち,最も対象が広いのは,児童手当です。


児童が15歳に達する日以後の最初の3/31まで給付されます。


児童扶養手当は,ひとり親などに給付されます。児童が18歳にする日以後の最初の3/31まで給付されます。


特別児童扶養手当は,自宅で生活する一定以上の障害のある障害児及び障害者に給付されます。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題55 児童手当,児童扶養手当に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 児童手当の支給対象となる児童の年齢は,12歳到達後の最初の年度末までである。

2 児童手当の費用は,国と地方自治体が50%ずつ負担している。

3 児童手当の支給額には,物価スライド制が適用されている。

4 児童扶養手当の費用は,国が全額負担する。

5 児童扶養手当の支給対象となる児童の年齢は,障害がない子どもの場合,18歳到達後最初の年度末までである。


こういった財源まで含まれる問題を見ると,細かすぎていやになってしまうかもしれません。


しかしそこには答えはありません。


それでは解説です。


1 児童手当の支給対象となる児童の年齢は,12歳到達後の最初の年度末までである。


「12歳到達後の最初の年度末まで」ではなく,「15歳到達後の最初の年度末まで」です。


児童手当の児童の定義は,「18歳に達する日以後の最初の3/31」となっており,定義と支給年齢が異なることに注意が必要です。


2 児童手当の費用は,国と地方自治体が50%ずつ負担している。


国と地方自治体の負担割合は,国:3分の2,地方公共団体:3分の1です。


3 児童手当の支給額には,物価スライド制が適用されている。


物価スライド制とは,物価によって給付額が変わるものです。


著名なものとしては,1973年・昭和47年に年金の給付額に採用されたことが知られます。


児童手当は,物価スライド制はなく,定額給付です。


近年の改正によって,児童扶養手当には物価スライド制が採用されています。


4 児童扶養手当の費用は,国が全額負担する。


児童扶養手当の国の負担割合は,3分の1となっています。


5 児童扶養手当の支給対象となる児童の年齢は,障害がない子どもの場合,18歳到達後最初の年度末までである。


これが正解です。


「障害がない子どもの場合」と限定されているのは,障害のある場合は20歳未満まで給付されるからです。

2021年5月24日月曜日

出産育児一時金と出産手当金

医療保険は,療養の給付(治療にかかる費用)が中心ですが,法定給付にはそれ以外のものもあります。


その中心なのは,傷病手当金です。


傷病手当金は,傷病によって労務ができなくなって3日を経過して4日目から給付されます。


給付期間は,最大1年6か月です。


今日のテーマは,「出産育児一時金と出産手当金」です。


出産育児一時金は,出産にかかる費用を給付するものです。


扶養する家族が出産する場合は,家族出産育児一時金が給付されます。


家族出産育児一時金は,国民健康保険にはありません。

なぜなら,健康保険と異なり,国民健康保険は扶養家族という制度はないからです。


国民健康保険に加入していれば,出産育児一時金が給付されます。


出産手当金は,被保険者本人が出産する際,産前42日,産後56日の間,労務に服さず,給与が支払われない場合の所得保障です。


被保険者本人が出産する場合,出産育児一時金と出産手当金は併給できます。給付の目的が異なる給付だからです。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題54 事例を読んで,出産・育児支援に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Cさん(28歳,女性)は,U社に正社員として5年間勤務し,V社に正社員として5年間勤務するDさん(28歳,男性)と婚姻関係にあり同居している。Cさんは,4週間後に出産予定日を控え,「育児・介護休業法」に基づく育児休業を取得する予定である。CさんとDさんは,共に健康保険,厚生年金保険及び雇用保険の被保険者である。

1 Cさんが出産したときは,出産育児一時金が支給される。

2 Cさんが育児休業を取得した場合,休業開始時賃金日額の40%の育児休業給付金が支給される。

3 育児休業中,Cさんの厚生年金保険の保険料は,事業主負担分のみ免除される。

4 CさんとDさんが共に育児休業を取得する場合,育児休業給付金は,最長で合計3年間支給される。

5 CさんとDさんの所得を合算した額が一定額に満たない場合,CさんとDさんのどちらかに,出産後,児童扶養手当が支給される。

(注)「育児・介護休業法」とは,「育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」のことである。


特に注意したいポイントは,Cさんは健康保険の被保険者であることです。


それでは解説です。


1 Cさんが出産したときは,出産育児一時金が支給される。


これが正解です。


Cさんは,健康保険の被保険者なので,出産育児一時金が給付されます。

もし,CさんがDさんの被扶養家族だった場合は,家族出産育児一時金が給付されます。


2 Cさんが育児休業を取得した場合,休業開始時賃金日額の40%の育児休業給付金が支給される。


育児休業給付金は,休業開始時賃金日額の50%が給付されます。

ただし,現時点(2021年5月)では,180日までは67%に引き上げられています。181日以降は50%が給付されます。


3 育児休業中,Cさんの厚生年金保険の保険料は,事業主負担分のみ免除される。


育児休業中は,本人と事業主負担分の保険料が免除されます。


4 CさんとDさんが共に育児休業を取得する場合,育児休業給付金は,最長で合計3年間支給される。


夫婦ともに育児休業を取得する場合は,最長1年2か月の間に育児休業給付金が給付されます。

これはどちらか一方ではなく,夫婦ともに給付されます。


5 CさんとDさんの所得を合算した額が一定額に満たない場合,CさんとDさんのどちらかに,出産後,児童扶養手当が支給される。


児童扶養手当は,両親がそろっていない場合などに給付されるものです。

Cさん夫婦には給付されません。

2021年5月23日日曜日

労働者災害補償保険(労災保険)

労働者災害補償保険法は,日本国憲法の勤労の義務及び権利を保障するために1947年・昭和22年に作られました。

 

当初は,労働者の業務災害を対象としていましたが,昭和40年代のモータリゼーションの高まりに伴い,通勤災害も対象となりました。

 

労働者とは,雇用されて給与が支払われるすべての人をいいます。

 

そのためこの制度は,ほかの社会保険制度と異なり,被保険者という概念がありません。

 

労働者であれば適用されるので,被保険者という概念は必要ではないからです。

 

労働者は,被保険者ではないので保険料の支払いはありません。

 

雇用保険は,労使折半で保険料を支払いますが,労災保険は事業主のみが保険料を支払います。

 

事業主が保険料の支払いを滞納していたとしても補償されます。

 

労災保険の給付内容を整理すると,所得の補償と療養費(治療にかかる費用)の保障の2種類があります。

 

これらは,医療保険と重なります。

 

医療保険と労災保険では,労災保険が優先されるので,同一の事由に傷病の場合は,医療保険は給付されません。

 

また,医療保険と異なり,治療にかかる費用の本人の負担はありません。


なお,労災保険は労働者を対象とした保険ですが,一人で事業を行っているような個人タクシーの運転手なども特別加入することができます。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題53 事例を読んで,労働者災害補償保険(以下,「労災保険」という。)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Aさんは正社員として建設会社に就職した。正社員は他に7名いて,アルバイトとして学生のBさんが雇われている。Aさんは業務上の事由により右足を骨折してしまった。

1 この会社は,正社員が10名以下なので労災保険は適用されない。

2 Bさんは,学生なので労災保険の適用対象にならない。

3 骨折した事故が労災認定された場合,療養の給付について,Aさんに自己負担はない。

4 骨折した事故が労災認定された場合,Aさんが治療のため会社を休み,賃金が得られなくなった初日から休業補償給付を受けることができる。

5 会社が労災保険の保険料を滞納していた場合,Aさんは,労災保険の給付を受けることができない。

 

労災保険は,医療保険や年金保険と異なり,制度がシンプルなので,しっかり覚えると確実に得点できると思います。

 

それでは解説です。


1 この会社は,正社員が10名以下なので労災保険は適用されない。

 

事業所の規模に限らず,労働者が雇用されているすべての事業所に対して適用されるのが労災保険の特徴です。

 

2 Bさんは,学生なので労災保険の適用対象にならない。

 

すべての労働者に適用となるのが労災保険の特徴です。

 

3 骨折した事故が労災認定された場合,療養の給付について,Aさんに自己負担はない。

 

これが正解です。

 

医療保険と異なり,本人の自己負担がないのが労災保険の特徴です。

 

4 骨折した事故が労災認定された場合,Aさんが治療のため会社を休み,賃金が得られなくなった初日から休業補償給付を受けることができる。

 

休業補償給付は,業務災害のため労務不能になって給与が支払われない場合の所得補償です。

 

連続して3日を休業し,4日目から給付されます。

 

この仕組みは,医療保険の所得補償である傷病手当金と同じです。

 

同一の事由による傷病の場合,休業補償給付と傷病手当金は,当然のことながら併給できません。

 

休業補償給付が給付されます。

 

5 会社が労災保険の保険料を滞納していた場合,Aさんは,労災保険の給付を受けることができない。

 

事業主が保険料を滞納していたとしても給付されるのが労災保険の特徴です。

2021年5月22日土曜日

年金の支給年齢

わが国の社会保険制度は,5つあります。


先に医療保険制度ができて,そのあとに年金保険制度ができます。


戦後になって,労働保険と呼ばれる労働者災害補償保険と雇用保険ができます。


2000年に介護保険が施行されて,5つになります。


ちょっと歴史を紐解けば,医療保険と年金保険は,戦前にできた制度を活用して,皆保険・皆年金が作り上げられました。


さて,今回のテーマは「年金の支給年齢」です。


現時点(2021年5月)は,原則65歳,希望によって,60~70歳を選ぶことができます。


2022年4月から,原則65歳,希望によって,60~75歳の間で選ぶことができるようになります。


間違って覚えてほしくないのは,支給年齢の原則は変わっていないことです。


繰り下げの範囲が広がるだけです。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題52 公的年金制度の沿革に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会保障制度が本格的に整備されるようになった第二次世界大戦後,厚生年金保険制度が創設された。

2 国民年金法が1959年(昭和34年)に制定され,自営業者等にも公的年金制度を適用することにより,国民皆年金体制が実現することになった。

3 オイルショックに伴う急激なインフレに対処するため,1973年(昭和48年)改正により,厚生年金の給付水準を一定期間固定することとした。

4 持続可能な制度にする観点から,2004年(平成16年)改正により,老齢厚生年金の支給開始年齢を段階的に65歳から67歳に引き上げた。

5 将来の無年金者の発生を抑える観点から,2012年(平成24年)改正により,老齢基礎年金の受給資格期間を25年から30年に延長した。


年金制度は,改正に改正を重ねて,現在の形がつくられました


覚えるのは面倒ですが,その分,ほかの受験者と差をつけやすいことも事実です。


それでは,解説です。


1 社会保障制度が本格的に整備されるようになった第二次世界大戦後,厚生年金保険制度が創設された。


厚生年金制度は,戦時中の労働者年金保険法が始まりです。


2 国民年金法が1959年(昭和34年)に制定され,自営業者等にも公的年金制度を適用することにより,国民皆年金体制が実現することになった。


これが正解です。


年金保険制度は,被用者を対象とした厚生年金制度が先にできて,戦後,1959年・昭和34年に国民年金法が成立し,それが施行された1961年・昭和36年に皆年金となりました。


3 オイルショックに伴う急激なインフレに対処するため,1973年(昭和48年)改正により,厚生年金の給付水準を一定期間固定することとした。


1973年・昭和48年は,福祉が充実したことにより「福祉元年」と呼ばれた年です。


高度経済成長は,インフレの時代です。物価が上がる中,給付水準が固定されると,給付される年金の価値は目減りしてしまいます。


そのため,採用されたのが「物価スライド制」です。


因みに第一次オイルショックが起きたのは,同年の冬のことです。


もし法律を改正するとしても,翌年以降でしょう。


こんなことを知らなくても,インフレ時代に給付水準を固定すればどのようなことが起きるか考えることができれば,不適切だと思えるはずです。


4 持続可能な制度にする観点から,2004年(平成16年)改正により,老齢厚生年金の支給開始年齢を段階的に65歳から67歳に引き上げた。


支給年齢は,65歳で変わっていません。


これは絶対に押さえておいてほしいと思います。


5 将来の無年金者の発生を抑える観点から,2012年(平成24年)改正により,老齢基礎年金の受給資格期間を25年から30年に延長した。


これは,比較的最近の出来事なので記憶に残っている人もいることでしょう。


従来は,25年だったものを10年に短縮しました。


<今日の一言>


今日の問題は,決して難しくないですが,正解するのはそんなに簡単ではありません。


この問題の引っ掛けポイントは「財政悪化によって,年金は受け取れないかも」といった間違った認識があることです。


勉強不足の人は,そういったイメージのために,選択肢4や5を選んでしまうでしょう。


おまけ


日本の社会保障制度の原型は,戦前・戦中に出来上がっています。


ここに留意することが必要です。


健康保険(1922年) → 労働争議の緩和することにより共産化防止のため。

国民健康保険(1938年) → 強い兵士を送り出すため。

労働者年金(1941年)→厚生年金(1944年)→ 戦争にかかるお金をねん出するため。


このような裏を考えると,覚えやすいと思います。


戦後にできた労働保険は,日本国憲法の勤労の義務及び権利を保障するためのものです。

2021年5月21日金曜日

国民健康保険の保険者

今回は,社会保険の保険者を学んでいきたいと思います。

 

国試に合格する勉強方法~社会保険の整理法 (まずはここを見て!)

https://fukufuku21.blogspot.com/2017/12/blog-post_1.html

 

保険者(誰が取り扱うの?)は,社会保険を押さえる基本です。

 

誰が取り扱うの?(保険者)



年金保険

 政府



医療保険

 健康保険  各保険者(全国健康保険協会&健康保険組合)

 国民健康保険  市町村&都道府県(都道府県は平成304月~)

          国民健康保険組合

 後期高齢者医療制度  都道府県区域の全市町村が加入する広域連合



介護保険

 市町村(広域連合)



労災保険

 政府



雇用保険

 政府

都道府県が保険者なのは,市町村国保のみ!!

 

注意したいのは,市町村国保です。

 

平成30年から,保険者が市町村とともに都道府県が加わり,都道府県が責任主体となりました。

保険者が変更になるというのは,社会保険制度の基本が変わる極めて大きな制度改正です。

 

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題51 社会保険の保険者に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 国民年金の保険者は,日本年金機構である。

2 介護保険の保険者は,国である。

3 国民健康保険組合の保険者は,市町村である。

4 健康保険の保険者は,全国健康保険協会及び健康保険組合である。

5 労働者災害補償保険の保険者は,都道府県である。

 

わが国の社会保険制度は5つありますが,そのうち,医療保険と年金保険は戦前からある制度を利用して国民皆保険・皆年金に作り替えたので,保険者が複数にわたります。

 

そこがちょっと面倒なところかもしれません。

 

それでは,解説です。

 

1 国民年金の保険者は,日本年金機構である。

 

国民年金及び厚生年金の保険者は,政府です。

 

2 介護保険の保険者は,国である。

 

介護保険の保険者は,市町村です。

 

3 国民健康保険組合の保険者は,市町村である。

 

国民健康保険組合(国保組合)の保険者は,各国民健康保険組合です。

 

国保組合は,主に同業者が組合を組織して運営しています。

 

国民健康保険(国保)は,市町村国保とともに国保組合があることを覚えておきたいです。

 

国保組合の歴史は古く,1938(昭和13)年の国民健康保険法の成立当時から国保組合が認められていました。

 

4 健康保険の保険者は,全国健康保険協会及び健康保険組合である。

 

これが正解です。

 

全国健康保険協会(協会けんぽ)の加入者は,主に中小企業の従業員です。

 

健康保険組合の加入者は,主に大企業の従業員です。

 

 

5 労働者災害補償保険の保険者は,都道府県である。

 

労働保険と呼ばれる雇用保険と労働者災害補償保険の保険者は,政府です。

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